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福岡高等裁判所 昭和63年(行コ)1号 判決 1988年12月14日

控訴人 福岡税務署長

代理人 金子順一 未廣成文 ほか三名

被控訴人 松下サダ ほか一名

主文

原判決を取消す。

被控訴人らの請求を棄却する。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

事実

第一当事者の申立

控訴人は、主文同旨の、被控訴人らは、「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との、各判決を求めた。

第二当事者双方の事実上の主張

一  請求原因

1  控訴人は、別紙経過一覧表記載のとおり、確定申告に係る訴外野村アイ(以下「アイ」という。)の昭和五八年度所得税について、更正及び再更正(以下「本件再更正」という。)をした。

2  アイは、昭和五八年七月二四日に死亡し、被控訴人らは、いずれもその相続人である。

3  よつて、被控訴人らは控訴人に対して、本件再更正の取消しを求める。

二  請求原因に対する認否

すべて認める。

三  控訴人の主張

1  事実上の主張

アイは、赤木富廣との間で、昭和五八年六月一四日、福岡市南区大字塩原字井立九四〇番一宅地一八〇・一六平方メートル(以下「本件土地」という。)を代金二八七五万円で同人に売却する契約を締結した。なお、本件土地の取得費(必要経費)の額は、金一四三万七五〇〇円である。

2  法律上の主張

本件の争点は、右譲渡に係るアイの分離長期譲渡所得(租税特別措置法―以下「措置法」という。―三一条)につき、右譲渡が措置法三五条一項の居住用財産の譲渡所得の特別控除の要件を具備するか否かの点にある。そこで、控訴人は、以下同条の立法趣旨、解釈、運用等を明らかにして、本件譲渡につきこれを否定すべき理由を以下のとおり主張する。

(一) 措置法三五条の立法趣旨

措置法三五条は、個人がその居住の用に供している家屋又はその敷地の用に供している土地(土地の上に存する権利を含む。以下「土地等」という。)を譲渡した場合には、居住用財産の処分が一般の資産の譲渡に比べて特殊な事情にあり、担税力が弱いこと等を考慮して、その家屋又は土地等の譲渡所得について同法三一条三項及び三二条一項一号の規定にかかわらず、三〇〇〇万円の特別控除を認めることを定めたものである。この三〇〇〇万円の特別控除の対象となる譲渡資産は、「居住の用に供している家屋」と「居住の用に供している家屋の敷地」であり、対象とされる譲渡は、居住用家屋の譲渡とその家屋とともにするその敷地の用に供されている土地の譲渡(その土地の上の権利の譲渡を含む。以下同じ)の場合、さらに、災害で滅失した居住用家屋の敷地である土地の譲渡又は居住の用に供さなくなつた家屋、その家屋とともにするその敷地である土地の譲渡で、これらの家屋を個人の居住に供さなくなつた日から三年を経過する日の属する年の一二月三一日までの間にした譲渡について、課税の特例の適用を認めることとしている。課税の特例の適用を受けられる範囲が家屋を居住の用に供さなくなつた日から三年余の期間内の譲渡に制限されていることは注目すべきである。

右規定から明らかなように、同規定は居住用家屋を中核として構成されており、同家屋の譲渡について課税の特例の適用を認めるのが本来の法の趣旨であり、土地についてはその居住用の家屋とともにする譲渡について特例が適用され、それ以外の土地のみの譲渡でこの特例が適用されるのは、災害で滅失した居住用家屋の敷地に供されている土地の譲渡に限られる。

したがつて、それ以外の土地のみの譲渡は、たとえその土地が居住の用に供されていた土地であつても、この課税の特例の適用はないということになる。

(二) 措置法三五条の厳格適用上生じる不都合と行政実務の運用による対応

しかし、前項の考え方を厳格に押し進めると、不都合な結果も生じる。例えば、

(1) 家屋とその敷地の用に供されている土地等を一緒に譲渡しようとしたが、買主の方から、家屋は不要なので売主の方で除去したうえ土地等のみを売つて欲しいというような注文がついたため、売主がその家屋を取り壊して土地だけを譲渡したというような場合、その土地の譲渡については、家屋の譲渡を伴わないので、本条の適用を受けられないこととなる。

(2) また、土地区画整理法による住宅街区整備事業の施行地区内に在る従前の宅地について仮換地の指定又は使用収益の停止があつた場合、従前の宅地をその居住の用に供している家屋の敷地の用に供していた者は、従前の宅地の使用収益ができなくなるため、その家屋を除去して従前の宅地から立ち退くことが必要になるが、右家屋を除去した後従前の宅地を譲渡すると、居住の用に供している家屋が存在しないため、右原則からすれば、この譲渡に対しても本条の適用がないこととなる。

そこで、居住の用に供している家屋を本人の意思によらずに、あるいは、強制的な行政処分によつて除去し、これらの家屋の敷地の用に供されていた土地等のみを譲渡した場合には、措置法三五条一項に該当する明文の規定はないが、行政実務の運用をもつて、同項中の「災害」により滅失した当該家屋の敷地の用に供されていた土地等の譲渡に準ずるものとして取り扱うこととしているのである。

(三) 行政実務の運用基準としての措置法三五条関係通達

しかして、右行政実務の運用基準は、次のとおり、租税特別措置法関係通達(以下「措置法通達」という。)の定めるところである。

(1) 前項(1)の場合については、措置法通達三五―一三で別紙通達(一)に記載のとおり、家屋を取り壊した後一年以内にその敷地である土地の譲渡契約を締結し、居住の用に供さなくなつた日以後三年を経過する年の一二月三一日までに譲渡した場合には、当該課税の特例を適用することとしている。これは、居住用家屋とその敷地である土地の譲渡に際し、家屋の取壊しが条件とされる場合があること、さらには、更地として譲渡すことが有利な条件で譲渡できるということから、家屋を取り壊して譲渡する場合があることを考慮して、家屋の取壊しから一年以内の譲渡契約の締結と三年余の期間内の譲渡という二つの要件を満たす場合に限り、措置法三五条に言う居住用家屋とともにするその敷地の土地の譲渡として取り扱うというものである。ところで、この通達において家屋の取壊しから一年以内の売買契約の締結という要件を付したのは、この取扱いが当該土地譲渡のために家屋を取り壊す場合を予定して定められたものであるから、取り壊し後譲渡契約を締結するのに一年間という期間があれば十分可能であり、一方、取壊しと譲渡との間に長い期間をおくことは家屋と土地等の一括譲渡を適用対象と定めている法律の文言からかけ離れることとなるからである。

(2) 前項(2)の場合については、同通達三五―一四で、別紙通達(二)に記載のとおり、その運用基準が定められている。これにつき次項に改めて述べる。

(四) 土地区画整理事業等による家屋収去とその敷地の譲渡にかかる措置法三五条の適用

(1) 居住用家屋等の譲渡を行う動機、原因は諸々のものがあり、周囲の住環境の変化もその一つとして挙げることができる。居住用家屋の敷地が土地区画整理事業等の施行地区に編入されたことも、居住用家屋等の譲渡を行う動機、原因となるであろうが、その動機、原因の強弱は一様ではないのである。

