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高松高等裁判所 平成6年(ネ)169号 判決 1995年1月30日

控訴人

山一證券株式会社

右代表者代表取締役

三木淳夫

控訴人

佐伯明弘

右控訴人両名訴訟代理人弁護士

吉田清悟

被控訴人

株式会社アプラス

(旧商号・株式会社大信販)

右代表者代表取締役

前田英吾

右訴訟代理人弁護士

西出紀彦

主文

一  原判決を次のとおり変更する。

1  控訴人山一證券株式会社は、被控訴人に対し、金三三八三万六九四九円及びこれに対する平成四年一月二四日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2  被控訴人の控訴人山一證券株式会社に対するその余の請求、及び、控訴人佐伯明弘に対する請求をいずれも棄却する。

二  控訴費用は、第一、二審を通じ、被控訴人と控訴人佐伯明弘との間においては、全部被控訴人の負担とし、被控訴人と控訴人山一證券株式会社との間においては、被控訴人に生じた費用の四分の一及び控訴人山一證券株式会社に生じた費用の二分の一を控訴人山一證券株式会社の負担とし、その余は被控訴人の負担とする。

三  この判決は、第一項1に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  申立て

一  控訴の趣旨

1  原判決中、控訴人ら敗訴の部分を取り消す。

2  被控訴人の請求をいずれも棄却する。

3  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  控訴の趣旨に対する答弁

本件控訴を棄却する。

第二  事実関係

本件請求及び事案の概要は、次のとおり補正するほか原判決「事実及び理由」欄の第一、第二記載のとおり(ただし、被控訴人の控訴会社に対する主位的請求(債務不履行に基づく損害賠償請求)に関する部分を除く。)であるから、これを引用する。

一  三枚目裏四行目「現在でも」、同六行目「だけでも」を削る。

二  七枚目裏七行目「従って、被告佐伯は」を「被告佐伯は、本件合意の存在を知っており」に改め、同末行「(2)」を削り、八枚目表一、二行目「本件証券購入ローン」から同六行目終わりまでを「本件証券購入ローンに基づき、本件株式の購入代金相当額を融資させたにもかかわらず、平成二年一〇月二四日、倉本のいよぎん証券担保ローンの融資極度額を四〇〇〇万円に増額させて本件株式を山一ファイナンスの担保とすることに確定させ、原告の担保実行を不能ならしめた。また、仮に、本件合意の存在が認められないとしても、原告は、本件合意が有効に成立したものであり、本件株式について譲渡担保権を取得できるものと信じて倉本に対して本件株式購入資金を融資したものであるところ、被告佐伯は、右の事情を知りながら、また、これを容易に知り得たにもかかわらず、漫然と被告山一の倉本に対する株式買付代金債権の回収をなす目的の下に、原告に被告山一の口座へ融資金を振り込ませて融資を実行させ、原告に対し、担保となるべき本件株式の価額相当額の損害を与えたものである。」に、同七行目「(3)」を「(2)」に改める。

三  八枚目裏末行「取扱いを承諾したからこそ」を「提携を承諾したので」に、九枚目表二行目「実行したのである」を「実行した」に、同四行目「教え」を「指示し」に、同五行目「原告が」から同七行目終わりまでを「原告が、本件証券購入ローンに基づき、購入した株式を担保として、多数の顧客に対して融資するであろうことを充分予測していた。」に、同八行目「被告山一松山支店を代表して」を「自ら」に、同九、一〇行目「報告し承認を得る等」を「報告して事後的に承認を得る等」に、同末行「有効化するべきであり」を「有効なものとする措置をとるべきであり」に、九枚目裏三行目「しておくべきであった」を「しておく義務があった」に改める。

四  一〇枚目表一行目冒頭から同枚目裏一行目終わりまでを削る。

五  一三枚目裏三行目「いえないであろう」を「いえない」に、同四行目「嫌々ながら本件合意を約した」を「本件合意をした」に、同九行目「鈴木次長」から同末行終わりまでを「前記のような内密の単なる要望事項を鈴木次長が仮に失念していたとしても、それを不法行為の要件である過失ということはできない」に改め、一四枚目表一行目冒頭から同枚目裏五行目終わりまでを削る。

