大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

神戸地方裁判所 平成7年(ワ)1847号 判決 1997年9月24日

兵庫県宝塚市美幸町一〇番五一号

原告

栄レース株式会社

右代表者代表取締役

土井一郎

右訴訟代理人弁護士

渡辺四郎

右同

末井太

東京都中央区新川一丁目二四番一号

被告

金商又一株式会社

右代表者代表取締役

河内鋭雄

京都市伏見区深草小久保町三一五番地

被告

株式会社エレーヌ

右代表者代表取締役

藤井隆男

右両名訴訟代理人弁護士

吉原省三

右同

小松勉

右同

松本操

右同

三輪拓也

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは、別紙イ号目録記載の物品を輸入販売してはならない。

2  被告らは、前項の物品を廃棄せよ。

3  被告らは、各自、原告に対し、金四六三万円及びこれに対する平成八年二月六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

4  被告金商又一株式会社は、別紙ロ号目録記載の物品を輸入販売してはならない。

5  被告金商又一株式会社は、前項の物品を廃棄せよ。

6  被告金商又一株式会社は、原告に対し、金一二三万円及びこれに対する平成八年二月六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

7  被告らは、別紙謝罪広告目録記載の雑誌に同目録記載の広告を一回掲載せよ。

8  訴訟費用は被告らの負担とする。

9  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  登録意匠の存在

株式会社コアクレア(平成三年一〇月二四日商号変更前の旧商号は「栄企画株式会社」である。以下「コアクレア」という。)は、左記(一)及び(二)の意匠権(以下「第一意匠権」、「第二意匠権」といい、両者をあわせて「本件意匠権」という。また、その登録意匠を「第一登録意匠」、「第二登録意匠」といい、両者をあわせて「本件登録意匠」という。)を有している。

(一) 登録番号 第八五六五七五号

出願 平成二年一〇月三一日

登録 平成四年九月一〇日

意匠に係る物品 細幅レース地

登録意匠 別紙意匠公報(1)記載のとおり

(二) 登録番号 第八二八〇七六号

出願 平成元年七月二八日

登録 平成三年一〇月二五日

意匠に係る物品 細幅レース地

登録意匠 別紙意匠公報(2)記載のとおり

2  本件意匠権についての原告の実施権

(一) 原告は、コアクレアから、第一意匠権及び第二意匠権の専用実施権の設定を受けたところ、第一登録意匠に係る専用実施権は、平成七年一一月二〇日に、第二登録意匠に係る専用実施権は、平成七年一二月四日に、それぞれ登録された。

(二) 原告は、コアクレアから、本件意匠権登録当初から右各専用実施権の成立までの間、コアクレアから、本件登録意匠の独占的通常実施権を与えられていた。

3  第一登録意匠の範囲(意匠の構成)

(一) 第一意匠は、葡萄をデザイン化したものであり、細かな湾曲が連続するレース地外縁(スカラ)に沿って、特定範囲内の図柄(基本パターン、別紙第一登録意匠説明図<1>)と基本パターンを反転した図柄(反転パターン)を同図<2>のとおり組み合わせ、同図<3>のとおり繰り返し配置したものである。

(二) 基本パターンは、三枚の葉と三房の葡萄と三本の蔓を構成要素としており、これら構成要素の形状は、次のとおり、いずれも大きくデフオルメされ、極めて個性的な特徴を持っている。

