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福岡高等裁判所宮崎支部 昭和44年(う)126号 判決 1972年2月29日

主文

本件各控訴を棄却する。

理由

本件控訴の趣意は、福岡高等検察庁宮崎支部検察官検事柴田和徹提出にかかる宮崎地方検察庁検察官検事増田光雄作成の控訴趣意書に記載のとおりであり、これに対する答弁は、弁護人谷川宮太郎、同吉田孝美作成の答弁書および補充答弁書ならびに被告人森永達夫、同山亀健蔵、同森永靖夫作成の答弁書に記載のとおりであるから、いずれもこれを引用し、これに対する当裁判所の判断は、次のとおりである。

以下においては、

日本国有鉄道を単に国鉄または国鉄当局と、

国鉄動力車労働組合を単に動労または組合と、

国鉄動力車労働組合西部地方評議会を単に西部地評と、

公共企業体等労働関係法を単に公労法と各略称する。

所論は要するに、原判決は団体の威力により列車を遅延させた被告人らの本件行為が威力業務妨害罪の構成要件に該当することを肯定しながら、被告人らの指揮したピケツトは平和的説得を目的としたもので、業務を妨害する目的で行なわれたものではなく、かつ、被告人らの行為は消極的抵抗に過ぎず積極的な暴力の行使と認め得る証拠はない旨判示しているが、しかし、右ピケツトはそれ自体威力を帯びた不法な実力行使である。すなわち、ピケツトの態勢、乗務員らに対する態度、服装は勿論、ピケツトの時期、場所、方法などあらゆる客観的状況からみて乗務員の乗車阻止ないし列車遅延をねらつて行なわれたものであり、また鉄道公安職員の実力による排除に際し激しく押し返すなど暴力を行使しているのであつて、原判決には証拠の取捨選択を誤つた事実誤認があり、ひいては法令の解釈適用の誤りを招いており、これらの誤りはいずれも判決に影響をおよぼすことが明らかであり到底破棄を免れ難い、というのである。

よつて審究するに、原判決は、論旨指摘のように、被告人らの本件行為が威力業務妨害罪の構成要件に該当するとしながらも、いまだ労働組合法一条二項但書にいわゆる暴力の行使には当らず正当な争議行為であるので、違法性を阻却されるとして、被告人ら三名に対しいずれも無罪を言い渡したことが明らかである。

第一、客観的事実の経過について

ところで、原判決の認定した事実中「本件斗争に至るまでの経過」および「本件斗争の経過」として摘示するところは、当事者の争わないところであり、かつ記録および証拠ならびに当裁判所のなした事実取調の結果によつて、前者についてはそのままの事実を、後者については次に掲げる若干の訂正箇所があるほかは、誤りのない事実として肯認し得る。

右訂正の箇所は、「本件斗争の経過」中四一行目から四二行目にかけて「右両名は右深田室長が平坂旅館に派遣した公安職員一〇名の護衛下に」とある部分であつて、これを「右深田室長の命を受けた鉄道公安官五名が南延岡駅前の平坂旅館に赴き同所に宿泊待機していた代替乗務員のうち竹内利雄および後藤正司の両名を護衛して同旅館を出発し、途中南延岡駅公安室からはさらに鉄道公安官五名が加わり、一旦駐在運輸長室(南延岡駅二階)に立ち寄り、同所からは三名の鉄道公安官が加わつて一三名の鉄道公安官が右両名の代替乗務員を護衛しながら南延岡機関区に向い出発し、途中さらに五名の鉄道公安官が護衛に加わつて、合計一八名の鉄道公安官が右代替乗務員を中央に包囲するようにして、」と訂正する。

