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高知地方裁判所 平成2年(行ウ)5号 判決 1993年4月23日

原告

森勇(X1)

森武彦(X2)

右原告ら訴訟代理人弁護士

藤原充子

小泉武嗣

被告

高知市長(Y1) 横山龍雄

右訴訟代理人弁護士

浜田耕一

右指定代理人

山岡幹雄

中岡豊喜

松本金親

有田良秀

理由

一  本件訴訟が、地方自治法二四二条の二第一項二号所定の住民訴訟として、適法であるか否かを検討する。

1  本件訴訟の位置付け

原告らが、自己所有土地に隣接する市有地について、公衆用道路の用途を廃止した上、他に売却した行為が違法であるとして争う手段としては、第一に、右の用途廃止等が行政処分であり、当該処分により自己の権利利益が害されたことを理由として、抗告訴訟により、処分の無効確認等を求める方法、第二に、右の用途廃止等が行政処分であり、財務会計上の違法な行為であることを理由として、地方自治法二四二条の二第一項二号所定の住民訴訟により、処分の無効確認等を求める方法、第三に、右の用途廃止及びこれに続く売却行為が、財務会計上の違法な行為であることを理由として、同法二四二条の二第一項四号所定の住民訴訟により、損害賠償等を求める方法などが考えられる。

本訴は、第二の方法によるものであり、原告らは、本件に関連して、第三の方法により損害賠償等を求める訴訟(当裁判所平成二年(行ウ)第六号事件)をも提起している。

2  本件訴訟の適否

本件訴訟が、地方自治法二四二条の二第一項二号の要件を充たすためには、対象となる本件用途廃止及び本件売買が、行政処分であること、財務会計上の行為であること、原告らに訴えの利益があることなどが必要である。

(一)  そこで、まず、本件用途廃止の処分性について考察する。

(1) 被告は、道路の用途廃止が、市の内部における所管者・管理主体の変更に過ぎないこと、道路の利用の利益は、一般使用が認められていることによる反射的利益であり、用途廃止は、市民の権利ないし法律上の利益に直接影響を与えるものではないこと、用途廃止手続が外部に公示、告示されることもないこと等を主張する。

(2) そこで検討するに、一般公衆が道路の自由使用によって享受する利益は、原則として、法律上保護される権利・利益としての使用権ではなく、道路が設置され一般公衆の利用に供されていることの結果として受ける反射的利益に過ぎないと考えられるが、特定の者の居住する土地が、一つの道路にしか接しておらず、当該道路が、その者の生活のために必須のものとなっている等、用途廃止によって、特定人の生活に著しい支障が生ずるという特段の事情が認められる場合には、その者が道路を使用する利益は、反射的利益の範囲を超えて、法律上個別的に保護されているとみるべきであり、道路の用途廃止は、その性質上、使用者の法律上の利益に影響を及ぼすおそれのある行為であるから、行政処分に該当するというべきである(抗告訴訟につき最高裁判所第三小法廷昭和六二年一一月二四日判決・最高裁判所裁判集民事一五二号二四七頁参照)。

(二)  次に、本件用途廃止が、住民訴訟の対象となる財務会計上の行為か否か検討するに、住民訴訟の趣旨は、行政上の違法一般を争うことを目的とするものではなく、財務会計上の違法な行為により、市が損害を被り、ひいては、市の住民がその経済的負担を被ることを防止、是正しようとするものであるところ、道路の用途廃止それ自体の効果は、市の内部における所管者・管理主体の変更であって、通常、住民の負担に転嫁されるような財務会計上の効果を生ずるものとは考えられず、原告らの主張においても、原告らが隣接土地所有者として被る損害を問題とするに止まり、弁論の全趣旨によるも、市に損害が生ずると認めるに足る事情は認められない。

従って、本件用途廃止自体としては、住民監査の対象、となる財務会計上の行為に当たらず、住民訴訟の対象とはならないというべきである。

(三)  また、本件売買については、市の財務会計上の行為ではあるが、私法上の売買契約であり、行政庁の公権力の行使としてなされた行政処分とはいえないから、地方自治法二四二条の二第一項二号によりその無効確認を求めることはできない。

(四)  なお、原告らは、本件用途廃止と本件売買は、一連の行為としてなされたものであるから、全体として、財務会計上の効果を生ずる行政処分と評価すべきことを主張する趣旨とも考えられるが、用途廃止によって隣接住民たる原告らが被る被害については、前記のような特段の事情があり、訴えの利益が認められることを前提として、抗告訴訟で争えば足り、また、売買による市の損害については、同法二四二条の二第一項四号の損害賠償請求訴訟等により、売買自体の違法性及びそれに影響する用途廃止の違法性の存否の問題として争えば足りるのであって、本件用途廃止と本件売買を一体の行政処分と評価して無効確認を認めるべき合理性、必要性は認められない。

(五)  したがって、本件訴訟は、地方自治法二四二(D)条の二第一項二号の要件を充たすものまではなく、不適法である。

二  よって、原告らの請求は、これを却下することとし、訴訟費用については、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 豊永多門 裁判官 野尻純夫 齋木稔久)

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