(1) 葉は、自然界に多く観られる浅い切れ込みの掌状の葡萄の葉ではなく、深い切れ込みを持つ紅葉上の葉にアレンジされている。

(2) 房は、互いに重なることのない水玉の集合で表現されている。

(3) 蔓は、その柔らかく曲がりやすい性質がデザイン化されて、ループ上に回転している。

(三) 基本パターンの構成要素の形状・配置は次のとおりである。

(1) 一枚目の葉は、スカラに沿って配置され右上方を向いている(別紙第一登録意匠の説明図<4>の葉A)。

(2) 二枚目の葉は、同じく、スカラに沿って配置されているが、右下方を向いている(同図<4>の葉B)。

(3) 三枚目の葉は、スカラから離れ中央に配置され、左下方を向いている(同図<4>の葉C)。

(4) 葉ABCにはさまれた空間に葡萄の房Dが配置されている。

(5) 葉Bの右に葡萄の房Eがある。

(6) 葉Bの右上方で葉Cの右横に葡萄の房Fがある。

(7) 葉Aと葉Bの間に二つのループを持つ蔓Gがある。

(8) 房Eと房Fの間に一つのループを持つ蔓Hがある。

(9) 葉Cの左に一つのループを持つ蔓Jがある。

(同図<4>記載の数字はレース地の幅に対する各部分の長さの割合を示す。)

4  第二登録意匠の範囲(意匠の構成)

(一) 第二意匠は、第一意匠と同様に、基本パターン(別紙第二登録意匠説明図<1>)と反転パターンを同図<2>のとおり組み合わせ、同図<3>のとおり繰り返し配置したものである。

(二) 基本パターンは、別紙第二登録意匠説明図のとおり、大小二つの花とその陰に見え隠れする羽根模様及び先端がカールした蔓状の模様を構成要素としており、これら構成要素の形状・配置は次のとおりである。

(1) 大きな花は六枚の花弁を持ち、左上方を向いている。

(2) 大きな花の右下方に、五枚の花弁を持つ小さな花が右上方を向いて配置されている。

(3) 大小二つの花は、花芯及び花弁の形状が同じであり、同じ花の大小のセットと認識されるべく作られている。

(4) 大きな花の左方及び小さな花の左下から右下にかけて羽根模様がある。

(5) 羽根模様は、全体としてS字形のカーブを描いた一つの模様が大小の花の後方にあるものとしてデザインされている。

(6) 大きな花から左上に一本、上に一本、右上に一本の計三本の蔓が出ている。

(7) 大きな花の下方にも、小さな花の方向から延びて来た蔓がスカラに沿って二本ある。

(8) 羽根模様の右端から右方向に先で三つに分岐した蔓が一本出ている。

(同図<4>記載の数字はレース地の幅に対する各部分の長さの割合を示す。)

5  被告らの不法行為

(一) 被告金商又一株式会社(以下「被告金商又一」という。)は、本訴提起(平成七年一一月二四日)までに、別紙イ号目録記載のブラジャー(以下「イ号ブラジャー」という。)を業として韓国から少なくとも一〇万枚輸入して被告株式会社エレーヌ(以下「被告エレーヌ」という。)に卸売りし、被告エレーヌはイ号ブラジャーを一般消費者に販売した。

また、被告金商又一は、右本訴提起までに、別紙ロ号目録記載のブラジャー(以下「ロ号ブラジャー」という。)を業として韓国から少なくとも一万枚輸入して訴外サンコー株式会社に卸売りし、同社は、訴外有限会社ニューエリート商会にロ号ブラジャーを販売し、同社はロ号ブラジャーを一般消費者に販売した。

(二) イ号ブラジャーに使用されている細幅レース地は、スカラの形状が単純である点及びイ号説明図中の赤色部分に蔓らしき模様が存在する点を除き、第一登録意匠の基本パターンと同一の図柄によって構成されており、またロ号ブラジャーに使用されている細幅レース地は、スカラに付いているパール(一ミリメートル程のループ)の数や、要部から要部へ渡っている糸の走りの位置の僅かな違いを除き、第二登録意匠の基本パターンと同一の図柄によって構成されている。

細幅レース地を生地に使ったブラジャーは、その主要な部品が細幅レース地であるから、細幅レース地の類似物品というべきであって、イ号ブラジャーは、第一登録意匠又はその類似意匠の、ロ号ブラジャーは第二登録意匠又はその類似意匠の実施品であり、それらのブラジャーの輸入販売は、本件意匠権並びにその独占的通常実施権及び専用実施権を侵害するものである。

