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釧路地方裁判所 昭和46年(わ)101号 判決 1971年11月08日

被告人 高田浅雄

昭三・九・一七生 漁業

主文

被告人を罰金一〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは金一、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

司法警察員が被告人から昭和四二年一〇月一一日領置したさけ二一三尾の換価代金二三万七、〇四六円、同年一一月三日領置したさけ二九尾の換価代金二万四、七一二円を没収する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

(罪となるべき事実)

被告人は、動力漁船第一一ゆき丸(総トン数六・九一トン)を所有し、同船に船長として乗組み漁業を営んでいる者であるが、北海道知事の許可を受けないで、

一、同船乗組員伊賀野善一外二名と共謀のうえ、昭和四二年一〇月六日午後六時ころから同月一〇日午後九時三〇分ころまでの間、前後五回にわたり、国後島ハツチヤウス鼻西方二・五ないし四海里付近の海上において、同船により、さけ流し網五〇反を使用し、さけ二一三尾を採捕し、

二、同船乗組員三上俊明、同大槻光信、同三輪勇治と共謀のうえ、同年一一月二日午後六時四〇分ころから同日午後九時二〇ころまでの間、根室港北防波堤燈台より三〇〇度六・四海里付近の海上において、同船により、さけ流し網五〇反を使用し、さけ二九尾を採捕し、

もって小型さけます流し網漁業を営んだものである。

(証拠の標目)(略)

(法令の適用)

被告人の判示所為は、包括して刑法六〇条、漁業法六六条一項、一三八条六号に該当するので所定刑中罰金刑を選択し、その所定金額の範囲内で被告人を罰金一〇万円に処し、右の罰金を完納できないときは刑法一八条により金一、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、漁業法一四〇条本文を適用して司法警察員が被告人から昭和四二年一〇月一一日領置したさけ二一三尾の換価代金二三万七、〇四六円および同年一一月三日領置したさけ二九尾の換価代金二万四、七一二円を没収し、訴訟費用(差戻前第一審において生じた)の負担については刑事訴訟法一八一条一項本文を適用して全部これを被告人に負担させることとする。

(弁護人らの主張に対する判断)

弁護人らは、判示一の操業地点は国後島ハツチヤウス鼻西方約二・五海里の地点であるところ、同島は現にソヴィエト社会主義共和国連邦の領有下にあり同島の沿岸線から三海里以内の海面はその領海にあたり我国の統治権が及ばず、また外国の領海において日本国民がした漁業法六六条一項違反の行為につきこれを罰する旨の規定がないのであるから、右の操業地点は同法六六条一項、一三八条六号に規定されている無許可操業禁止の場所的適用範囲に当らない。よって、被告人は判示一の操業行為については無罪であると主張する。

しかし、判示一の操業地点は判示認定のとおり国後島ハツチヤウス鼻西方二・五ないし四海里の海域(以下本件操業海域という)であるところ、本件を当裁判所に差戻した最高裁判所昭和四四年(あ)第二七五九号昭和四六年四月二二日言渡の判決に示された判断によれば本件操業海域中同島の沿岸線から三海里以内の海域において、日本国民が漁業法六六条一項に掲げる漁業を営むことは禁止され、これに違反した者は同法一三八条六号による処罰を免れないと解すべきものとされ、右の判断に拘束される当裁判所は右の同一の見解をとるべく、また本件操業海域中右三海里以遠の海域が右各条項の場所的適用範囲に当ると解するのが相当であるから、被告人が本件操業海域においてした判示一の操業行為は同条六六条一項に違反し、同法一三八条六号による処罰を免れない。

以上の次第であるから弁護人らの右主張は採用できない。

よって主文のとおり判決する。

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