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浦和地方裁判所 昭和61年(ワ)939号 判決 1989年8月16日

原告

竹内孝一

ほか一名

乙事件原告

佐藤友則

被告(乙事件被告)

中原益司

ほか一名

主文

一  被告らは、原告竹内孝一に対し、各自金三五五一万三七六八円、原告竹内利子に対し、各自金三四二二万四〇八四円及び右各金員に対する昭和五九年一〇月一〇日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告らは原告佐藤友則に対し、各自金六九万三一三二円及びうち金六三万三一三二円に対する昭和五九年一〇月一〇日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え

三  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用中、甲事件に係る分は一一分し、その七を被告ら、その余を原告竹内孝一、同竹内利子の各負担とし、乙事件に係る分は一〇分し、その一を被告ら、その余を原告佐藤友則の各負担とする。

五  この判決は、第一、第二項に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

(甲事件につき)

一  原告ら

1 被告らは、原告竹内孝一(以下「原告孝一」という。)に対し、各自金五四〇九万六七四六円、原告竹内利子(以下「原告利子」という。)に対し、各自金五二八〇万七〇九八円及び右各金員に対する昭和五九年一〇月一〇日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2 訴訟費用は被告らの負担とする。

3 仮執行の宣言

二  被告ら

1 原告孝一、同利子の請求をいずれも棄却する。

2 訴訟費用は原告孝一、同利子の負担とする。

(乙事件につき)

一  原告

1 被告らは原告佐藤友則(以下「原告佐藤」という。)に対し、各自金六六二万四七六八円及びうち金六一二万四七六八円に対する昭和五九年一〇月一〇日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2 訴訟費用は被告らの負担とする。

3 仮執行の宣言

二  被告ら

1 原告佐藤の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告佐藤の負担とする。

第二当事者の主張

(甲事件について)

一  請求原因

1 事故の発生

原告佐藤が昭和五九年一〇月一〇日午後六時五〇分ころ普通乗用車(以下「被害車」という。)を運転し、東北縦貫高速自動車道(以下「東北自動車道」という。)下り線二〇・五キロポスト付近(埼玉県南埼玉郡白岡町大字小久喜七九五番地先)を走行していたところ、同自動車道の反対車線(上り線)を走行していた被告中原益司(以下「被告中原」という。)運転の大型特殊貨物自動車(以下「加害車」という。)の左後輪のタイヤが離脱し、そのうちの一本が被害車のフロントガラス上部、屋根に衝突した(以下「本件事故」という。)。

2 被告中原の責任

本件事故は、被告中原の次のような過失により生じたものである。

(一) 自動車運転者が高速道路を走行する場合には、走行中にタイヤが離脱して他の自動車に衝突するなどの危険が発生しないよう車両の事前点検を行い、整備不良車を運転しないようにすべき注意義務があるにもかかわらず、被告中原は、右注意義務を怠つた。

(二) 被告中原は、本件事故現場に向かう途中、宮城県内において、加害車の左後輪のタイヤがバーストしたため、その交換を行つたものであるが、タイヤを交換する場合には、タイヤを固定するナツトが緩まないようこれを完全に締め付けるべき注意義務があるにもかかわらず、被告中原はこれを怠つた。

(三) 被告中原は、東北自動車道を時速八〇キロメートルで走行中、二二・一キロポスト付近において加害車の左後輪に異常音を感じ、サイドマーカーが点灯していることに気が付いたものであるが、このような場合には、速やかに車両を停止させ、不審箇所を点検すべき注意義務があるにもかかわらず、被告中原は、これを怠り、そのまま約一二〇〇メートルも走行した。

(四) なお、加害車の最大積載量は九トンであるにもかかわらず、加害車は、本件事故当日、一八トンのさんまを積載して走行していたものであり、このような場合にはタイヤのバースト、ナツトの緩みなどの危険性が増大するものであるから、被告中原としては、前記(一)ないし(三)につき通常の場合よりもさらに慎重な注意義務があつたというべきである。

以上により、被告中原は、本件事故につき損害賠償の責任がある。

3 被告北日本物産株式会社(以下「被告会社」という。)の責任

被告会社は、加害車を所有し、自己のために運行の用に供していたものであるから、自動車損害賠償保障法三条に基づき、本件事故につき損害賠償の責任がある。

4 損害

本件事故当時、被害車には原告らの長男孝敏が同乗していたが、同人は、本件事故により脳挫傷、頭部顔面挫創、頭蓋骨骨折の傷害を受け、昭和五九年一〇月一二日死亡し、これにより孝敏及び原告らは、次のような損害を被つた。