(三) 仮に細幅レース地とブラジャーとが類似の物品ではないとしても、イ号ブラジャーは第一登録意匠を、ロ号ブラジャーは第二登録意匠を利用(意匠法二六条にいう「利用」である。)して製造されたものであるから、それらブテジャーの輸入販売は、やはり、本件意匠権並びにその独占的通常実施権及び専用実施権を侵害するものである。すなわち、イ号ブラジャー及びロ号ブラジャーに使用されたレース片は、本件意匠と同一又は類似する細幅レース地を、その特徴である基本パターンを残すようにして裁断されたものであり、それらブラジャーは、そのようなレース片を、他の構成要素と区別しうる態様において包含しているのであるから、本件意匠を利用しているといわねばならない。

(四) 被告らは、イ号及びロ号ブラジャーの輸入販売に携わる際、国内の登録された意匠権及び実施権を侵害しないようブラジャーのデザインを検査しなければならなかったのにこれを怠った過失がある。

6  不法行為による財産的損害

(一) イ号ブラジャーに係るもの

(1) 第一登録意匠に係る細幅レース地でブラジャー一枚を製造するためには〇・六メートルのレースを要するので、一〇万枚のブラジャーを製造するためには六万メートルのレースが必要である。

第一登録意匠レース地の単価は一メートルにつき三〇〇円であり、原告の利益率は単価の二〇パーセントを下ることはないので、イ号ブラジャーの輸入販売行為によって原告に生じた損害の額は三六〇万円である。

(2) 被告金商又一及び被告エレーヌは、イ号ブラジャーの輸入販売が不法行為に該当することを争うので、原告は、原告訴訟代理人弁護士に委任(有償)して本訴の提起及びその追行を余儀なくされ、同弁護士に一〇三万円(うち三万円は消費税相当額)の支払をした。その弁護士費用もイ号ブラジャーに係る不法行為と相当因果関係に立つ損害である。

(二) ロ号ブラジャーに係るもの

(1) 第二登録意匠に係る細幅レース地を腋の下部分に用いてブラジャー一枚を製造するためには〇・五メートルのレースを要するので、一万枚の同ブラジャーを製造するためには五〇〇〇メートルのレースが必要である。

第二登録意匠レース地はリバーレース地であって、その単価は一メートルにつき五〇〇円であり、原告の利益率は単価の二〇パーセントを下ることはないので、ロ号ブラジャーの輸入販売行為によって原告に生じた損害の額は五〇万円である。

(2) 被告金商又一は、ロ号ブラジャーの輸入販売が不法行為に該当することを争うので、原告は、原告訴訟代理人弁護士に委任(有償)して本訴の提起及びその追行を余儀なくされ、同弁護士に一〇三万円(うち三万円は消費税相当額)の支払をした。その弁護士費用もロ号ブラジャーに係る不法行為と相当因果関係に立つ損害である。

7  不法行為による信用の毀損

細幅レースは、通常止め柄といって、特定の柄のレースは特定の服飾メーカーのみに販売され不特定多数に販売されることはなく、第一登録意匠に係る細幅レース地は一社に、第二登録意匠に係る細幅レース地は四社にのみ販売されている。そのため被告らがイ号及びロ号ブラジャーを輸入販売することは、本件意匠に係る細幅レース地を止め柄として販売している原告(服飾メーカー)の信頼を損なうばかりでなく、原告の名誉を傷つけ、その業務上の信用を著しく毀損低下させるものである。

8  被告らによる専用実施権侵害のおそれ

被告金商又一は韓国から継続的にブラジャーを輸入し、これを国内の業者に卸売りする業者であるから、今後とも商品名を変える等してイ号ブラジャー及びロ号ブラジャーを輸入販売するおそれがあるし、被告エレーヌは、被告金商又一と継続的な取引を行っていた婦人洋装下着の製造販売業者であるから、今後とも、被告金商又一から仕入れるなどしてイ号ブラジャーを販売し、本件意匠権に係る原告の専用実施権を侵害するおそれがある。

