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高松高等裁判所 平成2年(ネ)233号 判決 1990年12月27日

主文

一  原判決を取り消す。

二  被控訴人の本件再審の訴えを却下する。

三  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

事実

一  控訴代理人は、主文と同旨の判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

二  当事者双方の主張及び証拠の関係は、当審における控訴人の主張を次に付加するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これをここに引用する。

控訴代理人は、本案の請求原因として、「被控訴人は、妻サヨ子との間で七人の子をもうけ、相当の生活費を必要としていたのであるから、サヨ子が本件立替払契約を控訴会社との間で締結することを明示又は黙示に承認した。仮に、サヨ子が本件立替払契約につき被控訴人から代理権を与えられていなかったとしても、右立替払契約の対象である物品購入は、その購入目的物・金額等から日常家事債務の範囲に入るものであるから、サヨ子の本件立替払契約については被控訴人は連帯責任を負うべきであり、たとえ日常家事債務でないとしても、日常家事に関する代理権を基本代理権として表見代理が成立する。」と述べた。

理由

一  再審請求原因1の事実(確定判決の存在)は、当事者間に争いがない。

二  そこで、同2の事実(再審事由)について判断する。

1  被控訴人(再審原告)の家族関係、被控訴人の妻サヨ子の物品購入、金員借用等の状況、原訴訟の訴状副本及び第一回口頭弁論期日呼出状の送達、第一回口頭弁論期日の状況、第二回口頭弁論期日(判決言渡期日)呼出状、判決正本の送達等に関する事実関係の認定は、原判決六丁表一〇行目から七丁裏末行まで(ただし、原判決書六丁表一〇行目「第五号証」の下に「(ただし、第三、第四号証の再審原告作成部分を除く。)」を加え、七丁裏六、七行目「知らないまま、欠席判決により敗訴し、その後送達された判決正本も」を「知らないまま欠席したこと、右口頭弁論期日において弁論が終結されて判決言渡期日(第二回口頭弁論期日)が指定され、右期日の呼出状は昭和五五年一一月三日再審原告方に送達されたところ、サヨ子がこれを受領したが再審原告には交付しなかつたこと、判決は再審原告敗訴となり、同判決正本は、同月一七日再審原告方に送達されたが」に改める。)と同一であるから、これを引用する。

2  右事実によると、原訴訟の訴状副本及び第一回口頭弁論期日の呼出状は、同居中の被控訴人の四女由希が受領したものであるが、同人は、昭和四七年一二月三〇日生れで当時七歳であったから、事理を弁識するに足るべき知能を具える者とは認め難いので、右書類の送達は、その効力を生じないが、判決正本は、同居の妻サヨ子が受領したのであるから、これを無効と扱うべき特段の事情のない本件では、右送達は、民訴法一七一条一項により被控訴人に対する送達として有効となるものというべきである。

そうであれば、被控訴人は、原訴訟事件判決正本の送達を受けたときにおいて、原訴訟の訴状副本及び第一回口頭弁論期日呼出状不送達の瑕疵を知つたものとみられるから、右瑕疵の存在を理由とする不服申立ては、右判決に対する控訴によつてすることができたものといわざるを得ない。

しかるに、被控訴人は控訴することなく期間を徒過し、九年もの長期間を経た平成元年九月四日本件再審の訴を提起したことは記録上明らかであるから、本件再審の訴えは、適法な再審事由の主張のない訴えであつて、その欠缺は補正することができないので不適法として却下すべきものである。

二  よつて、被控訴人の再審請求を認容した原判決は不当であるからこれを取り消し、右訴えを却下することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九六条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

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