措置法は、土地区画整理事業等が施行されたために、居住用家屋を退去又は除去した後、当該敷地に供していた土地を譲渡した場合の特例の運用について、何らの規定もおいていない。したがつて、この土地の譲渡に居住用家屋の譲渡の課税の特例の適用を認めるためには、これに関する特別の運用基準を設ける必要があり、これがない限り、災害により滅失した家屋の敷地の用に供されている土地の譲渡か、又は、前述した措置法通達三五―一三に該当する場合でなければ、右特例が適用される余地はない。しかして、当該事業が災害に当たらないことはもとより、本件の場合は、措置法通達三五―一三にも該当しないことは明らかである。

(2) 土地区画整理事業等が施行されたために居住用家屋を移転又は除去し、居住用敷地に供していた土地を譲渡した場合の措置法三五条一項の適用について前記のとおり措置法通達三五―一四(2)が定められている。

(イ) 措置法通達三五―一四(2)の要件は、次のとおりである。

<1> 土地区画整理事業等のために居住用家屋の移転又は除去が行われたこと(同通達(2)本文前段)。

<2> 右家屋が居住の用に供されなくなつてから、イ、ロのいずれか遅い日までに敷地であつた従前地の譲渡がされた場合であること((2)本文後段)。

イ 右家屋が居住の用に供されなくなつた日から三年を経過する日の属する年の一二月三一日

ロ 右家屋を居住の用に供さなくなつた日から、一年以内に仮換地の指定があつた場合(仮換地の指定後において当該居住の用に供さなくなつた場合を含む)〔前段の要件〕については、仮換地の使用収益開始日から一年を経過する日〔後段の要件〕

(ロ) 措置法通達三五―一四(2)の趣旨とその合理性

この通達における取扱いは、既に見たところから明らかなように、措置法三五条一項の文言から直接導かれるものではない。しかし、このような通達を定めて運用しているのは、土地区画整理事業等が施行されると、任意に家屋の移転又は除去を行わない限り、最終的には自己の意思に基づかないで強制的に家屋を収去されることが予定されていることが考慮されたものである。

同通達イの要件は、土地区画整理事業等のために居住用家屋から立ち退き、当該家屋が移転又は除去された後の当該家屋の敷地(従前地)の譲渡で、当該家屋が居住の用に供されなくなつた日から三年を経過する日の属する年の一二月三一日までの間に行われた場合には、措置法三五条一項に規定する「居住の用に供さなくなつた家屋とともにする当該敷地の土地の譲渡」、もしくは「災害により滅失した居住用家屋の敷地である土地の譲渡」と同様に取り扱うこととしたものであり、措置法通達三五―一三の「一年内の契約と三年余の期間内の譲渡」という基準がさらに緩和されているのである。つまり、この要件は同条項にいう災害により滅失した家屋の敷地の譲渡の場合と軌を一にしているのである。

同通達イのほかに、同ロが定められた趣旨は、土地区画整理事業等が進行し、仮換地の指定を受けたために従前地の使用収益権を喪失し、居住用家屋を退去又は除去する場合、たとえ家屋の所有者の任意の意思に基づくものであつても、法律の規定に基づく強制退去と評価しうるものであり、仮換地の使用収益が開始されるまでその使用収益の停止が継続し、かつ、長期にわたる実情を考えて、措置法三五条一項の制限期間を超えて特例の適用範囲を拡大しようというものである。一方、このような例外を設けることは、措置法三五条一項が定める「居住の用に供さなくなつてから三年余の期間内の譲渡」という制限期間を超えて課税の特例を認めることとなるが、このような要件の設定は可及的に限定すべきである。そのように考えると、右の例外は、仮換地の指定があつた後に、居住用家屋を退去又は除去する場合に限るのが法の趣旨というべきであるが、さらに、仮換地の指定時前一年以内の居住用家屋の退去又は除去までその適用範囲を広げたものである。

右のように同ロで「当該家屋をその居住の用に供さなくなつた日から一年以内に仮換地の指定があつた場合」としたのは、仮換地の指定により、近い将来、従前の宅地につき使用収益の停止されることが予測される場合には、土地所有者は、従前の宅地の使用収益に代わるべき措置をあらかじめ講じ、自己の意思で従前の宅地の使用収益をやめる場合もあるであろうが、この場合、自己の意思といつても、それは、近い将来において仮換地の指定により従前の宅地の使用収益が強制的に停止されるということを前提としたものであり、土地区画整理事業のために行われたものとしてみることが適当であるいう考え方によるものである。つまり、この一年の基準は、仮換地指定に伴う家屋の強制退去と同視できる事情を「居住の停止から一年以内の仮換地の指定」という形式基準に求めたということができる。

法の趣旨から見てこれが限界であり、その結果、ロのとおり要件が定められたものである。

(ハ) 以上述べたとおり、措置法通達三五―一四(2)は、土地区画整理事業等のために居住用家屋の移転又は除去が行われる場合において、措置法三五条一項に規定する特例の適用を認める範囲を同法の制限期間内の譲渡に限るとするものと、特別の場合には、右制限期間を超えた譲渡についてもその適用を広げるものとの、二つの範ちゆうを区別しているのである。

(五) 本件における措置法三五条一項の不適用について

(1) 本件において、アイは、原告らが主張するように、本件事業の施行者である福岡市との間に、任意で話合いのうえ、昭和五二年一一月四日、本件家屋を移転し又は除去する旨の契約を締結し、同月二三日(当該家屋が居住の用に供さなくなつた日)に本件家屋から立ち退き、同年一二月六日自己の負担によつて本件家屋を除去した。これに対し、本件土地に係る仮換地の指定があつたのは、昭和五五年一月一〇日であり、仮換地の使用収益開始の日は昭和五七年七月二〇日である。そして、アイが本件土地を譲渡したのは、昭和五八年六月一四日であり、本件土地をその敷地の用に供していた「家屋が居住の用に供されなくなつた日」(措置法三五条一項)から五年半近く経た後のことであつた。

(2) そこで、以上の経過を踏まえて、本件土地の譲渡について措置法三五条一項が適用されるか否かをみるに、まず法に明記された要件を充足しないことは明らかである。次に、措置法通達三五―一四(2)の規準に照らすと、本件土地の譲渡の時期は、昭和五八年六月一四日であつて、本件家屋を居住の用に供さなくなつた日である昭和五二年一一月二三日から同日以後三年を経過する日の属する昭和五五年一二月三一日までの間には含まれず、措置法通達三五―一四(2)イの規定に該当しないことも明らかである。

また、本件土地の譲渡は、本件仮換地を使用収益することができることとなつた日である昭和五七年七月二〇日から一年を経過する日である昭和五八年八月二〇日までの間に行なわれているが、措置法通達三五―一四(2)ロの場合、仮換地の指定が当該家屋を居住の用に供さなくなつた日から一年以内(本件では、昭和五三年一一月二二日まで)に行われなければならないところ、本件仮換地の指定は昭和五五年一月一〇日であるから、措置法通達三五―一四(2)ロの規定にも該当しない。

