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秋田家庭裁判所 昭和47年(家)154号 審判 1972年4月14日

申立人 甲野花子

事件本人 乙川秋子

主文

事件本人の親権者を本籍秋田県○○市○○○○○町××番地亡乙川太郎から、申立人甲野花子に変更する。

理由

申立人は、主文同旨の審判を求め、申立の実情として、「申立人は昭和四一年四月一五日乙川太郎と協議離婚し、事件本人の親権者を乙川太郎と定めたが、同人は昭和四六年一〇月五日死亡し、親権を行う者がなくなった。現在、事件本人は申立人において監護養育しており、申立人は事件本人を申立人の再婚した夫である甲野一の養子とする養子縁組をもする予定である。よって、本件申立に及んだ。」というにある。

当裁判所の調査の結果によれば、申立人は乙川太郎と昭和三三年一〇月結婚し、昭和三四年六月九日婚姻届をなし、同年七月一五日事件本人が出生したが、昭和四一年四月一五日協議離婚し、その際、事件本人の親権者を乙川太郎と定め、同人において事件本人を養育監護してきたが、昭和四六年一〇月五日乙川太郎が死亡したため、同月三〇日申立人において夫甲野一(昭和四一年一〇月三〇日に結婚し、昭和四二年一月一〇日届出)と共に事件本人を引き取り、爾来監護養育し、甲野一は事件本人を養子として申立人と共に積極的に監護養育する意思のあることが認められる。

ところで、離婚により未成年者の単独親権者となった者が死亡した場合は後見が開始し、もはや、親権者変更の余地はないとする見解もあるが、生存している父、又は母が未成年者の監護養育に適していない場合は格別、生存している父又は母が未成年者を現実に監護養育している場合には、その親は後見人としてではなく親権者として子の監護養育に当りたいと願うのが国民感情であり、離婚の場合両親のうちの一方の単独親権とするのは共同親権の行使が不可能であるからやむを得ず一方の親の親権を喪失せしめるのであって、親権者たる親が死亡した場合には、他方の親の親権の復活を認めるのが相当である。殊に、本件の如くいわゆる継父母との養子縁組がなされる場合、いわゆる後見開始説によると、親権者となっていない親は一旦後見人となり、再婚した配偶者が養親となった際に民法八一八条三項によって共同親権者となる結果親権者となることになるが、このような論理過程をとるのは奇異である。これに対し、親権復活説によれば、先ず生存している親に親権が復活し配偶者が養親となれば養親も親権者となって親権を共同で行使することとなり、親権復活説の方が直截簡明である。

いわゆる親権復活説の立場をとり、前記事実に鑑みると、申立人を親権者とするのが事件本人の福祉に適うものと認められるから、本件申立を相当と認め、民法八一九条六項により主文のとおり審判する。

(家事審判官 篠田省二)

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