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福岡地方裁判所 昭和41年(ワ)577号 判決 1969年3月26日

原告

中村良一

被告

有限会社窓乃梅中沢酒店

ほか一名

主文

(一)  被告らは各自、原告に対して、金四二一万九〇〇円及びこれに対する昭和三九年六月八日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

(二)  原告のその余の請求を棄却する。

(三)  訴訟費用は、これを二分し、その一を原告の負担としその余を被告らの負担とする。

(四)  この判決は、原告の勝訴部分にかぎり、仮に執行することができる。ただし、被告らが共同して、金一三〇万円の担保を供するときは、右仮執行を免れることができる。

事実

(当事者の申立)

原告は「被告らは各自、原告に対して、金七九六万七、二五五円及びこれに対する昭和三九年六月八日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は、被告らの負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求め、被告らは「原告の請求を棄却する。訴訟費用は、原告の負担とする。」との判決並びに仮執行免脱の宣言を求めた。

(原告の請求原因)

一、被告有限会社窓乃梅中沢酒店(以下被告会社という。)は、酒類の販売業を営む会社で、軽四輪自動車(六福か五、八三〇号、以下本件自動車という。)を所有し、右営業のため運行の用に供する者であり、被告中沢健(以下被告中沢という。)は、被告会社の代表取締役として本件自動車の運転の業務に従事する者である。そして、後記事故当時被告会社は本件自動車を自己のため運行の用に供していた。

二、原告は、昭和三九年六月七日午後九時三〇分ごろ、福岡市今宿長垂海岸国道一、一七九番地先道路上において、被告中沢の運転する本件自動車と接触し、その結果入院約四ケ月を要する脳挫傷、後頭部左下腿挫創、左下腿左足背第三度火傷、後頭骨々折、右上腕骨々折等の傷害を蒙つた。

三、右事故は、被告中沢の次のような過失に起因する。すなわち、自動車の運転者は、常に前方を注視し、殊に夜間前照灯の照射により進路上に異状な物を発見したときは、細心の注意をもつてそれが何であるかを確認し、もつて事故の発生を未然に防止すべき注意義務がある。しかるに、被告中沢は、右注意義務を怠り、本件自動車の進路前方約一〇メートルの地点に原告を発見しながら、これを布か風呂敷包みくらいに軽く見過し、そのまま進行を継続した過失により、衝突の寸前において、それが人間であることに初めて気付き、あわてて急制動の措置をとつたが及ばず、本件自動車の前部を原告の後頭部に激突させ、かつ原告の着衣を前輪の車軸にひつかけて前進し、停止するまで同人をひきずり、その結果前記傷害を負せたものであるから、同被告の過失は明らかである。

四、本件事故によつて蒙つた原告の損害は次のとおりである。

(一)  逸失利益の損害―金七五五万五、五五五円

原告は、昭和二五年ごろから大工となり、事故当時一日平均二、〇〇〇円以上の収入をあげていたが、事故によつて右肘関節部硬直及び軽度の精神障害を生じ労働能力を喪失した

原告は、事故当時満二九才(昭和九年九月一二日生)の健康な男子で、厚生大臣官房統計調査部作成の第一〇回生命表によると、六九・五九才に達するまで生存し得た筈で、その稼働可能年令は六三才とみるのが相当であるから、事故がなければ、なお今後三四年稼働し得た筈である。

そして、原告の稼働日数は一ケ月二五日で、収入は月額五万円(一日二、〇〇〇円の割合)年額六〇万円であつた。この三四年間の収入の合計は二、〇四〇万円に達するが、これからホフマン式計算法により民法所定年五分の中間利息を控除すると、金七五五万五、五五五円となる。

(二)  慰藉料―金五〇万円

原告は、従来健康に恵まれ、結婚後、長男良隆(九才)、長女千穂(八才)の一男一女を儲け、幸福な家庭生活を営んでいたが、本件事故により生れもつかぬ不具者となり幸福な生活は一朝にしてこれを失い、その後は生活保護に頼つてようやく生計をたてている状態である。

