大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

長野地方裁判所 昭和34年(わ)172号 判決 1964年2月17日

被告人 宮下弘治 外四名

主文

被告人宮下弘治を罰金五万円に、同鶴田武治を罰金三万円に、同永野精啓、同大工原正彦、同岩崎泰一を各罰金一万円に処する。

被告人等が右罰金を完納することができないときは金四百円を一日に換算した期間当該被告人を労役場に留置する。

訴訟費用中証人並木平治、同青山幸夫、同伝田保治、同蓑昭、同小沼輝雄、同大出俊、同市川秀雄、同斉藤鹿人、同清水勇、同清水哲に各給した分は被告人等五名の各平等負担とし、証人六鹿薫に給した分は被告人宮下弘治、同大工原正彦、同永野精啓、同鶴田武治の各平等負担とし、証人市川嘉雄、同永坂要に各給した分は被告人岩崎泰一、同永野精啓、同大工原正彦、同鶴田武治の各平等負担とし、証人金井武彦に給した分は被告人宮下弘治、同大工原正彦、同永野精啓の各平等負担とし、証人竹村政次、同轟万蔵、同黒田利幸に各給した分は被告人宮下弘治、同鶴田武治、同岩崎泰一の各平等負担とし、証人武井春雄に給した分は被告人岩崎泰一の負担とし、証人善積一、同高村甚造、同北原英夫、同飯尾俊彦、同矢野口寛に各給した分は被告人鶴田武治の負担とし、証人河内正光に給した分は被告人大工原正彦の負担とする。

理由

(本件発生迄の経緯等)

全逓信労働組合(以下全逓と略称する)は、郵政省の所管に属する郵政業務に従事する労働者中の二十二万余名により結成され、中央機関としての中央執行委員会で構成される中央本部を頂点とし、全国十ヶ所の地方郵政局担当区域毎に設けられる地方本部・各都道府県毎に設けられる地区本部・右地区本部で設置した支部等により組織された労働組合であるが、昭和三十三年四月、同組合の同年度春季闘争に際して、公共企業体等労働関係法(以下公労法と略称する)第十七条で禁止する、勤務時間内職場大会等の争議行為を計画・指導したとの理由で、郵政省より同法第十八条に基き、中央本部の執行委員長・副執行委員長・書記長等、いわゆる組合三役を含む七名の役員が解雇されたのにもかゝわらず、同年七月新潟で開かれた同組合の全国大会では、右被解雇者を再び役員に選任した。

郵政省は、被解雇者を組合員とし、かつその組合の役員とすることは、公労法第四条第三項に違反し、従つて全逓は、あるいは公労法上の適法な労働組合としての資格を喪失したものであるとし、あるいは労働協約締結権能を有する適法な代表者を欠き、従つて労働協約を有効に締結し得ないものであるとなし、全逓に対し団体交渉を拒否するの態度をとり、長野郵政局も又右郵政省の方針に従い、同郵政局に対する全逓信越地方本部(以下信越地本と略称する)との団体交渉には応じられない旨の態度をとるにいたつた。

全逓は右郵政省側の態度に対し、公労法第四条第三項の規定は違憲無効であるから、その団体交渉拒否は違憲無効であるとして全面的にこれと対立抗争し、当局側をして団体交渉に応じさせるため、いわゆる団体交渉再開の抗議闘争の挙に出たものである。即ち、依然解雇職員を組合役員としてとゞめ、賃上要求等の要求目標をかゝげて、再三団体交渉を求める全国的な集団行動をおこし、他方その正当性を組合組織内外に訴え、あるいは国際労働機構いわゆるILOの結社の自由委員会に対し、郵政省等日本政府の全逓に対する不当を訴える等の抗争を展開したものである。

これに対し郵政省側は依然全逓側との団体交渉拒否の態度をつゞけ、その適法性を主張し、全逓の抗議闘争を不当と断じ、これに伴う職務違背者に対し、行政処分をもつて臨み、あるいは労務管理を強化する等して対処するの態度を示すにいたつた。

従つて、郵政省側と全逓側との間には、中央・地方を通じ対立抗争の状態にあつたものであるが、特に長野郵政局と信越地本との間にあつては、これに加え、本件当時の並木平治郵政局長の組合に対する態度・特定郵便局長の任用問題に対する態度等をめぐつて労使相互の信頼関係を著しく欠くにいたつていたものである。

かゝる事態のもとにあつて、全逓中央本部は、昭和三十四年十一月、団体交渉を再開せしめること、当時問題となつていた非常勤職員の定員化を目的とし、「団体交渉再開・非常勤職員の定員化」等を要求事項とし、同月二十七日郵政局と集団交渉をするようにとの旨の第一号指令を発した。これを受けた信越地本は、これに基き、団体交渉再開・非常勤職員の定員化、和郵便局長の罷免等の要求をかかげて、同本部傘下の地区本部・支部等の組合員等を動員し、同月二十七日長野郵政局長に対し集団交渉を行うこととなつた。当時被告人宮下弘治は前記信越地本書記長の、被告人永野精啓は前記信越地本執行委員・教宣部長の、被告人鶴田武治・同大工原正彦は長野貯金局支部執行委員の被告人岩崎泰一は右同支部の書記の地位にそれぞれあつたものである。