9  予備的主張

原告は、コアクレアが本件意匠権に基づいて被告らに対して有するすべての請求権の譲渡を受けた。

10  よって、原告は、本件意匠権の専用実施権又は独占的通常実施権(予備的にコアクレアから譲渡を受けた本件意匠権に基づく請求権)に基づき、被告らに対し、イ号ブラジャー及びロ号ブラジャーの輸入販売の差止め及び廃棄、イ号ブラジャーに係る損害賠償金四六三万円及び被告らに対する訴状送達の日の翌日である平成八年二月六日から各支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払並びに謝罪広告の実施を求め、被告金商又一に対しロ号ブラジャーに係る損害賠償金の一部一二三万円の支払及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成八年二月六日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払並びに謝罪広告の実施を求める。

二  請求原因に対する認否

(請求原因の認否)

1 請求原因1の事実は認める。

2 同2(一)の事実は認め、同2(二)の事実は知らない。

3 同3の事実は認める。

4 同4の事実は認める。

5(一) 同5(一)の事実は認める。

(二) 同5(二)は否認する。

意匠法上類似物品かどうかは、用途と機能によって判断され、用途も機能も同一であれば同一物品であり、用途が同じであるが機能が異なれば類似の物品とされる。そして用途が異なれば非類似の物品である。したがって、細幅レースとブラジャーは、明らかに非類似の物品であり、形状模様が類似か否かを論じるまでもなく、イ号及びロ号ブラジャーは本件登録意匠の実施品ではありえない。また、原告は、本件登録意匠中の基本パターンそれ自体が意匠権の対象であるかのような前提で権利侵害の主張を行っているが、そのような主張は失当である。すなわち、意匠は物品の形状、模様、色彩又はこれらの組み合わせから成るものであるが、原告のいう基本パターンは、物品の形状を離れた抽象的模様であって、本件登録意匠を構成する最小単位となっている図柄にすぎず、それ自体は登録意匠ではない。

本件登録意匠は、基本パターンと反転パターンの一組が一列上に配置された連続図柄として美観を起こさせるものであり、そのような連続図柄がイ号及びロ号ブラジャーの中には認められないから、物品の類似・非類似の問題と離れて観察したとしても、これらブラジャーが本件登録意匠の実施品であるということはできない。

(三) 同5(三)は否認する。

本件登録意匠が帯状の連続図柄であることからすれば、その連続図柄の一単位(基本パターンと反転パターンの組み合わせ)を超えて裁断されたレース地を使用したブラジャーでなければ、およそ本件登録意匠を利用したとは考えられないところ、イ号及びロ号ブラジャーのレース地部分には、どこにもそのように裁断されたレース地は存在しない。

また、意匠法二六条にいう利用関係が成立するためには、当該物品の意匠中に他人の登録意匠の全部が、その特徴が破壊されることなく他の部分と区別しうる態様において存在することを要するというべきところ、ブラジャーはボディーファツシヨンの用具であって、レース地のほか布地、ひも等が一体に縫製されており、全体として一つの美感を形成しているのであって、イ号及びロ号ブラジャーを製造するために用いられたと考えられる細幅レース地は、種々の形状に縫製され、もとの細幅レース地の特徴を完全に失っているから、本件意匠とイ号及びロ号ブラジャーとの間には利用関係は成立しない。

(四) 同5(四)は否認する。

6 同6の事実は知らない。

7 同7の事実は否認する。

8 同8は争う。原告が本件意匠権の専用実施権を取得した後は、被告らはイ号及びロ号ブラジャーを取り扱っていないし、今後、取り扱う意思も有していない。

9 同9の事実は知らない。

10 同10は争う。

第三  証拠

本件訴訟記録中の書証目録の記載を引用する。

理由

一  請求原因1、3、4及び5(一)の各事実はいずれも当事者間に争いがないので、イ号ブラジャーの輸入販売が第一登録意匠権の、ロ号ブラジャーの輸入販売が第二登録意匠権の侵害に当たるかどうかについて判断する。

