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福岡地方裁判所 昭和43年(ヨ)1026号 判決 1971年11月05日

申請人 古川秀樹

被申請人 明治乳業株式会社

主文

本件仮処分申請をいずれも却下する。

申請費用は、申請人の負担とする。

事実

第一、当事者の求める裁判

一、申請人

申請人が被申請人に対し、雇用契約上の労働者としての地位を有することを仮に定める。

被申請人は、申請人に対し、金一二、七九九円ならびに昭和四二年七月一日以降毎月二五日限り、一カ月金三〇、〇〇〇円の金員を仮に支払え。

申請費用は、被申請人の負担とする。

二、被申請人

主文同旨。

第二、申請の理由

一、被申請人は、乳製品、乳飲料、加工乳の製造販売を業とし、住所地に本店を、福岡市ほか数十箇所に工場、営業所を有する株式会社である。

申請人は、昭和三六年四月一日、被申請人会社に雇用され、爾来同会社福岡工場に勤務していたものであり、明治乳業労働組合福岡支部の組合員であつた。

二、しかるに、被申請人は申請人を昭和四二年六月一五日に解雇したとして、申請人の雇用契約上の地位を争い、その就労を拒否している。

三、申請人の平均賃金は、同年六月当時金三万円で、毎月二五日支払となつていたが、被申請人は同月分の賃金のうち金一七、二〇一円を支払つたのみで、右平均賃金との差額金一二、七九九円、および同年七月分以降の賃金を支払わない。

四、申請人は右地位確認ならびに賃金支払の本訴を提起すべく準備中であるが、申請人は右賃金のみによつて生活を維持している労働者であつて、他に何らの資産もなく、本案判決の確定をまつていては、その生活上著しい支障を被むり、回復しがたい損害を受けるおそれがある。

よつて、申請人は雇用契約上の地位の保全および昭和四二年六月分の賃金残額と、同年七月分以降の賃金の仮払を求めるため、申請に及んだ。

第三、申請の理由に対する被申請人の認否および主張

一、認否

(一)  申請の理由一、二、の各事実は認める。

(二)  同三の事実のうち被申請人会社の賃金支払日が毎月二五日であること、および被申請人が申請人主張のように賃金を支払つていないことは認めるが、その余の事実は争う。

(三)  同四のうち仮処分の必要性の点は争う。申請人の妻聆子は株式会社ハトヤに勤務し、毎月金一七、〇〇〇円の賃金を得ているので、申請人は生活に窮しているものではない。

二、被申請人の主張

(一)  解雇理由

(1) 被申請人会社は、昭和四二年六月一五日申請人に対し解雇の意思表示をしたがその理由は次のとおりである。

すなわち申請人は、

1 昭和四一年四月七日午後一時三〇分頃の就業時間中、大型びん職場に無断でコーヒー牛乳を持ち込み、これを温めて盗飲し、

2 同年七月一五日、一二時三〇分頃、午後の勤務開始時間を過ぎてなお、仮眠所で寝ており、製造係長殿木経男が注意したのに対し、寝たまゝで「うるさい」と抗弁して、一二時四五分頃まで就労せず、

3 同月二一日午後四時頃の就業時間中、大型びん職場を離れ、調合職場において、布につつんだ馬鈴薯をコーヒー浸出器に入れ、蒸気を出してこれをふかしていたので、前記殿木係長が注意したのに対し、終始無言で、その間新聞を読むなどして、全く反省の色を示さず、

4 同月二七日午後二時頃の就業時間中、大型びん職場において、すでに充填され製品として完成された牛乳五〇〇ミリリツトル入り一本を窃取し、ガラスコツプに注いで、作業中の他の従業員に飲ませ、

5 同月二八日午前一一時頃、当日、福岡市の上水道管修理工事のため節水の必要があり、作業を一部中止して作業員に節水を指示していたが、申請人は大型びん職場の蛇口から水を出して、同職場で検びん作業中の他の従業員にホースで水をかけてその作業を妨害し、前記殿木係長より注意され、

6 同年八月一二日午後四時一五分頃、作業終了時刻は午後四時三〇分であり、まだ作業が終了していないのに、大型びん職場を離れ、工場内の従業員浴室で入浴して、その後の職務を放棄し、

7 同年九月二一日午前一〇時三〇分頃の就業時間中、大型びん職場を離れ、工作室において、次亜塩素酸曹達液用容器(ガラス製二三キログラム入り)の首の部分をデイスクサンダーで切断し、工務主任北島万督が中止するよう命じたが従わず、翌二二日、その切断後の容器にどじよう、たにし等を入れてその職場に持ち込み、

8 同月二五日午後三時頃、九〇〇ミリリツトル用新びんを使用するにあたり、段ボール箱から出した新びんを洗剤入り手洗洗びん機に入れて洗滌し、水すすぎをしてから塩素殺菌槽に移すよう指示されていたのにかかわらず、洗滌をせずに直接水すすぎをしていたので、製造主任加藤孝雄が指示通り作業する様注意したところ、洗滌をした旨虚偽の申立をなし、

9 同年一〇月六日午後の勤務開始時間が午後〇時三〇分と定められているにもかかわらず、工場空びん置場に居て、大型びん職場の自己の職務につかず、漸く職場につくや、同日、同職場勤務を指示されて、洗びん室において、すでに手洗洗びん機を廻して洗びん作業をしていた臨時従業員権丈孝子に対して、午後〇時四〇分頃、右洗びん機の排びん側スイッチを切り、洗滌機の運転を停止せしめてその作業を妨害し、右権丈がスイッチを入れて作業を続けようとしたところ、再びそのスイツチを切り、さらにそのスイツチに安全棒を差込み、権丈が再びそのスイツチを入れても始動しない状態にして、その業務を妨害するとともに、口論となるや、同女に対し「おばさん達は俺達の来るまで仕事をしなんな」などと申し向けて職務の放棄を教唆し、その間、午後一時〇三分頃まで、自らもまた職務を放棄し、

10 同月七日午後の勤務開始時間が午後〇時三〇分と定められているにもかかわらず、同時刻になつても職務に従事しようとせず、午後〇時四三分頃まで、その職務を放棄し、

11 (イ) 同月一二日午前九時五〇分頃、他の大型びん職場所属従業員とともに、前記殿木係長より十分間の休憩を許可されたが、午前一〇時頃から、他の従業員は再び就労したにもかかわらず就労せず、喫煙所において新聞を読んだり、煙草を吸つたりして、午前一〇時二五分頃までその職務を放棄し、

(ロ) 同月一二日午後三時五六分頃、喫煙所において、同工場製造主任坂上出穂より、すぐ空びんのキヤツプを抜き搬入するよう指示を受け、同席していた他の従業員はその指示に従つたが、申請人はその指示に従わず、当日の勤務時間が終了するまで、その職務を放棄し、

12 同月一二日午前八時三〇分、勤務開始に際し、洗びん作業開始時における基礎的注意事項である塩素水の吹上げを行なわずに作業を開始し、午前八時四五分頃、同工場品質係長志賀重昂から注意を受けるまで、その作動を怠り、さらに、同日午後〇時三〇分、午後の作業開始にあたつて、再び塩素ポンプの作動を行なわずに作業を開始し、午後〇時四〇分頃、前記殿木係長から注意を受けるまで、その作動を怠り、

13 同月一四日午後二時五〇分頃、喫煙所において、前記坂上主任よりびん詰作業終了後の後片付けを行なうよう指示されたにもかかわらず、その指示に従わず、午後三時三〇分まで職務を放棄し、

14 同月二一日午後四時頃、大型びん職場において、前記坂上主任が牛乳約三二リツトルの入つた輸送缶一本を冷蔵庫内に格納するよう指示したところ、これに従わず、右輸送缶の牛乳を同室内のマンホール内に捨てて、会社に損害を与え、

15 同月二三日午後三時五八分頃の就業時間中、その職務を怠り、喫煙室に居たので、前記坂上主任が直ちに就労するように指示したが従わず、さらに、午後四時一五分頃、右坂上が再度就労を指示して、漸く職場に戻り、その後、同主任が指示した輸送缶格納作業に従事しようとせず、午後四時三〇分の終業時刻まで勝手に他の作業を行ない、

16 昭和四二年二月二日無断欠勤し、

17 同月九日午後三時四〇分頃から大型びん充填機および付属パイプ類の洗滌並びに組立作業に移り、午後四時一〇分頃、洗滌作業は終つたが、なお分解した部品に水を流したり、ブラシを動かすまねをしたりなどして組立作業を怠り、他の従業員が手助けに行つたところ、これを拒否し、作業終了時刻である午後四時三〇分頃まで、右怠業を続けて職場を離れようとしたので、製造主任渡辺茂治が組立作業を完了するように指示したが、これに従わず職務を放棄し、

18 同月一四日午後二時頃の就業時間中、その職務を怠つて組合ニユースを読み、前記渡辺主任が注意したのに対し、反省の色を見せず、さらに同日午後三時四〇分頃、無断で職場を離れて試験室にいるのを同主任が発見したので、厳重注意して就労するよう指示したのに対し、「あんまりガタガタ言うな」等と答えて指示に従わず、その職務を放棄し、

19 同月二六日午前八時一五分頃、就業時間中、無断で職場を離れ、従業員浴室において、私物の下着を洗濯しており、これを発見した前記渡辺主任が、注意して就労するよう指示したのに、午前八時二〇分頃まで、その職務を放棄し、

20 同年三月六日無断欠勤し、

21 同月八日無断欠勤し、

22 同月一一日午後一時頃の就業時間中、被申請人会社福岡工場洗びん室内において、無断でその職務(給びん作業)を放棄し、同室内後方に掲げられた会社業務用黒板全面に、会社の許可なく、