昭和三十四年十一月二十七日、長野郵政局は、あらかじめ同日前記信越地本傘下の組合員等が、前記の如き要求事項をかゝげて集団交渉を求めてくるとの情報を入手していたので、同局々長並木平治は右集団交渉には応じないこととし、同局人事部管理課長青山幸夫を指揮責任者となし、管理職々員等約三十名(以下管理者側と略称する)を動員し、同局々舎正面玄関並びに、同日臨時に局長室とした同局貯金部長室に通ずる貯金部事務室東側出入口に、スクラムを組み前記組合員の入局、入室を阻止する態勢をとつた。他方前記信越地本は、同日午前八時半頃より、長野市大字栗田字舎利田八百一番地所在の前記長野郵政局々舎正面玄関前において、信越地本傘下の各地区本部・支部等の組合員中より前記動員に応じ参加した者並びに外部支援団体からの応援者等を集め、長野郵政局職員をも含め職場大会を催し、更に、場所を右局舎北側グランドに移し、前記動員に応じて参加した組合員等約二百四、五十名(以下組合員側と略称する)で前記第一号指令に基く集団交渉実施のための決起大会を開いた後、被告人宮下弘治の指揮統卒のもとに、四列縦隊となり同被告人等を先頭にして小刻みの駈足でデモ行進に移り、午前九時三十三、四分頃右郵政局々舎正面玄関にいたり、同所でピケを張つて入室拒否の姿勢をとつていた青山管理課長以下十名位の列を押し切つて局舎内に入り、局舎最東端出入口近くの前記貯金部事務室にいたる廊下を約四十米進行し、前記玄関から引揚げてきた者も加えた約三十名位の管理者側がピケを張つている前記貯金部事務室東側出入口迄いたり、こゝで一旦行動を停止し、被告人宮下弘治は青山管理課長に対し、並木局長との面会を申し入れたが、同課長よりこれを拒否されたゝめ、組合員側は被告人宮下弘治の指揮統卒のもとに、実力をもつて管理者側のピケを排除し入室しようとの行動にうつつた。

しかし、その出入口は幅一、五米位であり、管理者側約三十名はほぼ四列縦隊となり、前列四名位は互に腕をくみ後列の者は前列の者に接着し強固な体勢をとつていたのに反し、組合員側は一、七米位の廊下でしかも右出入口の両側には幅〇、五米位の本棚が並べてあつたゝめ、ようやく十名程度の者が一時に行動し得るにすぎない情況にあつたゝめ、右管理者のピケを押切つて入室することができなかつた。

(罪となるべき事実)

第一、こゝにおいて組合員側は管理者側をいわゆる「ごぼう抜き」にして、そのピケを排除しようとし、

一、被告人宮下弘治は氏名不詳者数名と共謀の上、同日午前九時四十五分過頃前記郵政局貯金部事務室東側出入口前廊下において、右郵政局人事部管理課管理係長伝田保治に対し、同被告人は同係長の洋服上衣右肩附近を両手で掴んで引張り、氏名不詳者数名はそれぞれ同係長の右手首、右手上膊部、洋服上衣、右襟等をもつて引張り、左脇附近に手をあてゝ前に押す等し、もつて数人共同して同係長に対し暴行を加え、

二、被告人宮下弘治、同大工原正彦、同永野精啓は氏名不詳者数名と共謀の上、前同日時頃前同所において、前記青山課長に対し、被告人宮下弘治は同課長の洋服上衣、右襟を掴み、その首に右腕をかけて引張り、更にその右腕の附近を掴んで引張り、被告人大工原正彦は同課長の洋服上衣袖口を掴んで引張り、被告人永野精啓は同課長の膝附近に両手をかけ持上げて引張り、氏名不詳者数名は、それぞれ同課長のズボンの右裾、洋服上衣の襟、右胸上膊部等をもつて引張る等し、もつて数人共同して同課長に対して暴行を加え、

三、被告人岩崎泰一は氏名不詳者数名と共謀の上、前同日時頃前同所において、前記郵政局人事部管理課労働係員武井春雄に対し、被告人岩崎泰一は、同係員の洋服上衣の左袖口を右手で掴んで引張り、氏名不詳者数名はそれぞれ同係員の右手首、右腕上膊部、洋服上衣襟をもつて引張り、同係員の後頭部を押える等し、もつて数人共同して同係員に対し暴行を加え、

四、被告人岩崎泰一、同永野精啓、同大工原正彦は氏名不詳者数名と共謀の上、前同日時頃、前同所において、前記郵政局人事部人事課考査係長市川嘉雄に対し、被告人岩崎泰一は同係長の左足を両手で掴み持上げて引張り、被告人永野精啓は同係長の両足首を両手で掴んで引張り、被告人大工原正彦は、仰向けになつた同係長の肩に左手を、その腰に右手をあてて持上げるようにして引張り、氏名不詳者数名は同係長の右足首を掴み持上げて引張り、同係長の首の辺をもつて引張る等し、もつて数人共同して同係長に対して暴行を加え、

