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福岡高等裁判所 昭和41年(ム)4号 判決 1966年11月09日

主文

本件再審の訴を却下する。

再審訴訟費用は再審原告の負担とする。

事実

一、再審原告訴訟代理人は「原判決(当庁昭和三九年(ネ)第六五九号損害賠償等請求控訴事件)および第一審判決(熊本地方裁判所昭和三七年(ワ)第二二二号損害賠償請求事件)を取り消す。再審被告は再審原告に対し、再審原告が熊本市大江町本字居屋敷一四三番地の三および六の土地のうち、右第一審判決末尾添付図面の(イ)(ロ)(ハ)(ニ)(ヨ)(チ)(イ)の各点を順次連結する線で囲まれる地域につき地上権を有すること、ならびに、同番地の二および五の土地のうち、同図面の(ホ)(ヘ)(ト)(ヨ)(ホ)の各点を順次連結する線で囲まれる地域につき通行権を有することを確認する。再審被告は再審原告に対し、金一五万円を支払え。訴訟費用は再審被告の負担とする。」との判決を求め

再審被告訴訟代理人は、主文同旨の判決を求めた。

二、再審事由

再審原告訴訟代理人は、本件再審の事由として、次のとおり陳述した。

(一)  本件当事者間の熊本地方裁判所昭和三七年(ワ)第二二二号損害賠償等請求事件について再審原告が敗訴し、その控訴審である当庁昭和三九年(ネ)第六五九号損害賠償等請求控訴事件において昭和四〇年四月三〇日控訴棄却の判決言い渡しがあり、再審原告はこれに対し上告したが、最高裁判所において昭和四一年三月一一日上告棄却の判決言い渡しがあり、ここに右判決は確定した。

(二)  然るところ、右控訴審判決には左記再審事由があるので、本件再審の請求に及んだ。

(イ)  民訴法第四二〇条第一項第九号にあたる再審事由。右控訴審判決には、控訴審における検証の結果についての判断を遺脱している。再審原告の主張する倉庫と工場は請求の趣旨掲記の土地上に建設せられていた建物であるが、前示検証の際にはすでに存在せず、従つてこの建物の位置、場所その範囲建物の構造形体等については、具体的に一々的確に説示されていないが、右検証の結果についての判断は判決に影響を及ぼすべき重要な事項であるにかかわらず、前記控訴審判決には右検証の結果についての判断を遺脱している。

(ロ)  民訴法第四二〇条第一項第七号にあたる再審事由。右控訴審判決の証拠となつた証人若宮清二の証言および被告(本件再審被告)本人の供述は、いずれも虚偽である。もつとも、右若宮証人については偽証の罪、被告本人については過料の制裁はなされていないが、証人若宮清二に対する偽証については告訴し目下検察庁において取調中であつて、いずれにしても虚偽の証言ないし供述を右判決の証拠としたものである。

三、答弁

再審被告訴訟代理人は、答弁として、次のとおり述べた。

(一)  再審原告の主張する本件当事者間の控訴審判決がその主張の経過で確定したことは認める。

(二)  再審原告の主張するところは、いずれも適法な再審事由とはならない。(イ)単に主張事実証明のために申出た証拠に対する判断の如きは民訴法第四二〇条第一項第九号の「判決に影響を及ぼすべき重要な事項」に該当しない。従つて、かりに右控訴審判決において再審被告主張の検証の結果について判断を与えていないとしても、これをもつて再審事由ありということはできない。(ロ)前記控訴審判決はその挙示の諸証拠を綜合して事実を設定しているので、再審原告主張の証人若宮清二の証言の如きは主要事実の認定に影響を及ぼさないものである。のみならず民訴法第四二〇条第一項第七号の再審事由ありとするには同条第二項所定の事由あるときに限り再審の訴を提起しうるに過ぎないものなるところ、該所定の事由は存在しないから、この点からも右事由による本件再審の訴は不適法である。

四、証拠(省略)

理由

一  本件再審の訴の目的である本件当事者間の当庁昭和三九年(ネ)第六五九号損害賠償謂求控訴事件の判決が再審原告主張の経過で確定したことは当事者間に争いのないところである。

二  そこで、再審原告主張の再審事由について判断する。

(イ)  民訴法第四二〇条第一項第九号にいう「判決ニ影響ヲ及ホスヘキ重要ナル事項ニ付判断ヲ遺脱シタルトキ」とは、その判断の如何によつては判決の結果に影響を及ぼすような事項であつてその事項についての判断を遺脱した場合をいうのである。従つて、再審原告が主張するように控訴審判決が控訴審における検証の結果について判断を与えていなかつたとしても、これをもつて判決の結果に影響を及ぼすような重要事項についての判断遺脱といいえないから、右事由による再審の申立は不適法たるを免れない。

(ロ)  再審原告の主張する証人若宮清二の証言および被告本人の供述が虚偽であつたとしても、民訴法第四二〇条第一項第七号、第二項の規定によると、右証人若宮清二の証言につき有罪判決および被告本人の供述につき過料の裁判が確定したこと、または証拠欠缺以外の理由によつて有罪の確定判決もしくは過料の確定裁判をうることができなかつたことを併せて再審事由としなければならないことは明らかである。しかるに、この点について再審原告は主張立証していないことは明らかであるから(証人若宮清二については告訴により検察庁で取調中である、というのみでは、いまだ前記法条第二項の要件を充たしているといえないことも明らかである。)、為に右証人の証言および被告本人の供述が虚偽であることのみを再審事由とする再審の申立もまた不適法である。

三  よつて、本件再審の訴は不適法としてこれを却下すべきものとし、訴訟費用の負担につき民訴法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

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