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高知地方裁判所 昭和23年(行)114号 判決 1949年1月31日

原告

志場幸栄

外十三名

被告

松葉川村長

外一名

主文

本件訴はこれを却下する。

訴訟費用は全部原告等の負担とする。

請求の趣旨

原告訴訟代理人は「被告松葉川村長は同村議会が昭和二十三年一月十二日同村新制中学校の建築敷地を同村下作屋と定めた議決及び右中学校建築のための予算を定めた議決を取消せ。被告高知縣知事は昭和二十三年三月十六日右中学校建築のため與えた建築の認可、市街地建築物特殊許可及び臨時建築等制限規則による許可を取消せ。訴訟費用は被告等の負担とする。」との判決を求める。

事実

原告等は松葉川村の住民であるが、被告同村長横山勇は昭和二十三年一月十二日村議会を招集し、同村新制中学校建築の敷地並びに建築のための予算に関する議案を付議し建築敷地を同村下作屋に選定すること及び建築のための予算を議決した。しかしこの議決には議会の構成並びに採決方法に違法がある。即ち村議会は村会議員を以て構成し一定数の出席議員の過半数により議決すべきことは地方自治法の規定するところであるにかかわらず右村議会は議員十六名以外に新制中学校建設委員六名を加えて構成され右議案を審議の上議決したものであつてこれは明らかに違法である。又被告高知縣知事は右違法の議決に基き被告村長が右新制中学校建築の認可並びに許可を申請したのに対し昭和二十三年三月十六日それぞれ市街地建築物法、学校等敎育施設の建築認可規定及び臨時建築等制限規則による認可、許可を與えた。しかしこの認可、許可は前記の通り違法の議決に基く申請に対し與えられたものであるから当然違法である。原告はこの被告村長並びに知事の違法の行政処分に対し請求の趣旨のような裁判を求めるため本訴に及んだものであると述べ、立証として甲第一、二号証を提出し、乙第一、二号証の成立は認否しなかつた。

被告松葉川村長訴訟代理人は「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告等の負担とする。」との判決を求め、原告主張事実に対し被告が原告主張の日時村議会を招集し、村議会が原告主張のような議案を議決したこと、新制中学校建設委員六名が右議会に出席し意見を述べたこと及び被告が右学校の建築のため被告知事等に対し建築の認可、許可を申請しそれを受けたことは認める。しかしその余の主張事実はこれを爭う。殊に右建設委員は本件の議決には全く関與していない。仮に関與したものとしてもこの議決に同委員を度外視して議員の定足数及び過半数に欠けるところがないものであるから当然無効なものではないと述べ、

被告高知縣知事指定代表者は「原告の請求を棄却する。」との判決を求め、原告主張事実に対し被告縣知事は本件学校建築を相当と認めてこれに認可、許可を與えたもので仮りに被告村長の申請が違法なものであつても無効でない限り取消すべきものでない。なお原告主張の許可中臨時建築等制限規則によるものは建設院総裁の権限に属し被告縣知事の関知するところではないと述べ、立証として乙第一、二号証を提出し、被告村長の訴訟代理人は証人田中良雄の証言を援用し、甲号各証の成立を認めると述べた。

理由

本件訴は被告松葉川村長に対し同村議会の議決の取消、被告高知縣知事に対し建築の認可、許可の取消をそれぞれ命ずる裁判を求めるものである。しかし地方自治法によれば村長に村議会の議決を取消す権限はないのみならず、司法機関である裁判所が行政機関である村長、知事に対し命令するいわゆる職務執行命令は同法所定の事由あるとき、所定の手続によつてのみこれを求めることができるのであつて本件訴はその要伴を具備するものではない。しかも被告縣知事に対する訴は被告村長に対するそれと何等の牽連関係がない。そこで本件訴はその請求の当否につき判断するまでもなく不適法として却下すべきものであるから、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九條を適用して主文の通り判決する。

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