第二、前同日午前九時五十分過頃にいたり、長野県労働組合評議会事務局長清水勇等三名が、全逓組合員側と管理者側との間にはいり、前記郵政局貯金部事務室において、前記青山課長に対し、郵政局長に会見に応ずるよう等の伝言を依頼したが、並木局長は今日は会えない旨回答したゝめ前記三名の斡旋は不調に終つた結果、組合員側は前記同様管理者側をいわゆる「ごぼう抜き」にしそのピケを排除しようとし、

一、被告人宮下弘治、同鶴田武治、同岩崎泰一は氏名不詳者数名と共謀の上、前同日午前十時二十分頃、前記郵政局貯金部事務室東側出入口前廊下において、前記青山課長に対し、被告人宮下弘治は同課長の洋服上衣右襟を左手で掴んで引張り、更に又同課長の首に手をかけて引張り、被告人鶴田武治、同岩崎泰一はいずれも同課長の洋服上衣左肩附近を掴んで引張り、氏名不詳者数名はそれぞれ同課長の右膝、腕上膊部を掴んで引張る等し、もつて数人共同して同課長に対し暴行を加え、

二、被告人鶴田武治は氏名不詳者数名と共謀の上、前同日時頃、前同所において、前記郵政局人事部人事課長補佐轟万蔵に対し、被告人鶴田武治は同補佐の右手首を左手で掴んで引張り、氏名不詳者数名は、それぞれ同補佐の左手首、左足首を掴んで引張り、同補佐の首左後部、右耳下を強く押す等の暴行を加え、よつて同課長補佐に対し全治迄約十日間を要する頸部捻挫の傷害を与え、

三、被告人鶴田武治は氏名不詳者と共謀の上、前同日時頃、前同所において、前記郵政局建築部技術課長高村甚造に対し、被告人鶴田武治は左手あるいは両手で、同課長の左手首又は左前膊部を数回掴んで引張り、氏名不詳者数名はそれぞれ、同課長の両足首、右腕を掴んで引張り、頭を押える等し、もつて数人共同して同課長に対し暴行を加え、

四、被告人鶴田武治は氏名不詳者数名と共謀の上、前同日時頃、前同所において、前記郵政局人事部管理課管理係員矢野口寛に対し、被告人鶴田武治は、同係員の着用していたジヤンバーの胸元や襟を掴んで数回引張り、氏名不詳者数名はそれぞれ同係員の襟首後方、右手を引張る等の暴行を加え、よつて同係員に対し全治迄約一週間を要する右前膊打撲兼擦過傷の傷害を与えたものである。

(証拠の標目)(略)

(弁護人の主張に対する判断等)

第一、弁護人は、本件起訴は日本政府並びに郵政当局が団体交渉拒否等の自己の政治的立場の正当性を維持するため、これに対する反対闘争である被告人等の正当な労働組合活動を違法なもの、即ち、いわゆる労働公安事件として他の一般刑事々件と区別し、不当に重く不利益に取扱い、起訴すべからざるものを起訴したものであるから、刑事訴訟法第一条規定の「個人の基本的人権の保障を全う」することを旨とする検察官の職責に反する起訴権の濫用による起訴であり、かかる起訴は憲法第十四条に反するもので刑事訴訟法第三百三十八条第四号規定の「公訴提起の手続がその規定に違反した」ものとして判決で公訴を棄却さるべきものである旨主張する。

よつて按ずるに本件全証拠によるも、未だ本件公訴が政治的な事情により公訴権を濫用して他の事件と区別し、特に被告人等を不当不利益に取扱い起訴したものとは認め難く、又刑事訴訟法第三百三十八条第四号の「公訴提起の手続がその規定に違反したため無効であるとき」とは、公訴の提起が権限のない者によりなされた場合、起訴状の記載がその方式に違反している場合・親告罪の告訴の欠缺等公訴提起の前提条件を欠く場合・公訴の提起がないのに事実上訴訟係属を生じた場合等をいうものであるところ、本件起訴がこれに該当するものとは認められず、更に又その他の同条各号に該当する事由も認められないので、弁護人の右主張は採用できない。

第二、次に弁護人は、被告人等の本件行為は労働組合法第一条第二項にいう同条第一項に掲げる目的を達成するための正当性の範囲内の行為であつて、犯罪ともくさるべきものではないとし、その理由として、

郵政省及長野郵政局は全逓の組織が公労法第四条第三項に違反することを理由とし、全逓並びに信越地本等との団体交渉を拒否していたものであるが、

一、右公労法第四条第三項は憲法第二十八条に違反する規定であるから、全逓の組織が右条項に違反するとの理由でこれとの団体交渉を拒否することは違法である。

二、又右公労法第四条第三項は確立された国際法規であるILO八七号条約「結社の自由及び団結権の擁護に関する条約」及び我国も批准しているILO九八号条約「団結権ならびに団体交渉権についての原則の適用に関する条約」に抵触するものであるから、憲法第九十八条第二項により当然無効となつたものであり、従つて前同様全逓の組織が右公労法第四条第三項に違反することを理由とし、これと団体交渉を拒否することは違法である。