「センビンノナカマエ

ロードウキヨウカノナカデマイニチコキツカワレテイルワレワレデアルガ、キオオトサズガンバロウデハナイカ、オヒサマワワレワレニモサベツナクテラシテイル、アスモガンバロウ」

なる会社を誹謗する文を白墨にて書き散らし、午後三時頃、同工場管理職員殿木経男より注意を受けてこれを消し、

23 同年四月一四日午前一一時三〇分頃、同工場食堂において、各食卓上に数部宛計三〇部前後の「福岡民報」なるビラ(昭和四二年三月一九日付福岡民報社発行「今すぐこれだけは―共産党緊急政策を発表」等)を無許可で配付し、これを取りかたづけようとした同工場専門職員柳川舜一の左腕をつかんで引つぱり、さらにその左肩口を突くとともに、「この野郎うつたたくぞ」と申し向けて、右柳川の身体に危害を受けるかも知れないと畏怖させ、同人の業務を妨害し、同人の拾い集めた前記「福岡民報」を同人から奪い取り、食堂内に居合わせた従業員にそれを無許可で配布し、

24 同年四月一七日午後三時頃の就業時間中、同工場戻ビン室内において、その職務を放棄し、就業中の従業員に対し、一九六七年四月一七日付日本共産党福岡地区委員会名義の「立花高光出陣式の御案内」なるビラを無許可で配布し、

25 同月二九日午前九時二五分頃、同工場大型びん製造室において、箱詰作業中、その職務を放棄し、かねて掲示等により厳禁されていたにもかかわらず、隣接職場で、すでに製品として完成され冷蔵庫に搬入する前のプルパツクコーヒー牛乳一本(一八〇ミリリツトル入り)を盗飲し、

26 同年五月八日午後三時五分頃、就業時間中、私用でその職場を離れた時、びん詰室内において充填され、製品として完成されたコーヒー牛乳一本(一八〇ミリリツトル入り)をコンベヤー上から窃取し盗飲し、これに気付いた同工場製造主任渡辺茂治が注意を与えたのに対し、何ら反省の色を示さず、前記牛乳びんを再生用函に投げ込んで同室より退出し、

27 同年三月二一日午後二時頃、就業時間中、その職務を怠つて組合ニユースを読み、前記渡辺主任がこれを注意し、直ちに就労するように指示したのに対し、抗弁する等して、その指示に従わず、午後二時三分過ぎ頃まで、その職務を放棄し、

28 同年四月九日、午後の勤務開始時間が午後一時三〇分と定められていたところ、同時刻になつても就労せず、午後一時三六分頃、同工場更衣室前をゆつくり歩いているのを、同工場製造主任蔵元一敏より発見されて早く就労するよう注意を受け、

29 同月一六日午後四時過ぎ頃の就業時間中、無断でその職場である大型びん製造室を離れ、同工場食堂内においてテレビを見、午後四時一〇分頃、たまたま通りかかつた同工場製造主任加藤孝雄から注意されるまで、その職場に戻らず、

30 同月二〇日午後二時五〇分頃に無断で、その職場である大型びん製造室を離れ、午後三時一〇分頃ようやくその職場に戻り、

31 同月二一日午後三時三〇分頃に、あらかじめ、同日午後四時一〇分以降引き続き大型びん職場において時間外勤務に従事すべきことを指示されていたが、午後四時三〇分に至り、無断でその職務を放棄し、午後四時四五分頃、同工場更衣室前において、前記殿木管理職員が指示どおり、就労するよう注意したにもかかわらず、これに従わずに無断で早退し、

32 同月一七日午後二時一五分頃の就業時間中、無断で、その職場である大型びん製造室を離れると共に、同室備え付けのポリバケツに水を満たし、そこから八〇メートル離れた同工場旧煉乳室側に赴き、同室北側の窓を開け、同室内において作業中であつた従業員瓦田政義および早川房子にその水をかけようとして業務を妨害し、

33 同人の勤怠の成績は、同工場に所属する他の従業員のそれに比べて著しく不良であつて、昭和四一年四月より昭和四二年三月迄の一ケ年間において、事故欠勤および無断欠勤(事後に年次有給休暇等に振替えを認めた欠勤および病傷欠勤を含まず)のべ一二日、遅刻早退のべ一一回におよび、昭和四二年二月二日、三月六日、三月八日の各無断欠勤を理由として、会社より懲戒処分を受けたが、昭和四二年三月二三日さらに病気と称して欠勤し、所定の届出手続を怠たり、

34 同年三月三一日にも再び病気と称して欠勤し、同年四月三日に至り、慢性肝炎、慢性胃炎との診断書を提出したので、会社指定医師の精密診察検査を受けしめたところ、全く異常が認められなかつた、

ものである。

(2) 被申請人会社就業規則五九条、四九条、一六条、一四条、九条、七条の条文は別紙のとおりであるが、右申請人の前記所為中1は就業規則五九条一号、四号、九条九号に、2は同規則五九条一号、三号、九条四号に、3は同規則五九条一号、六号、九条四号に、4は同規則五九条一号、四号に、5は同規則五九条三号、六号、一六号、七条に、6は同規則五九条一号、第九条四号に、7は同規則五九条第一号、四号、六号、九条四号に、8は同規則五九条三号、六号、七条、九条一号に、9は同規則五九条一号、六号、一六号、九条一号、四号に、10は同規則五九条一号、九条四号に、11の(イ)は同規則五九条一号、九条四号に、11の(ロ)は同規則五九条一号、三号、七条、九条四号に、12は同規則五九条一号、六号、九条一号に、13は同規則五九条一号、三号、七条、九条四号に、14は同規則五九条三号、六号、七条、九条一号に、15は同規則五九条一号、三号、九条四号に、16は同規則五九条一号、五号、一六条に、17は同規則五九条一号、三号、六号、一六号に、18は同規則五九条一号、三号、六号、九条四号に、19は同規則五九条、一号、三号、六号、九条四号に、20、21はいずれも同規則五九条一号、五号、一六条に、22は同規則五九条一号、六号、九条四号、一四条に、23は同規則五九条一号、八号、一四条に、24は同規則五九条一号、一四条に、25、26はいずれも同規則五九条一号、四号、九条九号に、27は同規則五九条三号、六号、七条、九条四号に、28は同規則五九条六号、七条、九条四号に、29、30はいずれも同規則五九条一号、六号、九条四号に、31は同規則五九条一号、三号、六号、九条四号に、32は同規則五九条一号、六号、一六号、九条四号に、33、34はいずれも同規則五九条一号、五号、九条一号、一六条にそれぞれ該当する。

(3) 申請人は前述のとおり昭和四一年四月七日から本件解雇に至るまでの約一年間に、三四回にわたつて就業規則違反行為すなわち就業規則第五九条一号、三号ないし六号、八号および一六号に該当する行為をなしたが、その間、昭和四一年一一月二四日に前記9ないし13の就業規則違反の事実を理由に出勤停止七日間の、また昭和四二年四月一五日に前記16、20、21の各無断欠勤を理由に減給(平均賃金の一日分の半額四六二円)の懲戒処分を受けた。しかるに、申請人は、右減給処分後に七回に亘り就業規則違反行為を重ねた。

以上のとおり、申請人には就業規則違反の回数が多く、そのうえ種類も多岐にわたつており、その間、二回に亘つて懲戒処分を受けながら、今なお改悛の情が認められない。かゝる事情は、まさに「就業規則第五九条に該当し、その程度の重いとき、」すなわち四九条九号に該当するものといわなければならない。

(4) なお、先に述べたように、本件においては、前記懲戒処分の理由となつた9ないし13および16、20、21の各事実も解雇理由として主張するものであるが、これは本件解雇が就業規則四九条九号の予告解雇であつて、いわゆる一事不再理の原則が妥当しないことによるものである。

(二)  被申請人会社が、申請人に対して本件解雇をなすに当つては、被申請人会社と明治乳業労働組合との間の労働協約四八条に基づき、昭和四二年五月二七日、あらかじめ同組合に対して解雇理由1ないし34の事実を通知し、かつ三〇日分の解雇予告手当並びに退職金、期中退職賞与および六月分賃金として、金一一〇、四八二円を提供した。

しかし、申請人は、右金員の受領を拒絶したので、被申請人会社は同年六月一六日福岡法務局に前記金員を弁済供託したところ、申請人は昭和四四年六月一六日右供託金の還付を受けた。

第四、被申請人の主張に対する申請人の認否および主張

一、認否

(一)  被申請人の主張(一)の(1)の冒頭の事実、すなわち、被申請人がその主張の日に申請人を解雇する旨意思表示をなしたことは認めるが、申請人に対する解雇通知書記載の解雇理由は、被申請人主張の解雇理由22ないし34掲記の各事実であり、これらが就業規則四九条九号、五九条一号、三ないし六号、八号、一六号に該当するということであつた。

(二)  同(一)の(1)の事実中

1の事実は不知。かりに被申請人主張の事実があつたとしても、職場内での牛乳の盗飲は従業員間でしばしば行なわれていたものである。

2の事実につき被申請人主張のような事実が一度あつたことは認めるが、日時については不知。当時、申請人は試験室勤務であつたが、当日は午前の作業を一一時四五分に終了していたので、午後の始業時刻は午後〇時四五分であつたもので、申請人には被申請人主張のような不就労の事実はない。なお、試験室の昼休時間帯は一定しておらず、日によつて異るものである。

3の事実は否認する。

4の事実のうち牛乳が完成品であるとの点は否認し、その余は認める。右の牛乳は充填前の牛乳であつて、前記1において述べたように職場内での牛乳の盗飲は当時従業員間でしばしば行なわれていたものである。