六  一五枚目裏一、二行目「起因するケースである」を「起因する」に、同四行目冒頭から同六行目終わりまでを「仮に、被告らが、原告に対し損害賠償債務を負担するとしても、その額は四〇〇〇万円を越えることはない。すなわち、倉本がいよぎん証券担保ローンに基づきその保証人山一ファイナンスの求償債権を担保するための証券担保極度額は四〇〇〇万円であるから、被控訴人主張の平成三年三月二九日当時の本件株式の評価額のうち右四〇〇〇万円を越える部分に相当する株式は倉本に返還すべきものであるから、この部分に関しては控訴人らが責任を負うべき筋合いではない。また、その損害額の算定は、本件株式の処分可能価額から、売却手数料及び有価証券取引税を控除して算出されるべきである。」に改める。

七  一七枚目表四行目全部を削り、同五行目「(3)」を「(2)」に改める。

第三  証拠関係

原審及び当審記録中の各証拠目録掲記のとおりであるから、これらを引用する。

第四  当裁判所の判断

一  被控訴人の控訴会社に対する主位的請求(債務不履行に基づく損害賠償請求)に関する部分については、被控訴人から不服の申立てがないので、当審では判断しない。

二  証拠(甲一の1ないし3、二の1ないし6、三の1ないし12、四の1ないし9、五の1ないし12、六の1ないし4、七の1ないし13、八の1ないし6、一〇の1ないし25、一二、一三、一四、一五の1ないし31、一六、二〇の1ないし47、二一、乙一ないし六、原審証人中田義明(第一、二回)、同鈴木一雄(第一、二回)、同倉本寿郎、同古橋進、原審における控訴人佐伯明弘本人)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

1  被控訴会社松山支店では、平成元年二月ころ、新たに「証券購入ローン」の取扱いをすることにし、提携する証券会社を物色していたところ、控訴会社松山支店の鈴木一雄総務次長(以下「鈴木次長」という。)から提携取引ができるような感触を得た。そこで、被控訴会社松山支店の支店長中田義明(以下「中田支店長」という。)は、同月二三日、控訴会社松山支店に鈴木次長を訪ね、同人に対し、被控訴会社作成の右ローンの概要を記載したパンフレット(甲一二、二二)を交付したうえ、右ローンの内容、即ち、①控訴会社は、被控訴会社の顧客に対し、証券購入資金を融資する、②右資金によって購入した証券は、顧客名義のままで控訴会社の保護預かりとするが、被控訴会社が譲渡担保権を取得することとし、控訴会社は以後当該証券を被控訴会社のために保管占有するものとする、などその骨子を説明した。その結果、鈴木次長は、前記のローンの内容を了承し、被控訴会社との提携を約した。そして、中田支店長に対し、被控訴会社が顧客の求めに応じて融資する証券購入資金を振り込むべき控訴会社の銀行口座(東邦相互銀行本店の控訴会社松山支店長堀内正則名義の当座預金口座・番号三二三四)を指定し、融資金は被控訴会社名義ではなく、顧客名義で振り込むよう指示した。

しかし、鈴木次長には、右のようなローン提携契約を締結する何らの権限も付与されていなかった。

2  中田支店長は、鈴木次長との提携契約が有効に成立したものと考え、同年三月九日、本件証券購入ローンによる融資を希望する顧客を控訴会社松山支店に同道して鈴木次長に紹介したところ、鈴木次長は、同支店の営業課員である大西直樹を引き合わせ取引を開始した。その後、被控訴会社は、後記倉本寿郎を含め一八名の顧客と本件証券購入ローン契約を締結し、各顧客が右契約に基づき被控訴会社松山支店を通じて買い付けた株式の購入資金を前記指定口座に振込送金し、控訴会社も買い付けた株式の保護預かり証を被控訴会社に交付した。

