大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

青森地方裁判所弘前支部 昭和44年(わ)29号 判決 1969年12月16日

本店所在地

青森県弘前市大字富田町一七四番地

吉川建設株式会社

(右代表者吉川丑蔵)

本籍

同所 七八番地

住居

同所 一七四番地

会社役員

吉川丑蔵

明治三四年七月一日生

右両名に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官善方正名出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人吉川建設株式会社を罰金三五〇万円に、被告人吉川丑蔵を懲役六月に各処する。

被告人吉川丑蔵に対し、本裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人吉川建設株式会社は青森県弘前市大字富田町一七四番地に本店を設け建設業を目的とする資本金二、四〇〇万円の会社であり、被告人吉川丑蔵は、被告会社の代表取締役としてその業務一切を統轄しているものであるが、被告人吉川丑蔵は被告会社専務取締役吉川勲と共謀のうえ、右会社の業務に関し、法人税を免れる目的をもつて、労務費等の経理を架空計上し、簿外預金を設定する等の不正の方法により所得の一部を秘匿したうえ

第一、昭和四〇年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度において、被告会社の実際の所得金額が二、八五四万六、七八九円であつたのにかかわらず、昭和四一年二月二八日青森県弘前市大字本町所轄弘前税務署において、同税務署長に対し、所得金額が八九〇万〇、九九四円で、これに対する法人税額が二九〇万六、五二〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて同会社の右事業年度の正規の法人税額一、〇一六万七、〇〇〇円と右申告税額との差額七二六万〇、四〇〇円を逋脱し

第二、昭和四一年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度において、被告会社の実際の所得金額が、二、一二三万七、六九八円あつたのにかかわらず、昭和四二年二月二八日前記所轄税務署において、同税務署長に対し、所得金額が七〇一万〇、二六二円で、これに対する法人税額が二〇八万七、七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて、同会社の右事業年度の正規の法人税額七〇五万四、五〇〇円と右申告税額との差額四九六万六、八〇〇円を逋脱し、

第三、昭和四二年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度において、被告会社の実際の所得金額が二、〇五七万九、一一七円であつたのにかかわらず、昭和四三年二月二〇日前記所轄税務署において、同税務署長に対し、所得金額が六五八万六、三八四円で、これに対する法人税額が一九〇万四、一〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて、同会社の右事業年度の正規の法人税額六七八万八、四〇〇円と右申告税額との差額四八八万四、三〇〇円をほ脱し

たものである。

判示全事実について

一、被告人吉川の当公判廷における供述

一、被告人吉川の検察官に対する供述調書

一、大蔵事務官の被告人吉川に対する質問てん末書

一、猪股肇、小田桐誠次、吉川勲および吉川鉄男の検察官に対する各供述調書

判示冒頭の事実について

一被告会社登記簿謄本

判示第一の事実について

一、大蔵事務官の吉川勲(昭和四三年四月一八日付、同月一九日付、同月二〇日付、同月二一日付(請求番号17 39)、同月二二日付(請求番号11、90)、同月二五日付、同年七月三一日付、同年八月一日付(請求番号40、113)、同月二日付(請求番号9)、同月三〇日付(請求番号33、45)および同月三一日付)、福士芳昌、石川義信、田沢文男、田中剛、吉川三郎、小野盛徳および加藤和夫に対する各質問てん末書

一、吉川勲(昭和四三年七月二九日付(請求番号20))、長谷川亮二、斎藤弘明、川島婦貞、小野弘行、前田十四男、渡部幸雄、対馬金四郎、西村禎弘および斎藤政雄作成の各上申書

一、大蔵事務官作成の脱税額計算書(昭和四〇年度)、簿外預金調査書、期末未成工事支出金調査書、社長勘定調査書および未納事業税計算書(昭和四〇年度)

一、押収してある昭和四〇年度元帳一冊(昭和四四年押第三五号の一)昭和四〇年度工事契約書綴(同号の五)、ノート一冊(同号の一二)、日記帳一冊(同号の一三)、普通預金通帳三冊(同号の一四ないし一六)、借用証書五通(同号の二一)、建物土地給付証書三冊(同号の三〇ないし三二)および領収証二枚(同号の三五)

