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神戸地方裁判所 昭和46年(わ)175号 判決 1972年2月24日

本籍

西宮市鳴尾町二丁目三三番地

住居

同市一丁目七番八号

会社役員

竹田辰一

大正五年一月三〇日生

所得税法違反被告事件

検察官

佐藤惣一郎 出席

主文

被告人を懲役六月及び罰金五百万円に処する

右罰金を完納することができないときは金二万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する

但し、この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、日光建設株式会社の代表取締役であつて、個人として甲子園競輪場内において、自己及び支配人の西村綾子名義で食堂三店を経営していたものであるが、所得税法第一二〇条第一項所定の白色確定申告をするに当り、所得税を免れようと企て別紙記載のとおり、

第一、昭和四二年分の総所得金額は、一五、九八九、七五〇円で、これに対する所得税額は、六、八七六、二四一円であるのに、事業所得については前記西村名義や架空名義の銀行取引口座を設けてこれらに右食堂の売上金を入金する等の方法を講じ、配当所得については自己所有の甲子園土地企業株式会社の株主名義を自己及び多数の他人(架空名義を含む)名義に分散保管する方法を講じ、譲渡所得については、自己所有の土地の売却代金額を買主に連絡して事実の額を圧縮記載する方策を採るなどの不正の行為によりその所得を秘匿したうえ、同四三年三月一四日所轄の西宮税務署において、同署長に対し右事業所得、配当所得は記載せず、譲渡所得は圧縮記載して総所得額は、一、九五七、四三二円、所得税額は二九二、九〇〇円で、これの源泉徴収税額は一〇六、八〇〇円、差引納付税額は、一八六、一〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて詐りその趣不正の行為により六、一四五、〇〇〇円の所得税を免れ、

第二、昭和四三年分の総所得金額は二二、三六三、九九一円で、これに対する所得税額は一〇、四六三、九一五円であるのに、事業所得、配当所得について同項同様の不正の行為により、その所得を秘匿したうえ、同四四年三月一四日西宮税務署において、同署長に対し右両所得を記載せず、給与所得のみ記載して総所得金額は一、三〇五、〇〇〇円、所得税額は一二五、三〇〇円、これの源泉徴収額が六七三、〇六〇円で差引納付税額は欠損、還付を受ける趣旨の△五一一、七六〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、同署長より同年三月三一日右欠損金相当額の還付を受け、もつて詐りその他不正の行為により九、八三一、〇〇〇円の所得税を免れ、

第三、昭和四四年分の総所得金額は、二五、六九七、三〇〇円で、これに対する所得税額は一二、三一五、一八六円であるのに、事業所得、配当所得について前同様の不正の行為により、その所得を秘匿したうえ、同四五年三月一四日西宮税務署において、同署長に対し右両所得を記載せず給与所得、一時所得のみを記載して総所得金額は二、三四二、六六六円で所得税額は三五三、五九〇円、これの源泉徴収税額が八四〇、九一二円で差引所得税額は欠損、還付を受ける趣旨の△四八七、三二二円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、同署長より同年四月九日右欠損金相当額の還付を受け、もつて詐りその他不正の行為により一一、四三二、五〇〇円の所得税を免れ、

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一、被告人の当公判廷における供述

一、同人の検察官に対する各供述調書(但し、添附書類を含む。以下添附書類のある書証はすべてこれを含む。)

一、同人の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一、森本力、高見明彦、西村綾子の検察官に対する各供述調書

一、森本力、高見明彦、西村綾子、棒田明美、佐々木剛、石井律、鷲尾恭助、浅野有史、加藤又一、栃尾孫一、丹埜新吉、総田久子の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一、増田雄三郎、総田久子、石塚守一、木下 一、西村修一の大蔵事務官に対する各供述書

一、神戸銀行甲子園支店、中畑豊三、松井栄、山西伝三郎、鷲尾恭助、浅野有史作成の各確認書

一、大蔵事務官作成の脱税額計算書、所得税確定申告書(謄本)各三通

一、同事務官作成の現金預金有価証券等現在高検査てん末書(六通)及び調査てん末書(二通)