5、6の事実はいずれも否認する。

7の事実のうち申請人が次亜塩素酸曹達液用器の首の部分を切断したのが勤務時間中であつたこと、および工務主任北島万督がその中止を命じたことはいずれも否認し、その余の事実は認める。申請人は昼休中、不要になつた次亜塩素酸曹達液用容器を金魚鉢に作りかえただけのことである。

8の事実は否認する。

9の事実のうち、申請人が午後一時三分まで職務を放棄したとの点は否認し、その余の事実は認める。当時大型びん職場は会社側の監視が強く、臨時雇であつた権丈孝子外一名が昼休時間も十分とれずに働いていたので、昼休みを規則どおり一時間とるように、また職場の五人全部で一緒に作業しないと不良品ができるから、皆と歩調を合わせるようにとの趣旨からスイツチを切つたのであり、それも極めて僅かな時間であつた。

10の事実は否認する。

11の(イ)の事実は否認する。殿木係長が就業時間中に一〇分間の休憩を許可する筈はなく、一服時間のことをいつているものと考えられる。

同(ロ)の事実は否認する。当時就業時間中に申請人のみが他の従業員と異つた行動をとつた事実はない。

12の事実のうち、志賀係長が申請人に塩素水の吹上げを行なうように注意したことは認めるが、その余の事実は否認する。通常洗びん作業は三人で行なうものであり、塩素ポンプの作動を誰がするかは別に決つているわけではないから、特に申請人のみを注意するのは片手落である。

13ないし16の事実はいずれも否認する。

17の事実は否認する。申請人は洗浄作業終了後、ただちに組立作業にとりかゝり、予定どおりこれを完了した。

18の事実中申請人が就業時間中組合ニユースを読んだことは認めるが、その余の事実は否認する。申請人が組合ニユースを読んだのは仕事が一段落した暇のときで、その時間もわずか二分間に過ぎない。

19、20の事実はいずれも否認する。

21の事実は否認する。16、20、21の事実はいずれも申請人が欠勤の届出をしたにもかかわらず、会社が無断欠勤扱いにしたものである。

22の事実のうち申請人が無断で職務を放棄したとの点は否認するが、その余の事実は認める。給びん作業は、空びんを運ぶコンベアの速度と、洗びん機の速度との関係で、約一〇分おきに三、四分間の暇な時間を生ずるが、この間に申請人は黒板に被申請人主張のような落書をしたものである。この時間を利用して黒板に落書することは、他の従業員達も通常なしていたことである。

23の事実のうち、被申請人主張の日時、場所において、三〇部前後の「福岡民報」なるビラを無許可で配布し、さらに、食堂内に居あわせた従業員にこれを無許可で配布した事実は認めるが、その余の事実は否認する。被申請人会社福岡工場では昼休中各種のビラ、ニユースを配布するのは職場の慣行になつていたのに、柳川舜一において、申請人が折角配布したビラを取りかたづけて破り捨てたので、他の組合員とともに抗議したのである。

24の事実は否認する。

25の事実のうち、かねて職場で牛乳を飲むことが禁止されていたこと、申請人の飲んだ牛乳が完成品であること、および盗飲であるとの点は否認するが、その余の事実は認める。申請人は量不足の不良品を飲んだもので、そのようなことは当時従業員間で通常行なわれていたが、それまで被申請人会社から注意を受けたこともなかつた。

26の事実は否認する。

27の事実のうち、被申請人主張の日時に申請人が組合ニユースを読んだことは認めるが、その余の事実は否認する。申請人は職務を放棄して組合ニユースを読んだのではなく、仕事が一段落して暇ができたときに読んだものである。

28の事実は否認する。

29の事実のうち申請人が無断で職場を離れたことは否認するが、その余の事実は認める。職場を離れたのは便所に行くためであり、従来オリンピツクや選挙開票速報などの時には、従業員が就業時間中にテレビを見ることはよくあつたが、当日は衆議院議員選挙の開票日で、食堂では他にも従業員がテレビを見ていたものである。

30の事実は否認する。申請人が職場を離れたのは一服時間である。

31、32の各事実はいずれも否認する。

33の事実のうち、申請人が被申請人主張の解雇理由16、20、21の各無断欠勤を理由として会社より懲戒処分を受けたことは認めるが、その余の事実は否認する。

34の事実は認める。ただし、申請人が同年三月三一日に欠勤したのは、確かに病気であつたからで、仮病をつかつたのではない。

(三)  同(一)の(2)のうち被申請人主張の就業規則の条文が別紙のとおりであることは認めるが、その余は争う。

(四)  同(一)の(3)の事実のうち、申請人が昭和四一年一一月二四日に出勤停止の、また、翌四二年四月一五日に減給の各懲戒処分を受けた事実は認めるが、その余は否認する。

(五)  同(二)の事実は認める。ただし供託金の還付は、給料として受取つたものである。

二、申請人の主張

(一)  本件解雇は、労働組合法七条一号、三号の不当労働行為に該当するから無効である。

(1) 明治乳業労働組合福岡支部は被申請人会社福岡工場ができた昭和三五年六月に結成されたが、当初、同支部執行委員は職制が毎年持ち廻り制で就任し、労働条件等に関する組合員の諸要求を実現するために何ら積極的な役割を果さない、いわゆる御用組合であつた。

(2) 申請人はかゝる労働組合のあり方に疑問を抱き、昭和三八年支部執行委員となつて積極的に組合運動に参加するようになり、昭和三九年には、申請人の活溌な組合活動により支部執行委員長のリコール署名運動が起り、同年の臨時総会において職制の支部執行委員長は解任され、申請人がその後任に選任された。その後申請人は昭和四〇年、次いで翌四一年には組合支部書記長をつとめ、昭和四二年には代議員会議長に就任した。

(3) 申請人が前記臨時総会において支部執行委員長に選任された後、執行委員全員が新しく選任され、青年婦人部、組織部、教宣部、調査部、福利厚生部、機関紙部などが再編成されて組織の強化が図られ、組合ニユースも頻繁に発行されて、日常の組合活動や経営協議会の模様などが詳細に組合員全員に報告されるようになり、運動面においては、組合の賃金、労働時間その他一切の諸要求を実現させるため、職場集会や最低賃金制、小選挙区制などの学習会も企画され、あるいは、かつては一度も参加したことのなかつたメーデーや、原子力潜水艦寄港反対、日韓条約批准反対デモ等の労働組合の統一行動にも参加し、広範な組合運動を展開する民主的労働組合として成長して来た。

(4) 申請人の活溌な活動は、明治乳業労働組合福岡支部を右のように発展させるための大きな役割を果した。そこで、被申請人は、同支部が真に階級的民主的労働組合として成長することを恐れ、同支部を弱体化ないし壊滅させることを意図し、同支部に重要な役割を果している申請人を解雇しようと企て、解雇事由からも窺えるように、申請人の工場内における行動を監視、調査したうえ、被申請人が疎明として提出しているような報告書を作成する等、綿密な計画のものとに申請人の些細な行為に言い掛りをつけて、申請人を解雇したものである。したがつて、申請人に対する本件解雇は、申請人の正当な組合活動を理由とする不利益取扱いであるとともに、組合の壊滅を目的とする支配介入であるから、本件解雇の意思表示は無効である。

(二)  本件解雇は権利の濫用であるから無効である。

すなわち、申請人は平素から無断欠勤や早退遅刻などはほとんどなく、他の従業員と比較しても勤務成績は良好であり、本件解雇事由とされている前記各事実はいずれも真実に反するものである。かりにそのような事実があつたとしても、それらはいずれも些細なとるに足らない事実であり、被申請人会社の業務の遂行に支障を来すものではない。他方、申請人は、本件解雇によつて職を失い、申請人およびその家族は路頭に迷うことになり、莫大な損害を蒙つている。よつて、本件解雇の意思表示は解雇権の濫用であつて無効である。

第五、申請人の主張に対する被申請人の認否

(一)  申請人の認否(一)の申請人に対する解雇通知書記載の解雇理由がその主張のとおりであることは認める。

(二)  本件解雇の不当労働行為との主張は争う。

1  申請人の主張(一)の(1)のうち明治乳業労働組合福岡支部が被申請人会社福岡工場ができた当初から存在していたことは認めるがその余の事実は否認する。

2  同(一)の(2)のうち、申請人がその主張のような組合役職に就任した事実は認めるが、その余の事実は不知。

3  同(一)の(3)の事実は不知。

4  同(一)の(4)の事実は否認する。

(三)  解雇権濫用に関する主張はすべて争う。

第六、疎明関係<省略>

理由

一  被申請人が、乳製品、乳飲料、加工乳の製造販売を業とし住所地に本店を置き、福岡市ほか数十箇所に工場、営業所を有する株式会社であり申請人が、昭和三六年四月一日被申請人会社に雇用され、同会社福岡工場に勤務していたものであり、明治乳業労働組合福岡支部の組合員であつたこと、被申請人が昭和四二年六月一五日申請人に対し、予告解雇の意思表示をなし、同日三〇日分の予告解雇手当を提供したことは当事者間に争いがない。

二  そこで被申請人のなした右解雇の効力について判断する。

(一)  被申請人会社の就業規則七条、九条、一四条、一六条、四九条、五九条の各条文がそれぞれ別紙のとおりであることは当事者間に争いがない。

(二)  ところで、本件において、被申請人は、解雇理由すなわち就業規則四九条九号にいう同五九条各号の懲戒事由に該当する行為として、事実欄第三の二の(一)記載の解雇理由1ないし34の事実を主張する。