三、更に又、信越地本は独自性を有し、固有の団結権・団体交渉権を有する適法な独立の労働組合であり、かつ、本件当時同本部には解雇された組合員は皆無であつたものであるから、前記公労法第四条第三項をめぐる論議はともあれ、長野郵政局が信越地本との団体交渉を拒否する理由はなく、従つてその拒否行為は違法というべきである。

而して、全逓は、公労法第十七条により争議権を奪われている状態下において団体交渉を拒否され、労働組合として存立目的が滅却され、組合分裂の危険にさらされていたものであり、信越地本も又非常勤職員の定員化・特定局長の任用問題等高度の緊急・重要な問題の解決をも含め、団体交渉再開を求める緊急性があつた情況下において、被告人等は団体交渉再開を目的とし本件行為に及んだものであり、その行為は労働組合法第一条第二項にいう正当性の範囲内にとゞまるものである旨主張する。

そもそも、労働組合等の団体交渉その他の行為といえども、正当な行為と解釈され得るためには、労働組合法第一条第一項に掲げる目的を達成するためのものであり、又手段・方法においても正当なものでなければならぬことは同条第二項に明記するところである。而して、被告人等を含む信越地本は全逓中央本部の第一号指令にもとずき、同地本独自の懸案であつた問題をも含め、傘下組合員等を動員し、長野郵政局に対し団体交渉の再開等を要求事項とし、集団交渉をするため同郵政局長に面会を求めたものであること、郵政省は昭和三十三年四月、全逓の同年の春季闘争に際して、勤務時間内職場大会等の争議行為を計画・指導したとの理由で、全逓中央本部執行委員長等いわゆる組合の三役を含む七名の役員を解雇したが、同年七月の全逓の全国大会において右被解雇者が再び役員に選任されたため、被解雇者を組合員とし、かつその役員とすることは公労法第四条第三項に違反し、従つてあるいは全逓は適法な労働組合としての資格を喪失したものであるとし、あるいは労働協約締結権能を有する適法な代表者を欠くことゝなつたから、団体協約等の締結を終局の目的とする団体交渉に応ずることは無意味であるとし、全逓との団体交渉を拒否し、長野郵政局も又本件当時右郵政省の方針に従い信越地本との団体交渉を拒否していたことは前記認定の通りである。

一、「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」との憲法第二十八条の規定は、労働の対価によつて生活を維持する勤労者に対し、その使用者との実質的平等を実現せしめ、その間に適正な労働条件を交渉・決定し得る様、自由に勤労者団体(通常は労働組合)を結成しこれに加入し得る権利(団結権)、勤労者団体が自ら選出した代表者によつて使用者と労働条件について交渉し得る権利(団体交渉権)並びに団体交渉における使用者との対等を実現・確保するために、勤労者団体が団体行動(争議行為)を執り得る権利(団体行動権又は争議権)即ちいわゆる労働三権を、憲法第二十五条において「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」として保障された生存権的基本権を具体化するものとして、勤労者に保障したものであることは通説の認めるところである。その団結権・団体行動権は、使用者との間の労働条件の交渉・決定の際における、勤労者の実質的対等を確保するためのものである以上、結局は団体交渉権の確保を目的とする手段・方法であるものと解すべきである。

しかしながら憲法第二十八条の規定する右の如き保障といえども、同法第十二条・第十三条の趣意よりすれば絶対・無制限に保障されたものではなく、公共の福祉のために制限を受けるべきものである。その故にその者の地位・身分・職種・業務等によつては、一般の勤労者と異なり、憲法第二十八条の保障する権利の享受を一部又は大部分制限されることあるもやむを得ざるものというべく、例えば公務員は、その身分上全体の奉仕者であり公共の利益のために勤務し、且つ職務の遂行に当つては全力を挙げてこれに専念しなければならない性質を有するもの(憲法第十五条第二項・国家公務員法第九十六条第一項等)であるから右の制限に服するものであること、公共企業体等に従事する職員は、公共企業体及び国の経営する企業の社会性・公益性並びに独占性からして企業の正常な運営を最大限に確保し、もつて公共の福祉を増進し、擁護すべき義務を負担しているものであるから、これ又右の制限に服するものであること等はいずれも当然というべきものである。従つて、郵便等の事業を行う国の経営する企業に勤務する一般職に属する国家公務員である郵政職員も又右の如き制限に服するものである。

しかし、右の如くその身分・事業等の特殊性からする制限に服するからとて、前記憲法第二十八条の法意を全く無視することが許されるものとは解し得ない。即ち公務員・公共企業体等の職員といえどもその特殊性により、個人として尊重される資格を全く失うものではなく、又その労働の対価として受ける給与によつてその生計を維持している以上、勤労者としての一面迄も全く否定されるものではない。しかも右憲法第二十八条の保障する権利は、単に国家権力の干渉を排除するという意味の自由権とは異なり、国家はこれらの権利を尊重しその実現のために積極的な措置を講ずべき義務を負担し、従つてこれらの権利を侵害する様な立法並びに処分をなしてはならないと共に、これらを侵害するがごとき行為の効力はこれを否定し、あるいは違法と評価すべきものと解すべきである。