一、同事務官作成の国税査察官調査書類綴

一、押収してある証第一号(集金ノート一冊)証第二号(納品書綴三冊)証第三号(現金出入金帳一冊)証第四号(同上)証第五号(納品書五綴)証第六号(集金帳一冊)証第七号(売上伝票二綴)証第八号(メモ一綴)証第九号(請求書一冊)証第一〇号(当座勘定出入記入帳一綴)証第一一号(メモ二枚)証第一二号(人名別売掛金帳ノート一冊)証第一四号(納品書一二冊)証第一五号(請求書控一綴)証第一六号(ノート二冊)証第一七号(売掛伝票二綴)証第一八号(同上一綴)証第一九号(現金出納帳二冊)証第二〇号(カード競輪の店一綴)証第二一号(カード西村一綴)証第二二号ないし証第二四号(各物品貸帳一綴)証第二五号(納品書一冊)

判示第一につき更に

一、大蔵事務官作成の各確認書

一、国田泰男、奥村実、平井信江、木田信太郎の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一、国田泰男の大蔵事務官に対する供述書

判示第二、第三につき更に

一、西宮税務署長作成の昭和四七年一月三一日付証明書二通

(法令の適用)

(判示各事実) 各所得税法第二三八条(併科刑選択)

(併合罪) 刑法第四五条前段第四七条第一〇条(最も重い判示第一につき加重)第四八条第二項

(換刑処分) 刑法第一八条

(執行猶予) 刑法第二五条第一項

(本件脱税額の算定について)

判示脱税額殊に第二、第三の脱税額算定に含まれる判示還付金に関する部分については、適切な前例が見当らないので本件脱税額の算出につき説明を加えておきたい。

本件各脱税額の算定に際しては、別紙記載のとおり、先ず所得税法第一二〇条第一項第三号所定の確定申告に係る所得税額の適正額を算出し、次に右確定申告書に記入しなかつたが源泉徴収を受けている本人及び他人名義の配当所得につき配当控除(税額控除)をなし、次で給与所得、配当所得の源泉徴収により納付した税額を差引き(源泉徴収税額の差引を要することは最高裁昭和三九年六月三〇日決定、国税庁刊行、直接国税関係刑事判決要旨集二九二頁参照)更に判示第二、第三については、被告人が確定申告書において判示のとおり所得税額が欠損である旨の具体的数額を掲げたうえ右相当額の還付を受けているところ、右還付金は右受領行為のみを抽出して処罰する規定を設けていないこと、右還付金受領は被告人の判示各確定申告書に記載した脱税行為の直接の結果であること等を考慮すると、右還付額を加算して脱税額を算出するのが所得税法第二三八条第一項の法意に副うと解するので、右見解の下にこれを加算して脱税額を算出したわけである。

なお、所得税法第一二〇条第一項の確定申告書の提出に当り申告納税額欄に納税額を△ないし損失(赤字又は還付)と記載していても、本件と異り現実にその還付金を受領するに至つていない場合にあつては、脱税額算出に当つては所得税額を零と記載している場合と同視して脱税額の算出の対象から除外すべきことは自明の理である。(大阪地裁昭和三九年一〇月一二日判決前記要旨集二八六頁参照)

(量刑事情)

被告人は本件脱税額については昭和四六年六月加算税、地方税と共に逸早く完納していること、判示食堂経営については完全に手をひき、西村綾子が右三店の経営主体となり、現在有限会社を設立し納税主体が明確化されていること、配当所得についても同年七月株主名義を自己の名義に書換え今後は脱税の繰返される虞れがないこと、被告人は今後再び脱税行為をしないことを堅く誓つていることなど、諸般の情状を酌量して主文の量刑を相当と認める。

そこで、主文のとおり判決する。

(裁判官 矢島好信)

右謄本なり

即日於同庁

裁判所書記官 佐々木勝男

(別紙)

所得および税額

<省略>

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