二  意匠法の保護の対象たる意匠とは、物品の形状、模様若しくは色彩またはこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起させるものをいい(意匠法二条一項)、物品を離れて意匠を考えることはできず、物品が異なれば意匠は異なることは明らかである(意匠法七条)。

そして、本件意匠に係る物品は、意匠法施行規則六条別表第一の六五「その他基礎製品」のうちの「ひも、ロープ等」に該当する細幅レース地であって、ブラジャー(同表第一の二「衣服」のうちの「下着」に該当するものである。)ではないから、イ号ブラジャーの意匠が第一登録意匠と、ロ号ブラジャーの意匠が第二登録意匠と、それぞれ同一であるとか類似するということは到底できない。

三  もっとも、イ号ブラジャーの意匠中に第一登録意匠又はその類似意匠が、ロ号ブラジャーの意匠中に第二登録意匠又はその類似意匠が含まれるという関係(包含関係)が認められる場合であって、かつ、含まれる本件登録意匠又はその類似意匠がその特徴を残したまま、ブラジャーの他の構成部分とは区別して美観を起こさせるものと認められる場合には、イ号及びロ号ブラジャーの意匠と本件登録意匠との間には、意匠法二六条にいう「利用」関係が存在すると考えられ、同条の趣旨からして、それらブラジャーの輸入販売は、本件意匠権の侵害行為に該当するということができる。

そこで、右のような「利用関係」が存在するかどうかについて検討する。

四  第一登録意匠は、葡萄の三枚の葉と三房の実と三本の蔓を構成要素とする基本パターンとその反転パターンの組み合わせを最小単位の図柄とし、これを帯状に連続して配置したものであり、第二登録意匠は、大小二つの花とその陰に見え隠れする羽根模様及び先端がカールした蔓状の模様を構成要素とする基本パターンとその反転パターンの組み合わせを最小単位の図柄とし、これを帯状に連続して配置したものである。

イ号ブラジャー及びロ号ブラジャーの写真であることにつき争いがない乙第四号証、弁論の全趣旨によりイ号ブラジャーに用いられたレース地をつぎ合わせたもののコピーと認められる検甲第二号証及び弁論の全趣旨によりロ号ブラジャーの両腋部分に用いられたレース地をつぎ合わせたもののコピーと認められる検甲第四号証によれば、(一)イ号ブラジャー及びロ号ブラジャーの両腋部分には細幅のレース地を裁断した布地が使われていること、(二)そのブラジャー布地を取るための細幅レースの意匠の構成は本件登録意匠の各基本パターン及び反転パターンとほぼ同一の基本パターンと反転パターンを一組の最小単位とし、これを帯状に連続して配置したものであること、(三)したがって、ブラジャー布地を取るためのレース地の意匠は、本件登録意匠と類似していること、(四) しかしながら、本件登録意匠と類似するレース地から切り取られた各布地には、レース地の意匠を構成する最小単位の図柄(基本パターンと反転パターンの組み合わせ)が全部含まれているものはないこと、(五)その結果、イ号ブラジャー及びロ号ブラジャーの意匠中には、本件登録意匠と類似するレース地の最小単位の図柄を観察できる部分はないし、もとより、本件登録意匠やこれと類似するレース地の特徴である最小単位の図柄を帯状に連続配置している様子が窺える部分もないこと、の各事実が認められる。

したがって、そもそも、イ号ブラジャーの意匠中に第一登録意匠の類似意匠が、ロ号ブラジャーの意匠中に第二登録意匠の類似意匠が含まれているという包含関係が認められないから、それらブラジャーの意匠と本件登録意匠との間には意匠法二六条にいう利用関係も認められない。