(六) 措置法三五条は限定的解釈をすべきことについて

措置法三五条は、所得税法三三条、措置法三一条及び三二条の規定にかかわらず、特別の要件に該当する場合に税負担を軽減し、特別の利益を与える租税優遇措置に当たるものであるから、本条の適用に当たつては、その要件を厳格に限定して解釈すべきであり、拡張解釈はみだりに許されるべきではない。

措置法三五条一項のうち土地等のみの譲渡に係る規定は、「災害」により当該土地の上の家屋が滅失した場合の当該土地の譲渡に限つて特例の適用を認めることとしており、土地区画整理事業施行地区内の土地等の譲渡は、右例外に該当するものではないが、これに準ずるものとして行政運用によつて同条を適用することとしているものである。元来、法が例外的な特例を認めている場合において、更にこれに準ずる特例を設けるについては、明確な基準を設け、一層厳格に運用することが要求されるのであつて、種々の類似性を許容して無制限な適用を認めるとすれば、本条制定の趣旨を没却することになるのは明らかである。

(七) 被控訴人らの主張に対する反論

(1) 被控訴人らは、右通達ロの前段の「家屋を居住の用に供さなくなつた日から一年以内に仮換地の指定があつた場合」の要件を「土地区画整理事業等のための家屋の収去」か否かの認定基準であるというのであるが、このような主張が誤りであることは、右通達の形式及び文言からみて明らかである。

右通達三五―一四(2)は、「居住の用に供している家屋の移転又は除去(土地区画整理事業等のために行われたものに限る。)」とし、家屋の収去が土地区画整理事業等のために行われた場合に限つて、その家屋の敷地の土地譲渡が同通達イ又はロのいずれか遅い日までになされた場合の課税の特例の適用について規定しているものであり、当該家屋の収去がロの前段の要件に該当するかどうかにより、改めて「土地区画整理事業等のための家屋の収去」か否かを判断するものでないことは、右通達の形式又は文言から明らかである。換言すれば、居住用家屋の収去が当該事業のために行われたものか否かは、それぞれの家屋の収去の事情によつて認定すべきことを通達は当然の前提にしているのであつて、これに該当しない場合には、右通達の適用の範囲外にあるのである。

措置法通達三五―一四(2)は、既に説明したとおり、土地区画整理事業等のために家屋の移転又は除去が行われた場合、課税の特例の適用を受ける土地の譲渡の範囲についてイとロの二つの範ちゆうを定めたことは前記のとおりである(イよりロの方が特例の適用を受ける土地の譲渡の範囲が広いことは当然の前提であり、そうでなければ、ロの通達を定める意味もなくなる。)。ところが、被控訴人らはロの前段の要件を単なる認定基準に過ぎないと解し、特例の適用を受けるための必要要件と認めなかつたために、居住用家屋の移転又は除去が土地区画整理事業等のために行われた場合は、直ちにロによることとなり、イとロの二つの範ちゆうを定めた措置法通達三五―一四(2)の趣旨を全く否定しているのである。

(2) 被控訴人らがそのように解する理由は前記のとおりであるが、その要点は、ロに規定する「右家屋を居住の用に供さなくなつた日から一年以内に仮換地の指定があつた場合」という前段の要件のうち、一年間の制限期間は不合理であるということに尽きるようである。

ところで、既にロの通達の趣旨において述べたとおり、ロにおいては、イに定める「三年余の制限期間内の譲渡」の例外を認めたものであり、もともと、仮換地の指定があつた後に、居住用家屋を退去又は除去する場合を想定していたもので、本来それに限定すべきであつたのを若干適用範囲を広げて、仮換地指定前一年以内の居住用家屋の退去又は除去を含めたのである。被控訴人らは、その適用を広げた「一年間の制限期間」を不合理であるとするが、仮換地指定後の居住用家屋の退去又は除去に対し特別の取扱いをすることについては特段の主張もしていないのである。それゆえ、たとえ「一年間の制限期間」が不合理であるとしても、ロにおいて、特例の適用範囲を広げた仮換地指定前一年以内の居住用家屋の退去又は除去をロの運用基準に含ませるべきではない(ロにおいて適用される範囲は仮換地指定後の居住用家屋の退去又は除去に限られることとなる。)という考えの論拠とはなり得ても、土地区画整理事業等のために居住用家屋の退去又は除去が行われた場合のすべてに適用を認めるべきであるという論拠にはならない。それは、仮換地指定後の居住用家屋の退去又は除去についてイの要件とは別の要件を設けて例外的取扱いをすることは許されないということが論証されてはじめて、被控訴人らの主張はその意味を持つというべきであるが、その点については何らの主張もしていないのである。

そもそも、措置法三五条一項は居住者の意思に基づかない典型的な事例である災害により家屋が滅失した場合においても、その敷地の譲渡について三年余の制限期間がおかれていることは前記のとおりであり、これについて例外を認めるとしてもできるだけ限定すべきであることは既に述べたとおりであり、それが三年余の制限期間を定めた法の趣旨でもある。ロの解釈として前段の要件をはずせば、特例の適用を認める範囲を著しく広げることとなり、その解釈が法の趣旨に反することは明らかである。このように特例の適用を広げることは法解釈の名においても立法行為に踏み込んだものとして許されないものである。

(3) 法律及び通達が課税の特例の適用を受けるべき範囲を期間という形式基準によつて定めている場合に、実質主義の見地から期間を広げることが認められないことは多言を要しないことであり、それは本件についても妥当するのである。

(4) 一般に、居住用家屋等を、いつ、誰と、どのような内容で譲渡するかを決めるにあたり、様々な経済的利害得失も考慮すると思われるが、その考慮の一つとして、その譲渡についてどのような課税がされるかということも含まれることはいうまでもない。

措置法三五条一項の課税の特例の適用を受ける範囲は同条項と措置法通達によつて明確に定められ、その適用を受けるか否かを含めて、居住用家屋等をいつ、どのように譲渡するかは個人の選択にゆだねられている。

被控訴人らは、ロの適用を受けるか否かは全く個人の意思に基づかないというけれども、居住用家屋の退去又は除去を仮換地指定後に行うこととすれば確実にロの要件を満たすことができるのであり、アイが福岡市と右内容の契約を仮換地指定前に行うこともできることはいうまでもないから、土地区画整理事業等に早い段階で協力することも可能なのである。被控訴人らは、控訴人の右主張を同事業の実情を踏まえないものである旨主張するが、アイが本件事業に積極的に協力する意味で早期に本件家屋を除去したものであるとしても、それ自体アイの自由意思に基づくものであり、その五年半後に本件土地を譲渡することもまた同女の自由な意思によるものである。

土地区画整理事業等がこれまで数多く施行され、措置法三五条一項も前記措置法通達も十分機能してきたのであり、措置法通達の不合理性に言及した文献も特に見当たらない。被控訴人らが通達ロの要件を満たしていないのに、ロの運用基準によつて課税の特例の適用を認めることは、他とは特別の取扱いを認めることとなり、課税の平等主義の見地からも許されないのである。措置法通達三五―一三あるいは三五―一四(2)は措置法三五条一項の解釈の限界を示したものであり、このような内容の通達は、租税平等主義の原理から、居住用家屋の所有者に平等に適用されることがもつとも肝要なことであり。特別の取扱いを主張する被控訴人らの主張はこの点からも排斥をまぬかれないというべきである。

