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神戸地方裁判所尼崎支部 昭和53年(ワ)4号 判決 1980年11月27日

原告

豊田猛

ほか一名

被告

赤松忠一

ほか一名

主文

一  被告両名は、原告豊田猛に対して、連帯して二五六万六二三二円及びこれに対する昭和五三年一月二四日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告猛のその余の請求及び原告豊田憲子の本訴請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用中、原告豊田猛と被告両名との間に生じた分は、これを一〇分し、その一を被告両名の、その余を同原告の各負担とし、原告豊田憲子と被告両名との間に生じた分は、同原告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告両名は、連帯して、原告豊田猛に対し、三四二七万六九八四円、原告豊田憲子に対し、二一二万円及びこれらに対する昭和五三年一月二四日から各完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告両名の負担とする。

3  仮執行の宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告両名の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告両名の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  事故の発生

原告猛は、次の交通事故によつて受傷し、着衣の損傷を受けた。

(一) 発生日時 昭和五一年一月八日午前一時三〇分ころ

(二) 発生地 京都市中京区三条通木屋町交差点

(三) 加害車 事業用普通自動車(タクシー、京五五あ九〇八九号)

運転者 被告赤松

(四) 被害者 同原告

(五) 事故の態様 同原告が横断歩行中、進行してきた加害車と衝突

(六) 同原告の受傷及び後遺障害

(1) 受傷 右大腿部打撲骨部ひび破れ損傷、右膝関節打撲による過伸展捻挫、内側半月板損傷、左膝部打撲、でん部打撲

(2) 同原告は、受傷後直ちに京都四条大宮病院で応急手当を受け帰宅し、その後自宅で売薬による自家治療し、同年二月二日から翌五二年一一月一四日までの間、大阪回生病院(通院二日)、大阪市立北市民病院(通院四日)、京都四条大宮病院(通院五日)、東京大学医学部附属病院(通院一日)で治療を受け、その後薬剤を自己調剤して服用及び昭和五三年六月に日医アルモ2型低周波治療器を購入し、自家治療に専念している。

(3) 同原告は、右受傷によつて両膝が脚気の様にだるくなつて歩行困難となり、さらに右大腿部や膝関節が冷たくなつて皮膚に氷を置いた様な痛みが深部に生じ、その後治療によつて徐々に快方に向つたが、長時間歩行すると痛みが残り、また起床や休息直後に足がふらつき正常な歩行ができず、かつ関節の痛みで自転車による走行も困難な状態である。

2  被告両名の責任

(一) 被告明星自動車株式会社(以下「被告会社」という)は、加害車を所有し、従業員である被告赤松をして同車を自己のため運行の用に供していた。また被告赤松は、被告会社の業務に従事中に本件事故を惹起した。

(二) 被告赤松は、加害車を運転し、右折禁止場所となつている本件交差点を右折し、しかも前方不注視のままで走行し、そのため既に交差道路の横断歩道上を歩行横断中の原告猛を跳ねた過失がある。

(三) したがつて、被告赤松は民法七〇九条により、被告会社は自動車損害賠償保障法三条及び民法七一五条により、本件事故によつて原告両名に生じた損害を賠償する責任がある。

3  原告両名の損害

(一) 原告猛の治療関係費等 合計五万〇二三三円

(1) 治療費 二万九七七三円

(2) 交通費 六一六〇円

(3) 通信費 四一二〇円

(4) 雑費 一万〇一八〇円

(二) 同原告の逸失利益 二五六九万六七五一円

収入(日額八六六〇円)同原告は本件事故当時、発明協会大阪支部正会員で、独立して新製品の開発、試作、市場調査の仕事をしていた。ところで、同原告は第二種電気主任技術者免状を有し、本件事故一年位前に従事していた電気設備保守作業中に負傷したため、それ以降無収入の状態であつた。したがつて、同原告の本件事故当時の収入は、「賃金通信」昭和五一年一〇月中旬号掲載の平均賃金に、同原告の有する右資格を勘案した日額八六六〇円が相当である。

