大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

神戸地方裁判所 昭和62年(行ウ)28号 判決 1990年10月31日

原告 前田頼市 外一七名

被告 西脇市

主文

一  本件訴えをいずれも却下する。

二  訴訟費用は、原告らの負担とする。

事実及び理由

一  請求の趣旨

1  被告が昭和六一年一二月一二日に告示した郷瀬地区地区計画(西脇市告示第一〇八号)は無効であることを確認する。

2  訴訟費用は、被告の負担とする。

との判決を求める。

二  請求の原因

1  本件処分並びに原告らの地位

被告は、都市計画法(以下「法」という。)一五条により、昭和六一年一二月一二日西脇市告示第一〇八号にかかる法一二条の四、一三条一項七号による郷瀬地区計画(内容は、別紙計画書のとおりであり、以下「本件地区計画」という。)を定めた。

原告らはいずれも、本件地区計画において道路予定地とされている土地の所有者である。

2  本件地区計画の概要

(一)  本件地区計画は、対象面積約一五ヘクタール、西脇市郷瀬町字五田井、樋ノ内、庵ノ下、前田、大藪、杖ノ尻、新土手、流期及び欠渡において、地区内を住工協調地区、住商協調地区、工業地区に細区分して居住環境と生産環境が調和した土地利用をはかることを目的とし、従来第一種住居専用地域とされていた郷瀬町一帯の用途地域指定を準工業地域、住居地域、第二種住居専用地域に変更し、さらに右地区内に幅員六・五メートルの道路を新設または既設道路の拡幅によって設置するというものである。

(二)  本件地区計画については、昭和六〇年二月一三日と昭和六一年三月一四日に、郷瀬区長訴外阿江善太郎他による用途地域見直しの陳情書が提出された後、策定作業が開始され、

昭和六一年 八月六日     市都市計画審議会事前審議

同年    九月六日     都市計画手続条例による縦覧

同年一〇月四日~一〇月一七日 都市計画法に基づく地区計画及び用途変更の縦覧

同年    一〇月二一日   市都市計画審議会本審議

同年    一一月一二日   県都市計画審議会事前審議

同年    一一月二〇日   同審議会本審議

同年    一二月一二日   市長告示

という経過の概要を経ている。

3  本件地区計画決定手続の違法

都市計画法による都市計画は、対象地の土地所有権に対し、建築物の新築規制、事業予定地に関する先買い権の発生等の規制を加えるものであるから、憲法三一条の手続的保障が用意されなければならず、都市計画法、ならびに被告自身の定めた西脇市地区計画等の案の作成手続に関する条例によっても地元住民、とりわけ対象地域の地権者に原案を十分に開示し、説明を加えて都市計画審議会に意見書を提出して、所有権等個人の財産権と都市計画との調和を民主的手続の中で実質的に保障すべき建前となっている。

しかし、被告は本件地区計画の策定に関し、故意または重過失によって、原告らの意思表明の機会を封殺して本件地区計画を策定した。

すなわち、本件地区計画策定の直接的端緒となった昭和六一年三月一四日付陳情書は、郷瀬町区長阿江善太郎他七名の隣保班長の署名がなされているが、郷瀬町には二〇隣保班があるので、到底郷瀬町全体の意向とはいいがたく、都市計画法に基づく原案の縦覧の広報も不充分であった。

右の手続上の瑕疵は重大かつ明白であり、また本件地区計画は、対象地内の最大企業で釣針工場を営む訴外株式会社がまかつ一社の便宜のため策定されたもので、都市計画が本来もつべき公共性のないものであり、無効である。

三  処分性についての判断

地区計画は、市町村が決定する都市計画において、当該都市計画区域内の一体として整備及び保全を図るべき区域について、道路、公園等の地区施設、建築物等の整備並びに土地利用に関する計画(地区整備計画)を定めるもので、地区整備計画には地区計画の目的を達成するため必要な地区施設の配置及び規模、建築物の用途・敷地等に関する制限が定められる(法一二条の四第一ないし五項、一五条)。

しかし、地区計画が定められたのみでは対象地の土地所有者等に行為規制が課せられるものではなく、地区整備計画が定められた場合においても、その規制内容は、土地の区画形質の変更、建築物の建築等について市町村長への届出とそれに対する市町村長の勧告(法五八条の二)、開発行為の設計が地区整備計画に定められた内容に則しているかの審査(法三三条一項五号)、建築物の敷地、構造等に関する事項について、地区計画の内容として定められたものを必要に応じ市町村の条例でこれらに関する制限として定めることができる(建築基準法六八条の二)等にすぎず、当該区域内の個人に対する具体的な権利侵害を伴うものではない。

よって、本件地区計画は抗告訴訟の対象となるものではないので、原告らの本件訴えを却下し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 林泰民 岡部崇明 井上薫)

別紙<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例