従つて、公務員・公共企業体等の職員といえども、その特殊性にもとらない限り、憲法第二十八条の前記権利を享受し得るものというべく、これらに対する前記の如き制限も公共の福祉等により合理的に認められた範囲内(その方法等も含め)にとゞまらねばならないものというべきである。この点については、公務員・公共企業体等の職員は、その身分等の特殊性からして、憲法第二十八条の保障を受け得ないものであり、従つてこれらの者の労働関係についての諸権利は、特に関係法規により創設的に付与されたものであるからその内容は立法上自由に定め得るもの、換言すればその制限を立法上自由に定め得るものとする考え方は、当裁判所の採用し得ないところである。

公労法第四条第三項をみるに、同条項は「公共企業体等の職員でなければ、その公共企業体等の職員の組合の組合員又はその役員となることができない」旨規定している。右の「職員の組合」とは、職員以外の者は加入できない組合・職員以外の者が加入していない組合と解され、従つて当該公共企業体に雇用された者又は当該国営企業に勤務する一般職に属する国家公務員(公労法第二条第二項参照)でなければ、当該組合の組合員又は役員となる資格がなく、かゝる身分を喪失すれば当該組合の組合員又は役員としてとゞまる資格を失うものと解すべきものである。公労法第三条により労働組合法第二条が適用される結果、公共企業体等の職員の結成する組合といえども本来なれば、「労働者が主体となつて自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体」であり、何人を組合員とするか又何人を代表者(役員)とするかの自由をも有するものであるところを、前記公労法第四条第三項により制限したものである。思うにかゝる制限を加えたのは公共企業体等の特殊な性格にもとずいて、その企業の職員でないものが組合に加入し組合員又は役員となることは、公共企業体及び国の経営する企業の正常な運営を、最大限に確保することの出来ない事態の生ずる危険性があるとの理由によるものと考えられる。しかし、(他の方法が考えられないものであれば格別)かゝる危険性の防止という理由で、近代労働組合の当然有すると考えられ憲法第二十八条が勤労者に保障している前記自主的団結権、並びに自主的代表選出権を制限することは、公共企業体等の有する社会・公益性並びに独占性をもつてしてもその合理性を発見することは困難であり、又争議権を制限されている(公労法第十七条により)職員の団結権が、種々制約が存するものとはいえ、現実の使用監督権者が有する解雇職権の行使により、影響を受けざるを得ないものとすることは、前記法的意義を有する第二十八条を含む憲法全体の精神からみても望ましいものとは考えられず、更に少くとも職員たる身分を失つた役員が、その職を失うと共に組合の役員としても組合員としても組合にとゞまることができないとすることは、組合の自主的団結に対する干渉たり得るとの疑いがあると共に、自主的代表選出権に対する干渉ともなり得るとの疑も存するのであり、かゝる干渉を認容するに足る合理的根拠は、公共企業体等の特殊性を考慮に入れてもこれを発見し得ない。

従つて前記の如き制限を加えた公労法第四条第三項は、その合理性がないにもかゝわらず憲法第二十八条の保障する権利に制限を加えたものではないかとの疑問が存するのである。

この故に前記の如き理由で全逓又は信越地本との団体交渉を拒否した、郵政省又は長野郵政局の態度はその合理性を欠き、従つて憲法第二十八条違反の疑がある。

二、次に憲法第九十八条第二項は、「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」旨規定するのであるが、これは、日本国が締結・加入し、その事前又は事後に国会の承認を経て公布された即ち、批准された条約及び一般に認められ実行されている慣習国際法を、国家機関及び個人が尊重すべき義務を定めたものであり、その結果、右条約並びに確立された国際法規に牴触する法律・命令・規定は、その効力を失うものと解されていることは通説の認めるところである。

而して、我国がILOに加盟しているものであり、ILO八七号条約、「結社の自由及び団結権の擁護に関する条約」はILO総会で採択され、同条約の適用を受けるILO加盟国は、労働者及び使用者団体の設立・加入の自由、その代表者選出の自由等を確保・実施することを約したものであるが、未だ我国は右条約を批准していないのであり、又証人松岡三郎・同大出俊の当公判廷における各供述によつても右条約の内容が確立された国際慣習法となつているものとは未だ認られないので、公労法第四条第三項が右条約と牴触するものとは断定し得ず、従つてこの点についての弁護人の主張は採用し得ない。しかし、本件当時既に我国が批准していたILO九八号条約、「団結権ならびに団体交渉権についての原則の適用に関する条約」第二条第一項には、「労働者団体及び使用者団体はその設立・任務遂行又は管理に関して、相互が直接に又は代理人若しくは構成員を通じて、行う干渉に対して充分な保護を受ける」との規定が存し、他面前記一、に述べた如く、公労法第四条第三項は、労働組合の自主的団結権及び自主的代表選出権に対する干渉となり得るとの疑いがあるものであるから、右条約規定の解釈のいかんによつては、公労法第四条第三項は右の条約規定に違反し、従つて憲法第九十八条第二項によりその効力を失つているものとする考え方も成りたち得るものであり、又かゝる説も存するものであるから、前記の如き理由で全逓又は信越地本との団体交渉を拒否した郵政省又は長野郵政局の態度の合理性については、この点からするも又これを疑問とする余地がないわけではない。