しかし、申請人は被申請人から、すでに、昭和四一年一一月二四日、右9ないし13と同一事実により出勤停止七日間のまた翌四二年四月一五日右16、20、21と同一事実により減給の各懲戒処分を受けており(以上の事実は当事者間に争いがない)、本件解雇の実質が懲戒処分であることは後記認定のとおりであるから、本件解雇において右各事実を再度解雇理由として取り上げることは、いわゆる一事不再理の原則の趣旨に照らして許されないものと解すべきである。

被申請人は、この点につき、本件解雇は就業規則四九条の予告解雇であり、同五九条の懲戒解雇ではないから、一事不再理の原則は適用がない旨主張するが、四九条九号による本件解雇はもともと五九条所定の懲戒事由に基づいてなさるべきものであり、また四九条九号において、五九条の懲戒事由に該当し、しかもその程度が重いときを予告解雇の一事由とした主たる趣旨は、従業員が懲戒解雇に値する行為をなした場合にも、従業員を懲戒解雇にすれば、争議の誘発その他従業員またはその所属する団体の烈しい抵抗を引き起す危険があり、また従業員の再就職に支障を生ぜしめることがあり、退職金その他についても予告解雇以上の不利益を伴うので、相互の利益のために、たとえそれが被申請人の自由裁量の範囲に止るにせよ、懲戒解雇を回避して、予告解雇の手段を選ぶことができることを明らかにしたものと解することができ、しかも、本件解雇が右にいう懲戒解雇理由に当たる行為を理由に予告解雇をした場合であることは後記認定のとおりであるから、本件解雇の実質は懲戒解雇にほかならず、従つて、すでに懲戒処分に付された事実を、さらに懲戒のための解雇の事由となすことは相当でないから、被申請人の右主張は採用の限りでない。

(三)  よつて、以下においては、被申請人が解雇理由であると主張する前記1ないし34の事実のうち、右一事不再理の原則の趣旨に牴触する9ないし13および16、20、21の各事実を除いたその余について、順次、就業規則五九条の懲戒事由に該当するか否かを検討する。

1  被申請人主張の解雇理由1の事実について

証人柳川舜一の証言(第一回)および同証言により真正に成立したものと認める疎乙一一号証によれば、解雇理由1の事実が認められ、これに反する疎明はない。申請人は右牛乳盗飲について、それは従業員間でしばしば行なわれていたことであると、いかにも被申請人会社が黙認していたから許されるかのごとく主張する。なるほど、証人後藤春士の証言により真正に成立したものと認められる疎甲六号証、証人神崎和義の証言により真正に成立したものと認める疎甲七号証、申請人本人尋問の結果により真正に成立したものと認める疎甲一二号証、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認める疎甲五、八号証、右証人後藤春士、神崎和義の各証言および申請人の本人尋問の結果によれば、昭和四一、二年頃に、福岡工場において、従業員のうちには牛乳、とくに量不足やキヤツプが正しくつけられていない不良品または再生品、或いは製造過程にある未完成品などを飲んでいた者があつたことが窺われるが、前示疎乙一一号証、証人殿木経男の証言により真正に成立したものと認める疎乙一四号証、証人渡辺茂治の証言により真正に成立したものと認める疎乙四号証、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認める疎乙四三号証の一および証人柳川舜一(第一回)、殿木経男、渡辺茂治、斉藤一三の各証言によれば、被申請人会社では、昭和三六年頃から従業員に昼食時に牛乳を各人に一本ずつ無料で配布していたが、さらに、福岡工場においては、昭和四一年頃から、牛乳の味覚検査をする者を明確に定めて、盗飲と試飲とを識別できるようにし、その頃、同工場守衛室内に牛乳入りのシヨーケースを設置し、従業員に市価より低廉な価格で販売するなどの措置を講じる一方、工場内に、牛乳については、未完成品或いは再生品、不良品といえども飲んではならない旨を掲示し、係長、主任などの職制および専門職員は、従業員が牛乳を盗飲している場合には、直ちに注意して、これを止めさせていたこと、また実際に盗飲した臨時従業員の再雇用を取り止めたり、一般従業員を懲戒処分に付したりした事実が認められ、かゝる事実に徴すれば、申請人主張のように、当時牛乳の盗飲が従業員間でしばしば行なわれていたとしても、それは右従業員らが許されないのを知りながら、職制らの目を盗んで適当に飲んでいたに過ぎないものと見られるのであつて、それが被申請人の黙認するところで許された行為であるとは解されないから、申請人の右主張は採用するに由ない。

右事実は、就業規則五九条四号前段(会社の金品の私物化)に該当する。

2  同2の事実について

証人殿木経男の証言および同証言により真正に成立したものと認める疎乙一二号証によれば、解雇理由2の事実を認めることができる。

申請人は、当時は、福岡工場の試験室勤務であつたところ、試験室は午後の始業時刻が日によつて異なり、当日は午前の作業が一一時四五分に終了したので、午後の始業時刻は午後〇時四五分であつたと主張しているが、申請人の主張を認めるに足る疎明はなく、かえつて証人殿木経男、斉藤一三の各証言、申請人本人尋問の結果によれば、申請人は、昭和四〇年一一月以降は、同工場大型びん職場に勤務しており、当日同職場における申請人の午後の始業時刻は午後〇時三〇分であつたことが明らかであるから、申請人の右主張は採用できない。

右事実は、就業規則五九条一号(会社の諸規定―同九条四号〔職場離脱、職務放棄〕―違反)に該当する。

3  同3の事実について

証人殿木経男の証言および同証言により真正に成立したものと認める疎乙一三号証によれば解雇理由3の事実が認められ、これに反する疎明はない。

右事実は就業規則五九条一号(会社の諸規定―同九条四号〔職場離脱、職務放棄〕―違反)、六号(勤務怠慢)に該当する。

4  同4の事実について

申請人が昭和四一年七月二七日午後二時頃の就業時間中、大型びん職場において、牛乳五〇〇ミリリツトル入り一本を窃取し、ガラスコツプに注いで、作業中の他の従業員に飲ませたことは当事者間に争いがなく、右牛乳が完成品であつたことは証人殿木経男の証言およびこの証言によつて真正に成立したものと認める疎乙一四号証によつて明らかであり、これに反する疎明はない。申請人は、職場内での牛乳の盗飲は、当時従業員間でしばしば行なわれていたと主張するが、たとえそのような事実があつたとしても、かゝる盗飲行為の許されるものでないことは前記1で判断したとおりであるから、申請人の右主張は採用できない。

右事実は就業規則五九条四号前段(会社の金品の私物化)に該当する。

5  同5の事実について

証人殿木経男の証言および同証言により真正に成立したものと認める疎乙一五号証によれば解雇理由5の事実を認めることができ、これに反する疎明はない。

右事実は就業規則五九条六号(勤務怠慢)、一六号(他の従業員の業務妨害)に該当する。

6  同6の事実について

証人渡辺茂治の証言および同証言により真正に成立したものと認める疎乙一六号証によれば、解雇理由6の事実を認めることができ、これに反する疎明はない。

右事実は就業規則五九条一号(会社の諸規定―同九条四号〔職場離脱、職務放棄〕―違反)に該当する。

7  同7の事実について

申請人が昭和四一年九月二一日午前一〇時三〇分頃、大型びん職場を離れ、工作室において、次亜塩素酸曹達液用容器(ガラス製二三キログラム入り)の首の部分をデイスクサンダーで切断し、翌二二日その切断後の容器にどじよう、たにし等を入れて、その職場に持ち込んだことは当事者間に争いがなく、証人古瀬基海の証言、同証言によつて真正に成立したものと認める疎乙一七号証の二および弁論の全趣旨によつて真正に成立したものと認める同号証の一によれば、申請人が右容器の首の部分を切断したのは申請人主張のように昼休時間ではなく、同月二一日午前一〇時三〇分頃の就業時間中であつたこと、しかして、工務主任北島万督は申請人にその中止を命じたが、申請人はこれに従わなかつたことが窺われ、これに反する疎明はない。

右事実は就業規則五九条一号(会社の諸規定―同九条四号〔職場離脱、職務放棄〕―違反)、四号後段(会社内での私物作成)に該当する。

8  同8の事実について

証人加藤孝雄の証言および同証言により真正に成立したものと認める疎乙一八号証によれば、解雇理由8の事実を認めることができ、これに反する疎明はない。

右事実は就業規則五九条三号(上司命令不服従)、六号(勤務怠慢)に該当する。

9  同14の事実について

証人坂上出穂の証言および同証言により真正に成立したものと認める疎乙二四号証によれば解雇理由14の事実が認められ、これに反する疎明はない。

右事実は就業規則五九条三号(上司命令不服従)、六号(勤務怠慢)に該当する。

10  同15の事実について

証人坂上出穂の証言および同証言により真正に成立したものと認める疎乙二五号証によれば、解雇理由15の事実を認めることができ、これに反する疎明はない。

右事実は就業規則五九条一号(会社の諸規定―同九条四号〔職場離脱、職務放棄〕―違反)、三号(上司命令不服従)に該当する。

11  同17の事実について

証人渡辺茂治の証言および同証言により真正に成立したものと認める疎乙二六号証によれば解雇理由17の事実が認められ、これに反する疎明はない。

申請人は、洗浄作業終了後ただちに組立作業に移り、これを完了したと主張しているが、前掲疎明によれば、申請人は洗浄したのみで同工場主任渡辺茂治が指示したにもかかわらず、組立作業をしないまま退社し、渡辺茂治において組立を完了した事実が認められるから、申請人の右主張は採用できない。