労働能力喪失率(七一・四三パーセント) 同原告は、本件事故によつて前記後遺障害を残したので、それによる労働能力喪失割合は七一・四三パーセントである。

労働能力喪失期間(二六・四一年間) 同原告は本件事故当時四五歳で、平均余命期間が二六・四一年であるから、その期間中同原告の労働能力喪失が継続する。

以上に中間利息として年五分を控除して、同原告の逸失利益を算出すると次のとおりである。

<省略>

(三) 同原告の慰藉料 合計八五六万円

(1) 通院分 八四万円

(2) 後遺障害分 七七二万円

(四) 同原告の物損 五〇〇〇円

本件事故によつて、同原告の着用したズボンに損傷を受け、その買替費用相当額

(五) 原告憲子の慰藉料 二一二万円

同原告は原告猛の妻であり、原告猛が本件事故によつて受傷したことによつて、妻として苦痛を受けた。

(六) 以上のとおりであるから、本件事故による原告猛の損害は、三四三一万一九八四円、原告憲子の損害は二一二万円である。

4  原告猛の損害の填補 三万五〇〇〇円

同原告は、被告会社から、本件事故当日治療費として三万円及びズボン買替代金として五〇〇〇円を受領した。

5  よつて、被告両名に対し、連帯して、

(一) 原告猛は、差引合計三四二七万六九八四円

(二) 原告憲子は、二一二万円

及びこれらに対する本件事故日以降である昭和五三年一月二四日(被告両名に対する訴状送達の翌日)から完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実のうち、(五)及び(六)は争い、その余は認める。本件事故当日の京都四条大宮病院での原告猛に対する診断は、加療五日間を要する打撲症であり、その後の症状の拡大は同原告の自己判断による自家治療をしたためと考えられる。

2  同2の事実のうち、(一)は認め、(二)、(三)は争う。

3  同3の事実は知らない。

4  同4の事実は認める。

三  抗弁

被告会社は、京都四条大宮病院及び大阪回生病院における原告猛の治療費を、右各病院に直接支払つた。

四  抗弁に対する認否

抗弁事実は争う。

第三証拠関係〔略〕

理由

一  本件事故の発生

1  請求原因1の(一)ないし(四)の事実は、当事者間に争いがない。

2  事故の態様について

同(五)の事実は、各成立に争いのない乙第一三ないし第一六号証によつて、これを認めることができる。

3  原告猛の受傷及び後遺障害について

(一)  前掲乙第一四号証、各成立に争いがない甲第七ないし第一〇号証、証人前川伸一の証言によつて原本の存在及び成立の認められる乙第六号証、弁論の全趣旨によつて成立の認められる甲第六号証、同本人尋問の結果、弁論の全趣旨によれば、(1)原告猛は、昭和五一年一月八日の本件事故で時速約一五キロメートルで進行中の加害車にその下腿部を衝突され、直後京都四条大宮病院で応急手当を受けたが、その際の診断は加療五日間を要する右大腿打撲、左膝部打撲であつたこと、その後同原告は帰宅したうえ、さらに同日首藤病院(大阪市内)にいつたところ、料金のことで診察を断わられ、結局薬局で貼り薬(サトウハツプ等)を購入して、同年二月一日まで自家手当をしていたが、膝辺りに痛みが依然として残つていたため、同月二日大阪回生病院で診察を受けた結果、右大腿及び膝部打撲後遺症によつて右大腿四頭筋々萎縮を認め、機能訓練を要するとの診断を受け、続いて同月一九日大阪市立北市民病院で受診し、右膝関節痛及び右大腿下部筋肉萎縮と診断されたこと、同原告は同月二八日、前記京都四条大宮病院で再診察を受け、その結果、初診(事故時)及びその後の経過をみたうえで、加療二か月を要する右大腿打撲、右膝部打撲、左膝部打撲、右膝過伸展による捻挫及び内側半月板損傷との診断を受けたこと、(2)その後同原告は通院せずに自家手当を継続していたが、右膝の深部に痛みを自覚し、翌昭和五二年一一月一〇日前記市民病院で再受診したが前回と同様の診断病名であつたことから、さらに同月一四日同病院で撮影したレントゲン写真を持参して東京大学医学部附属病院で診察を受けたが、実質的な検査をすることなく、単に病名として右膝痛との診察を受けたに止まつたこと、同原告は右膝の痛みの自覚症状があるため、それ以降自家治療を続けたが、一切通院治療を受けなかつたこと、(3)ところで、同原告は本件事故による右大腿打撲、右膝部打撲を受けた結果、当初右大腿及び膝部あたりに痛みが生じ普通歩行に不自由さを感じていたが、それも徐々に快方に向つたものの、歩行を三〇分以上続けると右大腿部に疼痛の自覚症状が残存し、連続歩行を困難とする状態にあること、他方昭和五一年二月一九日の前記市民病院での診察検査の結果、その所見は右大腿下部(膝蓋骨より五センチメートル中枢側)で約一・五センチメートルの周囲径の縮少が認められるが、右膝関節の運動範囲は〇度から一六〇度で、前後側方への動遙性も、また右膝関節の腫張及び膝蓋骨の躍動も認められないところ、伸展位で膝蓋骨を大腿骨に向つて圧迫すると疼痛を訴えるが、X線像においては両側膝蓋骨に骨棘を認められる以外に著変を認められなかつたこと、さらに翌昭和五二年一一月一〇日の同病院での再診察による所見では、前回とほぼ同様で、さらに右膝蓋骨外側下側の深部の疼痛の愁訴の点については、疼痛場所不明で、その病態が明らかでなく、同原告の自覚的症状については他覚的に明確でないことが認められ、他にこれらの認定に反する証拠はない。

