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神戸地方裁判所 平成2年(わ)250号 判決 1990年10月19日

本籍

兵庫県西宮市上鳴尾町二二〇番地

住居

同市上鳴尾町一七番一九号

会社役員

野武誠之助

昭和一三年一月二九日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官中田和範出席の上審理して、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年六月及び罰金二二〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、兵庫県西宮市甲子園高潮町四番一九号において、「日吉食堂」の屋号で、飲食業を営んでいるものであるが、自己の所得税を免れようと企て、

第一  昭和六一年分の総所得金額は、七三五八万三〇一二円で、これに対する所得税額は三八八五万六四〇〇円であるにもかかわらず、売上の一部を除外するほか、継続して有価証券を売買したことによる所得の全てを除外するなどの行為により、その総所得金額のうち六二三四万三六七四円を秘匿した上、昭和六二年三月一六日、兵庫県西宮市江上町三番三五号所在の所轄西宮税務署において、同税務署長に対し、同六一年分の総所得金額は一一二三万九三三八円で、これに対する所得税額が二三四万三四〇〇円(ただし、申告書は二二二万七七〇〇円と誤つて記載)である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて、不正の行為により、同年分の正規の所得税額三八八五万六四〇〇円との差額三六五一万三〇〇〇円を免れ

第二  昭和六二年分の総所得金額は、六九二二万四一〇三円で、これに対する所得税額は三三三〇万九八〇〇円であるにもかかわらず、前同様の行為により、その総所得金額のうち五七八五万六四四五円を秘匿した上、昭和六三年三月一四日、前記西宮税務署において、同税務署長に対し、同六二年分の総所得金額は一一三六万七六五八円で、これに対する所得税額が二一九万五六〇〇円(ただし、申告書は二〇八万一二〇〇円と誤つて記載)である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて、不正の行為により、同年分の正規の所得税額三三三〇万九八〇〇円との差額三一一一万四二〇〇円を免れ

第三  昭和六三年分の総所得金額は、五八〇二万六七七八円で、これに対する所得税額は二四六二万九五〇〇円であるにもかかわらず、売上の一部を除外するなどの行為により、その総所得金額のうち四六五六万七七五八円を秘匿した上、平成元年三月一三日、前記西宮税務署において、同税務署長に対し、同六三年分の総所得金額は一一四五万九〇二〇円で、これに対する所得税額が一九五万六六〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて、不正の行為により、同年分の正規の所得税額二四六二万九五〇〇円との差額二二六七万二九〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実につき

一  被告人の公判廷の供述

一  被告人の検察官に対する各供述調書(検甲一一四、一一五号)

一  被告人の大蔵事務官に対する各質問てん末書(同九三ないし一一三号)

一  大蔵事務官作成の各査察官調査書(同一二ないし六四号)

一  芳川敬子、高橋秀雄、福島利明、堀嘉文、大館武美、油谷通、兵藤弘司、西尾豊彦、松原昌明、上川昌晃、高木清司、下田武、石田隆志、木下尚彦、島崎静子、伊沢協次、花澤良介、野武哲也、野武正宏、野武邦子の大蔵事務官に対する各質問てん末書(同六五ないし七三、七五ないし九一号)

一  松原昌明、野武邦子の検察官に対する各供述調書(同七四、九二号)

判示冒頭及び第一の事実につき

一  大蔵事務官作成の各証明書(同二ないし四号)

一  同作成の脱税額計算書(同五号)

判示冒頭及び第二の事実につき

一  大蔵事務官作成の各証明書(同六、七号)

一  同作成の脱税額計算書(同八号)

判示冒頭及び第三の事実につき

一  大蔵事務官作成の各証明書(同九、一〇号)

一  同作成の脱税額計算書(同一一号)

(法令の適用)

被告人の判示第一ないし第三の各所為は、いずれも所得税法二三八条に該当するので、各罪につき所定刑中懲役刑及び罰金刑を併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑につき同法四七条本文、一〇条により、犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内、罰金刑につき同法四八条二項により各罰金額を合算した金額の範囲内で被告人を懲役一年六月及び罰金二二〇〇万円に処し、刑法一八条により罰金の換刑処分をし、情状により懲役刑につき同法二五条一項を適用して、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。

(量刑の事情)

本件は、被告人が三か年分にわたり、所得税合計約九〇〇〇万円をほ脱した事案であり、犯行にあたつては売上の一部除外、あるいは有価証券売買益の除外などをした上、虚偽の確定申告書を提出しており、ほ脱の割合は各年分とも九〇%を越えるもので、犯罪の態様、結果とも悪質であつて、その刑事責任を軽視することはできない。

しかしながら、被告人がその後反省し、修正申告をして、本税、延滞税、重加算税、過少申告加算税のほか、市県民税、個人事業税をも完納したこと、経理を改善したこと、今後同様の違反をしないように家族が協力する態勢にあること、罰金刑以外に前科はないこと、その健康状態等を考慮すると、懲役刑についてはその執行を猶予し、社会内において自ら改善の努力をさせることが相当であると考える。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 加藤光康)

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