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福岡高等裁判所 平成6年(行コ)6号 判決 1994年12月08日

北九州市門司区栄町一一番七号

控訴人

長嶋恵子

熊本市室園町九番八号

控訴人

牟田キミエ

右両名控訴代理人弁護士

鶴丸富男

熊本市二の丸一番四号

被控訴人

熊本西税務署長 桑原敏行

右指定代理人

堀憲治

稲吉伸博

小松弘機

山崎省典

松岡博文

徳田実生

亀井勝則

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

一  控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が平成元年七月四日控訴人長嶋恵子の昭和六二年一〇月二八日相続開始に係る相続税についてした更正処分のうち、課税価格四一四四万円、納付税額九七八万〇二〇〇円を超える部分、及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。

3  被控訴人が平成元年七月四日控訴人牟田キミエの昭和六二年一〇月二八日相続開始に係る相続税についてした更正処分のうち、納付税額一二五七万四六〇〇円を超える部分、及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。

4  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  控訴の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二事案の概要

事案の概要は、原判決が「事実及び理由」の「第二 事案の概要」の項で摘示するとおりであるから、これを引用する(但し、原判決二枚目裏九行目の「昭和六二年度分」を「昭和六二年分」と改める。)。

第三争点に対する判断

当裁判所も、控訴人らの被控訴人に対する本件課税処分の取消しを求める本件請求は、理由がないので棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり付加・訂正する外は、原判決が「事実及び理由」の「第三 争点に対する判断」の項において説示するところと同一であるから、これを引用する。

一  原判決五枚目裏一〇行目の「第九号証」を「第九、第一〇号証」と、同行から末行にかけての「及び同田上昭一の各証言」を「、同田上昭一及び当審証人宮崎俊紀の各証言並びに弁論の全趣旨」と改める。

二  同六枚目表九行目の「平方メートルとなる。」を「平方メートルとなり、本件土地の登記簿(表題部)の地積は一三四・六二平方メートルに変更された。なお、一般に分筆登記手続がされる場合には、右事例のとおり、分筆されて新たに地番が付される土地のみを測量した地積測量図が添付され、残地については従前の登記簿上の地積から右分筆される土地の地積を減ずる取扱いがなされるのが通例であったが、このような方法による限り、分筆前の地積にいわゆる縄延びがあった場合には、当然、分筆後の残地の実際の面積と登記簿上の面積との相違が大きくなる。」を加える。

三  同七枚目表二行目の「平方メートルであり」を「平方メートルであるから」と改め、同四行目末尾の次に「そして、控訴人長嶋らの依頼により本件土地及び五八四番三、同番四の各土地を測量した甲第一一号証の地積測量図に、田上の依頼により本件土地を測量した乙第五号証の地積測量図を重ね合わせ、且つ原審証人渡辺武徳、当審証人宮崎俊紀の各証言を総合すれば、両測量図は、本件土地に関してはほぼ同じ範囲(東西の幅は後者の方が若干狭い。)を測量していることが明らかである。」を加える。

四  同八枚目表四行目の次に改行して、次のとおり加える。

「控訴人らは、乙第五号証の地積測量図記載の本件土地の境界が隣接所有者の立会いにより確定されていないから、右地積の認定は正当ではない旨主張する。

しかしながら、証拠(甲第一一号証、第二三号証の一ないし三、乙第二〇ないし第二二号証、当審証人宮崎俊紀の証言及び弁論の全趣旨)によれば、宮崎俊紀土地家屋調査士(以下『宮崎調査士』という。)は、平成元年一二月、前記長嶋京から本件土地、五八四番三及び同番四の各土地の一括測量を依頼されたが、その際、現地で立ち会った同人ら関係者から次のとおり右土地の範囲を指示されたので、右指示に従って測量し、地積測量図(甲第一一号証)を作製したこと、すなわち、同調査士は、東側道路との関係では、建設省係官が立ち会って境界確認をした線(側溝西側縁)を境界として測量し、北側土地(五八二番の土地、五八四番二の土地)及び南側土地(五八五番の土地、五八八番の土地)との関係では、各所有者の立会いが得られなかったため、長嶋京らの指示に従って緒方の生前から現地に存在していたブロック塀及びコンクリート杭を境界として測量したこと、また、西側水路との関係では、熊本県係官が立ち会ったが、水路全体との関係で境界確認ができなかったため、宮崎調査士は、右係官の主張する官民境界線を超えない範囲で、右の西側ブロック塀を西側境界として測量したこと、及びその後の交渉の結果、平成三年六月ころ右長嶋京らは右県の主張する官民境界線を認めるに至ったことが認められる。

右認定事実によれば、甲第一一号証の地積測量図は、東側道路との関係では境界確定がなされており、南北の土地との間では緒方の生前から現地に存在していたコンクリートブロック積みやコンクリート杭で画されているところ、北側隣地との間のブロック積みは、前記1の(一)の分筆の際に境界立会いがなされた境界線と解される上、右南北のブロック積みの線が境界であることにつき隣地所有者から不服が申し立てられた形跡はないから、右ブロック積み線を境界と見るのが合理的である。また、本件土地と西側水路との関係では、測量図上の境界線が官民境界線より西側にはみ出していないことについては熊本県との間に争いがないのであるから、右測量の際に指示された本件土地の範囲については、各隣地所有者との間で事実上争いがないものと解される。

ところで、被控訴人の主張する地積の根拠となった乙第五号証の測量は、田上の指示によるものであるが、右測量図の本件土地の範囲は、前記甲第一一号証の地積測量図中の本件土地の範囲とほぼ同様であって、しかも、同測量図による地積よりも若干狭いことは前認定のとおりであるところ、甲第一一号証の地積測量図は、右のとおり各隣地所有者との間で事実上争いがない範囲を本件土地として測量したものであるから、乙第五号証の測量図の本件土地の範囲についても同様というべきである。したがって、控訴人らの右主張は到底採用できない。」

第四結論

よって、これと趣旨を同じくする原判決は正当であって、控訴人らの本件控訴は理由がないからこれを棄却し、控訴費用の負担につき行訴法七条、民訴九五条、八九条、九三条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 谷水央 裁判官 石井義明 裁判官 永松健幹)

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