右事実のほかさらに、記録および証拠ならびに当裁判所のなした事実調査の結果に基づき、次の(一)および(二)の各事実を付加認定する。

(一)  他方国鉄側にあつては、動労の予定した三月一七日の時限ストは、同日午前六時から同八時までの二時間であるほか、西部地評の戦術委員会が定めた動員予定数は約四七〇名、重点地区は南延岡機関区などの情報入手に基づき同月一三日および一四日大分鉄道管理局や南延岡等において対策を協議し、その結果、南延岡に対策本部を置き、争議中に要する代替乗務員の数を二四名とし、警備に要する鉄道公安職員の数を約一二〇名程度とするなどの大綱を定め、同月一五日同管理局後藤運輸部長を斗争対策本部長に指名し、その本部を南延岡駅二階に設置し、同月一六日夕刻までに前記竹内利雄および後藤正司の両名を含む代替乗務要員二〇名を同駅前の平坂旅館に集合させ宿泊させてその確保に努めるとともに、同日大分公安室長深田茂幸以下鉄道公安官一二二名を南延岡に集結させて警備に当らせた。しかしてまた国鉄側としては国鉄の労働者の行なう労働争議はすべて公労法一七条に違反する違法なものであるので、代替乗務員に対する組合員の説得行為は一切させない、代替乗務員の乗車については、たとい組合員の抵抗があつても、公安職員による実力行使によつてでも乗車させるなどの基本的方針を明確にして事件当日を迎えたのである。

(二)  事件当日の午前六時二五分頃、前記のように一八名の鉄道公安官が竹内利雄、後藤正司の両名を護衛して南延岡機関区事務室西側付近に到達した頃、これを見た被告人山亀健蔵同森永靖夫らが鉄道公安官に対し代替乗務員との面接、対話を求めたところ、鉄道公安官はこれに対し何等の返答も与えなかつた。またさらに、鉄道公安官による第一回の実力行使の後も、被告人山亀健蔵らは弁護士吉田孝美らの抗議と前後して前記深田公安室長に対し代替乗務員との面接、対話を求めたが同公安室長はこれに対し何等の回答も与えなかつた。他方これと相前後して、本件ストライキの責任者であつた動労中央執行委員で本件ストライキの中央斗争委員でもあつた木村忠一と西部地方評議会議長福本増太郎の両名が、二度にわたつて南延岡機関区長室に、同区長中野芳明のもとに駈け来り、緊迫した事態収拾のためお互に責任者同志で話し合い度いと申し入れ、同区長は電話で前記後藤斗争対策本部長にその旨を取り次いだが、同人は二回とも右申入には応じられないと、これを拒絶した。

第二、本件事案に対する考察

被告人ら約二〇〇名の組合員がC五五二九機関車の東側にピケツトを張り、スクラムを組んで団結による威力を示し、かつ鉄道公安職員の右ピケツト排除のための実力行使に対して押し返すなどの態度をとり、これと、国鉄側が代替乗務員の配置に内部的に要した時間約一〇数分とにより結局九一二列車の南延岡駅発車を正規の発車時刻より約四三分遅延させた(右ピケツトにより遅延した実質的時間は約三〇分)行為は、刑法二三四条の威力業務妨害罪の構成要件に該当することは、当裁判所もまたこれを肯定し得るところである。しかして、公共企業体等の労働組合ないし労働者の行なう争議行為についても、それが労働組合法一条一項に定める目的を達成するためのものであり、かつたんなる不作為が存在するに止まり、同条二項にいわゆる暴力の行使などの不当性を伴なわない場合は、社会的正当性を失わないものとして、違法性を阻却されるものであることは言うまでもない。ところで、右の不当性については、行為の方法、態様、規模ならびに行為の意図ないし目的などから考察されるべきものであることは言うまでもないが、これらはただに組合ないし労働者側の行為の面からばかりでなく、使用者側のとつた対抗手段の方法、規模、態様との関連においてある程度相対的にかつ総合的に観察されるべき必要のあることもまた言うまでもないところであろう。以下このような見地から、前記「本件斗争に至るまでの経過」、「本件斗争の経過」および当裁判所が付加して認定した前記(一)および(二)に掲記の各事実を前提とし、さらに記録および証拠ならびに当裁判所のなした事実取り調べの結果により認定し得る必要な部分的事実をさしはさみながら、前記ストライキの目的を達成するためその補助的手段としてとられた本件ピケツトの正当性の検討を進めることとする。