右事実は就業規則五九条三号(上司命令不服従)、六号(勤務怠慢)に該当する。

12  同18の事実について

証人渡辺茂治の証言により真正に成立したものと認める疎乙二七号証の一、二並びに弁論の全趣旨によれば、申請人は、昭和四二年二月一四日午後二時頃の就業時間中、その職場である大型びん職場を離れ、空びん置場(戻りびん室)に赴き、その職務を怠つて組合ニユースを読み(申請人が就業時間中に組合ニユースを読んでいたことは当事者間に争いがない。)、前記渡辺主任より注意されたが、これに従わなかつた事実が認められ、これに反する疎明はない。

申請人は、組合ニユースを読んでいたのは作業が一段落した暇のときで、僅か二分間に過ぎないと主張し、前掲疎明資料によれば、大型びん職場ではあらかじめ当日の申請人らの作業分担が定められており、勤務時間中といえども、作業の工程において手の空くことも珍らしくなかつたことが窺われるが、他方、同職場は、右のように一応作業の分担は決めるものの、流れ作業方式による完全分業制を敷いていたわけではなく、たまたま手の空いた従業員は職場の他の同僚の作業を手伝うことが要求されており、同日は申請人が職場を離れて、空びん置場で組合ニユースを読んでいた際、職場の他の同僚は作業に就いていたことが右の資料によつて疎明されるから、いかに自己の分担する作業の手が空いたからとはいえ、また閲読の時間が短時間であつたとはいえ、職場の他の同僚の作業を手伝うことをせずに職場を離脱して他の職場に赴き、組合ニユースを読んでいた申請人の行為は、正当化されるに由ない。

次いで、証人渡辺茂治の証言および同証言により真正に成立したものと認める疎乙二七号証の二によれば、解雇理由18の後段の事実を認めることができ、これに反する疎明はない。

右各事実は就業規則五九条一号(会社の諸規定―同九条四号〔職場離脱、職務放棄〕―違反)、三号(上司命令不服従)、六号(勤務怠慢)に該当する。

13  同19の事実について

証人渡辺茂治の証言および同証言により真正に成立したものと認める疎乙二八号証によれば、解雇理由19の事実が認められ、これに反する疎明はない。

右事実は、就業規則五九条一号(会社の諸規定―同九条四号〔職場離脱、職務放棄〕―違反)、六号(勤務怠慢)に該当する。

14  同22の事実について

解雇理由22の事実(ただし、申請人が無断で職務を放棄したとの点を除く。)は当事者間に争いがない。

そして、証人高木寿春、後藤春士の各証言および申請人本人尋問の結果によれば、当日、申請人は、大型びん職場から洗びん職場に応援に赴き、給びん作業に従事していたものであるが、給びん作業中には、空びんを運ぶコンベアの速度と洗びん機の速度との関係で、約一〇分おきに二、三分の手の空く時間が生じたので、申請人はこの間を利用して前認定のような落書をしたこと、従前も従業員のなかには、申請人同様右手空き時間に黒板に落書をするものがあつたことが一応認められる。しかし、前記疎乙一号証、証人殿木経男の証言によれば、右黒板は、不断あまり使用されていなかつたとはいえ、業務用のものであることが疎明され、また手空き時間といつても、それはまだ使用者の指揮監督のもとにある就業時間に含まれることが明らかであるから、手空き時間中の業務用黒板への落書をもつて、休憩時間ないし後記一服時間中における諸活動と同列に扱うことはできない。申請人が、本件落書を行なうについて許可のなかつたことは前認定のとおりであり、会社側がこれを黙認していたことを認めるに足る疎明もないから、申請人の前示行為は、少なくとも就業規則一四条に違反するというべきである。

右事実は就業規則五九条一号(会社の諸規定―同一四条〔会社における無断掲示〕―違反)に該当する。

15  同23の事実について

申請人が昭和四二年四月一四日、午前一一時三〇分頃、同工場食堂において、各食卓上に数部ずつ計三〇部前後の「福岡民報」なるビラを無許可で配布し、さらに、食堂内に居合わせた従業員にそれを無許可で配付した事実は当事者間に争いがなく、証人柳川舜一の証言(第一回)により真正に成立したものと認める疎乙二号証、右証人柳川舜一(第一回)の証言(いずれも後記措信しない部分を除く)、申請人の本人尋問の結果によれば同工場専門職員柳川舜一は、申請人が卓上に置いた前記ビラ(昭和四二年三月一九日付福岡民報社発行「今すぐこれだけは 共産党緊急政策を発表」等)を発見して、これを取りかたづけようとしたところ、これを見た申請人は右柳川の左腕をつかんで引つぱり、その左肩口を突くとともに「この野郎うつたたくぞ」と申し向けて、同人が拾い集めた「福岡民報」を取り上げて、前記のようにこれを食堂内の従業員に配付したこと、そして、申請人が右ビラを配付したのは、昼休みの休憩時間中であつたことが認められ、証人柳川舜一の証言(第一回)および前掲疎乙二号証(柳川舜一作成の報告書)中右認定に牴触する部分は、措信できず、他に右認定を左右するに足る疎明はない。

ところで証人斉藤一三、後藤春士の各証言によつて認められる組合が右ビラの配付に何ら関与していない事実と右ビラの標目とを合わせて考えれば、右ビラの配付は申請人個人の一種の政治的活動とみるほかないが、休憩時間中は、一時的に労働者が労働義務から解放され、使用者の労働指揮権が及ばないのであるから、その間は労働者の自由な利用に委ねらるべきものであり、組合活動であると政治活動であるとを問わず自由に行ない得るのが原則である。ただそれが企業施設内で行なわれるかぎり、使用者の施設管理上の規律に服することは認めなければならないけれども、政治的活動が憲法一四条一項、一九条、二一条によつて保障される個人の基本的権利であることを考えれば、それが禁止されるのは、現実かつ具体的に経営秩序が紊され、企業活動に支障を生ずる行為、たとえば喧噪、強制にわたるなどして、他の労働者の就労に悪影響を及ぼし、休憩時間の自由使用の妨げとなるもの等に限定されると解すべきである。

これを本件について見るのに、申請人は右ビラを休憩時間中に食堂の卓上に静かに置いていたもので従業員が右ビラを受け取るか否かは全く各人の自由に委されており、また申請人が柳川から右ビラを取り上げた後は、自らそこに居合わせた従業員に配付して回つたとはいえ、それを受領し、閲読し、または廃棄することも全く各人の自由に委されていたものと推測され、右ビラ配付行為によつて他の従業員の就業に悪影響を及ぼし、休憩時間の自由使用が妨げられたとはとうてい認められないし、その他申請人の本件ビラ配付行為が被申請人会社の経営秩序を紊し、生産能率を低下させたことの疎明もない。

そうだとすると、申請人の一種の政治活動としてなされた本件ビラ配布行為は就業規則一四条の規制しているビラ配布行為には該当しないものと解するのが相当である。

ところで、申請人が柳川の左腕を引張り、左肩口を突くとともに「この野郎うつたたくぞ」と申し向けた行為については、申請人は、右のように、もともと許可を要しない正当なビラ配布行為を柳川から妨害されたことから、同人に対する抗義のつもりで、右のような行為に出たもので、「この野郎うつたたくぞ」といつたのも、同人が一方的にビラを取りかたづけ捨てようとしたことに対して、怒りを感じた結果からと思われ、申請人が柳川の行為に怒りを感ずるのも無理からぬところであり、その一端の責任は柳川にもあり、柳川においても申請人の右行為によつて傷害を被つたような事実も認められず、受けた暴行も極めて軽微なものであつたことなど諸般の事情を考慮すれば、申請人の右行為は就業規則五九条八号にいう「脅迫暴行」に該当しないものというべきである。

そうだとすれば、申請人の本件行為は何ら就業規則に該当するものでないといわなければならない。

16  同24の事実について

証人渡辺茂治の証言および同証言により真正に成立したものと認める疎乙三号証の一、二によれば、申請人は、昭和四二年四月一七日午後三時頃、工場空びん置場(戻りびん室)において、従業員である坂巻ほか四名に対し、無許可で被申請人主張の「立花高光出陣式の御案内」なるビラを配付したことが認められ、右認定に反する申請人本人尋問の結果およびこれによつて真正に成立したことの認める疎甲一二号証(申請人作成の陳述書)、証人後藤春士の証言によつて真正に成立したものと認める疎甲六号証(後藤春士作成の陳述書)は、いずれも措信できず、他にこれを左右するに足る疎明はない。

ところで、右疎甲六号証、疎乙三号証の二、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認める疎乙四三号証の一、証人殿木経男、後藤春士の各証言および申請人本人尋問の結果によれば、当時、福岡工場においては、就業規則で定められている昼の休憩時間以外に、各職場毎に午前一〇時頃および午後三時頃の二回に、用便を済ませたり、喫煙をするために、いずれも一〇分程度のいわゆる一服時間と称する休憩の制度が慣行として確立していたこと、しかして、申請人は、同日、右一服時間を利用して、休憩中の坂巻ら五名に前記ビラを配布したこと、そして、このビラ配布は、前示「福岡民報」の場合と同様、組合支部の組合活動としてではなく、申請人個人の一種の政治的活動としてなされたことが一応認められ、これを覆すに足る疎明はない。

そこで、申請人のいわゆる一服時間における無許可のビラ配布行為が就業規則一四条に該当するか否かについて考える。前示のように一服時間が慣行として確立した休憩時間と見られる以上、既述の手空き時間と異なり、申請人ら従業員はその時間中は被申請人会社の指揮、監督のもとにおける労務提供の義務から解放されるものというべきである。従つて、右該当性判断の基準については、先に15の休憩時間中の「福岡民報」配布行為の判断の個所で説示したところと何ら径庭はない。