(二)  右認定したことからすると、原告猛は、本件事故によつて右大腿及び右膝部打撲等の傷害を受け、その受傷による打撲痛自体は時の経過によつて消失していつたが、連続歩行を長く続けると右大腿部に疼痛が生じ、これが自覚的愁訴として残るに至つたこと、この疼痛の点は、前記市民病院での検査によると他覚的所見として明確ではないけれども、同原告を診察した同病院、京都四条大宮病院及び大阪回生病院で、その病名は必ずしも一致しないが、右大腿、右膝部に筋肉萎縮或いは過伸展による捻挫の診断も受けていることが認められる。このことからすれば、本件事故によつて受傷した同原告は、昭和五二年一一月頃症状固定があり、その後遺障害として、右大腿部にその機能に影響を与える神経症状を残したものと認めるのが相当である。

二  被告両名の責任

1  請求原因2の(一)の事実は当事者間に争いがない。

2  前掲乙第一三ないし第一六号証、被告赤松本人尋問の結果によれば、被告赤松は、加害車を運転し本件交差点に差し掛り、同交差点の信号が赤点滅であつたので一時停止したが、その際同交差点に右折禁止の標識があるのに拘らず、乗客から右折を指示され、これに抗し切れずに発進し、交差道路の横断歩道上の歩行者等の有無を確認することなく、敢えて時速約一五キロメートルで急に右折進行した結果、右横断歩道上を歩行横断中の原告の発見が遅れ、本件事故が発生したことが認められ、他にこれに反する証拠はない。

これからすれば、被告赤松には、本件事故の発生につき前方注視義務を怠つた過失があると認められる。

3  したがつて、被告赤松は民法七〇九条により、被告会社は、人損につき自動車損害賠償保障法三条、物損につき民法七一五条により、本件事故と相当因果関係にある損害を賠償する責任がある。

三  原告猛の損害及び賠償額

1  治療関係費等 四万八八〇〇円

原告猛の治療関係費等の明細については、弁論の全趣旨によつて同原告が作成したと認められる甲第一三号証の記載のとおりであるところ、以下費用細目につき本件事故と相当因果関係のある出捐について検討する。

(一)  治療費

成立に争いのない甲第八号証、第一一号証、第二二号証、第二四号証、原告猛本人尋問の結果によつて各成立の認められる甲第一四ないし第二一号証、第二三号証、第二五ないし第三三号証、第三四号証の一ないし三及び同本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、原告猛は本件事故による受傷に伴つて、昭和五一年一月八日から同年九月一九日までの間、やむなく合計二万九七七〇円を、その治療のため病院での治療及び売薬購入のため出捐したことが認められ、その出捐額は、前認定の受傷の内容、程度からして、本件事故と相当因果関係のある損害といえる。

(二)  交通費

原告猛本人尋問の結果及び同本人尋問の結果によつて成立の認められる甲第三六号証によれば、原告猛は治療のため病院への電車賃及びタクシー代として、昭和五一年一月八日から昭和五二年一月二二日までの間に六一六〇円を出捐したことが認められ、これが前認定の同原告の受傷からすれば、本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。

(三)  通信費

原告猛本人尋問の結果及び同本人尋問の結果によつて成立の認められる甲第三五号証によれば、原告猛は本件事故によつて損害が生じた結果、これに伴つて被告会社との損害金支払についての交渉のため、その通信費用として四一二〇円を出捐したことが認められ、この出捐額は本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。

(四)  雑費

原告猛本人尋問の結果及び同本人尋問の結果によつて各成立の認められる甲第三七号証、第三九ないし第四二号証、第四五号証、第四七号証によれば、同原告は本件事故と相当因果関係のある諸雑費として、八七五〇円を出捐したことが認められる。

しかしながら、同原告のその余の出捐については、未だ本件事故と相当因果関係があると認めることはできない。

(五)  以上のとおりであるから、原告猛は、本件事故によつて治療関係費等として合計四万八八〇〇円の損害を被つたものである。

2  逸失利益 一〇四万七四三二円

(一)  収入

原告猛本人尋問の結果によれば、原告猛は本件事故当時満四五歳の男子で、発明協会大阪支部会員となつて、昭和四十二、三年ころから独りで電気関係の新製品の開発に従事し、それに伴う試作、その製品の市場性の調査をおこない、現在に至つているが、その仕事による収入は全く得ていず、その間の生活は妻の収入に頼つていたことが認められる。