原告は、事故発生後二週間昏睡状態が続き、脳挫傷、後頭骨々折、右上腕骨々折等により約四ケ月入院し治療を受けたが、左下腿左足背等の火傷、大工にとつて致命的ともいうべききき腕の右肘関節硬直及び精神障害等の後遺症を生じ、今日なお通院によつて治療を続けているが、頭部打撲があるのでこれが原因となりいつ突然死亡するか予測できない状況にある。以上の諸点から原告の蒙つた精神的苦痛は極めて甚大であり、これを慰藉するため金銭に見積ると金二〇〇万円が相当である。しかし、本訴ではそのうち金五〇万円を請求する。

五、原告は、被告中沢から八万八、三〇〇円の支払を受けたので、これを前項(二)の慰藉料に充当する。

六、よつて、原告は、被告ら各自に対し、右合計金七九六万七、二五五円及びこれに対する本件不法行為の翌日である昭和三九年六月八日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(被告らの答弁)

請求原因第一、二項の事実は認める。同第三項は否認する。本件事故は原告が交通のはげしい道路の真中に酔つぱらつてうずくまつていたため発生したもので、被告中沢に過失はない。その詳細は後記被告らの抗弁第一項(一)(二)記載のとおりである。同第四項は争う。同第五項のうち被告中沢が金八万八、三〇〇円を支払つたことは認めるが、その余は争う。同第六項は争う。

(被告らの抗弁)

一、被告会社の抗弁

本件事故発生については、次に述べるとおり、自動車損害賠償保障法(以下自賠法という。)第三条但書の要件が備つているから、被告会社には、損害賠償の責任がない。

(一)  被告会社及び運転者である被告中沢は本件自動車の運行に関し注意を怠つていない。

(二)  本件事故は、被害者である原告の次のような一方的過失によつて発生した。原告は、事故直前、前後不覚になるほど酩酊し、事故発生以前からその危険な行動が通行者の注目を引くような状態にあつた。本件事故発生の道路は、福岡市から唐津市に通ずる国道で、福岡県内においても最も交通量の多い道路の一つである。しかるに、原告は、このような道路の真中に、酔つぱらつたままうずくまつていたのである。従つて、事故にあわない方が不思議なくらいの状態であつた。原告が本件事故にあわなかつたとすれば、後続車によつて事故にあつたであろうことは火を見るよりも明らかである。しかも、自動車運転者から見れば、前記のような道路に人が酔つてうずくまつているであろうなどとは誰しも予想しない筈である。普通の運転手であれば、前記のような道路では、脇道から飛び出して来る人や、対向車などには充分の注意を払うであろうが、大道の真中に人間がうずくまつているかも知れないなどとは誰しも考えもしないであろう。ところが、原告はこのような自動車運転者の信頼を裏切り、運転者にとつては思いもかけぬ道路交通の妨害者である原告がいたばかりに、本件事故が発生したのである。被告中沢の急停車の措置が完全であつたかどうかというようなことは、事故発生の原因としては問題にならない。原告は道路の真中に酔つぱらつてうずくまり事故の最大の原因を作つておきながら、「俺を人間と気付かなかつたのはけしからん。」とか「急停車の措置が上手でなかつたのはけしからん。」などということが果して言えるのであろうか。要するに、本件事故は原告の一方的過失によつて発生したもので、被告中沢には何らの注意義務違反もない。

(三)  本件自動車には構造上の欠陥又は機能の障害はなかつた。

二、被告らの抗弁

(一)(1)  原告は、本件訴状で本件事故による逸失利益の損害額を金五九七万二、二一三円として請求していた。ところが、原告は昭和四三年九月四日付準備書面で右逸失利益の損害額を金七五五万五、五五五円と拡張して請求してきた。

(2)  しかし、本件事故の発生は昭和三九年六月七日であつて、右請求拡張の申立の時は事故発生から既に三年以上を経過しているから、訴状で請求している額以上の新たな損害額の部分の請求権は時効により消滅している。

