大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡高等裁判所 平成元年(ネ)295号 判決 1989年8月30日

主文

一  原判決中控訴人ら敗訴部分を取り消す。

二  被控訴人らの控訴人らに対する本訴請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

事実

一  控訴人らは、主文同旨の判決を求め、被控訴人らは、「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人らの負担とする。」との判決を求めた。

二  当事者双方の主張及び証拠関係は、原判決事実摘示中控訴人らに関する部分のとおり(但し、原判決九枚目表一行目末尾に「また、筑紫車に構造上の欠陥及び機能上の障害もなかった。」と付加する。)であるから、これを引用する。

理由

一  請求原因1、2項(本件交通事故の発生及び責任原因)に関する事実認定及びこれについての判断は、次のとおり加除訂正するほか、原判決理由説示(原判決九枚目表一二行目から同一二枚目裏二行目まで)中控訴人ら関係部分記載のとおりであるから、これを引用する。

1  同一〇枚目表一一行目の「戻り、」の次に「同交差点で右折する予定のところ、」を挿入し、同一二行目の「地点から」を「地点で対向してくる筑紫車を認めたので、同交差点手前で一時停止すべく」と、同枚目裏三行目の「進行」を「逸走」と各訂正し、同六、七行目の前文を削除する。

2  同枚目裏九行目の「本件交差点」から同一一枚目表三行目の「直ちに」までを、次のとおり訂正する。

「本件交差点手前約一五メートルの地点で、自車前方約二八・八メートルの地点から対向してくる米本車を認め、さらに同一速度で自車進路前方を注視して進行したが、野原方面から蔵満方面に向けては右側にカーブしていることと、米本車(車幅一・三九メートル)と松本車(車幅〇・七五メートル)の車幅、位置関係もあって、米本車の後方から追従してくる松本車を確認し得ないまま約一〇メートル進行した際、突然約六・一メートル前方から中央線を越えて自車の方へ逸走してくる松本車を発見し、直ちに左にハンドルを切るとともに、」

3  同一二枚目表一行目から同五行目までの全文を削除し、同八行目の「二二条」を「二三条」と訂正する。

4  同一二枚目裏二行目の次に改行のうえ、次のとおり付加する。

「そこで控訴人筑紫の過失の有無について判断するに、凡そ自動車運転者としては、衝突を予見できる特段の事情がない限り、対向車線において対向車の後方から進行してくる車両が前車に追突し、自車の方に逸走してくることがあることまで予見して運転すべき注意義務を負担しないというべきところ、前記認定の事実によると、松本車は、交差点直前で筑紫車と離合した後右折すべく停止していた米本車に追突し、その衝撃によって中央線を越えて逸走し、筑紫車の右側後輪泥よけ付近に衝突してきたのであるが、同控訴人としては、本件交差点手前約一五メートルの地点で米本車を認めた段階において米本車に追従中の松本車が米本車に追突しそうな状況を現認していないのみならず、更に約一〇メートル進行した段階において突然約六・一メートル前方から中央線を越えて逸走し来たった松本車に衝突されたというのであるから、衝突を予見できる特段の事情があったとは到底認めがたいのであって、結局同控訴人にとって本件事故を回避することは不可能であったというほかなく、同控訴人に過失はなかったといわなければならない。」

5  前記甲第五号証、第一〇号証によると、本件事故当時、筑紫車には構造上の欠陥も機能上の障害もなかったことが認められる。

6  以上によると、控訴人筑紫に民法七〇九条の責任はなく、控訴人会社にも同法七一五条ないし自動車損害賠償保障法三条の責任はない。

二  そうすると、控訴人らは被控訴人に対し、本件交通事故による損害を賠償すべき義務はなく、被控訴人らの本訴請求は失当として棄却を免れない。

よって、右と結論を異にする原判決は不当であるからこれを取り消したうえ、被控訴人の請求をいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民訴法第九六条、九三条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 鍋山 健 裁判官 川畑耕平 裁判官 牧 弘二)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例