判示第二の事実について

一、大蔵事務官の吉川勲(昭和四三年四月一八日付、同月一九日付、同月二〇日付、同月二二日付(請求番号11、90)、同月二五日付、同年七月三一日付、同年八月三〇日付(請求番号33、45)および同月三一日付)、福士芳昌、葛西悦二郎、相馬清次郎、吉川三郎、小野盛徳および加藤和夫に対する各質問てん末書

一、吉川勲(昭和四三年七月二九日付(請求番号20)、同年八月一日付(請求番号62))、相馬清次郎、小林茂、中島金四郎、小田桐富作、小野弘行、前田十四男、中田要作、西村禎弘および斎藤政雄作成の各上申書

一、大蔵事務官作成の脱税額計算書(昭和四一年度)、簿外預金調査書、期末未成工事支出金調査書、社長勘定調査書および未納事業税計算書(昭和四一年度)

一、押収してある昭和四〇年度元帳一冊(昭和四四年押第三五号の一)、昭和四一年度元帳一冊(同号の二)昭和四一年度工事契約書綴一冊(同号の六)、ノート二冊(同号の一一、一二)、日記帳一冊(同号の一三)、借用証書五通(同号の二一)、登記済証書二通(同号の二五)および建物土地給付証書三冊(同号の三〇ないし三二)

判示第三の事実について

一、大蔵事務官の吉川勲(昭和四三年四月一八日付、同月一九日付、同月二〇日付、同月二一日付、同月二二日付(請求番号11、90)、同月二三日付、同月二五日付、同年七月三〇日付、同月三一日付、同年八月一日付(請求番号113)、同月二日付(請求番号9、31)、同月三〇日付(請求番号45)および同月三一日付)、福士芳昌、粟野みき、吉川三郎、小野盛応、舟本平太郎および渡部幸雄(同年四月二三日付および同年七月二六日付)に対する各質問てん末書

一、吉川勲(昭和四三年七月二九日付(請求番号20)、同年八月一日付(請求番号62))、梅村芳宏、三上文三、前田十四男、沢田謙治、猪股肇(同年同月三一日付)、相馬清次郎、小林茂、中島金四郎および小田桐富作作成の各上申書

一、大蔵事務官作成の脱税額計算書(昭和四二年度)、簿外預金調査書、期末未成工事支出金調査書、直接労務費の未成工事支出金(実際額)の調査書、社長勘定調査書および未納事業税計算書(昭和四二年度)

一、押収してある昭和四一年度元帳一冊(昭和四四年押第三五号の二)、昭和四二年度元帳一冊(同号の三)昭和四二年度工事契約書綴二冊(同号の七)、現場賃金支払表綴四冊(同号の八)、出面帳一冊(同号の一〇)、ノート二冊(同号の一一、一二)、日記帳一冊(同号の一三)、普通預金通帳一冊(斎藤雄彦分、同号の一六)、借用証書五通(同号の二一)、登記済証書一通(同号の二二)、登記済証書二通(同号の二五)、出面帳二冊(メモ、同号の二六)および証明書四枚(同号の三六)

(法令の適用)

被告人吉川の判示各所為はいずれも法人税法第一五九条第一項、刑法第六〇条に該当するので、所定刑中懲役刑を選択するが、以上は同法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四七条本文、第一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内において同被告人を懲役六月に処し、情状刑の執行を猶予するのを相当と認めるので、同法第二五条第一項を適用して、本裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予し、被告会社に対しては、その代表者である被告人吉川が前記のように被告会社の業務に関し前記法条に該当する違反行為をしたものであるから、法人税法第一六四条第一項に従い前記法条所定の罰金刑を科することとし、刑法第四八条第二項により判示各罪所定の罰金額を合算した金額の範囲内において被告会社を罰金三五〇万円に処する。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 長谷川勝)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例