3  倉本寿郎は、かねて控訴会社を通じて、金融機関等の融資制度を利用するなどして株式投資をしていたが、さらに取引を拡大したいと考え、控訴会社の営業課長で同人の取引を担当していた控訴人佐伯に証券購入資金の融資を受けられる機関がないか相談したところ、控訴人佐伯から被控訴会社にローンの制度があることを紹介された。そこで、倉本は数回電話で照会したのち、同年一一月二日、自ら被控訴会社松山支店に赴き、担当者から本件証券購入ローンの説明を受け、手持ちのオーエスジー株四〇〇〇株を保証金代用証券として担保に差し入れたうえ被控訴会社との間で融資限度額三〇〇〇万円とする本件証券購入ローン契約を締結した。しかし、右担保に供した株式はその時価が前記融資極度額の担保に見合う六〇〇万円に満たなかったので、後日追加する旨約した。

4  控訴人佐伯は、同月七日、被控訴会社松山支店を訪れ、応対に出た中田支店長に対し、自分が控訴会社での倉本の担当者であると自己紹介し、倉本の融資限度額に対し、どの程度の担保が必要かなどと質問した。そこで、中田支店長は、控訴人佐伯に対し、本件証券購入ローンのパンフレットを交付してその内容を説明した。

5  倉本は、同月一〇日、控訴会社を通じて住友石炭株二万八〇〇〇株を一株一〇五〇円で買い付けた。そこで、これを担当した控訴人佐伯は、同月一三日被控訴会社松山支店に対し、右株式買い付け代金二九六一万〇〇一七円の融資が可能か否か電話照会し、同支店から融資できる旨の回答を得たので、同日、同支店に対し、倉本が前記銘柄の株式を前記の代金で買い付けた旨の「出来値連絡表」(甲七の1)をファクシミリで送信した。そして、控訴人佐伯は、被控訴会社松山支店で前記倉本に対する融資手続書類である「証券購入ローン借入申込書」(甲三の1)、「担保品差入証」(甲五の1)の用紙を受け取り、前記購入した株式の保護預り証を持って倉本の自宅を訪ね、これらの所定事項に署名捺印を得たうえ、これらの書類を被控訴会社松山支店に持参して提出した。

被控訴会社は、前記倉本の買付代金決済日である同月一五日に、控訴会社が指定した前記当座預金口座に倉本名義で二九六一万〇〇一七円を振込送金した。

6  その後、倉本は、平成二年八月二日までの間に、本件証券購入ローン契約に基づき、原判決別紙第二の「取引一覧表」掲記のとおり被控訴会社から合計一二回(一七件)にわたり、総計二億二三二三万五二七五円の融資を受け、その融資金で、控訴会社松山支店を通じて同一覧表記載の株式を買い付け、これらを被控訴会社に対し担保として差し入れた。

その間、倉本は、買い付けた株式を売却し、被控訴会社からの借入金の弁済に当て、さらに本件証券購入ローンの融資限度額の変更等を繰り返しながら取引を続けていた。これら一連の手続は、控訴人佐伯が倉本に代わって実行した。すなわち、控訴人佐伯は、前記書類のほか、融資極度額変更に関する覚書等(甲二の1ないし6)、領収書控(甲一一の1ないし12、一六)、担保品受取書(甲二〇の1ないし47)等の関係書類の作成を指示し、前記の方法で取次ぎ、倉本が、被控訴会社の融資によって買い付けた株式(譲渡担保の目的になっている株式)を売却するときは、控訴人佐伯が被控訴会社松山支店に売却の承諾を得てこれを実行し、売却代金のうち倉本が被控訴会社に返還すべき元金及び利息の合計相当額を額面金額とする控訴会社松山支店長振出名義の小切手を被控訴会社に交付し、被控訴会社は、倉本を名宛人とする領収書を控訴人佐伯に交付していた。