なお、原告らは、孝敏の逸失利益及び慰謝料請求権を二分の一ずつ相続した。

(一) 逸失利益 一億〇五六〇万七四九六円

孝敏は、昭和三九年七月二三日生(本件事故当時二〇歳)であり、独協医科大学二年に在学し、医師になるため勉学していたものである。

したがつて、同人は、本件事故がなければ、平成元年の医師国家試験に合格し、遅くとも平成二年からは医師として稼働することができたものである。

そこで、昭和五九年度の賃金センサス第三巻、第三表の企業規模計、医師(男)の各年齢別の給与額に基づき、稼働年数を六七歳までとし、生活費として五割を控除し、中間利息を新ホフマン係数により控除して、本件事故当時における逸失利益を計算すると、別紙計算表一のとおり一億〇五六〇万七四九六円となる。

ただし、原告らは自動車損害賠償責任保険から二〇〇一万三三〇〇円の支払を受けたので、これを逸失利益の損害額に充当し、逸失利益の残額は八五五九万四一九六円である。

(二) 慰謝料 一五〇〇万円

孝敏は、前記のように、医師になるため勉学し、その将来が嘱望されていたものであり、その死亡による慰謝料は一五〇〇万円が相当である。

(三) 治療費 二二万九六四八円

原告孝一は孝敏の治療費として新井病院に二二万九六四八円を支払つた。

(四) 葬儀費用 一〇〇万円

原告孝一は、孝敏の葬儀費用として一〇〇万円以上を支出した。

(五) 弁護士費用

原告らは、本件訴訟手続を弁護士に依頼し、弁護士費用として、原告孝一は二五七万円、原告利子は二五一万円を支払うことを約した。

5 よつて、被告ら各自に対し、原告孝一は五四〇九万六七四六円、原告利子は五二八〇万七〇九八円及び右各金員に対する不法行為の日である昭和五九年一〇月一〇日から支払済みに至るまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1 請求原因1のうち、被告中原が原告ら主張の日に加害車を運転して本件事故現場付近の東北自動車道上り線を走行中、左後輪のタイヤが離脱したことは認めるが、その余は否認する。

加害車のタイヤが離脱したのは本件事故発生時より一時間以上前の午後五時三〇分ころである。

2 同2のうち、加害車の左後輪のタイヤが本件事故現場に向かう途中の宮城県内においてバーストしたこと、被告中原が東北自動車道を時速八〇キロメートルで走行中、二二・一キロポスト付近において加害車の左後輪に異常音を感じ、サイドマーカーが点灯していることに気が付いたこと、被告中原がそのまま約一二〇メートル走行したことはいずれも認めるが、その余は争う。

3 同3のうち、被告会社が加害車を所有し、自己のために運行の用に供していたことは認めるが、その余は争う。

4 同4は不知

(乙事件について)

一  請求原因

1 事故の発生

甲事件請求原因1のとおりである。

2 被告中原の責任

甲事件請求原因2(一)のとおりである。

3 被告会社の責任

甲事件請求原因3のとおりである。

4 損害

原告佐藤は、本件事故により左眼瞼裂傷、左頬骨折の傷害を受け、次のような損害を被つた。

(一) 逸失利益 五四九万一六三六円

原告佐藤は、前記傷害により左眼瞼部に後遺障害別等級表第一四級に該当する約七センチメートルの瘢痕の後遺障害を受け、労働能力を五パーセント喪失した。

原告佐藤は、昭和三一年二月八日生で、昭和六一年一月一日においては二九歳であり、昭和六〇年度の収入は五一五万四二四〇円であつた。そこで、稼働年数を六七歳までとし、中間利息を新ホフマン係数により控除して、本件事故当時における逸失利益を計算すると、五四九万一六三六円となる。

(二) 慰謝料 一三〇万円

原告佐藤は、本件事故により左眼瞼裂傷、左頬骨折の傷害を受け、昭和五九年一〇月一〇日新井病院に入院し、翌一一日、独協医科大学病院に入院し、同月二七日、同病院を退院した後も、昭和六〇年二月二三日までの間に四日間同病院に通院し、前記のように、左眼瞼部に後遺障害別等級表第一四級に該当する約七センチメートルの瘢痕の後遺障害を受けた。

したがつて、原告佐藤の入通院慰謝料は四〇万円、後遺症慰謝料は九〇万円が相当である。

(三) 治療費 三五万九三一五円

原告佐藤は、治療費として、新井病院に二万三四五〇円、独協医科大学病院に三三万五八六五円を支払つた。

(四) 入院雑費 一万八〇〇〇円

原告佐藤は、新井病院に一日、独協医科大学病院に一七日合計一八日間入院し、その間、入院雑費として一日一〇〇〇円を要した。

(五) 弁護士費用

原告佐藤は、本件訴訟手続を弁護士に依頼し、弁護士費用として、五〇万円を支払うことを約した。

以上により、原告佐藤の損害は合計七六六万八九五一円であるが、原告佐藤は自動車損害賠償責任保険などから合計一〇四万四一八三円の支払を受けたので、残存する損害額は六六二万四七六八円である。

5 よつて、原告佐藤は被告ら各自に対し、六六二万四七六八円及びこのうち弁護士費用を除いた六一二万四七六八円に対する不法行為の日である昭和五九年一〇月一〇日から支払済みに至るまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1 請求原因1に対する認否は、甲事件の請求原因に対する認否1のとおりである。

