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甲府地方裁判所 昭和31年(ヨ)86号 決定 1956年7月26日

債権者 共同工芸株式会社

債務者 共同工芸労働組合

主文

一、債務者組合に属する組合員は

(イ)  甲府市東青沼町四百十二番地

家屋番号同町四百十二番

木造瓦葦二階建事務所一棟

(建坪十三坪二合五勺二階坪十二坪)

木造瓦葦平家建工場一棟

(建坪七十二坪七合五勺)

(ロ)  同所四百十二番の二

宅地百十坪七合四勺に立入つてはならない。

二、債権者は債務者組合の代表者(又は委員)が団体交渉又はその打合せの為右土地建物に立入る場合には之を許さなければならない。

三、債権者の委任する執行吏は右仮処分の趣旨を適当の方法を以て公示せよ。

(注、保証金十五万円)

(裁判官 杉山孝)

【参考資料】

工場立入禁止仮処分命令の申請

債権者 共同工芸株式会社

債務者 共同工芸労働組合

申請の趣旨

別紙目録記載の不動産に付

一、債務者組合に属する組合員の占有を解いて債権者の委任する甲府地方裁判所執行吏の保管に附する。

二、同執行吏は債権者の申出により生産事業以外の執務のために債権者に対し之を使用せしむることができる。

三、同組合員は之に立入つてはならない。

四、同組合員は生産事業以外の所用の為之に立入る場合は同執行吏の許可を受け其の指示に従はなければならない。

五、同執行吏は仮処分中なることを適当の方法を以て公示すること。

右趣旨の仮処分命令を求める。

申請の理由

一、債権者は昭和二十七年七月二日会社を設立し申請の趣旨工場に於て海外よりのダイヤモンド原石の受託加工業務に従事し債務者組合員は其の工員として雇はれ業務に従事し同日組合員百十一名を以て債務者組合を組成して現在に至つた。

二、而して債務者組合は昭和三十一年六月十四日債権者に対し夏期手当平均一、五ケ月を要求し続けたが債権者は昭和三十年十二月中債務者組合との協定による日産十カラットに達しないので其の申入を拒否したが債務者組合は昭和三十一年七月九日債権者に対しスト権を確立し実力行使に入る旨通告し来りたるが山梨県地方労働委員会の斡旋により種々接衝した。

三、而して右委員会の斡旋案たる申合事項による同月十三日以降債務者組合員は誠意を以て作業を行い生産に努力すべしとの却て減少するの傾向にあり為に債権者は条項のあつたのに同組合員は依然作業に熱意を示さず生産は同月二十日の右委員会の斡旋案にも之を拒否し又同組合員のダイヤモンド原石の破損怠慢による損害の発生の為債権者は已むを得ず昭和三十一年七月二十日午後一時工場を閉鎖し其の旨債務者組合に通達した。

四、尚債権者は宝石の受託加工業務の為常に工場及倉庫には多大の原石を保有し且機械にも相当量の原石を装置して居り本件工場閉鎖により債務者組合員は生産管理を行ひ若くは右工場に立入つて機械或は原石を毀損するやの行動をなさんとして居るので若し斯る事がありとせば債権者は償ふことの出来ない損害を蒙る虞れが多分にあるので債権者は本件不動産の占有を妨害せられるので占有保全の訴提起の準備中であるか之を俟つに於ては権利の実行をなす事が不能となるので申請の趣旨の仮処分命令を求めるため本申請に及んだものである。

附属書類(省略)

昭和三十一年七月二十三日

右債権者代理人

弁護士 藤田馨

甲府地方裁判所 御中

(別紙省略)

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