7  鈴木次長は、平成二年七月、控訴会社松山支店から同宇都宮支店に転勤した。同次長は、中田支店長との間で前記の合意をしたのち、顧客が本件証券購入ローンを利用して買い付けた株式は、被控訴会社の担保目的となり、保護預りの株式は、以後控訴会社が被控訴会社のために占有しているものであることを同支店の担当者に周知徹底する措置をとらず、右転勤に際しても後任の次長にその引き継ぎをしなかった。

8  倉本は、被控訴会社と本件証券購入ローン契約を締結する以前、昭和六二年一月一三日、伊予銀行、山一ファイナンスとの間で、融資極度額を三〇〇万円とする「いよぎん証券担保ローン」契約を結び、山一ファイナンスの保証を得て、伊予銀行から融資を受けていた。その後、右融資極度額は順次増額され、平成二年一〇月二四日、これが四〇〇〇万円に変更された。そして、それに伴い、山一ファイナンスは、将来の保証債務を履行した場合の倉本に対する求償債権を担保するため、控訴会社を介して、倉本から本件証券購入ローンを利用して買い付けた本件株式を譲渡担保として提供する旨の契約を締結させ、その旨の担保差入証(乙六)を取得した。

9  平成三年三月当時、倉本が買い付けた株式の価額が下落したため、被控訴会社は、倉本に対し保証金等の追加差し入れを要求したが、倉本はこれに応じることができなかった。そこで被控訴会社は、本件株式を換価処分して資金を回収しようとし、同月二九日、控訴会社に対し前記別紙第二の「取引一覧表」記載の番号3・5ないし8・10・12ないし17の各株券の引渡しを求めた。しかし、控訴会社は、前記担保差入証に基づき、四〇〇〇万円の限度において山一ファイナンスが担保権を取得しているとして本件株式の引渡しを拒否し、被控訴会社は右株式を換価処分できず、債権を回収することができなかった。

以上の事実が認められ、原審証人鈴木一雄(第一、二回)、同倉本寿郎の各証言、原審における控訴人佐伯本人尋問の結果中、前記認定に反する供述部分は、原審証人中田義明(第一、二回)の証言及び甲一三号証の記載と対比してたやすく採用できない。

三  まず、控訴人佐伯の行為につき不法行為が成立するか否か検討する。

被控訴会社は、控訴人佐伯は、被控訴会社と鈴木次長との間の本件合意及び本件株式が被控訴会社の担保に供されていることを知っていたにもかかわらず、本件株式をいよぎん証券担保ローンに係る山一ファイナンスの担保とすることに確定させたと主張するが、右の事実を認めるに足りる的確な証拠はない。なるほど、控訴人佐伯は、本件株式が被控訴会社の担保に供されていることを知っていたことは前記認定のとおりであるが、被控訴会社と鈴木次長との間の本件合意の存在を知り、本件株式が被控訴会社のために控訴会社が占有、保管しなければならない義務があるとの認識があったとまで認めるに足りる証拠はない。また、被控訴会社は、控訴人佐伯は、真実は本件合意の効力がないのに被控訴会社がこれを有効と信じて倉本に対して本件証券購入ローンに基づいて融資を実行していることを知りながら、または、容易にその事情を知り得たにもかかわらず、倉本の担当者として漫然と取引をして被控訴会社にその資金を融通させた旨主張するが、本件全立証によっても、控訴人佐伯が、鈴木次長と中田支店長との合意の内容について聞かされていたとか、それを容易に知り得たと認めるに足りる証拠はないし、被控訴会社が本件合意が有効に成立したと誤解していることを知りながら、敢えて倉本との取引を継続し、株式購入資金を回収するため被控訴会社に資金の融資をさせたと認めるに足りる証拠はない。なるほど、前記認定のとおり、控訴人佐伯は、本件証券購入ローンについて中田支店長から説明を受けていたこと、前記のとおり倉本が本件証券購入ローンによる融資によって買い付けた株式については、被控訴会社と倉本との間で被控訴会社の担保に供する旨の合意がなされていることを知っていたことが認められるが、このことは、右被控訴会社の主張の裏付けとはならない。