(八) 結論

以上のとおりであつて、本件土地の譲渡は措置法三五条一項に規定する居住用財産の譲渡に該当せず、アイの昭和五八年分の分離長期譲渡所得の金額は、前記収入金額から必要経費と措置法三一条三項所定の特別控除額一〇〇万円を控除した残額二六三一万二五〇〇円であり、したがつて、本件再更正は適法である。

四  控訴人の主張に対する認否

1の各事実は認め、2は争う。

五  被控訴人らの主張

1  事実上の主張

(一) アイは、本件土地上に家屋(床面積一〇八・四五平方メートル、以下「本件家屋」という。)を所有し、これに居住していたところ、本件土地は、福岡市の施行に係る福岡都市計画事業塩原地区土地区画整理事業(昭和四三年一一月都市計画決定、昭和四六年三月事業計画決定、昭和四七年八月事業開始、昭和六二年事業完了予定、以下「本件事業」という。)の施行地区に編入された。

(二) 本件土地は、本件事業においてその大部分が道路敷地に予定されていたところ、アイは、近隣の四一六街区で既に仮換地の指定が開始されていた昭和四八年一二月三〇日、仮換地指定について事実上の通知を受け、昭和五二年八月一日には正式の家屋除去の申出を受けた。

(三) アイは、昭和五二年一一月四日、本件事業の施行者である福岡市との間で、本件家屋を同年一二月二五日までに移転又は除却し、これに対し補償金九四三万九九〇〇円の支払を受ける旨の物件移転契約を締結し、同年一一月二三日本件家屋を出て地所へ転居した上、同年一二月六日本件家屋を取り壊した。

(四) 本件土地については、昭和五五年一月一〇日仮換地の指定があり、昭和五七年七月二〇日右仮換地について使用又は収益を開始することができることとなつた。

(五) 被控訴人らは、アイの昭和五八年分の確定申告書に措置法三五条一項の適用を受けようとする旨の記載をした。

2  法律上の主張

(一) 措置法三五条の立法趣旨

措置法三五条の立法趣旨は、居住用財産を譲渡した場合には、これに代わる新たな居住用財産を取得するのが通常であることから、所得税の負担を軽減して、その取得を容易にすることにある。

(二) 措置法三五条一項の法定要件

同条項の法定要件は、次の三要素から成り立つている。すなわち、

(1) 譲渡した居住用財産に現に居住していた場合は、同条が無条件に適用される。

(2) 譲渡した居住用財産に現に居住していなかつた場合は、居住停止と財産譲渡との間に三年余の期間制限が課される。けだし、居住停止は、別の場所での居住を意味し、それが長期化することは、そこへの定住を推認させ、従前の居住用財産の売却金による新たな居住用財産取得の蓋然性を希薄化するからである。右立法趣旨からみて、この期間制限は、新たな居住用財産取得の蓋然性を担保する要件と解される(以下「取得蓋然性担保期間」と呼ぶ)。

(3) 譲渡した財産が土地のみの場合は、取得蓋然性担保期間の外に、家屋が存しなくなつた理由が「災害」によるものであることが要求される。これは、本条が家屋を中心として構成されていることからの帰結である。ただし、法文上は「災害」によるもののみがあげられているが、所有者自ら家屋を除去して土地のみを譲渡した場合においても、家屋の除去が所有者の自由意思による処分でないときは、不動産取引の実情に鑑み、本条の拡張適用が認められている(以下「家屋除去の不任意要件」と呼ぶ。)。

ちなみに、措置法通達三五―一三は、期間制限に関する要件について、「当該土地等の譲渡に関する契約が、その家屋を取り壊した日から一年以内に締結され、かつ、その家屋を居住の用に供さなくなつた日以降三年を経過する日の属する年の一二月三一日までに譲渡したものであること」としているが、措置法の取得蓋然性担保期間の外に、家屋除去と土地譲渡契約日の間が一年以内という要件を加重したのは、家屋除去後一年間という猶予期間があれば、その間に土地等の譲渡契約をすることは十分可能であるとの理由によつている。すなわち、取引の実情と居住用財産所有者の努力を総合考慮して、一年という猶予期間を付与したものである(以下「譲渡実行猶予期間」と呼ぶ)。

(三) 措置法三五条の土地区画事業施行区域内の居住用家屋の譲渡における運用基準

本件のような土地区画整理事業施行地区内の居住用財産の譲渡の場合も、所有者の自由意思によらない家屋の除去と土地のみの譲渡というケースが生じ、その場合の運用基準として、措置法通達三五―一四(2)がある。

(1) 措置法通達三五―一四(2)イについて

同(2)イは、措置法三五条の取得蓋然性担保期間を、機械的に転用したものであるがゆえに、実際上機能しない。すなわち、居住用財産が土地区画整理事業施行地区内に在り、仮換地の指定が予想される場合には、同指定によつて当該土地の使用収益が強制的に停止されるのであるから、このような土地を売却することは、取引の実情からみて、通常不可能である。

また、右事業の完了には長年月を要するのが通常であつて、居住停止から三年目の属する年末までに自由な取引ができるようになる合理的な保障は何ら存しない。したがつて、同事業施行地区内の居住用財産の譲渡について措置法三五条の合理的な適用をしようとすれば、次の通達三五―一四(2)ロの要件の合理性が要求されることになる。

(2) 措置法通達三五―一四(2)ロについて

(ア) 同(2)ロには、取得蓋然性担保期間の要件が存しない。これは、土地区画整理事業の長期化に伴い、譲渡行為が強制的に制約される結果、期間制限による担保が合理性を喪失するからである。つまり、仮換地の使用収益が可能となつてから、実際に譲渡しうる譲渡実行猶予期間を考慮すればよいのであつて、同通達の後段の要件には一定の合理性を認めることができる。

(イ) 問題は、前段の要件に関してである。

<1> 土地区画整理事業の場合、家屋除去から仮換地の使用収益可能日まで、売ることもできないし利用もできないという、いわば財産凍結状態に陥るのであつて、その凍結期間の長期化は本件の租税負担軽減措置の根拠との関係においては意味を持たない。土地区画整理事業期間中の転居先はあくまで仮住いに過ぎないのである。すなわち、長期間、従前地もしくは仮換地を譲渡または利用していないということは、他の場所での定住家屋の確保、すなわち、従前の居住用財産の譲渡資金をもつて新たな居住用財産を購入する必要がなくなつた、という事実を推定させないのである。

<2> そこで新たな居住用財産の取得蓋然性を期間制限で担保しないという意味では法の例外であるが、問題は、それではいかなる要件で租税負担軽減措置の根拠を担保するかということであり、法の想定していなかつた事態に対して、いかなる要件を設定することが租税負担の公平・平等に資するかという点にある。