三、更に証人大出俊、同塚田平吉、同市川秀雄の当公判廷における各供述及び全逓信労働組合規約規定類集・全逓信労働組合信越地方本部規約規定類集によれば、信越地本は独自の規約を有し、又独自の議決機関及び執行機関等を有していたものであるから、独自の組合活動をなし得る社会的組織を有していたものというべく、従つて独立の労働組合として、その地域的事項について長野郵政局と団体交渉をなし得るものと認むべきである。しかしながら右信越地本は、同時に単一の組合である全逓の一下部組織としての性格をも有することが認められるので、全逓そのものゝ意思に服し、あるいは中央本部の指令・統制等に服さなければならぬ関係にあつたものということができる。かゝる信越地本の二つの性格を考慮すれば、信越地本は、あるいは全逓中央本部の指令等のもとに、全国的な要求事項をかゝげて長野郵政局に団体交渉等をなし、あるいは信越地本独自の意思決定にもとずき、当該地域内の組合員にのみ関係する事項をかゝげて、長野郵政局に団体交渉等をなす等、各場合があるものと考えられる。この故に、被告人等の本件集団交渉を求める行動は、全逓中央本部の第一号指令にもとずき準備・実行されたものであり、かゝげる要求事項も和郵便局長の罷免という信越地方本部地域内の独自の事項をも含んでいるものゝ、団体交渉を再開すること、非常勤職員を定員化すること等の右指令にもとずく事項を主とし、かつ同指令はこれにもとずく行動の際、当該地方本部等の独自の問題をも要求事項として掲げることを許容していたものであることからみて、信越地本独自の行動とみるより全逓自体の行動の一環としてなされたもの、即ち全逓の行為の一部とみるのが妥当である。

右の如く信越地本の行動は同本部自身の独自のもの、即ち独立の組合の行動とみることができる場合としからずして、全逓の一下部機構として全逓の行動の一環としての行動とみるべき場合とが存する。従つて信越地本の行動は全て独立の組合の行動であることを前提とし、長野郵政局は全逓の団体交渉権等の問題はさておき、信越地本に対しては常に団体交渉に応じなければならなかつたとの弁護人の見解は、その前提において採用しない。

とは言え、前記一、二の如く公労法第四条第三項を根拠に、信越地本のみならず、全逓との団体交渉を拒否したことについてはその合理性に疑問が存するのであるから、独立の組合としてなされたものであるか否かの問題はさておいても、郵政省の態度に従い信越地本との団体交渉を拒否した長野郵政局の態度は、その立場上当時の状勢下にあつては無理からぬものと考えられるものゝ、なお前同様その合理性はこれを肯定し得ないのである。

以上の如く当裁判所は、郵政省又は長野郵政局が公労法第四条第三項を根拠に全逓又は信越地本との団体交渉を拒否したことにつき、憲法第二十八条・第九十八条第二項からみてその合理性には疑問があると判断する。而して、被告人等の本件集団行動は、主として団体交渉の再開、即ち団体交渉を求めて行われたものであることは前記認定の通りであり、かゝる行為は無論団体交渉そのものではないが、前述の如く郵政省又は長野郵政局が、その合理性に疑いのある団体交渉拒否の態度を示していた以上、公労法第三条により公共企業体等の職員の行為にも適用される労働組合法第一条第二項に、「労働組合の団体交渉その他の行為」とある、その「その他の行為」に該当するものということができる。(但し、かゝる場合といえども平穏裡の内に行われなければならないのは当然である。)

よつて、右の如き目的をもつてなされた本件行為が右の労働組合法第一条第二項に規定する「正当なもの」といゝ得るか否かを検討することゝする。

いかなる行為が労働組合の団体交渉その他の行為にして正当な行為と認め得べきや否やは、流動変転する労使間の関係裡において、動的にかつ相関的に把握されねばならぬことは当然である。特に労使相互の間に意見・解釈の対立があり、互に自己の側の行態の正当性を強調し、相手の側のそれを不当として対立し、しかも本件の如くそれが一年八ヶ月の長期間にわたり、その間互に種々の抗争・対抗の手段が講じられているが如き場合にあつては、単に当該行為のみを取上げて、これを判断すべきではなく、労使間の実質的平等を期する立場のみならずその行動の目的、そこにいたる経緯、相手方の態度をも含む当時の情況等を具体的に考察して判断すべきである。従つて本件にあつても、郵政省又は長野郵政局と全逓又は信越地本との間の従前の経緯、本件集団交渉の目的、本件当時の諸般の情況等を具体的に検討し判断すべきものと考える。

