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浦和地方裁判所 昭和62年(ワ)730号 判決 1990年10月09日

本訴原告(反訴被告、以下「原告」という。) プレイタイムエレクトロニクスリミテッド

右代表者マネージングディレクター リースーチェン・ステェファン

右訴訟代理人弁護士 柳瀬康治

右訴訟復代理人弁護士 千葉道則

本訴被告(反訴原告以下「被告」という。) バラシマ工業株式会社

右代表者代表取締役 木村武男

右訴訟代理人弁護士 原田一英

同 内田実

同 椙山敬士

主文

一  被告は原告に対し、三一五〇万円及びこれに対する昭和六二年七月一五日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

二  原告の本訴請求のうちその余の請求及び被告の反訴請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は本訴、反訴を通じてこれを三分し、その一を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

四  この判決は原告において五〇〇万円の担保を供するときは第一項に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求める裁判

(本訴について)

一  請求の趣旨

1 被告は原告に対し六二五一万円及びこれに対する昭和六二年七月一五日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

3 仮執行の宣言。

二  請求の趣旨に対する答弁

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

(反訴について)

一  請求の趣旨

1 原告は被告に対し二二三七万九六八〇円及びこれに対す昭和六三年一月二〇日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

3 仮執行の宣言。

二  請求の趣旨に対する答弁

1 被告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

第二当事者の主張

(本訴関係)

一  請求原因

1 原告は電気器具、玩具等の販売を主な営業目的とする香港の株式会社であり、被告は玩具の製造販売を主な営業目的とする日本の株式会社である。

2 原告は昭和六一年二月四日、被告との間で、プラスティック製ラジオコントロールロボット玩具(以下「本件ロボット玩具」という。)の製造請負契約を締結し、被告に対し、次の約定で本件ロボット玩具を注文した。

(一) 個数 一〇、〇〇〇個

(二) 単価 四五・三五USドル

(三) 総額 四五万三五〇〇USドル

(四) 引渡 FOB韓国港

(五) 支払方法 LC(信用状)

(六) 納期 昭和六一年八月一五日

3 被告は右納期に本件ロボット玩具を船積みすることができず、その後、原告からの催告に代えて、原告の同意のもとに、納期は昭和六一年八月三〇日に、さらに、同年一〇月一五日に順次延期されたが、被告は右最後に変更された納期にも製品の引渡しをすることはできなかった。そこで、原告は本件訴状によって右請負契約を解除する旨の意思表示をし、右訴状は昭和六二年七月一五日被告に到達した。

4 原告は、アメリカ合衆国内の小売業者との間で、別紙「商品売買成約一覧表」記載のとおり、右請負契約に基づき被告から引渡しを受けるはずの本件ロボット玩具を合計一〇、〇〇〇個、一個当り九〇USドルで販売する契約をしていたが、被告がその引渡しをしなかったため本件ロボット玩具一個当り四四・六五ドル、総額四四万六五〇〇ドル(一ドル一四〇円換算で六二五一万円)の得べかりし利益を喪失し、同額の損害を被った。

よって、原告は被告に対し右六二五一万円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日である昭和六二年七月一五日から支払済みまで商法所定の年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1 請求原因1の事実は認める。

2 同2の事実は否認する。

本件ロボット玩具の商品化には(1) その開発・設計、(2) 製品製造のための金型の作製及び(3) 金型を用いての製品の製造の三つの段階がある。被告が原告から請負ったのは右(1) 及び(2) の段階の仕事並びに(3) の段階の仕事を担当する請負業者に対する技術援助及び製品の検査のみである。(3) の仕事を担当したのは韓国法人であるロボコム・カンパニー・インク(以下「ロボコム」という。)であり、原告はロボコムとの間で本件ロボット玩具の製造請負契約をしたのであって、被告との間でしたのではない。

3 同3の事実は、原告が請負契約を解除する旨の意思表示をしたことを除いて、否認する。

4 同4のうち、原告が小売業者との間でその主張のような本件ロボット玩具の販売契約をしたことは否認、損害についての主張は争う。

仮に、原告が小売業者との間で本件ロボット玩具の販売契約をしたことがあるとしても、その趣旨は本件ロボット玩具の量産体制が整い、大量生産ができるようになれば販売する、という程度のものであって、確定したものではない。