このことからすると、同原告は本件事故前後を通じて従事していた仕事からの収入を得ていなかつたものであるが、現に稼働しその能力を有している以上、その年齢、性別等を参酌し賃金の統計資料を用いて、同原告の本件事故における逸失利益の基礎となる収入を推定すべきものである。ところで、同原告は第二種電気主任技術者免状を有しているので、これを前提とする平均賃金によつてその収入を推定すべき旨主張し、同尋問の結果によれば、同原告がその主張する資格を有していることが認められるけれども、その資格によつて同原告が電気関係の仕事に従事していたのは、昭和四十二、三年以前のことであり、かつ昭和四九年一〇月に電気設備の保守作業に一時的に就労したことがあるものの、これも主として発明関係の着想を求めるために過ぎなかつたこともまた、同尋問の結果から認められるので、同原告が右資格で電気関係の仕事に従事したのは少くとも本件事故当時から約一〇年も前の出来事であると見ざるをえない。とすれば、同原告の主張する右資格を前提とした平均賃金(甲第一二号証の一と二)をその収入とするのは相当でない。

したがつて、同原告の年令、性別及び本件事故前後に従事していた仕事の内容等に、本件事故当時の昭和五一年賃金センサス第一巻第一表で示されている平均賃金を考え併せれば、同原告の本件事故による逸失利益の基礎となる収入は、年間二四〇万円を下回らないと認められる。

(二)  労働能力喪失率及び喪失期間

前認定した同原告の本件事故による後遺障害の程度、本件事故当時前後及び現在の仕事内容に、自動車損害賠償保障法施行令別表の等級別後遺障害を参考に考えれば、同原告の労働能力喪失率は一〇パーセントと認めるのが相当である。

また前認定からすると、同原告の後遺障害が神経症状によるものであり、その診断経過からすると心因的要素の部分もかなりの比重を占めているものと認められ、期間の経過により次第に回復するといえるところである。このことからすると、その喪失期間は事故後五年と認めるのが相当である。

(三)  以上によれば、同原告の本件事故当時の逸失利益の現価は、年五分の割合による年別ホフマン式による中間利息(五年の係数四・三六四三)を控除すると、次式のとおり一〇四万七四三二円となる。

240万円×10%×4.3643=104万7432円

3  慰藉料 一五〇万円

本件事故の態様、原告猛の受傷及び後遺障害の内容、程度、それによる通院治療の経過や同原告の仕事内容、その他本件にあらわれた諸般の事情を勘案すれば、同原告の本件事故による精神的苦痛を慰藉すべき金額は、一五〇万円と認めるのが相当である。

4  物損 五〇〇〇円

原告猛本人尋問の結果及び検証の結果によれば、請求原因3の(四)の事実が認められる。

したがつて、同原告は、本件事故によつてその着用していたズボンに損傷を受け、その買替代金五〇〇〇円相当の損害を被つたと認められる。

5  損害の填補 (三万五〇〇〇円)

被告会社が原告に対し、本件事故による損害の填補として三万五〇〇〇円を支払つたことは、当事者間に争いがない。

なお、被告ら主張の抗弁は、前記甲第一三号証と証人前川伸一の証言により各成立の認められる乙第二号証、第四号証と同証言を対比検討すると、原告猛の請求外の治療費の支払であることが明らかであつて、損益相殺の対象とならないものであるから、その理由がない。

6  以上のとおりであるから、同原告が本件事故によつて被つた損害は、合計二六〇万一二三二円となるところ、既に損害の填補としての分三万五〇〇〇円を控除すると、同原告が被告両名に対して、その賠償として請求しうる金額は、二五六万六二三二円となる。

四  原告憲子の損害

同原告は、原告猛の妻であり、本件事故によつて夫が負傷し、後遺障害がのこつたことによつて精神的苦痛を受けたとして、妻としての慰藉料請求権があると主張する。

なる程傷害を受けた被害者の配偶者にも、民法七〇九条、七一〇条によつて自己固有の慰藉料請求権を取得する場合があると解されるが、配偶者にそれを肯認しうるのは、受傷のため被害者が生命を害された場合に比肩するか、又は、右の場合に比して著しく劣らない程度の精神上の苦痛を受けたときに限るとするのが相当である。

この点を本件について見るに、前認定の原告猛の受傷、治療経過及び後遺障害の程度からすれば、妻である原告憲子が右に述べた程度の精神的苦痛を受けたとは、いまだ認めることができないところである。

したがつて、原告憲子は、自己の権利として慰藉料を請求することができないので、右主張は理由がない。

五  よつて、原告猛の被告両名に対する本訴請求のうち、連帯して二五六万六二三二円及びこれに対する本件事故の日以降である昭和五三年一月二四日から完済に至るまで民法所定の年五分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるので、これを正当として認容し、その余の請求は理由がないので、これを失当として棄却し、原告憲子の被告両名に対する本訴請求は理由がないので、これを失当として棄却し、訴訟費用の負担については民事訴訟法八九条、九二条、仮執行の宣言については同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 辰巳和男 安藤宗之 上原理子)

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