本件につきこれをみるに、冒頭「本件発生迄の経緯」等記載の如く、郵政省と全逓との間には、全逓の公労法上の組合適格・団体交渉における当事者適格・その代表者の資格等の有無について、全く対立した意見の相違があり、この相違から郵政省は全逓との団体交渉を拒否するにいたつたこと、団体交渉権は勤労者に対して保障された憲法第二十八条のいわゆる労働三権の中核をなす権利であり、これあるがために団結権、団体行動権もあり得るとも解し得るのであり、これを拒否された全逓は労働組合としての存在意義を失うの危険すらあつたこと、全逓以外の郵政関係の組合は郵政省側との間に団体交渉をもつていたゝめ、全逓組合員は諸般の点で差別・不利益を受けなければならない立場にあつたこと、全逓は団体交渉の再開を求める等の闘争を展開し、そのために行政処分を受ける者の数が増加していたこと、又かゝる全逓の闘争に対し郵政省は、労務管理体制の強化をはかる等し、あるいは違反行為ありとして行政処分をなす等してこれに対処していたこと、かゝる事態の下においてこれを打開するため、全逓中央本部が団体交渉の再開等の要求事項をかゝげ集団交渉をなすべき旨の第一号指令を発し、これに基き信越地本は団体交渉の再開等を要求するため、長野郵政局長に対し集団交渉要求を企図したこと、このような情報をあらかじめ入手していた長野郵政局長は、これを拒否する態度をきめてこれに対応するため、管理職々員等を動員しピケを張り、これを阻止するの措置をとつたものであること、特に並木局長と信越地本との間には、同局長が特定郵便局長の任用問題についての、前任者と信越地本との約束をその見解の相違から、一方的に破棄したこと等からして、相互の信頼関係、調和がとかく欠けていたこと等の経緯・情況のもとに、本件当日信越地本が団体交渉の再開等のために集団交渉を求めたものであるから、双方が納得の上平穏裡に交渉が開かれることは望みえず、交渉を求める組合員側がある程度強硬にせまることも当然と考えられ、従つてその手段・方法が右の如き具体的事情の下に、社会通念上許容される程度の有形・無形の力の行使であれば、いまだ正当性の範囲内にとゞまるものと解し得るものである。

しかしながら、被告人等の本件行為の態様をみるに、前記の如く、郵政省又は長野郵政局と全逓又は長野地本との経緯・状態等を考え、更にその目的が団体交渉の再開、即ち団体交渉を求めるもので従つてこれが団体交渉をするための手続に包含されるものであり、郵政省又は長野郵政局の団体交渉等拒否の態度が合理性を欠くものとの疑問があるとしても、又、前記の如く長野郵政局々舎正面玄関で管理者側がピケを張り組合員等の入局を拒否し、同局貯金部事務室東側出入口でも管理者側がピケをはり、当日並木局長がいた貯金部々長室への入室を拒否し、もつて同局長との集団交渉・面会を拒否していたものであるとはいえ、実力をもつて組合側の要求する集団交渉に応じさせるため、あるいは右集団交渉拒否に対する組合側の憤激を示すため、多数の組合員の威力の下にピケを張つていた管理者側をいわゆる「ごぼう抜き」することによつて排除せんとして、積極的に判示態様の有形力を行使したもので、その程度は過激に失したものというべく、従つて被告人等のかゝる本件行為は社会通念上許容された程度の有形力の行使とは認め難く、正当性の範囲を逸脱した違法な有形力の行使即ち暴力行為に及んだものとなさゞるを得ない。

従つて、被告人等の本件行為は、労働組合法第一条第二項本文に定める「正当なもの」とはいえず、刑法第三十五条の適用があるものではないから弁護人の本主張は採用し得ない。

更に被告人等の本件行為の他の刑法上の違法阻却事由又は責任阻却事由等の有無につき検討するに、郵政省又は長野郵政局との間の前記の如き経緯事態並びに本件行為の際の状況等諸般の事情を勘案するも、被告人等の本件行為が刑法第三十六条所定の正当防衛又は同第三十七条の緊急避難等には無論のこと、理論的に認められている自救行為にもあたるものとは認め難く、又被告人等に本件以外の穏当・妥当な行為を期待することは不可能であつたものとは認められないので、被告人等の本件行為に期待可能性がなかつたものともなし得ない。

以上の次第であるから被告人等の本件行為については、いかなる点よりするもその犯罪の成立を妨げる事由を認めることはできないし、その罪責の否定さるべき事由も又これを認めることができないのである。

(法令の適用)

被告人宮下弘治の前示第一の一・第一の二・第二の一・被告人永野精啓の前示第一の二・第一の四、被告人大工原正彦の前示第一の二・第一の四、被告人岩崎泰一の前示第一の三・第一の四・第二の一の各所為はいずれも暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項・刑法第二百八条・第六十条・罰金等臨時措置法第二条第一項・第三条第一項第二号に、被告人鶴田武治の第二の一・第二の三の所為は暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項・刑法第二百八条・第六十条・罰金等臨時措置法第二条第一項・第三条第一項第二号に、第二の二・第二の四の所為は刑法第二百四条・罰金等臨時措置法第二条第三条第一項第一号に、それぞれ該当するものであるが、