(二)  原告は、本件事故後、事故によつて収入が得られなくなつたことが原因で生活保護法による保護の受給資格を取得し、昭和三九年一一月から毎月各種の保護の支給を受け、昭和四三年九月までに次の支給を受けている。

昭和三九年中 金五、四九二円

昭和四〇年中 金一三万二、二二八円

昭和四一年中 金四三万八、一三五円

昭和四二年中 金四七万八、〇一九円

昭和四三年九月末日まで 金三四万九、六九〇円

合計 金一四〇万三、五六四円

右一四〇万三、五六四円は、本件事故後原告が現実に取得した利得にあたるから、原告の得べかりし利益からこれを控除すべきである。

さらに、原告は、将来に亘つて継続して右の保護を受給することが予想され、その金額は昭和四二年一〇月分から昭和四三年九月分までの平均受給月額金三万九、二三六円を下廻らないものと推定される。よつて、昭和四三年一〇月分から将来に亘つて原告の得べかりし利益から、毎月右金三万九、二三六円宛を控除すべきである。

(三)  仮に、被告中沢に何らかの過失があつたとしても、本件事故発生については、被害者である原告にも前記のとおり重大にして決定的な過失があるから、本件損害賠償額の算定について過失相殺を主張する。

(四)  被告らは、原告に対して昭和三九年六月九日から同年一〇月三〇日までの間に、生活費及び慰藉料として合計金五万八〇〇円を支払つた。従つて、これを原告の損害額から控除すべきである。

(抗弁に対する原告の答弁)

一、被告らの抗弁第一項の被告会社の抗弁は否認する。

二、同第二項の被告らの抗弁(一)のうち(1)の事実は認めるが、(2)の事実は否認する。すなわち、原告は訴状で逸失利益の損害の全額を請求する意思でその額の算定をした。ところが、その算出に当つて一部計算違いがあつたので、これを訂正し請求を拡張したに過ぎない。従つて、本件の請求拡張は、逸失利益の損害賠償請求権の数量的な一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴を提起した場合とは異り、右損害賠償請求権の全額が訴訟物となつていたとみるべきであるから、被告らの時効の抗弁は理由がない。

三、同第二項の被告らの抗弁(二)の事実中、原告が被告ら主張の生活保護費を受給したことは認めるが、その余の事実は争う。

四、同第二項の被告らの抗弁(三)の事実は否認する。

五、同第二項の被告らの抗弁(四)のうち、原告が被告らからその主張のとおり生活費及び慰藉料として金五万八〇〇円の支払を受けたことは認めるが、その余は争う。

(証拠関係)〔略〕

理由

一、争いのない事実

請求原因第一、二項の事実はすべて当事者間に争いがない。

二、被告中沢の過失

右の事実に、〔証拠略〕を綜合すると、本件事故現場附近の道路(福岡市方面から福岡県糸島郡前原町方面に通ずる国道で、幅員約八メートル六〇センチ、その両側約一メートル三〇センチの各部分は非舗装、その余の中央約六メートルの部分は舗装されている。)は平坦なほぼ直線道路で見通しは良好であるが、道路両側は松林で街灯がなく、夜間は真暗であること、右道路は昼夜を問わず自動車の交通量が多いこと、被告中沢は事故当日の午後九時三〇分ごろ、本件自動車を運転し、福岡県糸島郡前原町方面から福岡市方面に向つて道路左側の舗装部分を時速約四〇キロメートルで進行中、福岡市今宿長垂海岸国道一、一七九番地先道路に差しかかつた際、前照灯の照射により進路前方約一〇メートルの道路上に原告がうずくまつているのを発見したが、夜間であつたのでこれを単に布切れか風呂敷包みぐらいだろうと軽く考え、これに対する充分の注意を払わないまま前記速度のままで進行を続け、衝突の直前に迫つてこれが人間(原告)であることに気付きあわてて急停車の措置をとつたが及ばず、本件自動車の前部を原告に衝突させたうえ原告の着衣を前輪の車軸にひつかけて約一六メートル八五センチひきづり、その結果原告に対し前記傷害を負わせたこと、原告は事故当時飲酒酩酊していたことの各事実が認められ、右認定を覆すに足る証拠はない。