一、本件ピケツトの直接の目的について

本件ピケツトの意図ないし直接の目的を知るうえに必要なこれに関連する事実として次のごとき事実を掲げることができる。

(い)  ピケツトに参加した組合員の多くがヤツケを着用し、中にはタオルで覆面していた者もあつたこと

(ろ)  C五五二九機関車の東側にある給油室と同機関車との間には組合員約二〇〇名位が集結してピケツトを張り、右機関車の西側にもかなり多数の組合員がピケツトを張つていたこと

(は)  ピケツトを張つていた右組合員らは、時に労働歌を歌うなどして気勢をあげ、また組合員の中には代替乗務員が鉄道公安職員に護衛されて機関区構内に到達した頃これに対し「裏切者」などとののしつていた者があつたこと

(に)  右ピケツトを張つていた組合員らは、鉄道公安職員の激しい排除行為に対し、引き抜かれまいとして互に固くスクラムを組んで対抗し、引き抜かれた者はさらにう回してピケツトの後尾につき、あるいはまた右排除行為の行なわれていたさなかには、身体ごと鉄道公安職員を押し返す態度をとつていたこと

(ほ)  C五五二九機関車が午前七時三六分頃南延岡機関区を出区した後の事実として、あまり明確な証言からではないが、被告人山亀健蔵がストライキの応援に来て待機していた約一〇〇名位の支援団体に対し、他の五三二らしい列車の発機を阻止している旨を述べた事実が窺えること

これらの事実はいずれも検察官の指摘するところであるが、しかしこれらの事実から直ちに組合側にピケツトを張つた当初からその目的が乗務員の乗車阻止ないし列車遅延を企図した業務阻害にあつたと推断することはできない。けだし、(い)の事実については、組合員らは事件当日は午前四時過頃には既に多数南延岡機関区構内の広場に集合していたのであつて、季節的にまた時間的に言つて未だ相当の寒気を感じさせる時期であり、防寒と活動のし易さを心掛けたからといつて、平常の服装のままの組合員も他に多数いたことではあり、このことが直ちに業務阻害の目的に繋るものではない。(ろ)の事実については、国鉄当局は、終始組合の行なう労働争議はすべて公労法に違反する違法なものとの根本的考えから、組合員に対し代替乗務員への説得の機会は全く許さない方針で臨み、一八名の公安職員が代替乗務員二名を包囲した体形で護衛しており、かつ、右一八名の公安職員を含む指揮官以下一二二名の一般公安職員および公安機動隊員が警戒と警備に従事したのであつて、しかもかような客観的状況からみても組合側が代替乗務員竹内利雄および同後藤正司の両名を説得のため話しかける機会を得ることはほとんど不可能に近い状態にあつたことが肯定されるのであつて、これら国鉄側の用いた当初からの方針どおりの争議対抗手段と対比してみると、組合側のピケツトの勢威は到底当局側を制禦するに足りるものではなく、かような双方の勢力の差から考えて、ピケツトに従事した組合員の人員数から、ピケツトの直接企図するところが業務の阻害にあつたと推測することは困難である。