五  原告は、被告のイ号ブラジャー及びロ号ブラジャーに使用されたレース片には第一登録意匠及び第二登録意匠のレースの各基本パターンに類似する基本パターンが残っていることを根拠として、イ号及びロ号ブラジャーと本件意匠との間の利用関係の存在を肯定すべき旨を主張する。

しかしながら、本件登録意匠の各基本パターンは、意匠を形成するための基本的・抽象的な図柄であって、それ自体は、細幅のレース地の形状・模様の美観を起こさせる登録意匠ということはできないから、イ号及びロ号ブラジャーの意匠中にその類似の基本パターンが含まれていることを根拠として、登録意匠の利用関係を問うことはできず、原告の右主張は採用しがたい。

六  右のとおりであって、イ号及びロ号ブラジャーの輸入販売は、本件意匠権の侵害に当たらないから、その余の点について判断するまでもなく、原告の本件各請求はいずれも理由がない。

七  よって、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 竹中省吾 裁判官 橋詰均 裁判官 鳥飼晃嗣)

平成4年(1992)12月22日発行 意匠公報 (1)

M1-624B

856575 意願 平2-36801 出願 平2(1990)10月31日

登録 平4(1992)9月10日

創作者 澤村徹弥 東京都渋谷区渋谷2丁目17番5号 株式会社ケンウツド内

意匠権者 栄企画株式会社 兵庫県宝塚市美幸町10番51号

番査官 永山陽二

意匠に係る物品 細幅レース地

説明 この意匠は上下にのみ連続するものである.

この意匠は図面代用見本によつて表わされたものであるから細部および色彩については原本を参照されたい

<省略>

平成4年(1992)1月30日発行 意匠公報 (2)

M1-624B

828076 意願 平1-28240 出願 平1(1989)7月28日

登録 平3(1991)10月25日

創作者 澤村徹弥 兵庫県西宮市甲東園3丁目1番4-808号

意匠権者 栄企画株式会社 兵庫県宝塚市美幸町10番51号

審査官 山本加代子

意匠に係る物品 細幅レース地

説明 この意匠は上下にのみ連続するものである.

この意匠は図面代用見本によつて表わされたものであるから細部および色彩については原本を参照されたい

<省略>

(別紙) 第一登録意匠説明図

<省略>

(別紙) 第二登録意匠説明図

<省略>

(別紙) イ号目録

下記イ号説明図のとおりの細幅レースを使用して製造されたイ号写真<1>ないし<3>のとおりのブラジャー。

<省略>

(別紙) ロ号目録

下記ロ号説明図のとおりの細幅レースを両腋の下の三角形部分(下記使用部分図黄色部分)に使用して製造されたロ号写真<1>ないし<3>のとおりのブラジャー。

<省略>

イ号写真<1>

<省略>

イ号写真<2>

<省略>

イ号写真<3>

<省略>

ロ号写真<1>

<省略>

ロ号写真<2>

<省略>

ロ号写真<3>

<省略>

謝罪広告目録

一、掲載の内容

おわび

今般、当社らにおいて輸入・販売しましたブラジャーに使用しましたレースが、貴社の登録意匠権専用実施権を侵害致しましたことは誠に申し訳ございません。

直ちに、当該商品の輸入・販売は中止致しました。

本件に関しましては、貴社が本デザインを、「止め柄」として販売されている関係先各位にもご迷惑をおかけ致しましたことを、併せお詫び申し上げます。

平成 年 月 日

東京都中央区新川一丁目二四番一号

金商又一株式会社

代表取締役 河内鋭雄

京都市伏見区深草小久保町三一五番地

株式会社エレーヌ

代表取締役 藤井隆男

宝塚市美幸町一〇番五一号

栄レース株式会社

代表取締役 土井一郎殿

二、掲載雑誌および掲載の大きさ

1、掲載雑誌 株式会社繊維商業ニュース社発行の月間ボディファッション誌

2、大きさ 三分の一頁広告

見出しは三二級太明朝、その他は一八級明朝

意匠公報

<省略>

意匠公報

<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例