ところで、自動車の運転者は、たえず前方を注視すべきであるは勿論、殊に夜間前照灯の照射により進路前方の道路上に異状な物を発見したときは、直ちに徐行するなどして細心の注意を払い、それが何であるかを確認した後進行し、もつて事故の発生を未然に防止すべき注意義務がある。しかるに、前記事実によれば、被告中沢は右注意義務を怠り、進路前方約一〇メートルの道路上に原告を発見しながら、夜間であつたためこれを単に布切れか風呂敷包みぐらいだろうと軽く考え、これに対する充分の注意を払わないまま、前記速度のままで進行を続け、衝突の直前に迫るまで人間(原告)であることに気付かず、本件事故を発生させたのであるから、本件事故発生につき被告中沢に過失があることは明らかである。従つて、被告中沢は、不法行為者として民法第七〇九条により、本件事故によつて蒙つた原告の損害を賠償する義務がある。

三、原告の過失

ところで、歩行者は、飲酒酩酊して自動車等の交通量の多い道路上にうずくまつて交通の妨害をしてはならない注意義務がある。しかるに前項認定の事実によれば、原告は右注意義務を怠り、飲酒酩酊して事故現場の道路上にうずくまつていたことが明らかであるから、本件事故発生について原告に過失があること明らかである。

以上の諸点を考慮するとき、被告中沢と原告との本件事故発生に対する過失の割合はほぼ四(被告中沢)対六(原告)とみるのが相当である。

四、被告会社の免責の抗弁

本件事故発生について運転者である被告中沢に過失があることは前記認定のとおりである。従つて、被告会社の自賠法第三条但書の免責の抗弁は、その余の事実について判断するまでもなく理由がないから、被告会社は自賠法第三条本文により原告が本件事故によつて蒙つた損害を賠償する義務がある。

五、被告らの時効の抗弁

原告が本件訴状で本件事故による逸失利益の損害額を金五九七万二、二一三円として請求していたこと、原告が昭和四三年九月四日付準備書面で右逸失利益の損害額を七五五万五、五五五円と拡張して請求をしたことの各事実はいずれも当事者間に争いがない。そして、右請求拡張の申立をした時は事故発生の日(昭和三九年六月七日)から既に三年以上経過していたことは前記の事実に照らして明らかである。しかし、本件訴状、右準備書面及び口頭弁論の経過に照らすと、原告は、本件事故による逸失利益の全額を請求したが、その算出の方法に一部計算上の誤りがあつたので、これを前記準備書面で訂正し請求を拡張したものであることが明らかである。従つて、本件については、逸失利益の喪失による損害賠償請求権の数量的な一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴の提起をしたものではなく、右債権の全部を請求して訴を提起した場合にあたるとみるべきであるから、訴提起による消滅時効の中断の効力は、右債権の全部について生じたというべきである。そうすると、被告らの右抗弁は理由がなく採用できない。

六、損害額

(一)  逸失利益の損害

〔証拠略〕によると、原告は、事故当時満二九才(昭和九年九月一二日生)の健康な男子で、建築大工として稼働し、少なくとも一ケ月五万円(一日の賃金は二、〇〇〇円で一ケ月少くとも二五日以上稼働していた。)年額六〇万円の収入を得ていたことが認められ、右認定を覆すに足る証拠はない。

〔証拠略〕を綜合すると、原告は、本件事故による前記傷害を治療するため相良外科医院、九州大学医学部附属病院、済生会病院等に入院して治療を続けたが、記憶力障害、右眼内直筋不全麻痺、右肘関節拘縮、精神神経症が残り、視力が著しく減退し、きき手であり大工にとつてはかけがえのない右腕は一三五度位しか伸びず又四五度位しか曲らない状態でごく軽いものしか持つことができず、さらに現在は「頭部外傷後痴呆」状態に陥り、精神に著しい障害を残し、大工としては終身労務に服することができないこと(労働基準法施行規則別表第二の身体障害等級表第三級三に該当する。)及び現在も一週間から二〇日に一回通院し治療を続けているが回復の見込はないことの各事実が認められる。以上の事実によると、原告は本件事故による傷害により今後生涯を通じ、労働能力の全部を喪失したものと認めるのが相当である。証人安陪光正の供述中には、原告は単純な物の運搬、掃除程度の労働であれば出来ないことはない旨の供述があるが、この供述だけでは右認定の妨げとはならないし、他に右認定を覆すに足る証拠はない。