(は)の事実については、組合員が労働歌などを高唱したことは、外部(国鉄当局)に対する示威を含むことも勿論であるが、むしろ主たる意図ないし目的は内に向い組合員相互の団結心を高め脱落者の出現を防止して団結を強固にしようと図つたものであることが窺えるところであり、また若干の組合員が代替乗務員に対し「裏切者」などとののしりの言葉を浴せたことや、その他にもやゆした言葉を認め得るところではあるが、これらは、その場のふんいきにのまれ感情に激した若干の組合員の発したものであつて、これをもつて、ピケツトに従事した組合員の大多数が業務阻害の意図をいだいていた事実の推測の資とすることは合理性に乏しいものである。(に)の事実については、一般公安職員や公安機動隊員がピケツトを張つている組合員を実力をもつて排除したことの背後には、前記のような国鉄当局が当初から組合の行なう一切の争議行為は公労法に違反する違法なものであるとの法解釈に立ち、これを出発点として組合側に代替乗務員への説得の機会を与えない、代替乗務員は公安職員の実力行使によつてでも乗車させるとの方針どおりに事を運んだ事情が窺えるのであつて、国鉄当局のとつたかような法解釈が今日においては勿論、事件当時においてもその全てを妥当なものとして支持することは、も早や困難であることは、さきに説示したところに照らし多くを言うまでもないところである。組合側から代替乗務員との話し合いの機会を、くり返えし強く要求したのに対し、国鉄側からは何等の応答も与えないまま、しかも、代替乗務員竹内、後藤の両名について、組合との話し合いの機会をもつ意思を有しているか否かを確かめもしないまま前記のように実力行使をしたことは、結局において有形力の行使により組合側に代替乗務員に対する説得の機会を失わしめたのであつて、いささか穏当を欠ぐ措置とのそしりを免れ難いところであろう。かような国鉄側の措置に対抗して代替乗務員竹内利雄、後藤正司の両名がC五五二九機関車に乗車するまで、説得の機会を求め続けてピケツトを続けた組合の態度や、一般公安職員および公安機動隊員による排除行為に対し、この排除からピケツトを守ろうとする防衛の意図が窺われる身体ごと押しかえした組合員の態度から、代替乗務員の乗車阻止および列車の遅延を企図した事実を推測しようとするのは、いささか無理な推理を行なおうとするものに他ならないであろう。さらに(ほ)の事実については、被告人山亀健蔵が呼びかけていたのはストライキの応援にかけつけた支援団体に対してであつて、直接的にも間接的にもピケツトを張つている組合員に対して行なつたものではなく、時間的にもC五五二九機関車が出区点検を終り出区した後のことであり、組合側に代替乗務員の乗車阻止や列車遅延の意図があつたのであれば、竹内利雄、後藤正司の両名がC五五二九機関車に乗車した後においても、竹内利雄の行なつた出区前の機関車の出区点検や右機関車の出区を妨害しようと思えば、優にこれをなし得た状況にありながら、敢てこれを行なわなかつた事実や、繰り返し代替乗務員との説得のための面接を要求していた事実とは、到底相容れない事実であるばかりでなく、さらには、列車の発機を阻止しているとの発言は、被告人山亀健蔵が支援団体に対し待機を続けるよう要請していた際の発言の一部であつた事情とも比照すると、多分にいわゆるゼスチユア的な趣旨が強く窺われるのであつて、右の発言から直ちに本件ピケツトの目的が代替乗務員の乗車阻止や列車遅延を図るにあつたと推測するのは、正しく事の本質を見窮めた判断とはいい得ないであろう。

