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長野地方裁判所上田支部 平成5年(わ)69号 判決 1993年10月22日

主文

被告人を懲役三年に処する。

未決勾留日数中二〇日を右刑に算入する。

理由

(犯罪事実)

被告人は、いずれも法定の除外事由がないのに、平成五年八月一二日午前一時二〇分ころ、長野県上田市《番地略》スーパー甲野本店駐車場において、自己使用の軽四輪貨物自動車の車内に、回転式けん銃一丁及びこれに適合する実包一六発を含む火薬類であるけん銃用実包二一発を共に保管して所持した。

(証拠)《略》

(法令の適用)

罰条

(けん銃を適合実包と共に保管して所持した点)

銃砲刀剣類所持等取締法三一条の二第二項、一項、三条一項

(実包を所持した点)

包括して火薬類取締法五九条二号、二一条

科刑上一罪 刑法五四条一項前段、一〇条(一罪として重い銃砲刀剣類所持等取締法違反の罪の刑で処断)

未決勾留日数の算入 刑法二一条

訴訟費用の不負担 刑訴法一八一条一項ただし書

なお、弁護人は、犯罪事実のうちのけん銃に適合する実包一六発の所持行為について、けん銃を適合実包と共に保管して所持した行為として銃砲刀剣類所持等取締法違反の行為に吸収され、別に火薬類取締法違反の罪を構成しない旨主張する。しかし、銃砲刀剣類所持等取締法三一条の二第二項は、「前項の違反行為をした者で、当該違反行為に係るけん銃等を、当該けん銃等に適合する実包…と共に携帯し、運搬し、又は保管したものは、」と規定しており、素直に読めば同条同項が処罰の対象とする実行行為としてはけん銃の所持のみであつて、適合実包の携帯等は、右実行行為とは別の加重要件として規定されているとみられること、そもそもこのような加重処罰を定めたのは危険性の増大に着目したためであるが、その危険性の増大は適合実包の携帯等が適法であるか違法であるかには無関係であり、弁護人主張のように解すると、本条が適用された場合に、適合実包の携帯等の点について、それが違法であるか適法であるかを問わず一切不問に付することとなり妥当でないこと、従来銃砲刀剣類所持等取締法の規制・処罰対象に火薬類である実包は含まれていなかつたのであり、これを今回の改正で含むようにするならば、火薬類取締法の改正もなされるべきであるのにこれがなされていないことなどに鑑みれば、適合実包の携帯等は、銃砲刀剣類所持等取締法三一条の二第二項のけん銃所持に吸収されるものではないと解すべきである。

よつて、実包二一発すべてについて包括して火薬類取締法を適用する。

(量刑の理由)

そもそも、直ちに人の殺傷の道具として使用され得るけん銃とその適合実包の同時所持の危険性の高さはいうまでもなく、それゆえ社会的にも厳しい取り締まりが求められ、本年六月には法改正により従来より法定刑も重く規定されたところである。本件は、前判示のとおりの事案であり、けん銃が三八口径回転式と威力の強いものであること、適合する実包の数も一六発と少なくないことなど、被告人の刑事責任は重い。被告人は、当時暴力団組員であつて、直前に対立抗争事件が起きた際も事務所に待機しており、その組織のつながりの中で本件所持に至つているのであり、そのまま所持したならばいずれ抗争事件等に使用される可能性もあつたと言うことができ、反社会性も大きい。

そうすると、被告人は、本件けん銃等を暴力団での兄貴分にあたる者から預けられたのであつて、自ら何らかの目的を持つて入手所持したのではないこと、被告人は、入手先等も自供し、現在では本件犯行を反省し、暴力団組織からも除名となつていること、被告人にさしたる前科がないことなど酌むべき事情を斟酌しても、主文のとおりの実刑が相当である。

(出席検察官)

大井良春

(裁判長裁判官 山田公一 裁判官 駒井雅之 裁判官 鹿野伸二)

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