仮に、そうでないとしても、原告が被ったと主張する損害は、いわゆる得べかりし利益を喪失したことによる損害であるところ、その主張の金額は単に販売価格から仕入価格を差し引いて、これに販売個数を乗じたものにすぎない。これからは運賃、保険料、広告宣伝費、人件費等の販売に要する経費が差し引かれていないし、法人税等の税金も控除されていない。したがって、原告主張の金額が直ちに損害額であるということはできない。

三  抗弁

本件ロボット玩具は昭和六一年一二月初め九〇個が出荷されただけで、量産されるに至らなかったのであるが、その原因は、(1) 製品の製造を請負ったロボコムがこれに熱意を示さなかったこと、(2) ロボコムは原告からほかにもラジコンロボットの製造を請負っており、その製造に忙がしく、技術的に一応の水準に達している従業員のほとんどはこれにかかり切りになっていたこと、(3) 残りの従業員の技術水準は低く、本件ロボット玩具の製造作業に当たる状態ではなかったし、韓国の現地での部品や資材の調達が円滑に進まなかったこと、(4) 原告が昭和六一年四、五月ごろ本件ロボット玩具の電波送信システムの仕様変更を要求し、そのため製造作業は二カ月は遅れることとなったこと、などによるものである。そして、仮に、被告が原告から本件ロボット玩具について製品の製造の段階での仕事までを請負い、さらに、被告がロボコムに対してこれを請負わせたものであるとしても、被告には本件ロボット玩具が量産されるに至らなかったことにつきその責に帰することのできない事由がある。すなわち、玩具の製造技術については日本の業者が最も優れており、次いで台湾、その次が韓国の順である。被告は当初本件ロボット玩具の製造を請負う業者の選定については日本の業者を念頭においていた。しかしながら、原告が指定する本件ロボット玩具一個当りの引取り価格(被告の取得分二ドルを加えて四三・七四ドル)では日本の業者はもとより、台湾でも引き受ける業者はなかった。そのため原告は予てから取引関係があった韓国の業者であるロボコムに発注するよう指示し、被告はこの指図に従い、ロボコムとの間で本件ロボット玩具の製造について請負契約をしたのである。原告は予てからロボコムとは取引関係があり、その人的能力及び物的設備等からしてロボコムは確定的な納期を定めて本件ロボット玩具の製造の注文を受けることができるような状態にないことは知っていたのである。一方、被告は最大限の努力をしてロボコムを指導、監督し、そのために多額の出費をしている。以上のように、被告の請負契約上の債務が履行できなかったのは、注文者である原告の指図が不適切だったからであり、民法第六三六条の規定の趣旨に徴しても、原告は右債務不履行につき責を負わない。

四  抗弁に対する認否

抗弁事実のうち、原告がロボコムに本件ロボット玩具とは別のロボット玩具等を製造させたことがあることは認めるが、原告が被告に対し、ロボコムに対して本件ロボット玩具の発注をするよう指示したことは否認する。

ロボコムは従来原告からの玩具の製造の注文に対しては誠実にその義務を履行していた。そこで、原告は被告に対し韓国にロボコムという業者があることを紹介したことはあるが、ロボコムに本件ロボット玩具を製造させるよう指示したことなど全くない。また、原告は、本件ロボット玩具について売れるに適した販売価格を設定するため引取り価格を極力低く押えようとして、被告との間で製品の製造原価の内容にまで立ち入った交渉をしたことはあるが、本件ロボット玩具の製造の請負業者をロボコムと決定したのはあくまでも被告である。

(反訴関係)

一  請求原因

1 本訴の請求原因1と同じ。

2(一) 被告は昭和六〇年一一月七日、原告の注文により本件ロボット玩具製造のための金型の製作を四五〇〇万円で請け負い、代金の支払時期を次のとおり約した。

(1)  契約の成立時一五〇〇万円

(2)  テストショットが可能となったとき一五〇〇万円

(3)  金型が完成し原告が満足したときに一五〇〇万円

(二) 被告は昭和六一年ころ原告からの注文による本件ロボット玩具の一部機能変更に伴ない、追加の金型製作を三三九万円で請け負った。

(三) 被告は、以上の金型(一二個)を完成し、昭和六〇年四月二四日と同年五月二日に原告の指定する韓国のロボコムあてに出荷し、引き渡した。

3 被告は右引渡しのころ、原告の注文により本件ロボット玩具のプロトタイプの作製を二七五万円で、その説明書の作成を二〇万円で、FCC(米国連邦通信委員会)への諸手続を四五万円で、それぞれ請負い、いずれもこれを完成し、引渡しを要するものは引き渡した。