以上検討のあとをとおして、さらに前記(い)ないし(ほ)の各情況事実を総合しても、本件ピケツトの直接の目的が、代替乗務員のC五五二九機関車への乗車阻止や右機関車の出区阻止ないしは右機関車が後付けとなつて延岡に向うべき九一二列車の発車遅延を図るにあつたものとは首肯し難く、代替乗務員の説得を目的とした趣旨の原審の判断を否定する論拠とはなし得ない。

二、暴力の行使の有無について

前段(ろ)、(は)、(に)に掲記のように、C五五二九機関車の両側に多数の組合員がピケツトを張り、労働歌を高唱するなどして気勢を挙げ、鉄道公安職員によるピケツトの排除の実力行使に対してスクラムを固く組んで抵抗したり、身体ごと押し返したりした行為が、労働組合法一条二項但書にいわゆる暴力の行使に該当するか否かを考えることとする。ところで本件ピケツトは国鉄の管理支配する南延岡機関区構内の出区四番線上に停車していたC五五二九機関車の両側に張られたものであるが、右機関区構内への出入は何れの方向からでも容易にできる状況にあつたので、代替乗務員が乗車するため何れの方向から構内に入つて来るかを予測することは組合側にとつて必ずしも容易なことではなかつたので、組合側は当初のうちは右構内の要所要所に分けてピケツトを張ろうとしたが、右機関区事務室付近には既に約一〇〇名に上る一般公安職員および公安機動隊員が隊列を組んで警備についていたので、右警備状況に対応してピケツトの位置を変え、C五五二九機関車の周辺に組合員を集結させ、代替乗務員の説得を目的としながらも右機関車の東側にピケツトの重点を置き、同所に約二〇〇名の組合員が層を厚くしてピケツトを張つたが、そのことによつて本件ストライキの対象となつた業務以外の業務の遂行の妨害となつた事実は認められないので、右ピケツトそのものを不当視することは相当でない。右ピケツトに従事した組合員らが労働歌を高唱したりして気勢を挙げたことは国鉄当局に対する示威は勿論含まれてはいるが、その主たるねらいは組合員相互の共同意識を高めて団結を強固にし、脱落者の出現を防止するにあつたことはさきに説示したとおりで、右示威をもつて、国鉄当局を不当に威圧した行為と断ずることはできない。また一般公安職員や公安機動隊員によるピケツトの排除行為に対しスクラムを組んで引き抜かれまいとしたり、公安職員らを組合員が身体ごと押し返すなどの行為、態度に出たことについては、時間的にこれを見れば、竹内利雄および後藤正司の両代替乗務員がC五五二九機関車に乗車する前のできごとであつて、組合側に代替乗務員への説得の機会をつかもうとする意図のあつたことや、いささか穏当を欠いだ国鉄側の実力行使からピケツトを守ろうとする防衛的意図のあつたことが窺われることは既に説示したところであるが、右は一半の事情を明らかにしたに止まるので、さらに仔細に観察した跡を加えながら検討を進めると、国鉄当局はさきに説示したように組合の行なう本件ストライキは公労法に違反する違法なものであり、ストライキの補助的手段たる本件ピケツトも一切違法なものであるとの基本的見解に立ち、組合側に対し代替乗務員への説得の機会は一切与えない、組合のピケツトに対しては公安職員による実力の行使によつてでも、代替乗務員を乗車させるとの当初からの強い基本的方針どおりに事を運び、組合側からの代替乗務員との面接の熱心な要求に対し、国鉄側は何等の回答すらも与えなかつたのであり、国鉄側が若しこの要求に応えて、竹内利雄、後藤正司の両名に組合側との面接に応ずる意思を有していたか否かを確めるなり、または、適当とする場所、時間、方法等を指定して右両名との説得のための面接を許容するなどの方策を選んでいたならば(勿論国鉄側にかかる措置をとるべき積極的義務があるというのではない)、鉄道公安職員によるピケツト排除の実力行使や、これによつて生じた混乱は回避し得たはずであるとのかなり高度の蓋然性が認められるところである。しかるにかような情勢にありながら、国鉄側が九一二列車の遅延による列車運行秩序の乱れを防止しようとすることに急なあまり、もつともこのことは極めて重要なことであるに違いはないが、しかし容易に採り得たはずの混乱回避の方策をあえて選ばず、鉄道公安職員による実力行使におよんだことは、前記のような法解釈理論が当時にあつては社会的に是認せられていた特殊な事情を考慮に入れても、なおいささか安易に流れて当を失した嫌がある。

以上のように、国鉄側および組合側双方のとつた態度、方法などを対比し、さらにこれらを総合したものの上から考察すれば、組合側のとつた前記(ろ)、(は)、(に)の行動は、積極的な手段、方法を用いて国鉄の列車運行業務の遂行を阻害しようとしたものではなく、いまだ消極的な不作為の域を出でたものとは言い難いので、労働組合法一条二項但書にいわゆる暴力の行使に該当しないものと断ずるのが相当である。

論旨援用の判例は、その多くは本件と前提を異にし、最高裁判所昭和四一年一〇月二六日大法廷判決以前のものは、右大法廷判決の趣旨と相隔たること程遠いものもあり、本件に適切ではない。さらにその他の論旨にあらわれたところは、いずれも前記認定を左右し得るものではない。

結論

以上説示するところにより既に明らかなように、原判決には論旨指摘のような事実誤認や法令の解釈適用の誤りはないものといわねばならない。(もつとも原判決には、前記訂正を施した部分のような事実誤認の個所があるが、これは判決に影響をおよぼすべき重要なものではない。)論旨は採用することはできない。

よつて本件控訴は理由がないので、刑事訴訟法三九六条により棄却すべきものとし、主文のように判決する。

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