被告人等の情状を検討するに、

一、被告人等の本件犯行は前記の如く、郵政省又は長野郵政局が全逓又は信越地本との団体交渉を拒否したため、全逓並びに信越地本が団体交渉の再開等を目的として、集団交渉を求めてなした行動の際に犯されたものであるが、郵政省又は長野郵政局の団体交渉拒否の根拠・態度には、合理性を発見することが困難であるから、一方的に被告人等のみを非難し得ないこと、

二、本件発生直後の昭和三十四年十二月、公共企業体等労働委員会々長の斡旋(いわゆる藤林斡旋案)により、全逓側は依然被解雇役員をかかえ、一方公労法第四条第三項が存在しているのにもかかわらず一定の条件下に、郵政当局との間に団体交渉が再開され、本件当時の如き事態がある程度解消したこと、

三、更にILO八七号条約の批准をILOより強く要請され、国内的にもこれの批准を早急になすべき旨の世論が次第にたかまりつつあるため、近い将来その批准が予想され、それに伴う国内法の整備にあたつて、本件等団体交渉拒否の根拠となつた公労法第四条第三項は改廃されるべきことが予想されること、

四、又被告人宮下弘治の当公判廷における供述、並びに第八回乃至第十回公判調書中証人青山幸夫の供述記載部分によつてうかがえる如く、本件当日の朝、職場大会の前に、青山管理課長と信越地本書記長の被告人宮下弘治との間に、互に事実上の責任者としての立場から重大な結果の発生を防止するため、本件集団交渉要求行動の処理についての相談がなされ、少くとも当初は管理者側のピケと組合員側との間にある程度の紛争が起きることを予想し、長野県労働組合評議会役員の仲介により収拾する旨、(但し、青山管理課長は、本件暴行等の如き社会通念上許容されない様な有形力の行使を予想しておらず、その収拾も組合員側の退去を考えていたものの如くであり、他方被告人宮下弘治の方はこれと異なり、その収拾についても並木局長との面会を考えていたものの如くであるが、)の合意に達していたものであるから、本件の如き事態にはいたらぬものとはいえ、ある程度の有形力の行使を含む紛争が少くとも当初の段階では生ずることが、ピケを張つていた管理者側(特に青山管理課長)においても予想しえたであろうこと、

五、しかも被告人等はいずれも何らの前科なく、その過去に市民として非難されるべき点がさらに認められないこと

等の諸般の事情が認められるので、いずれも所定刑中罰金刑を選択し、被告人宮下弘治の前示第一、第一の二、第二の一の各暴力行為等処罰に関する法律違反の罪、被告人永野精啓の前示第一の二・第一の四の各暴力行為等処罰に関する法律違反の罪、被告人大工原正彦の第一の二・第一の四の各暴力行為等処罰に関する法律違反の罪、被告人岩崎泰一の前示第一の三・第一の四・第二の一の各暴力行為等処罰に関する法律違反の罪、被告人鶴田武治の第二の一・第二の三の各暴力行為等処罰に関する法律違反の罪、第二の二・第二の四の各傷害の罪は、それぞれ刑法第四十五条前段の併合罪の関係にあるので、同法第四十八条第二項により各罪に付定めた罰金の合算額の範囲内で処断することとし、被告人宮下弘治を罰金五万円に、同鶴田武治を罰金三万円に、同永野精啓、同大工原正彦、同岩崎泰一を各罰金一万円にそれぞれ処し、刑法第十八条に従い被告人等が右罰金を完納しないときは、金四百円を一日に換算した期間当該被告人を労役場に留置するものとし、訴訟費用の負担については、刑事訴訟法第百八十一条第一項本文に従い証人並木平治、同青山幸夫、同伝田保治、同蓑昭、同小沼輝雄、同大出俊、同市川秀雄、同齊藤鹿人、同清水勇、同清水哲に各給した分は被告人等五名の各平等負担とし、証人六鹿薫に給した分は被告人宮下弘治、同大工原正彦、同永野精啓、同鶴田武治の各平等負担とし、証人市川嘉雄、同永坂要に各給した分は被告人岩崎泰一、同永野精啓、同大工原正彦、同鶴田武治の各平等負担とし、証人金井武彦に給した分は被告人宮下弘治、同大工原正彦、同永野精啓の各平等負担とし、証人竹村政次、同轟万蔵、同黒田利幸に各平等負担とし、証人武井春雄に給した分は被告人岩崎泰一の負担とし、証人善積一、同高村甚造、同北原英夫、同飯尾俊彦、同矢野口寛に各給した分は被告人鶴田武治の負担とし、証人河内正光に給した分は被告人大工原正彦の負担とする。

よつて主文の通り判決する。

(裁判官 長谷川武 篠原昭雄 内園盛久)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例