4 被告は昭和六一年二月四日、原告の依頼によりロボコムによる本件ロボット玩具の製造に関しロボコムに対する指導・監督の業務を引き受けた。その対価は本件ロボット玩具一個につき二USドルとし、ロボコムに対する製造費を含めて一個あたり四六ドル八〇セントを支払うこととした。その後、ロボコムは本件ロボット玩具を九〇個製造し、昭和六一年一一月、原告の指定する仕向地に輸送した。これについての指導・監督の対価は四二一二ドルであり、これを一ドル一四〇円で換算すると五八万九六八〇円である。

よって、被告は原告に対し以上合計五二三七万九六八〇円のうち支払済みの金型代三〇〇〇万円を除いた二二三七万九六八〇円及びこれに対する反訴状送達の日の翌日である昭和六三年一月二〇日から支払済みまで商法所定の年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1 請求原因1の事実は認める。

2 同2の事実のうち、(一)は認める。(二)、(三)は否認する。

被告主張の金型作成についての請負契約は、原告と被告間の本件ロボット玩具の製造についての請負契約に付帯するものであって、独立した契約ではない。被告主張の金型によっては完全な本件ロボット玩具は製造されなかったのであるから、原告はその代金支払義務を負わない。右契約にいう「金型が完成し原告が満足したとき」とは金型によって完全な本件ロボット玩具が製造されることをいうのである。

3 同3の事実は否認する。

4 同4の事実は否認する。

ロボコムから被告主張のころ本件ロボット玩具九〇個が原告指定の仕向地に輸送されたことはあるが、いずれも不良品で販売できるものではなく、原告はその全部を返送した。

第三証拠<省略>

理由

(原告の本訴請求に対する判断)

一  原告は電気器具、玩具等の販売を主な営業目的とする香港の株式会社であり、被告は玩具の製造販売を主な営業目的とする日本の株式会社であることは当事者間に争いがない。<証拠>によれば、原告はアメリカ合衆国にあるプレイタイムプロダクツ社の香港法人であり、両社の実質上のオーナーはスタンリィーコーヘンであること、プレイタイムプロダクツ社は広く国際市場で電気器具、玩具等の卸販売等の営業活動を展開している企業であり、原告はそのマーケティング戦略に基づいて極東地域における営業活動を担当する会社であることが認められる。

二  <証拠>を総合すれば、次の事実が認められる。

1  プレイタイムプロダクツ社はアメリカ市場向けに次の機能を持つロボット玩具の商品化を企画し、原告に対しその開発・設計及び製造の業務を推進することを指示した。

(1)  ラジオコントロールロボットで、トランスミッタの操作により前進、停止、左右回転が可能であること

(2)  顔は液晶で構成され、方向転換時に表情を変えること

(3)  三〇秒間、人の声を録音し、トランスミッターで再生可能なこと

(4)  両腕で三〇グラム程度の荷物を持ち上げること

2  もとより原告は玩具等の卸販売を業としている会社であって、自ら新型玩具の開発、設計及び製造等の能力を有してはいなかったところ、予てから日本国内における新製品情報の提供等に関し役務契約を結んでいた日本の貿易業者である沼田正之を通じて、右新型ロボット玩具の開発、設計及び製造を担当する業者として被告を紹介された。

3  そこで、原告は、被告と直接に、時には沼田を介して折衝を重ねたすえ、被告に対し被告による開発、設計が満足のできるものであれば製造までも依頼することを前提として、一九八五年(昭和六〇年)一一月七日、まず、本件ロボット玩具の開発、設計を依頼し、被告はこれを引き受けた。その契約の型態は、被告が原告から、開発、設計の成果としての製品を製造するための金型の作製を請負うというものであり、代金は四五〇〇万円、支払方法は(1) 契約成立時に一五〇〇万円、(2) 金型が完成し試験的成型を確認したときに一五〇〇万円、(3) 金型が完成し原告がこれを承認したとき一五〇〇万円、金型完成年月日は一九八六年(昭和六一年)三月一五日とされた。そして、金型は同年二月ころまでにはその主要部分が完成し、原告は被告に対し、それまでの間に代金のうち右(1) 、(2) の計三〇〇〇万円を支払った。