では、いかなる要件が妥当か。期間制限では担保できないという事態を法は予想していないことから、法の解釈では導きえない。しかし、その様な事態を招来しているのは、土地区画整理事業のための家屋除去であるという事実に尽きる。したがつて、この土地区画整理事業のための家屋除去という要件を押えておけば、従前の居住用財産の譲渡資金による新たな居住用財産の取得の蓋然性という租税負担軽減措置の根拠も担保しうるのである。けだし、家屋除去が土地区画整理事業のためになされた場合、従前地もしくは仮換地の譲渡・利用可能性はその家屋除去から仮換地の使用収益可能日まで事実上凍結される。その期間は、経済的な意味での納税者の支配が及ばない空白期間となるのである。そして、この空白期間の存在と使用収益可能日から一年以内の土地の譲渡という同通達(2)ロ後段の要件と合わせ考えると、実質的・経済的には、家屋除去から一年以内に土地の譲渡をなしたものと同視できることとなる。このことは、土地区画整理事業の強制力を背景として、災害による家屋滅失の場合の法の要件の実質的内容を充足するとともに、通達三五―一三の形式的要件との整合性をも保持しうる結果となつている。

<3> それでは、いかなる要件があれば「土地区画整理事業のため」に家屋を除去したと言えるかについてみるに、控訴人は、「法の趣旨」から、本来的には仮換地指定後の家屋除去に限定されると主張している。

しかし、まず第一に、控訴人の言う「法の趣旨」については、結局のところ法が三年余の期間制限を課しているということに尽きるのであつて、前述した法が期間制限を課している意義及び土地区画整理事業の場合の特殊性を分析していない点で失当である。次に、仮換地の指定後に限定するという根拠は、「災害」という法定要件に準ずる同事業の強制力の契機を同指定に求めているものであるが、同事業の実態を考慮していないものであつて、現実的妥当性を欠く。実際の右事業は、仮換地の事実上の通知を送達したり個別交渉を行なつたりしながら、仮換地の指定という法律上正式な通知を発する前に、かなり具体的な事業内容の実現が図られるのである。このことは、事業主体が、法の肯認する強制力の発動を差し控え、可能な限り円満な話合いの中で事業の実現を図ろうとしていることを意味しているのであつて、むしろ当然であり、且つ、望ましいといえる。この様な実態を尊重する以上、同事業の強制力の契機を仮換地の指定に限定することは現実的妥当性を具備しない。納税者にとつては、事業の強制力は事実上の通知、説明会、個別交渉という形で感受されており、法律上の仮換地指定通知は、いわば話がついたあとの正式文書という意味合いを持つに過ぎないからである。

殊に、本件においては、本件土地の大部分が換地計画上の道路敷地とされていたため、事業主体である福岡市が、事業初期の段階で、アイに対して「お知らせ」という形で事実上の仮換地指定の通知を発し、かつ仮換地指定の約二年半前にも本件家屋の除去を申出ているもので、同女もこれに協力する趣旨で右申出に同意したという実情にあり、本件事業のアイに対する強制力は仮換地指定よりかなり以前に、事実上の発動をみているものである。

<4> 更に、控訴人は、任意契約であれば、その任意性故に仮換地指定後に家屋を除去するという条項を契約に盛込むことが可能なはずであると主張する。

しかしながら、この様な見解は、土地区画整理事業の遂行を著しく阻害する結果を招くものである。仮換地の指定は、事業全体の遂行計画や対象区域の住民の意向等と無関係に行われるものではない。その本質は、限定された区画内における再配置であるから、全体状況や個別的状況をにらみ合わせながら、対象区域の全土地所有者の意向、同一街区全体の各土地所有者の意向、ある人の仮換地指定先を従前地とする土地所有者の意向等を総合考慮しなければならず、特定土地の所有者と合意できたから、とりあえず他の住民の意向とは無関係に仮換地の指定をするというような事業の進行形態はとれないのである。

したがつて、控訴人の主張するように、家屋除去者の租税負担を考慮して仮換地の指定後に家屋除去をなすという契約を締結せざるを得ないとすると、同事業の事業主体は、個別的に事業への協力者を得て家屋除去の合意を取りつけても、当該契約条項の存在により、事業の遂行上多大な困難に直面せざるを得ない。例えば、内示された仮換地先が不満であると表明する住民がいる場合、当該住民が納得する他の仮換地の確保をなすまでは、その余の住民も含めて全体的な仮換地の指定がスムーズに行かず、それと連動して協力者の家屋除去も大幅に遅れざるを得なくなる。こうした現実の工事着手の遅延を回避しようとすれば、事業主体としては、強権発動の選択を迫られることとなり、事業に無用の混乱を持込むことにならざるを得ないのである。

<5> 租税負担が公共の利益にかかわることは論をまたない。しかしながら、土地区画整理事業等の都市再開発事業もまた、それに劣らない公共性を有する。両者はすべからく調和させられるべきであつて、相矛盾・衝突するような法制度を設けるべきではない。

(ウ) 認定基準としての措置法通達三五―一四(2)ロの解釈

<1> 土地区画整理事業区域内にあつて「土地区画整理事業のため」に家屋除去をなした場合は、納税者が仮換地の使用収益可能日から一年以内に土地を譲渡すれば、措置法三五条の適用を受けうる。

<2> 但し、仮換地指定の一年前までに家屋除去をなした場合は、事業のためか否かの認定上の困難さ故に、同事業のために家屋除去をなしたものと事実上推定する。明らかに事業のためでない場合は、徴税者は、その立証の負担においてこれを排除しうる。徴税者がその事務の負担軽減のため、右要件を充足する場合について「事業のため」であるとの擬制をなすことは、租税平等主義に反しない。

<3> 仮換地指定前一年以内の家屋除去の要件を充足しない場合は、納税者において「事業のため」の家屋除去であることを徴税者に対して立証せねばならない。この場合において、納税者は、同事業の事業主体との契約文書等により、事業主体との契約によつて家屋を除去したことを証することによつて、事業のためであることを立証することができる。

以上の解釈により、租税負担の公平・平等、同事業の円滑な遂行が共に確保できるものであり、本件は右要件を充足しているものであつて、措置法三五条の適用が認められるべきである。

(エ) 一年以内の仮換地の指定を絶対要件であるとする控訴人の右通達の解釈では、その帰結は、措置法三五条の適用を受けうるか否かは居住停止後一年以内に仮換地の指定があるか否かという自己の関知できない将来の出来事で租税負担の軽減を受けるか否かが決定され、一種のギヤンブルであるというに等しい結果をもたらすことになり不合理である。

(オ) 更に、同通達三五―一三については、全く通常の任意契約の場合でありながら課税要件の考慮を云々せず、「更地として譲渡することが有利な条件で譲渡できる」という納税者の便宜を取引の実情とみて徴税実務の運用をこの実情に合せるべく法の拡張適用を認めたと主張しながら、土地区画整理事業の場合には譲渡に際し課税要件を考慮するのが当然であるから、契約内容を通達に合せるべきだと主張しており、全く矛盾している。何ゆえ、同事業の場合は、その実情が考慮されないのであろうか。高く売れるからということで家屋を取壊して一年以内に土地を売却したものが保護されるのであれば、町の再開発に協力して家屋を取壊し再開発の工事期間中の土地処分が事実上できないために仮住いのまま待機したうえ利用できるようになつて一年以内に土地を売却したものが何故保護されないのであろうか。

