大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

高知地方裁判所 昭和39年(ワ)161号 判決 1966年11月02日

主文

一、原告四名の請求を棄却する。

二、訴訟費用は原告四名の負担とする。

事実

一、当事者の申立

原告四名は、

(1)  被告は、原告長崎梅に対し六五万円、同長崎亀に対し四五万円、同宮田泰子、島本千恵子に対し各二五万円およびこれらに対する昭和三八年一〇月五日から完済に至るまで年五分の割合による金員の支払をせよ。

(2)  訴訟費用は被告の負担とする。

との判決および(1)項について仮執行の宣言を求めた。

被告は、主文一、二項と同旨の判決を求めた。

二、原告らの主張(請求原因)

(一)  訴外和田修利は、昭和三八年一〇月四日午後四時五〇分ごろ、自動三輪車(高六せ三、二五四号)を運転中、高知市潮新町六三番地四地先の交差点で、第一種原動機付自転車に乗つた訴外亡長崎秀喜を跳ね飛ばし、同人に頭蓋骨骨折を負わせ、よつて同人を同日午後五時四五分死亡させるに至つた。

(二)  被告会社は、製材を目的とする会社で、右自動三輪車は、被告会社が訴外森本自動車販売会社から買い受け所有し、管理していたもので、右和田は、被告会社の従業員で、被告会社の用務で運転していたものである。

仮に右自動三輪車が訴外長野和市において保有していたものとしても、被告会社は、便宜右長野に自己の名義を貸与し、同人をして自動車運送事業を経営させていたもので、このような名義貸しは、対外的に自己が自動車の保有者であることを自認し、自動車運行によつて生ずる一切の危険を負担することを表明したものである。したがつて、右和田修利が右長野の従業員であるとしても、被告会社は右長野と同じ立場にあるというべきである。

したがつて、いずれにしても、被告会社は、自動車損害賠償保障法(以下自賠法と略称する)三条による運行供用者であり、本件事故は、被告会社のための運行の際に生じたものであるから、同条の規定により、被告会社は、右長崎秀喜の生命を害したことによる損害を賠償すべきである。

(三)  亡長崎秀喜は、明治三一年一〇月二一日生まれ(死亡当時六五歳)の健康な男子で、訴外安岡燃料株式会社の鉄工部長を勤め、平均収入月額二万八、八四一円を得、同会社との契約により、満七〇歳まで五年間右と同一以上の条件で勤務できることとなつていた。

右一か月の収入から生活費八、八四一円を控除し、残金二万円の六〇か月分から年五分の割合による中間利息を差し引くと、一〇六万九、〇九一円となり、右秀喜は、本件事故により同額の得べかりし利益を喪失した。

原告長崎梅は右秀喜の妻で三分の一、その他の原告はその子で各九分の二の相続分に応じ、右秀喜の遺産を相続したので、原告長崎梅は、三五万六、三六三円、その他の原告三名は、各二三万七、五七六円の損害賠償債権を承継取得した。

(四)  亡秀喜の葬儀料合計一九万九、四六七円は、原告長崎亀(亡秀喜の二男)が負担、支出した。

(五)  亡秀喜は、原告らの財政的、精神的支柱で、原告らから理想的な夫であり、父であると慕われていた。同人の不慮の死に対する原告らの悲嘆は想像を越えるものがあり、原告長崎梅の慰謝料は一〇〇万円、原告長崎亀の慰謝料は五〇万円、その他の原告二名の慰謝料は各三〇万円が相当である。

(六)  よつて、原告長崎梅は、右合計額のうち六五万円、原告長崎亀は、右合計額のうち四五万円、その他の原告二名は、右合計額のうち各二五万円およびこれらに対する昭和三八年一〇月五日から完済に至るまで年五分の割合による金員の支払を求める。

三、被告の主張

請求原因(一)の事実は知らない。

同(二)の主張事実中、被告が製材を目的とする会社であることを認め、その他の事実は否認する。

本件加害自動三輪車は、訴外長野和市の所有、管理にかかり、訴外和田修利は、右長野が雇傭していた者である。右長野は、右自動三輪車をもつて運送業を営み、被告会社は、素材等の運搬を右長野に依頼していたに過ぎない。被告会社は、右自動三輪車の使用について何らの支配もしていないし、また何ら利益を受けていなかつたものである。

同(三)ないし(五)の主張事実は、すべて知らない。

四、証拠関係(省略)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例