4  金型の作製が進行するのに応じて、原告と被告間では製品の製造についての折衝が進められた。そこで最も問題となったのは原告による製品の引取り価格についてであり、原告は製品の一個当りの卸売価格を九〇ドル以下にしたいとの考えから、引取り価格を四五ドル前後とすることを強く要求し、最終的に被告もこれを承諾した。ところで、被告は元来玩具の製造設備を有してはおらず、本件ロボット玩具の製造を引き受けるとすれば、さらに、これを第三者に請負わせなければならなかった。しかしながら、被告が受ける利益も含めて一個当り四五ドル前後では、日本の業者に請負わせることはとうてい困難である。そこで、被告は台湾若しくは韓国の業者に請負わせようとしていくつかの業者と交渉を進めたが、価格の点で折合いがつかなかった。そのような状況のもとで、被告は原告から韓国法人であるロボコムを紹介された。ロボコムは予てから原告と取引関係があり、当時も、原告から本件ロボット玩具とは別のロボット玩具の製造を請負っていた。被告は、原告の紹介を受けて、韓国の現地に関係者を派遣し、ロボコムの技術能力、工場設備等について独自の調査をし、その結果、ロボコムにおいて本件ロボット玩具を製造することは可能と判断し、価格の点についても合意に達したので、ロボコムを下請業者に決定し、原告にもその旨を通知した。

5  こうして、本件ロボット玩具の商品化(量産)の体制が整ったので、プレイタイムプロダクツ社は、一九八六年(昭和六一年)二月、ニューヨークで開催されたアメリカン・トイ・ショーに被告から提供された本件ロボット玩具のフロトタイプ(被告が金型により手作りで作製した見本)を出品し、カタログ等を配布して販売活動をしたところ、好評を博した。そこで、同社は販売に自信をえ、原告は同社の指示を受けて、同年二月四日、被告に対し、取り敢えず、本件ロボット玩具一〇、〇〇〇個を一個当り四五・三五USドルで注文し、被告は同月一〇日、これを引き受けた。そして、原告は被告に対し、同年四月ころから注文に応えて順次期日、数量等を定めて出荷の指図をしたが、実際には製品は同年一一月に九〇個が出荷されただけであり、それも全部が不良品のため返品され、同年一二月の時点では最早製品出荷の目処は立たなくなっていた。

6  その主な原因はロボコムにおいて本件ロボット玩具の製造に熱意を示さなかったことにあり、その背景にはロボコムは本件ロボット玩具の量産を行うのに十分な技術能力、工場設備等を有していなかったことがある。被告はロボコムの韓国の現地にある工場に何回となく関係者を派遣し、技術指導、製造促進に努めたが、効を奏するには至らなかった。

以上の事実が認められ、この認定を覆すに十分な証拠はない。

右経過に照らせば、原告を注文者、被告を請負人として、昭和六一年二月四日、双方の間に、本件ロボット玩具一〇、〇〇〇個を一個当り四五・三五USドルで製造し、引き渡す旨の請負契約が成立したことは明らかである。そして、これに基づく被告の原告に対する製品引渡しの債務は期限を経過し、同年一二月の時点では最早履行の目処も立たない状況にあったことは右認定のとおりであり、このような事情のもとにおいては、原告のおいて被告に対し相当の期間を定めて履行を催告することは意味のないことであるから、原告は催告なくして右請負契約を解除することができると解するのが相当であるところ、原告が被告に対し本件訴状によってその意思表示をし、右訴状が昭和六二年七月一五日被告に到達したことは記録上明らかである。

ところで、被告は、被告がロボコムに本件ロボット玩具の製造を請負わせたのは原告の指図によるものであるとして、被告には原告に対する請負契約上の債務が履行されなかったことにつきその責に帰することのできない事由があると主張するが、<証拠>によっても原告が被告に対し右のような指図をしたことを認めることはできず、ほかにこれを認めるに足りる証拠はない。前認定の経過からすれば、被告にロボコムを紹介したのは原告であるけれども、被告は独自の調査に基づいてロボコムでも本件ロボット玩具の製造は可能と判断し、自らの意思でロボコムを下請業者に決定したというほかはない。そうすると、被告は、原告に対する請負契約上の債務が不履行となったことにつき、原告に対する損害賠償義務を免れることはできないというべきである。