(3) 以上のように、土地区画整理事業施行地区内の居住用土地のみの譲渡の場合、従前存した家屋の除去が右事業の強制力と相当因果関係を有すれば、除去の時期が仮換地の指定前であつても措置法三五条の適用があると認められるべきところ、本件は、右要件を充足するのであるから、同条の適用が肯定されるべきである。右に関する運用基準である通達三五―一四は、同事業の実態とかけはなれた要件を定めており、同要件を充足しないことは、措置法三五条の適用を否定する理由とはならないから、本件所得に係る特別控除額は措置法三五条一項の規定によるべきであり、したがつて、本件再更正は違法である。

六  被控訴人らの主張に対する認否

1の(二)の事実は知らないが、1のその余の各事実は認める。2は争う。

第三証拠関係 <略>

理由

一  本訴請求原因、控訴人及び被控訴人らの事実上の各主張(居住用家屋の除去、敷地の譲渡及びそれに至る経緯)について

右に関する認定は、原判決一五枚目裏末行から同一六枚目表五行目までに記載のとおりであるから(但し、同一五枚目裏末行から同一六枚目表一行目の「……その余の事実は」までを「一請求原因事実、控訴人及び被控訴人らの事実上の各主張については、被控訴人ら主張の1(二)の事実を除き」と、同五行目に「再抗弁1(一)(2)(ア)」とあるを「被控訴人ら主張の1(二)」と、各改める。)、これを引用する。

二  措置法三五条の趣旨、租税実務の運用について

居住用家屋等の譲渡に関する措置法三五条の制定趣旨、同条に関する租税行政の実務及びその運用基準としての措置法通達三五―一三、一四の趣旨、文言に関しては、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決一六枚目表七行目から同二〇枚目表二行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。

1  同一六枚目表一一行目の「ならなくなる」とある次に「ため、担税力が弱い」を、同行目の「軽減し」とある次に「同規模以上の」を各加え、同裏一、二行目の「居住用家屋とその敷地を所有する者が敷地」とあるを「同家屋の譲渡に対する課税の特例措置を認めるのが同条の本来の趣旨であり、その敷地については、居住用家屋とともにする譲渡についても特例が適用されるが、その敷地」と改め、同一〇行目の「場合」とある次に、「や、更地にして譲渡したほうがより有利な場合に」を加える。

2  同一八枚目表九行目に「収去」とあるを「移転又は除去(以下「除去等」という。)」と、同行目に「必要になる」とある次に「(同法七七条)」を、同一〇行目の「所有者」とある前に「同家屋を任意に除去等しない限り、最終的には」を加え、同一一、一二行目に「家屋の収去が行われることがあるため、」とあるを「家屋の除去等が行われ、その敷地(従前の宅地)のみが残存することになるが、その」と、同一二行目の「措置法三五条……」から同裏二行目までを、「措置法三五条一項の規定をその文言どおりに解釈すると、右の場合に本件特例の適用を一律に否定せざるを得ない。しかし、同条項の立法趣旨に照らせば、災害により居住用家屋が滅失して残つた敷地のみを譲渡する場合とその必要性につき差異は発見し難く、また、右1の場合における実務の運用(右通達三五―一三による)に照らして妥当ではない。しかるに、措置法は土地区画整理事業施行のために居住用家屋の除去等をした後の敷地のみの譲渡について、何等の特例も設けていない。しかし、その必要があることは前記のとおりである。それゆえ、右の敷地の譲渡に居住用家屋の譲渡課税の特例の適用を認めるためには、そのための運用基準を特設する必要があり、右の基準が設けられない限り、災害による滅失か通達三五―一三に該当する場合以外、右特例の適用がなくその結果の妥当性を欠くことになる。」と改める。

三  本件と措置法三五条一項の適用について

1  前記認定事実によれば、アイは、福岡市(本件事業の施行者)との間で、昭和五二年一一月四日、本件家屋を除去する旨の物件移転契約を締結し、同月二三日同家屋から退去してこれを居住の用に供さなくなつたが(同家屋の除去は同年一二月六日である。)、同日から経年三年の日の属する年の一二月三一日である昭和五五年一二月三一日を遙かに経過した昭和五八年六月一四日、第三者に本件土地を売却しているのであるから、措置法通達三五―一三ないしは同三五―一四(2)イの基準に該当しないことは明らかである。

2  また、前認定のとおり、本件土地に対する仮換地指定があつたのは昭和五五年一月一〇日で、右仮換地の使用収益開始の日は昭和五七年七月二〇日であり、本件のこれら経緯を同通達三五―一四の(2)ロの基準に当てはめてみるに、本件土地は右使用収益開始の日から一年以内に譲渡されているから、同ロの後段の要件は充足されてはいる。しかし、他方同ロの前段の要件を充足するためには、仮換地指定前一年以内、したがつて本件では昭和五四年一月一一日以降に本件「家屋を居住の用に供さなくなつた日」(以下「退去」及び「退去日」という。)が存在することを要するところ、本件で右供さなくなつた日即ちアイの本件家屋からの退去日は、右仮換地指定の日より二年以上を超過している昭和五二年一一月二三日であるから、本件は右前段の要件を充足せず、同通達三五―一四の(2)ロの運用基準にも該当しないことが明白である。

3  したがつて、被控訴人らは、本件の土地譲渡の課税において、措置法三五条の課税特例の適用を受けることはできず、右適用をしなかつた本件再更正に違法はないものというべきである。

四  被控訴人らの主張について

1  被控訴人らは、措置法通達三五―一四の(2)ロの前段に定める基準につき、要約次のとおり主張する。即ち、

控訴人がその解釈として主張するとおりに、同前段を文言どおり、当該家屋からの退去日が、仮換地指定前一年以内又は仮換地指定後である場合に限るという形式的基準を要件とする運用基準であるとする解釈は、土地区画整理事業の実態を考慮しないものであり、その結果は具体的妥当性を欠くものとなる。右事業の実際の施行手続は、仮換地指定という強制力の発生を伴う法律上の正式の手続を踏む前に、右強制力を背景としつつ、しかしその発動を控えて、可能な限り話合いで事業の実現を図るべく進められるものである。したがつて、右実態を尊重する限り、同事業において、例え外形上は事業主体との任意の合意により除去や退去をしたようにみえる場合であつても、それは実質上自由な意思を制約されてなされた不任意のものといえるから、かかる仮換地指定以前の実態を考慮せず、当該家屋を退去させられるに至つた強制力の契機を仮換地指定のみに限定することは、現実的具体的妥当性を欠くことになる。殊に、本件の場合は、従前の土地の大部分が換地計画上道路敷とされているため、仮換地指定よりかなり以前に、事業主体から居住者に「事実上の仮換地指定の通知」というべきものが送達せられ(<証拠略>)、しかも事業施行上必要として居住家屋の除去申し入れがなされたため、居住者が右要請にこたえ、任意に協力する形で居住家屋の除去契約を締結して、これから退去したという事情にあり、このような事態は同事業の実際の施行上生起することの多い事柄である。しかもこうして退去しても、仮換地指定が何時なされるかについては、事業全体の進行状況等による事業主体の総合考慮によるもので、退去者の左右し難いことであるから、本件のように仮換地指定が遅れたために居住しない期間が長期化したからといつて、措置法三五条の特例適用を除外されるというのは極めて妥当性を欠くことになる。したがつて、同ロの基準においては、本来その要件を定めるにつき、退去日を仮換地指定前一年以内及びその後という仮換地指定を中心的要素とした期間的制限による形式的基準をもつてすることは相当でない。現実に、居住の用に供さなくなつたという事態を招来し、その強制力の契機となつているものは、「土地区画整理事業のため」の家屋除去という事実に尽きるのである。故に、右事態を直視するとき、同ロの基準は、右事実をその基本要件としているものをみるべきであり、同ロに明記された期間制限についての文言は右の基本要件の認定基準を述べているに過ぎないものと理解するべきである。そうすると、本件土地の譲渡については、同ロの要件を充足し、措置法三五条の特例の適用を受けうる場合に該当することになる。

