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熊本地方裁判所八代支部 昭和36年(ワ)29号 判決 1964年2月25日

主文

原告の請求はすべてこれを棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は、「被告らは原告に対し、各自金一九万〇、〇〇〇円および内金二万〇、〇〇〇円に対する昭和三四年五月一日から支払ずみまで月二分の割合による金員、内金一七万〇、〇〇〇円に対する昭和三四年五月一日から支払ずみまで年三割六分の割合による金員の支払をせよ。訴訟費用は、被告らの負担とする。」(昭和三六年(ワ)第二九号事件)「被告らは、原告に対し金三万七、〇二七円およびこれに対する昭和三四年二月一五日から支払ずみまで年五分の割合による金員の支払をせよ。訴訟費用は、被告らの負担とする。」(昭和三六年(ワ)第九八号事件)との判決を求め、その請求原因として

一、原告は、被告ら先代正男に対し、被告東海夫の連帯保証のもとに、(一)昭和三一年三月二五日金一七万〇、〇〇〇円を弁済期同年四月二五日、利息月三分五厘と定めて貸与し、(二)昭和三四年二月二六日金二万〇、〇〇〇円を弁済期同年三月一五日利息月二分と定めて貸与したが、いずれも昭和三四年四月三〇日までの利息および遅延損害金の支払をうけたのみで、その余の支払をしない。

二、原告は、昭和三一年一月一〇日被告ら先代正男および被告ヨシノに対し、金一一万〇、〇〇〇円を弁済期同年一二月二〇日と定めて貸与した。ところが原告は、昭和三四年二月一四日被告ら先代正男よりその所有の不動産を代金四五万〇、〇〇〇円で買受け、右代金債務と原告の被告ら先代正男に対する別口金三六万〇、〇〇〇円の貸金債権と右貸金一一万〇、〇〇〇円のうち元金九万〇、〇〇〇円の貸金債権とを相殺した。よつて被告ら先代正男および被告ヨシノは、原告に対し、残貸金二万〇、〇〇〇円および昭和三一年一月一〇日から昭和三四年二月一四日まで民法所定の年五分の割合による利息金一万七、〇二七円合計金三万七、〇二七円およびこれに対する昭和三四年二月一五日から支払ずみまで年五分の遅延損害金の支払義務がある。

三、被告ら先代正男は、昭和三七年五月二日死亡し、被告らが相続により、その権利義務の一切を承継したので、原告は被告らに対し請求の趣旨どおりの支払を求める。

四、被告訴訟代理人主張の抗弁事実のうち、原告が被告ら先代正男よりその主張の不動産を代金四五万〇、〇〇〇円で買受けたことは認めるが、その他は否認する。原告は、被告ら先代正男に対して、原告主張の前記三口の貸金のほかに元利金三六万〇、〇〇〇円の貸金債権を有していたので、右代金の支払を右金三六万〇、〇〇〇円の支払に充当し、前記のとおり残金九万〇、〇〇〇円の支払を金一一万〇、〇〇〇円の貸金元本の弁済に充当した。したがつて原告の金四五万〇、〇〇〇円の代金支払債務はすべて消滅したものであつて、原告主張の(一)金一七万〇、〇〇〇円、(二)金二万〇、〇〇〇円の貸金の弁済はすんでいない。

と述べた。

立証(省略)

被告ら訴訟代理人は、主文と同旨の判決を求め、答弁として原告主張の請求原因につき

一、第一項のうち、原告が被告ら先代正男に対し、被告東海夫の連帯保証のもとに、(一)昭和三一年三月二五日金一七万〇、〇〇〇円を弁済期同年四月二五日利息月三分五厘と定めて貸与し、(二)昭和三四年二月二六日金二万〇、〇〇〇円を弁済期同年三月一五日、利息月二分と定めて貸与したこと、右貸金に対しいずれも昭和三四年四月三〇日までの利息および遅延損害金が弁済ずみであることは認めるが、その他は否認する。

二、第二項のうち、被告ら先代正男が昭和三四年二月一四日原告に対し、その所有の不動産を代金四五万〇、〇〇〇円で売渡したことは認めるが、その他は否認する。もつとも被告ら先代正男が昭和三一年一月一〇日第三者の原告に対する金一一万〇、〇〇〇円の債務を引受け、これを目的として原告と弁済期を同年一二月二〇日と定めて準消費貸借を締結したことはある。原告は、被告ら先代正男に別口金三六万〇、〇〇〇円の貸金債権を有していると主張しているが、右の事情は、被告先代正男は、原告が営む金融業の手伝をしていたことがあり、被告ら先代の仲介によつて原告が訴外石村仙蔵ほか六名に合計金四五万〇、〇〇〇円を貸付けたところ、これが焦付いて回収が困難となつたので、原告は被告ら先代正男に対し、右のうち金三六万〇、〇〇〇円について責任をとるよう要求し、右貸金の借用証などを被告ら先代正男方に置いて帰つたが、原告が第三者に貸付けた貸金を被告ら先代正男が弁済するいわれはないので、原告にその支払を拒絶していたのであり、原告が右金三六万〇、〇〇〇円を目して被告ら先代に対する貸金債権と称しているにすぎないのである。

三、第三項は認める。

と述べ、抗弁として

一、原告主張の金一七万〇、〇〇〇円および金二万〇、〇〇〇円の二口貸金債務は、次の弁済方法により既に消滅している。すなわち被告ら先代正男は、昭和三四年二月一四日原告に対し、その所有の八代郡竜北村大字鹿島字横枕所在の宅地一二〇坪および木造瓦葺平家建居宅一棟二七、五坪(新築未登記家屋)を代金四五万〇、〇〇〇円で売買し、原告は右代金のうちから右二口貸金債権の弁済に充当し、残代金二六万〇、〇〇〇円を支払うことを約定し、被告ら先代正男は、即日右物件を引渡し、その後原告所有名義に登記を了している。右のとおり、右売買代金によりその対等額につき前記二口の貸金債権の弁済に充当されたものであつて、右二口の貸金債権は消滅した。

二、原告主張の金一一万〇、〇〇〇円の貸金債権については、被告ら先代正男が、昭和三三年一月一一日金九万〇、〇〇〇円、昭和三二年金三万〇、〇〇〇円を支払い、弁済により消滅している。仮りに右に理由がないとすれば、前項のとおり、被告ら先代正男は、原告に対し、金二六万〇、〇〇〇円の売買残代金債権を有しているので、これをもつて対等額において原告主張の金一一万〇、〇〇〇円の貸金残金と相殺する。

と述べた。

立証(省略)

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