三  <証拠>によれば、プレイタイムプロダクツ社は、昭和六一年一月末から同年五月末までの間にアメリカ合衆国内の玩具販売業者から、別紙「商品成約一覧表」記載のとおり、計一五件、一〇、〇〇〇個を超える本件ロボット玩具の注文を受け、少なくとも一〇、〇〇〇個については一個当り九〇・〇〇USドルで売り渡すことを約していたこと、しかしながら、被告から製品が出荷されなかったため最終的に契約は取り消されてしまったことが認められる。これによれば、プレイタイムプロダクツ社は被告が原告の指図に従い製品を出荷していたとすれば、右各販売契約により相当の利益を挙げることができたはずのところ、被告が製品の出荷をしなかったため、右得べかりし利益を失い、同額の損害を被ったということができ、同社と原告との前述のような実体的関係からすると、右損害は原告の損害ともみることができる。

ところで、原告は、その金額について、本件ロボット玩具一個の販売価格九〇・〇〇ドルから引取り価格四五・三五ドルを差し引いた四四・六五ドルに契約個数一〇、〇〇〇個を乗じた四四万六五〇〇ドルであると主張する。しかしながら、右引取り価格は韓国での船積みの段階での金額であることは原告の自認するところであり、一方、販売価格は買主に引き渡された段階での金額であることは弁論の全趣旨によってこれを認めることができる。そうすると、本件ロボット玩具が右販売価格で販売されるためには右引取り価格のほかに、韓国からアメリカ合衆国までの海上運送に伴う運送賃及び保険料、陸上げ後の陸上運送に伴う運送賃等の諸経費の支出は欠かせないところであり、したがって、原告が前記各販売契約によって挙げることができたはずの利益を算定するには販売価格から引取り価格を差し引いたのみでは不十分であり、さらに、これから右諸経費が控除されなければならない。しかしながら、右諸経費の金額を明らかにすることは極めて困難なことであり、この点についての証拠は見当らない。そこで、右得べかりし利益はこれを別の観点から算定するほかはないところ、本件ロボット玩具の商品としての性質、及び種類原告によるその販売方法(卸売り)及び一個当りの販売価格等、諸般の事情に鑑みると、その金額は販売価格の二五パーセントとみるのが相当であり、これからすると、本件ロボット玩具一個当りのそれは二二・五ドル、一〇、〇〇〇個分では二二万五〇〇〇ドルである。そして、これを一ドル一四〇円(本件口頭弁論終結時である平成二年七月二四日の時点では東京外国為替市場におけるドル相場は一ドル一四〇円を超えていたことは公知の事実である。)で換算すると、三一五〇万円となる。したがって、被告は原告に対し右三一五〇万円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日であることが記録上明らかな昭和六二年七月一五日から支払済みまで商法所定の年六分の割合による遅延損害金を支払うべきであり、原告の本訴請求中、これを超える部分は理由がない。

(被告の反訴請求に対する判断)

一  被告が昭和六〇年一一月七日原告の注文によりその主張のとおり金型の製作を請負ったことは当事者間に争いがなく、代金四五〇〇万円のうち契約成立時に支払われるべき一五〇〇万円、テストショットが可能となったときに支払われるべき一五〇〇万円、計三〇〇〇万円は支払われたが、金型が完成し原告が満足したときに支払われるべき一五〇〇万円が支払われないことは弁論の全趣旨に照らして明らかである。

しかしながら、前認定の経過に照らすと、右最後の一五〇〇万円は金型が完成し、企画したとおりの製品が製造されるに至ったときに支払うというのが契約の趣旨であると解されるところ、最終的に計画したとおりの製品が製造されるには至らなかったことは前認定のとおりであるから、被告は当然には右一五〇〇万円を請求することはできないというべきである。

二  被告主張の、本件ロボット玩具の機能変更に伴う追加の金型製作、本件ロボット玩具のプロトタイプの作製等及びロボコムに対する指導・監督に関する各請負については、そのような契約が金型の作成及び製品の製造についての各請負契約とは別個に成立したと認められる証拠はない。

もっとも、昭和六一年一一月、本件ロボット玩具九〇個が出荷されたことは前認定のとおりであるが、これらの製品はすべて不良品として返品されたことは前認定のとおりであるから、被告は当然にはその代金を請求することはできない。

したがって、被告の反訴請求はすべて理由がないものといわなくてはならない。

(結び)

以上の次第であるから、原告の本訴請求は前説示の限度でこれを認容し、その余を棄却することとし、被告の反訴請求はこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九二条を、仮執行の宣言につき同法第一九六条を各適用し主文のとおり判決する。

(裁判官 大塚一郎)

別紙<省略>

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