というのである。

2  しかし、当裁判所は被控訴人らの右主張は採用し難いものと判断するのであるが、その理由は次のとおりである。

(一)  被控訴人らの右主張は、控訴人も言及するとおり、措置法通達三五―一四の形式及び文言に照らし、正当な解釈とは云い難いことである。

まず第一に、同通達は、本文冒頭にて本件特例の適用を受けるのは、「仮換地後にする従前地の譲渡」のみに限定したうえ、加えて、同(2)の頭書において、居住用家屋の除去等につき右適用を受けるものは「土地区画整理事業等(以下「事業等」という。)のために行われるものに限る。」旨の適用制限がなされている。したがつて、右特例適用の判断に当つては、同ロの該当性の判断に先立つて、当該除去等が事業等のためになされたものか否かをまずもつて検討されなければならないはずである。然るに、被控訴人ら主張の解釈によれば、同ロ前段もまた右と同様「事業等のための居住家屋の除去」(正確には、「退去」の問題であるが、実際には「除去等」との間に時期的に大差はない。)を基本要件とするというのであり、同一要件を同一項目に重複して記載するという稀有な形式をとり、適用に際し二重に同一要件の存否の判断を要求するという奇異な結果をもたらすことになる。同通達(2)は、その頭書の前記事業等のための除去等という要件を充足したものにつき、期間制限という形式的、一義的な基準をもつてイ又はロの二種の基準を設定し、そのいずれか遅い日までの当該土地の譲渡について本件特例の適用を認めているのである。所論のとおりとすれば、ロのほかにイを設けた意味が没却されてしまうことになる。

思うに、同イについては、事業等のための除去等という頭書の要件を充たす全ての譲渡(但し、仮換地指定後の譲渡に限る)について適用対象としたうえ、非居住期間につき措置法三五条一項と同様三年余の期間という形式的基準をもつてその適用制限をするという形式を採つているのである(被控訴人らは、イは同条項及び同通達三五―一三の期間制限の機械的あてはめに過ぎず、土地区画整理事業において実際上機能しない旨述べるが、退去、家屋除去、仮換地指定及び使用収益開始日の各時期が相互に接着し、比較的短期間でなされた場合などでは、イがロに場合に比して、より長期となるケースも生じる―例えば、本件における退去日が仮りに本件仮換地指定日の数日前であれば、その適用期間はロの場合より五ヶ月余り長期になる―し、同通達三五―一三に対比してその要件が緩和されていることも明らかであるから、納税者にとつてイの適用が有利である場合が存することは否定し難たく、右主張は当らない。)。したがつて、同ロの理解にあたつても、同通達(2)に二個の適用類型を設けたこと及びイにおける右の要件、形式とのバランスを考慮すべきである。そうすると、同ロについては、後述するように事業等のための除去に伴う退去のうち仮換地指定後又は指定前一年以内に退去した場合について、更にその期間の伸張を図る趣旨で期間制限を緩和したもので、イに対する特例的基準を設けたものとみるべきであり、その要件は、一定の条件を前提としつつも、イと同様に期間制限という形式的基準をもつてしたものと理解するのが合理的と思われる。このような理解からは、ロの前段の定めを事業のための家屋除去か否かの認定基準とする被控訴人らの見解は相当とは解されない。

(二)  次に、同ロの基準が設けられた趣旨に照らしても、被控訴人らの見解は失当といわざるを得ない。

すなわち、本件通達三五―一四(2)の適用があるためには、前記のとおり、事業等のための居住家屋の除去等及び仮換地指定後の敷地の譲渡の二条件の具備が要求される。事業等のためというのは仮換地指定を含めた広い概念であり、また、いかに事業等のためといえても、その譲渡が後続の仮換地指定後になされなければ本件特例の適用外となること、土地区画整理法上、同事業において従前地上の家屋に対してその除去等を法的に強制しうるのは、仮換地指定等により生じる効力によるもので、原則的に右指定等がなされた場合にのみ強制力が生じること(同法七七条、九八条参照)等からすれば、同通達の(2)は、右仮換地指定等の効力による強制力を法的根拠として同事業施行地区内の従前地上の居住家屋の除去等が余儀なくされるという状況が、租税措置上、措置法三五条一項の「災害」類似のものとして理解されることから、同法条の趣旨にも照らして右「災害」を拡張解釈し、右事業等による除去等の場合にも本件特例の適用があることを肯認し、現実的妥当性を図る趣旨に出たものと解される。したがつて、同通達(2)は、除去等に加えられた仮換地指定等に伴う強制力を中核とし、これを右拡張解釈の契機とするものといえるから、同通達は本来的には仮換地指定等による除去等に限つて本件特例の適用対象とし、これを適用要件とすべきものであつたと思われる。しかし、同事業区域内の居住家屋の所有者は、早晩、後続の仮換地指定によつて終局的には同家屋の除去等をして、これから退去するのを余儀なくされる立場にあることを慮つて、同通達は、直接的には仮換地指定に随伴してなされた除去等ではないがそれが事業等のためと云いうる限り、その除去等にまで本件特例適用の範囲を拡張した趣旨と理解するのが相当である。この場合に対する譲渡期間の制限につき措置法三五条一項の災害による家屋滅失の場合のそれと同様の要件を定めたものが、同イの基準であるとみることができる。

しかし、同事業に関しては、更に特異な事態が生じて現実的妥当性に問題を投げ掛けることになる。即ち、本来仮換地指定がなされると従前地の使用収益が停止されるのと引換に、仮換地の使用収益を開始し得るのが原則であり、これが同事業の理想的な進捗形態であると云えるが、実際の多くは仮換地の使用開始日が別途指定され(土地区画整理法九九条一、二項)、右別途指定の開始日まで、従前地はもとより仮換地も使用収益不能という状態が継続し(以下、右状態の継続期間を「使用不能期間」という。)、しかもその終了時期たる使用収益開始日も法的には不確定的で期間制限はなく、右期間が長期化する場合も充分存し(本件では二年六月間)、その間に仮換地を譲渡しようとする者を譲渡上不利な立場に立たせることとなる。このような場合、同イの運用基準のみでは、この事態に対応出来ず不都合な結果をもたらすことになる。これに鑑みて、特に、使用収益開始日を別途指定して使用不能期間を生ぜしめる事態が仮換地指定行為及びその効力によるものであることを考慮し、右仮換地指定がなされた場合に、右の期間、即ち仮換地が現実に使用収益可能となり譲渡上の所有者の不利な立場が解消する時期に対応して、同イの適用期限を伸張し、本件特例適用の妥当性を確保する意図で定められたのが、同ロの同運用基準であると理解するのが相当である。