ところで、厚生大臣官房統計調査部作成の第一〇回生命表によると、満三〇才(原告は事故当時満二九才とほぼ九月であつたから満三〇才とみる。)の男子の平均余命は三九・七年であるが、原告がもし本件事故にあわなければ、その職業、健康状態等から考えて少くとも満五五才に達するまでの二五年間は稼働可能であり、その間前記年収金六〇万円を下廻ることのない収入を得ることができたものと推認することができる。そして、原告の今後二五年間の得べかりし利益の現在価値をホフマン式計算法により、一年ごとに金六〇万円の収入が生ずるものとして算出すると、金九五六万六、四六〇円となる。

<省略>

次に、被告らは、本件事故後原告が事故によつて収入が得られなくなつたことが原因で生活保護法による各種の保護の支給を受け又将来に亘つても引続いてこれを受給することが予想されるから右の保護費を原告の逸失利益から控除すべきである旨主張する。原告が被告ら主張のとおりの生活保護法による保護費の支給を受けていることは当事者間に争いがない。しかしながら、生活保護法による保護は、国が生活に困窮する者(その者の資産、能力、権利等を充分活用し、さらに民法に定める扶養義務者の扶養及びその他の扶助によつても、なおかつ健康で文化的な最低限度の生活を維持することができない者)に対して、その程度に応じて必要な保護をし、最低限度の生活を保障することを目的とするものであつて、交通事故による損害の填補たる性質を有しない。又損益相殺の対象となる利得にもあたらない。殊に、〔証拠略〕によると、本件の保護は、原告が被告らに対し逸失利益の喪失による損害賠償請求権を有しておりながら、その履行が得られないため生活に困窮したので、生活保護法第四条第三項にいう急迫した事情がある場合にあたると認められて保護が支給されるに至つたものであつて、右損害賠償の履行が得られれば直ちに同法第六三条により保護の費用(昭和四三年一二月一七日現在で一五四万四、六五六円)を返還しなければならないことが認められるから、右保護が原告にとつて本件事故による利得に当らないことが明らかである。

従つて、被告らの右主張は理由がない。

よつて、前記原告の過失を斟酌し、被告らに負担させるべき範囲は、前記損害額のうち、ほぼ四割にあたる金三八五万円をもつて相当と認める。

(二)  原告の慰藉料

原告の前記事故時の年令、傷害の部位程度、治療期間、後遺症の程度、事故後における被告らの賠償についての態度、本件事故発生についての双方の過失の態様その他本件に現われた一切の事情を考慮し、原告に対する慰藉料は金五〇万円と定める。

七、損害の充当等

原告が被告中沢から金八万八、三〇〇円の支払を受けた事実は当事者間に争いがなく、これを前項(二)の慰藉料に充当したことは原告の自認するところである。よつて右慰藉料から金八万八、三〇〇円を控除すると、その残金は四一万一、七〇〇円となる。

次に被告らが原告に対して昭和三九年六月九日から同年一〇月三〇日までの間生活費及び慰藉料として金五万八〇〇円を支払つたことは当事者間に争いがないから、これを原告の右慰藉料残金と前記喪失利益の合計金四二六万一、七〇〇円から控除すると、その残金は金四二一万九〇〇円となる。

八、結論

よつて、原告らの請求中、被告ら各自に対して、金四二一万九〇〇円及びこれに対する本件不法行為の翌日である昭和三九年六月八日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める部分は正当であるからこれを認容し、その余の部分は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条第九二条第九三条、仮執行及びその免脱の宣言につき同法第一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 山口茂一)

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