そして、本件全疎明によつても、申請人の右ビラ配布行為が他の従業員の就業に悪影響を与え、もしくは従業員の一服時間の自由使用を妨げるなどして被申請人会社の経営秩序を紊し、生産能率を低下させたとは認められないから、結局、右行為は、前同様、就業規則一四条の規制しているビラ配布行為に該当しないものといわねばならない。

17  同25の事実について

解雇理由25の事実(ただし、かねて職場で牛乳を飲むことを禁止されていたこと、申請人の飲んだ牛乳が完成品であることおよび盗飲であるとの点を除く)は当事者間に争いがない。

被申請人は、申請人が飲んだ牛乳はプルパツクコーヒー牛乳一八〇ミリリツトル入りの完成品であると主張するが、申請人の飲んだ牛乳がその主張のように完成品であることの疎明はない。しかし、右牛乳が申請人主張のように量不足の不良品であり、このような牛乳を飲むことが、当時従業員間で通常行なわれていたとしても、前記1で述べたとおり、かかる行為は当時、被申請人会社において禁止され、職制らによつて監視されていたのであるから、申請人は牛乳を盗飲したことには相違なく、就業規則違反の責を免れることはできない。

右事実は、就業規則五九条四号(会社金品の私物化)に該当する。

18  同26の事実について

証人渡辺茂治の証言および同証言により真正に成立したものと認める疎乙四号証によれば、解雇理由26の事実が認められ、これに反する疎明はない。

右事実は、就業規則五九条四号(会社金品の私物化)に該当する。

19  同27の事実について

申請人が昭和四二年三月二一日午後二時頃の就業時間中、組合ニユースを読んでいたことは当事者間に争いがなく、証人渡辺茂治の証言および同証言により真正に成立したものと認められる疎乙五号証によれば、製造主任渡辺茂治が申請人の右行為を注意し、直ちに就労するよう指示したのに対し、抗弁するなどして、その指示に従わず、午後二時三分過ぎまで、その職務を放棄していたことが認められ、申請人の本人尋問の結果も右認定を覆えすに足らず、他に右認定を左右する疎明はない。

申請人は組合ニユースを読んだのは仕事が一段落して暇なときであると弁解するが、右各疎明によれば、その時刻には職場の他の同僚はなお仕事を続けていたことが認められるから、かりに、申請人に分担された作業の手が一時空いたとしても、すでに前記12で判示したと同様の理由により、職場の他の同僚の作業を手伝うことをせず、組合ニユースを読んでいた申請人の行為は、一時職務を放棄し、職務を怠つたもので許されないものというべきである。

右事実は、就業規則五九条一号(会社の諸規定―同九条四号〔職務放棄〕―違反)、三号(上司命令不服従)、六号(勤務怠慢)に該当する。

20  同28の事実について

弁論の全趣旨により真正に成立したものと認める疎乙六号証によれば解雇理由28の事実が認められ、これに反する疎明はない。

もつとも、前掲疎甲一二号証によれば、当日、申請人は午後零時三〇分から午後一時三〇分までの間、隣接する洗びん職場に応援作業に行き、その後再び自己の大型びん職場に戻つて就業することとなつていたことが窺われ、通常右のような職場交替のとき用便を済ませることがあるとしても、申請人が作業開始時刻から六分余を経過してなお作業を開始できる態勢になかつたことについては、職場離脱、職務放棄の責を問われても止むを得ない。

右事実は、就業規則五九条一号(会社の諸規定―同九条四号〔職場離脱、職務放棄〕―違反)に該当する。

21  同29の事実について

解雇理由29の事実(ただし、申請人が無断で職場を離脱したとの点を除く)は当事者間に争いがない。

申請人は、職場を離れたのは便所にゆくためであり、その帰りに、テレビで衆議院議員選挙の開票結果が放映されており、かゝる場合は、それまで就業時間中でもよく見ていたので、他の従業員とともにテレビを見ていたものであると主張するが、当日が各都道府県知事の選挙などいわゆる統一地方選挙が挙行された翌日であることは当裁判所に顕著な事実であり、この事実と、証人後藤春士の証言により真正に成立したものと認める疎甲六号証、証人高木寿春の証言および申請人尋問の結果によれば、申請人は当日午後四時頃便所に行くべく職場を離れたが、その帰途たまたま工場食堂内のテレビで、右選挙の開票結果が放映されており、かゝる場合は、従前もよくテレビを見ていたので、何気なく他の従業員とともにテレビを見ていたことが一応認められるが、証人加藤孝雄の証言により真正に成立したものと認める疎乙七号証および申請人尋問の結果によれば、申請人がテレビを見ていた時間は約五分間であることが認められるから、申請人の職場離脱、職務放棄等の行為はその許容される限度を越えたものといわざるを得ない。

右事実は、就業規則五九条一号(会社の諸規定―同九条四号〔職場離脱、職務放棄〕―違反)、六号(勤務怠慢)に該当する。

22  同30の事実について

弁論の全趣旨により真正に成立したものと認める疎乙八号証によれば、解雇理由30の事実を一応認めることができる。

なお、右疎乙八号証および申請人本人尋問の結果によれば、申請人の職場では当日午後二時五〇分頃、職場の全員が一服時間の休憩をとつたことが認められるが、前記16で認定したとおり、一服時間はおよそ一〇分間程度であつたから、午後三時一〇分頃まで申請人が自己の職場に戻らなかつたことについては、申請人は職場離脱、職務放棄等の責を免かれ得ない。

右事実は、就業規則五九条一号(会社の諸規定―同九条四号〔職場離脱、職務放棄〕―違反)、六号(勤務怠慢)に該当する。

23  同31の事実について

証人殿木経男の証言により真正に成立したものと認める疎乙九号証、証人殿木経男の証言、申請人本人の尋問の結果によれば、申請人は、昭和四二年四月二一日午後三時三〇分頃、管理職員殿木経男から、あらかじめ、同日午後四時三〇分以降引き続き大型びん職場において時間外勤務に従事すべきことを指示されていたが、午後四時三〇分頃、平常の勤務時間が終了するや、同職場を離れ、午後四時四五分頃、同工場更衣室前において、前記殿木が指示どおり就労するように注意したにもかかわらず、これに従わず、早退した事実が認められ、これに反する疎明はない。

そこで、申請人に当日残業義務があつたか否かについて検討するに、前掲各疎明および疎乙三三号証によれば、被申請人は業務上必要がある場合には従業員に対し時間外勤務を命じ得るものとされ(労働協約六三条、就業規則二一条の二)、当時福岡工場の勤務時間は、午前八時三〇分から午後四時三〇分までで、昼の休憩時間が午前一一時三〇分から午後〇時三〇分まで、もしくは午後〇時三〇分から午後一時三〇分までの一時間であつたところ、残業を命ずるについては、あらかじめ、前月に、担当主任が従業員の希望や休日出勤の状況を勘案したうえ、翌月分の残業の割振り表を作成し、前日これを各従業員に口頭で通知したうえ、当日残業命令簿により残業時間を指示していたこと、本件の場合においても、あらかじめ、一カ月分の割振り表により、申請人に当日が残業日と指定されていたところ、前記のように管理職員殿木経男から、その日の午後三時三〇分に、一時間の残業をするようにとの指示を受け、申請人は特に何らこれに反対の意思表示をすることはなかつたが、午後四時三〇分になると先に認定したとおり早退した事実が認められる。

右認定の事実によれば、右一時間の残業は実働七時間を超えて法定八時間に至るまでのいわゆる基準時間内残業にあたるから、三六協定の締結の有無を問わず(労働協約第六三条は法定時間内は協定を要しないとする)、被申請人は前示労働協約、就業規則に基き、その従業員に対し右基準時間内残業を命ずることができるものと解すべきところ、前記認定のように、申請人は同日午後三時三〇分残業命令を受けて、その際、別段異議を申し述べなかつたのであるから、申請人はこれにより同日午後四時三〇分以降一時間の残業義務を負担するに至つたものといわねばならない。

もつとも、申請人尋問の結果および弁論の全趣旨によれば、右のように従業員が残業義務を負う場合でも、命じられた時間に実際に仕事がなければ、或いは命じられた仕事がすべて完了すれば、残業時間内であつても、従業員は帰宅していたことが窺われるけれども、前掲疎乙九号証、証人殿木経男の証言によれば、当日はまだ、ボツトルコンベアーの掃除、ゴミ、破びん捨、職場の後始末等の仕事が残つており、臨時従業員が実際に残業していた事実が認められる(右認定に反する申請人本人尋問の結果は措信できない)から、申請人が、同日午後四時三〇分、自己の職場を離脱し、前記殿木の注意にもかかわらず、早退して、残業命令に従わなかつた点を正当化することはできない。

右事実は、就業規則五九条一号(会社の諸規定―同九条四号〔職場離脱、職務放棄〕―違反)、三号(上司の命令不服従)、六号(勤務怠慢)に該当する。

24  同32の事実について

証人殿木経男の証言により真正に成立したものと認める疎乙一〇号証、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認める疎甲一〇号証、証人殿木経男の証言および申請人の本人尋問の結果を綜合すれば、申請人は、昭和四二年四月一七日午後二時一五分頃の就業時間中に、無断で、その職場である大型びん製造室を離れると共に、同室に備え付けてあるポリバケツを持ち、同職場から約八〇メートル離れた同工場旧煉乳室に赴き、同室北側の窓をあけて、同室内において作業中であつた従業員瓦田政義にかけようとして前記殿木経男より注意を受けた事実が認められ、右認定に反する申請人の本人尋問の結果の一部は前掲疎明に照して信用できず、他に右認定を覆すに足る疎明はない。