被控訴会社の右主張は採用できない。

四  次に、鈴木次長の取った行為につき不法行為が成立するか否か検討する。

前記認定事実によれば、鈴木次長は、中田支店長から本件証券購入ローン制度の説明を聞き、右の制度を承諾して被控訴会社と提携する旨の本件合意をしたが、鈴木次長には本件合意を成立させる権限がなかったのであるから、同人としては、右合意に先立ち、控訴会社の組織上このような契約を締結する権限のある機関に概要を上申して決済を仰ぐか、事後的に追認を得るなどして、被控訴会社が右合意が有効に成立したものとして以後倉本等に対し、本件証券購入ローン契約に基づく融資を実行し、これがために損害を被らないようにすべき注意義務があったというべきである。しかるに、同次長は、右のような適切な措置を全く取らなかったのであり、それがため、被控訴会社は、前記合意が有効に成立したものであると信じて、以後倉本に対する融資を実行したのであるから、鈴木次長の前記行為は、被控訴会社に対して不法行為を構成する。そして、右鈴木次長の行為は控訴会社の事業の執行についてなされたものであることが明らかであるから、控訴会社は、鈴木次長の使用者として、民法七一五条に基づき、前記合意による取引によって被控訴会社が被った損害を賠償する責任がある。

五  被控訴会社が被った損害について判断する。

1  被控訴会社は、鈴木次長の前記不法行為によって、本件株式の換価処分権を喪失し、本件証券購入ローン契約に基づいてした倉本に対する融資の回収が不可能になったのであるから、その損害額は、本件株式の処分可能価額から、売却手数料(消費税を含む。)及び有価証券取引税を控除した額というべきである。そうして、証拠(甲一九)によれば、被控訴会社が控訴会社に対して引渡を求めた平成三年三月二九日の東京証券取引所の終値をもとに前記控除項目を控除して算定すると、その額は六七六七万三八九七円となる。

なお、控訴人らは、山一ファイナンスの求償債権の極度額は四〇〇〇万円であるから、仮に控訴人らが賠償責任を負うとしても、右の限度であると主張するが、被控訴会社の損害は、本件株式の引渡しを受けられなかったことによる損害であることが明らかであるから、その引渡しを求めた時点での価額であるというべきであって、控訴人らの右主張は採用できない。

2  次に、過失相殺について判断する。

本件証券購入ローンの提携契約の重点が、購入株式について譲渡担保に供せられ、その占有を控訴会社に委ねることにあるのであるから、控訴会社との契約が確実になされなければ、重大な危険に直面することは明らかであったのであるから、被控訴会社松山支店の中田支店長としては、控訴会社との契約については、締結の権限はもとより、契約内容についても疑義のないように書面化し、後日紛争が起こらないように注意する義務があったものといわなければならない。しかるに、前記認定事実によれば、中田支店長は、鈴木次長と本件合意をするにあたり、同次長が同支店の次長であることを知りながら、前記契約を締結する権限の有無について調査せず、また、合意の内容についてもこれを書面化することもしないで、取引を先行させたのであって、被控訴会社にもこの点で過失があったことが明らかである。そして、その割合は、前記経過に鑑みると、五割と認めるのが相当である。

第五  結論

以上によれば、被控訴人の控訴会社に対する請求のうち、損害賠償金三三八三万六九四九円(被控訴会社の損害金六七六七万三八九七円の五割・円未満四捨五入)とこれに対する本件訴状送達の日の翌日であること記録上明らかな平成四年一月二四日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員の支払を求める限度で理由があり、その余は失当であるから棄却すべきであり、被控訴人の控訴人佐伯に対する請求は理由がないから棄却されるべきである。

よって、原判決を変更し主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官上野利隆 裁判官渡邊貢 裁判官田中観一郎)

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