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直方簡易裁判所 昭和46年(ろ)40号 判決 1972年2月04日

主文

被告人を罰金一万円に処する。

右罰金を完納することができないときは金一、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は自動車運転の業務に従事するものであるところ、昭和四六年七月二三日午後五時五〇分ころ、普通貨物自動車(北九州四ぬ八六八号、マツダルーチエ、バン車長四、七メートル車幅一、六三メートル)を運転し、福岡県直方市知古一丁目一番四号附近の幅員九、三メートルの道路(道路両側に幅員一、五メートルの一段車道より高い歩道の区別がある)を北方植木方面より南方古町方面に向け時速約三五キロメートルで進行し、前同所所在の交通整理の行なわれていない交差点を左折するに際し、同交差点手前約三〇メートルの地点で後方を室内ミラーで確認したところその左斜め後方約二〇メートルの地点を同方向に向け、川原順司(当時一七年)運転の自動二輸車が進行して来るのを認めたが、かかる場合自動車運転者としては左折の合図をするのは勿論、法に定められたあらかじめその前からできる限り道路の左側に寄りかつ徐行し、後進車に左折の意図あることを示して進行するような適切な左折準備態勢をとらずに道路左側に寄らない時は、場合によつては自車の左側を後進車が通過し自車が左折進行中接触或は衝突するおそれもあるから、後進車輛の動静に十分注意し、場合によつては一時停止し後進車輛の通過をまつなどして事故の発生を未然に防止すべき注意義務があるのにこれを怠り、同交差点手前約二二メートル附近で左折の合図をすると共に徐々に速度を落したが道路左側によらず歩道と自車との間に約一、七メートルの間隔を置いたまま進行したのに対向車が同交差点を右折するのに気をうばわれて左斜め後方より自車に接近し自車左側を直進通過しようとして来た前記川原運転の軽二輪車の動静を確認せぬまま漫然時速約一〇キロメートルの速度で左折進行した過失により自車左側を同方向に直進して来た前記川原運転の自動二輪車に自車左前部を接触させ、更に同車を同交差点向い側の左側歩道上に逸走させ、同歩道上を同方向に歩行中の竹内マツエ(当時六五年)に同車を衝突させ、よつて川原順司に対し加療約一週間を要する左右膝関節挫傷等の傷害を、竹内マツエに対し加療約二週間を要する脳震盪前頭部、顔面部挫傷等の傷害をそれぞれ負わせたものである。

(証拠の標目)省略

(法令の適用)

被告人の判示各所為は刑法第二一一条前段、罰金等臨時措置法第三条第一項第一号に該当するところ、右は一個の行為で二個の罪名に触れる場合であるから刑法第五四条第一項前段第一〇条により犯情の重い被害者竹内マツエに対する業務上過失傷害罪の刑に従い、所定刑中罰金刑を選択し、その罰金額の範囲内で被告人を罰金一万円に処し、同法第一八条により被告人が右罰金を完納することのできないときは金一、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、訴訟費用は刑事訴訟法第一八一条第一項本文により全部被告人に負担させることとする。

よつて主文のとおり判決する。

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