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青森地方裁判所 昭和29年(行)11号 判決 1956年5月16日

原告 川村慶次郎

被告 青森県知事

主文

原告の請求を棄却する

訴訟費用は原告の負担とする

事実

原告訴訟代理人は「被告が別紙目録記載の土地について昭和二十三年十二月二十日附買収令書を以つてなした買収処分の無効なることを確認する。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求めその請求原因として「別紙目録記載の土地(以下本件農地と略称する)は原告の所有なるところ、訴外荒川村農地委員会は昭和二十三年十一月二十二日本件農地について自作農創設特別措置法(以下自創法と略称する)第三条第一項第一号により買収計画を樹立し、被告は右買収計画に基き同年十二月二十日附買収令書を以つて買収処分をなした。しかれども右買収処分はつぎの理由により無効である。

(一)  荒川村農地委員会は本件買収計画の樹立を公告しなかつた。仮に被告主張の如く同委員会が昭和二十三年十一月十九日本件買収計画の樹立を公告したものであるとすれば右公告は本件買収計画樹立前になされたものであるから本件買収計画の公告とは言えない。結局同委員会は本件買収計画の樹立を公告しなかつたものである。公告を欠く買収計画は無効であり従つて無効な買収計画に基く本件買収処分亦無効である。

(二)  被告は本件買収処分をなすに当り本件農地の所有者である原告に買収令書を交付しなかつた。農地の所有者に対する買収令書の交付をしないでなした本件買収処分は無効である。

よつて本件買収処分の無効なることの確認を求める。」旨陳述した。(立証省略)

被告指定代理人は主文同旨の判決を求め答弁として「原告の請求原因中、本件農地が原告の所有に属していたところ荒川村農地委員会が昭和二十三年十一月二十二日本件農地について自創法第三条第一項第一号により買収計画を樹立し、被告が右計画に基き同年十二月二十日附買収令書を以つて買収処分をなしたことはこれを認める。荒川村農地委員会が本件買収計画樹立の公告をしなかつたとの点はこれを否認する。同委員会が本件買収計画を樹立したのは昭和二十三年十一月二十二日であるが同委員会はこれに先だち同月十九日本件買収計画の原案を作成したので同日本件買収計画を樹立した旨公告したのである。而して同委員会は同月二十二日右原案をそのまゝ承認し本件買収計画の樹立となつたのであり且つ前記の公告は買収計画を樹立した旨を記載した書類を荒川村役場の掲示場に同月十九日以降風雨にさらされ判読不能になるまで約一ケ月間貼付してこれをなしたものであるから右公告は本件買収計画樹立の公告というべきである。又被告が本件買収処分をなすについて原告に買収令書を交付しなかつたとの点はこれを否認する。被告は昭和二十三年十二月二十日頃本件買収処分の買収令書を原告に発送し右令書はその頃原告に到達したものである以上により原告の本訴請求は失当である。」旨陳述した。(立証省略)

理由

本件農地が原告の所有に属していたところ荒川村農地委員会が昭和二十三年十一月二十二日本件農地について自創法第三条第一項第一号により買収計画を樹立し、被告が右計画に基き同年十二月二十日附買収令書を以つて買収処分をなしたことは当事者間に争がない。よつて原告主張の本件買収処分の無効原因について考察する。(一)成立に争のない乙第一、二号証の各一、二、証人小山利夫の証言を綜合すれば、荒川村農地委員会の書記小山利夫は昭和二十三年十一月十九日本件農地の買収計画の原案を作成し同農地委員会は同月二十二日右原案を審議した上原案と同一の買収計画を樹立したところ、小山利夫は同農地委員会において原案どおりの買収計画が樹立されることの予想のもとに同委員会長山崎政保の名を以て同月十九日同委員会が本件買収計画を樹立した旨及び関係書類を同月十九日から同月二十八日まで縦覧に供する旨を記載した書面を荒川村役場の掲示場外七ケ所に貼付(その貼付は書類が風雨によつて二週間乃至三週間で自然に剥ぎとられるまで放置する)して公告し且つ前記期間関係書類を縦覧に供した事実を認定することができる。しからば荒川村農地委員会が本件買収計画を樹立した旨を公告した昭和二十三年十一月十九日においては本件買収計画は未だ樹立せられておらないのであるから右公告は事実に相違する違法のものであるといわなければならない。しかしながらその後右公告において買収計画関係書類の縦覧期間とされている前記期間内である昭和二十三年十一月二十二日に至つて本件買収計画が樹立せられ且つ右計画の原案が同月十九日に作成せられており右計画がその原案と同一内容のものである本件の場合においては右公告は縦覧期間内に事実に合致するに至つたものであるから右公告に存する前記の瑕疵は治癒されたものとなすのが相当である。結局荒川村農地委員会は本件買収計画の樹立を公告したものというべきである。(二)つぎに、その方式と趣旨により真正に成立したことを認め得る乙第三号証の一、二、同第四号証及び原告本人訊問の結果によれば原告は昭和二十四年十一月二十四日頃本件農地の買収に対する対価として金三千六百八円六十四銭(内金三千円は証券)の支払を受けた事実を認めることができる。しからば原告は本件農地の買収令書の交付を受けたものと推定すべきでありこれに反する原告本人訊問の結果は措信し難く他に右推定を覆すに足る証拠はない。結局被告は原告に対し本件農地の買収令書を交付したものというべきである。以上説明するところにより原告の本訴請求はその理由なきを以てこれを棄却すべく、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 中島誠二 中田早苗 田倉整)

(目録省略)

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