したがつて、右の制定趣旨によれば、本来、同ロにおいては、原則的には退去が仮換地指定後のものに限つてその対象とすべきものであつた(したがつて、それ以前の単に事業等のための退去にまで無期限に拡張するべきものではなく、同基準も右のような拡張はしなかつたものとみるべきである。)と考えられるが、同ロは仮換地指定前一年以内の退去にまでその対象を拡張した。被控訴人らは、右拡張期間に合理性がないとし、右の拡張を一つの根拠に同ロ前段につきいわゆる認定基準説を主張する。確かに、何故一年間という拡張限度を採用したかその根拠は定かではなく、むしろ、不居住期間が長期化して居住性が希薄化することを度外視してよければ、例えば、仮換地指定の前後に拘泥せず、同イの場合一般につき使用不能期間を考慮して、当該退去が事業等のためであれば、除外時から譲渡までの現実の経過期間から右使用不能期間を控除するという形で適用期限を考慮する運用基準を設けることも一方法であつたといえなくもない(尤も、被控訴人らの主張は、除去時から使用開始日までの期間を控除すべきであると云うものである。)。

しかし、本件通達が措置法を拡張したものである趣旨にも照すと、前記被控訴人ら主張の不合理の故をもつて、更にその期限を事業等のための除去時までに拡張すべきであるということの論拠にはならない。本件通達は、右につき一年以前の退去までの拡張に留めた。右は、あくまでも仮換地指定をその中心にすえ、これとの時期的近接性や同指定に伴う事実上の強制力の切迫性、社会一般の不動産譲渡の状況等考慮して、同ロにつき本来的要件とされた仮換地指定後の退去と同一視うる限度として、総合判断のうえ定められた拡張範囲であり、右範囲内にある限り措置法三五条一項にいう「居住の用に供している家屋」からの退去と実質上同視しうるものとした趣旨である。したがつて、同ロ前段は、仮換地指定前一年以内の退去までにその適用範囲を拡張し、これを限度とする形式的基準を要件としたものであり、それなりの合理性を有するものと解しうるし、ましてこれが不合理だとして同前段の要件を認定基準と解する根拠となるものとは思われない。

(三)  措置法三五条は、前記のとおりその担税力を考慮して、不動産譲渡者に対する課税につき、特別利益を付与する租税優遇措置を定めた特例であり、かかる特例措置は、本来負担すべき課税を特に軽減するものであるから、右条項の解釈、適用にあたつては、租税の公共性や公平負担の原則からして狭義、厳格になされるべきで、濫りにこれを拡張すべきでないことは当然である。しかも、同条は、土地のみの譲渡については、災害により家屋が滅失した土地の譲渡に限つてその例外として同条の適用対象としたものであるのに、そのうえ更に、土地区画整理事業等のために地上家屋が除去等された従前の土地の譲渡は、右の例外の場合に該当しないけれども、本件通達による行政運用により災害による滅失に準じるものとして、特例適用の更に例外としてこれを認めようというものである。したがつて、このような例外的運用基準の設定にあたつては、疑義を差しはさむことのないような形式的基準をもつてその運用基準を定めるのが通則であり、本件通達も期限という明確で形式的な基準をもつて制定されているものとみるべきであるからその解釈、運用に当たつては、より一層厳格に対処されるべきで、実質的具体的妥当性の見地や個別的事情を配慮する立場から右基準を類推、拡大することは、具体的課税において更なる例外を創設し、却つて、課税に対する法的安定性や予測の可能性を損ない、課税平等の原理にもとることとなつて妥当ではない。

(四)  被控訴人らは、本件通達(2)につき、そこにいう居住家屋の除去等は本来的に仮換地指定後のそれに限られるとして同ロの適用にあたつてもその文言のとおりに限定解釈すべきであるとの見解を、土地区画整理事業の実態を考慮しない現実的具体的妥当性を欠くものとして非難する。

確かに、本件土地についての換地手続についてみても、本件家屋の除去は、事業主体である福岡市が事業のため除去申出をしたのに対し、アイが早晩退去せねばならない状況を考慮して、同市と任意に物件移転契約を締結の上除去したという経緯にある。このように事業主体は、いきなり直接仮換地指定の強制力に従つて事業の実現を図るのではなく、可能な限り土地所有者等の同意、協力を得つつ、任意の又は事実上の行為によつて円満に具体的事業内容の進行を図るのが実態であろう。したがつて、税負担上、かかる事業者の意図に応じて事業の円滑な進行に協力し居住家屋を退去した者により、非協力者の方が有利な処遇を受けることになれば、結果として具体的妥当性を欠くことになる。本件でも、事業進行で不安な状態に置かれ、除去申出に応じた老齢のアイの立場に右同様の矛盾が感受できないわけではない。事業主体において、かかる所有者等と任意契約や事業の必要上協力要請をなすに際し、同所有者等に対して租税優遇措置等に関する助言、説示等をなしておれば、本件のような妥当性を欠く結果の回避も可能ではなかつたかと思われる(尤も、事業主体としても、所有者がその後従前の宅地を居住用敷地として確保するのが通常であろうから、譲渡処分する場合まで配慮する必要はないとの反論もありえよう。)。

しかし、翻つて考慮してみるに、本来、アイが本件土地を譲渡するか否かは同女の自由意思に基くものであり、控訴人も主張するように、所有者が土地を譲渡するにあたつては、様々な経済的利害得失が考慮され、殊に不動産譲渡に対する課税が高率化した今日では、右譲渡課税の負担を考慮、検討して譲渡されることが常識と思われる。そうして、土地区画整理地区内の土地の譲渡に関しては、右土地の租税特例として措置法三五条及び本件通達にその範囲、要件が明確化されている。殊に、解釈通達である本件通達は、租税に関する通達として一般に公表されたものであり、現実的には、それ自体措置法三五条の補充的、規範的機能を果たしているものである。したがつて、これら特例に関する法令、通達等の存在が充分考慮されたうえ右の譲渡が決断され、或は譲渡時期が選択されるであろうし、更にはまた居住家屋の除去、退去の時期にも配慮されることになろう。つまり、居住家屋の除去等や退去が強制されるからといつて、本件特例の適用を受けるか否かについて所有者の自由な意思が制約されるとは限らず、具体的現実的妥当性を欠く結果をもたらすとさえも一概に云いえないと思われる。

五  以上のとおりであるから、控訴人のなした本件再更正には、被控訴人ら主張の違法はなく、適法な処分と認める。

六  よつて、本件請求は理由がないから棄却すべきところ、これと結論を異にする原判決は不当であるからこれと取消し、本件請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九六条、九三条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 高石博良 森林稔 川本隆)

経過一覧表 <略>

通達(一)、(二) <略>

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