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福岡高等裁判所宮崎支部 昭和30年(ネ)139号 判決 1956年3月19日

控訴人(原告) 小川季春 外四名

被控訴人(被告) 鹿児島県知事

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人等の負担とする。

事実

控訴代理人は、原判決を取消す。被控訴人が控訴人等の代表者小川季春に対し昭和二十九年十一月一日付指令二九第二九四号の五で免許した定置第五十六号漁業権の存続期間につき、「昭和二十九年十一月一日から昭和三十一年八月三十一日まで、」とあるを「昭和二十九年十月一日から昭和三十四年十月三十一日まで、」と変更する。訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする。との判決を求め、被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述並びに証拠の提出援用、これに対する認否は原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。

理由

先ず、控訴人等の本件訴の適否について考えると、三権分立の原則を採る我が憲法のもとにあつては、裁判所は、法の具体的適用を保障することを本来の任務として、行政権に対する一般的監督権又は行政機関に代る行政権の行使は、その権限の外にあり、法律に特別の定めある場合を除き、これをなし得べきではない。従つて、行政事件訴訟特例法第一条に「行政庁の違法な処分の取消又は変更」というのは、「行政庁の違法な処分の取消又は一部取消の性質を有する変更」を意味するものと解すべく、右規定に基き、裁判所が、積極的に行政庁に対し処分を命じ、行政庁に代つて処分をなし、或はこれと同様の効果を生ずる判決をなすことは許されないものといわねばならない。ところで、控訴人等の本訴請求は、行政庁の定めた定置漁業権の存続期間の延長変更を求めるものであるから、裁判所に対しこの点に関する新たな行政処分を求めるもので、しかも、かような権限を裁判所に付与した特別な規定はないから、裁判所は請求の如き判決をなす権限を有しないものというの外はない。

右と同一の理由により本件訴を不適法として却下した原判決は相当で、本件控訴は理由がないから、これを棄却するものとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第九十五条第八十九条第九十三条第一項本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 山下辰夫 二見虎雄 長友文士)

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