右事実は、就業規則五九条一号(会社の諸規定―同九条四号〔職場離脱、職務放棄〕―違反)、六号(勤務怠慢)に該当する。

25  同33の事実について

申請人が、解雇理由16、20、21の各無断欠勤を理由として被申請人会社より懲戒処分を受けたことは当事者間に争いがなく、証人柳川舜一の証言(第一回)および同証言により真正に成立したものと認める疎乙二九号証の一、二、申請人の本人尋問の結果(後記措信しない部分を除く)によれば、申請人には、昭和四一年四月より昭和四二年三月迄の一カ年間において、事故欠勤および無断欠勤(事後に年次有給休暇等に振替えを認めた欠勤および病傷欠勤を含まず)のべ一一日、遅刻、早退のべ一一回があり、これは福岡工場の従業員のうちでは極めて不良の部類に属すること、そして申請人は昭和四二年三月二三日にも病気と称して欠勤し、所定の手続をしなかつた事実が認められ、申請人の本人尋問の結果中右認定に反する部分はたやすく信用できないし、他に右認定を左右するに足る疎明はない。

右事実は、就業規則五九条一号(会社の諸規定―同一六条〔欠勤手続の遵守〕―違反)、五号(勤退不良)に該当する。

26  同34の事実について

申請人が、昭和四二年三月三一日、病気と称して欠勤し、同年四月三日に慢性肝炎、慢性胃炎との診断書を提出し、その後被申請人会社指定医師の精密診察検査を受けたことは当事者間に争いがないところ、成立に争いのない疎乙三八号証の一、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認める疎乙三八号証の二、証人斉藤一三、殿木経男の各証言、申請人本人尋問の結果によれば、欠勤当日、申請人は午後三時頃、福岡工場に出頭して、同工場管理職員殿木経男に対して、体がだるくて寝汗をかくので休ませて貰いたい旨申し入れたところ、殿木はこれに対して簡単な仕事でも割当てるから働くように勧めたが、申請人はこれに応ぜず、その帰途、福岡市内にある木村医院で診察を受け、同日付の前記診断書の交付を受けて、四月一日と二日は休暇を取り、前記のように翌三日被申請人会社に出勤した際、右診断書を提出したところ、当時同工場の工場長斉藤一三がこれを見て、申請人に被申請人会社の指定医師である桑原医院で精密検査を受けるよう指示したので、その指示に従い精密検査を受けた結果、同月一五日頃、同医院より被申請人会社宛に、異常なしとの診断書が提出されたことが認められる。右事実によれば、申請人は欠勤当日被申請人会社に出頭して、体の具合が悪いから、休暇を取る旨を連絡しており、提出は三日後になつたとはいえ、同日付の前記診断書を提出しているのであるから、申請人の欠勤はこれを病気欠勤であると認めるのが相当であり、前記のように、その後、他の医師により異常なしとの診断がなされた事実は、未だ当裁判所の右判断を左右せしめるものではない。

以上のとおりであるから、申請人の右行為は、被申請人主張の就業規則条項のいずれにも該当しないものというべきである。

(四)  以上のとおり、被申請人の主張する解雇事由のうち、1ないし8、14、15、17ないし19、22、25ないし33の事実が懲戒処分条項たる就業規則五九条に該当すると判断されたので、さらにすすんで、申請人の右各行為が同四九条九号にいう「五九条に該当し、その程度が重いとき」に当たるか否かについて検討する。

ところで、申請人の懲戒事由該当行為は、いずれも一つ一つは企業秩序維持の面で懲戒解雇に値するほど重大ではなく、2、6、8、14、15、17、18、30、31、33の解雇事由を除いて、例えば牛乳一本の盗飲(解雇事由1、4、25、26の事実)、五、六分未満の極めて短時間の職場離脱ないし職務放棄(同3、19、22、27ないし29、32の事実、しかも22、27の事実は手空き時間中のことであり、28の事実は職場交替の際のことである)、幼稚ないたずらといつてもよいホース等による水かけ(同5、32の事実)、日頃あまり使用されていない黒板への落書(同22の事実)等のごとく、むしろ些細な事柄に属するといつても過言ではない。

しかしながら、特に解雇事由8の事実は、公衆衛生の保持ないし品質管理の見地から無視できず、同14の事実は上司の指示を理由もなく無視して被申請人に損害を与えたものである点で、かなり悪質であり、また、同15の事実はかなり長い時間の職務放棄ないしは職場離脱であつて、軽視できない。のみならず、前示のように、申請人は昭和四一年一一月二四日、翌四二年四月一五日と半年の間に、二回に亘り、被申請人主張の解雇事由9ないし13および16、20、21の事実により懲戒処分を受けたのである(そして右解雇事由の存したことは、証人坂上出穂の証言および同証言により真正に成立したものと認める疎乙一九号証の一、二一号証の二、二三号証、証人殿木経男の証言および同証言によつて真正に成立したものと認める疎乙一九号証の二、三、二〇号証、二一号証の一、証人志賀重昂の証言および同証言によつて真正に成立したものと認める疎乙二二号証の一並びに証人柳川舜一の証言(第一、二回)および同証言により真正に成立したものと認める疎乙二九号証の一、二、三〇号証の二により一応認められる)が、申請人の前示懲戒事由該当行為は、右懲戒処分の前後で総計二三回と極めて多数にのぼり、しかも、前記(三)で認定したように、申請人は懲戒事由該当の行為のあつた多くの場合に、上司、職制らの注意を受けたにかかわらず、主として職場離脱、職務放棄等を理由として一回目の懲戒処分(前示昭和四一年一一月二四日の処分)を受けたのちも、なお同種の違反行為を一〇回にわたつて繰り返し(解雇事由17ないし19、22、27ないし32の事実)、かつ、半年間に二度の懲戒処分を受けながら、二回目の懲戒処分(前示昭和四二年四月一五日の処分)を受けて後も、右職場離脱ないし職務放棄等を含めて、懲戒事由該当の行為をさらに六回も反覆し(解雇事由25、26、29ないし32の事実)、盗飲、無断欠勤、職場離脱ないし職務放棄等多種多様な懲戒事由該当行為を重ねたものである点は、被申請人において、申請人に反省の色がないと強調するのももつともなことであり、その情状たるや決して軽いといえず、企業秩序維持の見地から被申請人が申請人を企業外に放遂したとしても誠に止むを得ないものというべきである。

そうだとすると、本件は、叙上の懲戒事由の存在を理由に懲戒解雇を相当として選択することすら可能といえる場合であるから、まさに就業規則四九条九号にいう「その程度が重いとき」に該当するといわねばならない。

(五)  なお、前掲疎乙三三号証によれば、本件解雇が手続上有効であるためには、労働協約四八条により、被申請人は申請人に予告解雇手当を支給するほか、あらかじめ申請人所属の組合に解雇理由該当の事実を通告することを要することが認められるが、被申請人が、本件解雇をなすに際しては、昭和四二年五月二七日、あらかじめ申請人の所属する明治乳業労働組合に対して、本件解雇理由1ないし34の事実を通知し、かつ、同年六月一五日申請人に対し、三〇日分の解雇予告手当、退職金等を含む金一一〇、四八二円を提供したこと、しかるに、申請人が右金員の受領を拒否したので、被申請人は翌一六日福岡法務局に対して右金員を弁済供託したことはいずれも当事者間に争いがない。しかも、弁論の全趣旨によつて真正に成立したと認める疎乙四三号証の一、二によれば、右組合は同年六月一二日開催された被申請人会社との経営協議会の席上、本件解雇は止むを得ないとの意見を表明し、次いで、同年七月一日に開催された第六回中央委員会においても、右結論を支持し、その後被申請人に対し何らの故障をも申し出ていないことが認められ、これに反する疎明はない。

しかして、本件解雇はその手続面においても、何ら欠けるところがなかつたものというべきである。

三  そこで、本件解雇が不当労働行為であるとの主張について判断する。

前示疎甲六号証、七号証、一二号証、証人神崎和義、高木寿春、後藤春士、石井正一の各証言および申請人本人尋問の結果を綜合すれば、以下の事実が一応認められる。

(一)  申請人は、昭和三六年四月一日被申請人会社に入社し、一年後の昭和三七年四月一日本採用になると同時に、明治乳業労働組合の組合員となり、同組合福岡支部に所属した。同支部は、被申請人会社福岡工場が設立された昭和三五年六月当初から結成されていた(この事実は当事者間に争いがない)が、その頃の同支部の役員としては、支部執行委員長一名しかいず、それも主任以外の職制が持ち廻り制で就任する実情であつた。しかして、組合員の諸要求、たとえば申請人の友人神崎和義が、同工場内で就業中負傷したことに対して、会社側が支払うべき補償金等のことについても、同支部はこれを取り上げて会社側と交渉したりするようなことはなく、またその他時間外勤務などの労働条件、職場環境等の改善についても、特に目立つた活動をすることはなかつた。申請人は、右の神崎事件を一つの契機として組合のあり方について次第に深い関心を寄せるようになり、昭和三七年頃から、同工場内の従業員四、五名と共に、学習会を開き、また組合学校に参加したりして組合のあり方や労働法などについての知識を深めることに努めた。昭和三八年、当時申請人が、勤務していた試験室の新美主任が支部執行委員長に就任し、執行部を三名に増員した際、申請人は右新美に乞われて、支部執行委員となり、役員として組合の運営に参加するようになつた。しかし、その頃も、組合員からの要望があれば、支部執行委員長が工場長と交渉し、その結果は執行委員にのみ知らせるといつた程度の活動しか行つておらず、これがため、一般組合員の組合支部への不満が高まりつつあつたが、当時の新美支部執行委員長が、組合において被申請人会社戸田橋工場従業員の解雇は不当である旨決定したにもかかわらず、これに反対したことから、昭和三九年に至り支部執行委員長のリコール問題がおこり、申請人も積極的にリコール賛成署名運動を行ない、同年一月二三日に開催された同支部臨時総会において新美支部執行委員長が解任され、新たに申請人が支部執行委員長に選任された(申請人がこの役職に就任したことも当事者間に争いがない)が、これと同時に、執行委員が七名に増員され、青年婦人部、組織部、教宣部、調査部、福利厚生部、機関紙部などの機関や職場代議員制度などが新たに設けられ、支部の組織の強化が図られた。活動面においては、従来はあまり活用されていなかつた工場協議会の活用を図り、月に二、三回開催して、同工場での労働条件、福利施設等の問題を積極的に取りあげ、会社側と交渉して、要求の実現に努めた。職場集会や学習会などの企画やメーデー、デモなどの各労働組合との統一行動に参加するなど、従来に比して広範囲にわたる組合活動を展開してきた。これらの組合運動や工場協議会の模様などは組合ニユースを頻繁に発行して、組合員に配布、周知されるようになつた。その間、申請人は、昭和四〇年度および昭和四一年度には組合支部書記長を、次いで昭和四二年度には代議員会議長を歴任した(申請人がかゝる役職に就任したことも争いのない事実に属する。)。

(二)  昭和三八年申請人が、支部執行委員となり組合活動に参加するようになつてから、時折、工場製造係長から勤務時間中呼び出され、組合活動のことでいろいろ聞かれたりしたことがあつた。その後昭和四〇年一一月頃、被申請人は、新設された大型びん職場に、当時書記長をしていた申請人や職場代議員で、組合活動家とみられていた後藤春士、佐伯柳八、岩永丈太郎らを配転し、また、その頃各従業員の家庭に、今の組合は正常でないから、このような組合活動は止めさせるようにとの手紙を送つたり、また、一部の組合員については、直接、家庭を訪問して、父兄に対して、子弟の組合活動を止めるようにとの説得をしたこともあつた。

以上の事実が認められ、右認定に反する証人殿木経男の証言は信用できず、他に右認定に反する疎明はない。

以上認定の事実によれば、被申請人は、昭和三八年から昭和四〇年頃までは、特に申請人らの組合支部における活動に注目し、これに対して、かなり嫌悪の情を持つていたことが窺われる。

(三)  しかしながら、本件解雇が、申請人の右のような組合活動を理由とし、また組合の壊滅を目的としてなされたものか否かについては、すでに前記二において説示したとおり、就業規則五九条に該当すると認められた申請人の就業規則違反行為は、これを全般的にみれば、懲戒解雇に値する程度の情状の悪いものと判断でき、すでに見たところから明らかなように、申請人は昭和四二年度には組合支部の書記長を辞め、組合の中心的存在ではなかつたし、また本件解雇当時、特に申請人の組合活動に目立つたものがあり、被申請人が申請人の組合活動を注目し、嫌悪していたと窺わしめる資料もないから、被申請人のなした本件解雇の決定的理由は右就業規則違反行為であると認めるのが相当である。

なお、この点について、申請人は、被申請人が申請人の組合活動に対する嫌悪から申請人を企業外に放逐する意図のもとに、申請人の会社内における行動を監視、調査したうえ、本件で疎明として提出された各報告書を作成したと主張するが、使用者が人事労務管理の必要上、従業員の勤務状況等を報告書等の形式で書面に残すことは左程稀なことではなく、むしろ、運用の宜しきを得れば、後日の紛争を事前に防止できる点で望ましい面もあると思料されるところ、証人殿木経男、古瀬基海、志賀重昂、坂上出穂、渡辺茂治、柳川舜一(第一回)、斉藤一三の各証言を綜合すれば、被申請人会社福岡工場では、昭和四〇年春頃、本社からの指示に基き、原則として、主任以上の職制が、主として職場秩序に関する従業員の非違行為などを疎乙一号証(殿木経男作成の昭和四二年三月一一日付報告書)のような書式の報告書に作成して福岡工場長宛提出するようになつたこと、および申請人について報告書を作成している主任らは、多かれ少なかれ他の従業員の非違行為等についても報告書を作成したことが窺われ、この事実と先に認定した職制らが申請人の懲戒事由該当行為を発見したときは、適宜その場で注意していた事実とを併せ考えれば、被申請人が、秘かに申請人の行動を監視し、申請人のみをことさらに狙い打ちする意図で報告書を作成したとは到底認められず、申請人の主張は容れることができない。

また、被申請人は、申請人に対する解雇の意思表示の際は、解雇理由として前記被申請人主張の解雇事由22ないし34の事実を挙げたに止まつた(以上は当事者間に争いがない)にかかわらず、本件口頭弁論期日においては、同1ないし21の事実をも解雇理由として主張するに至つたが、この点も、前認定のとおり、被申請人は組合に対する通告の際は、右1ないし21の事実も摘示していたのであるから、一度は不問に付するつもりであつたのを、申請人の組合活動に対する嫌悪や組合の壊滅のためにことさらに解雇理由として付加したものと見るのは困難であつて、本件解雇の主たる原因についての前示判断を何ら左右するものではない。

それ故、本件解雇は労働組合法七条一号および三号の不当労働行為に該当するとの申請人の主張は理由がない。

四  さらに申請人は本件解雇は解雇権の濫用であると主張する。しかし、本件解雇が、申請人に解雇に値する理由が存在し、それが就業規則四九条九号に該当するとしてなされたものであることは先に判断したとおりであり、また申請人の平素の勤務状況は他の従業員に比較して決して良好とはいえず、無断欠勤や早退、遅刻の回数が福岡工場の従業員のうちでは最も多い方であつたことは前記二で判断したとおりであるから、被申請人が申請人を不適格と認めて、本件解雇に及んだのは至極当然のことであり、申請人の解雇権濫用の主張も亦理由がない。

五  以上の次第であるから、申請人に対する本件解雇は有効であつて、申請人と被申請人との間の雇用契約関係は昭和四二年六月一五日をもつて終了したものというべきである。したがつて、申請人の本件仮処分申請は、被保全権利についての疎明がないことに帰し、また保証を立てさせて右疎明にかえることも相当でないから必要性の点について判断するまでもなく、失当としていずれもこれを却下し、申請費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 鍬守正一 油田弘佑 前川豪志)

別紙(被申請人会社就業規則)

第七条 従業員は職制によつて定められた上職者の指示に従つて職場の秩序を保持し、上職者は所属従業員の人格を尊重し互に協力してその職務を果さなければならない。

第九条 従業員は特に下記の事項を守らなければならない。

1 諸規則を守りその職務に対しては最善を尽し責任を完うすること。

2 互に人格を尊び礼儀を重じ後進に対しては親切に指導すること。

3 許可なく業務上会社と関係ある者から贈与や饗応を受けないこと。

4 みだりに職場を離れたり職務を放棄しないこと。

5 社外の業務に就任又は従事する場合に予め会社の承諾を受けること。

6 転勤、勤務替、退職、解雇等の場合は自己の担当業務について遺漏なく引継ぐこと。

7 会社の名誉を汚したり業務上の機密を他に洩したりしないこと。

8 火気の取扱に注意し会社施設の整理整頓に努め火災その他の事故を発生させないこと。

9 無断で会社の物品を持ち出したり会社内で私品を作つたりしないこと。

10 会社の構内で許可なく業務外の物品売買をしないこと。

11 その他従業員としての体面を汚さないこと。

第一四条 会社内で業務外の集合又は掲示、ビラの配布等を行うときは予め会社の許可を受け所定の場所で行わなければならない。

第一六条 遅刻、早退、公私用の外出、欠勤、休暇或は就業時間中に職場を離れる場合は事前、やむを得ないときは事後速やかに所定の手続きによつて届出て許可を受けなければならない。

<2> 病気による欠勤が7日以上に及ぶときは医師の診断書を提出しなければならない。

<3> 会社は事情により前項7日以内であつても診断書の提出を求め又は医師を指定して随時に診断せしめることがある。

第四九条 従業員が下記の各号の一に当るときは少くとも三〇日前に予告するか三〇日分の平均賃金を支給して解雇する。

1、2 削除

3 無断欠勤連続七日に及んだとき

4 精神又は身体に故障あるか或は虚弱、老衰、疾病のため勤務に堪えないと認められたとき

5 労働能率が甚しく劣悪なるとき

6 やむを得ない事業上の都合によるとき

7 作業の合理化その他により冗員を生じたとき

8 明治乳業労働組合との労働協約第四条の三に定める事由の生じたとき

9 その他第五九条に該当しその程度の重いとき

第五九条 従業員が下記の各号の一に当るときは懲戒する。

1 会社の諸規定或は労働協約に違反したとき

2 故意又は過失により会社に損害を及ぼしたとき

3 正当な理由なくして上司の命令に従わないとき

4 会社の金品を私したり会社内において私物を作つたとき

5 正当な理由なくして無断欠勤し、又はしばしば欠勤、遅刻、早退をしたとき

6 勤務怠慢、素行不良又は会社の風紀秩序を紊したとき

7 会社内で賭博その他これに類する行為をしたとき

8 会社の内外を問わず兇器を携行し又は脅迫暴行をしたとき

9 安全衛生に関する規定に違反したとき

10 重大な履歴を偽つて入社したとき

11 会社の体面を汚したとき

12 法令により刑罰に処せられたとき

13 会社の承諾を受けず他の業務に従事したとき

14 会社の重大な機密を洩し又は洩そうとしたとき

15 会社の業務に関し不当な金品その他を受取つたとき

16 他の従業員の業務を妨害したとき

17 その他前各号に準ずる程度の行為のあつたとき

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