2 同2は否認する。

3 同3に対する認否は、甲事件の請求原因に対する認否3のとおりである。

4 同4は不知。

第三証拠関係

本件記録中の書証目録、証人等目録の記載と同一であるから、これを引用する。

理由

(甲事件について)

一  本件事故の発生

被告中原が原告ら主張の日に加害車を運転して本件事故現場付近の東北自動車道上り線を走行中、左後輪のタイヤが離脱したことは当事者間に争いがない。

右争いのない事実及び甲第一ないし第一一、第一三、第一八ないし第二〇号証、丙第一〇号証の一ないし五(書証の成立に関する判断は別紙のとおりである。)、原告佐藤友則、被告中原益司(後記採用しない部分を除く。)各本人尋問の結果によれば、原告佐藤が昭和五九年一〇月一〇日被害車を運転し、東北自動車道下り線を岩槻から久喜方向に向けて走行し、同日午後六時五〇分ころ、埼玉県南埼玉郡白岡町大字小久喜七九五番地先の二〇・五キロポスト付近(白岡バス停付近)において追越車線に入つたところ、大型自動車のタイヤ(ホイール付き 以下同)が飛来して被害車のフロントガラス上部、屋根に衝突したこと、被告中原は、右同日同時刻ころ、加害車を運転して同自動車道上り線を久喜から岩槻方向に向けて走行し、本件事故地点の約三〇〇メートル手前の二〇・八キロポスト付近に至つたところ、加害車の左後輪のタイヤ二本が車軸から離脱し、そのうちの一本が中央分離帯を横切り、本件事故現場付近において反対車線に飛び込んだことが認められる。

被告中原益司は、加害車のタイヤが離脱したのは本件事故が発生した時刻よりも一時間余り前であり、加害車のタイヤが被害車に衝突することはあり得ないように供述するが、同被告の供述はあいまいで正確性に欠ける点があるので、右供述部分を採用することはできず、また、甲第二一号証、乙第四、第五号証によれば、加害車に取り付けられていたタコグラフの記載中には、加害車が本件事故当日の午後五時二三分から五七分間停車していたことを示す記載のあることが認められるが、甲第二一号証によれば、右タコグラフのチヤート紙は、本件事故当日の午後二時四八分から午後四時三〇分の間及び同日午後四時四九分から午後五時二三分の間の二回にわたり回転を停止し、同日午後五時二三分ころの運行記録としては最大二・五時間の誤差のあることが認められるので、前記停止時刻に関する記載部分を直ちに採用することはできず、他に前記認定を左右するに足りる証拠はない。

以上によれば、本件事故は、被告中原の運転していた加害車のタイヤが離脱し、これが被害車に衝突して生じたものと認めるのが相当である。

二  被告中原の責任

1  前記認定のように、本件事故は、加害車の左後輪タイヤが車軸から離脱したために生じたものであるところ、甲第一三号証及び被告中原益司本人尋問の結果によれば、右離脱の原因は、タイヤを車軸に固定しているホイールナツトが緩んだためであることが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

ところで、自動車運転者たる者は、交通の危険を生じさせるような整備不良車を運転してはならない注意義務(道路交通法六二条)があるところ、右のように、加害車が走行中、左後輪のホイールナツトが緩んでタイヤが車軸から離脱したことにかんがみると、被告中原は右注意義務に違反して加害車を運転したものと認められる。

なお、本件事故現場に向かう途中宮城県内において加害車の左後輪がバーストしたことは当事者間に争いがないところ(被告中原益司は、その本人尋問において、右事実を否定する旨の供述をしているが、右供述は、甲第一三号証に照らし採用することができない。)、その後、左後輪のタイヤが車軸から離脱したことにかんがみると、右バーストによるタイヤ交換の際、ホイールナツトの締め方が不十分であつたものと推認される。

2  また、被告中原が東北自動車道上り線を時速八〇キロメートルで走行中二二・一キロポスト付近において左後輪に異常音を感じたこと、しかるに、被告中原は、そのまま約一二〇〇メートル走行したことは当事者間に争いがないところ(被告中原益司は、その本人尋問において、右事実を否定する旨の供述をしているが、右供述は、甲第一一号証に照らし採用することができない。)、高速自動車道を走行中に車両の異常を感じたときは、危険防止のため、速やかに停車して車両の点検をすべきであり、特に、本件事故当時、加害車は最大積載量を遥かに超過する貨物を積載し(甲第一三号証及び被告中原益司本人尋問の結果によれば、加害車の最大積載量は九トンであつたのに、一八トンのさんまを積載していたことが認められる。)、それだけでも危険な状態にあつたのであるから、なおさら右注意義務を果たすべき状態にあつたものと認められる。

しかるに、右争いのない事実及び甲第一一号証によれば、被告中原は、右注意義務を怠り、異常を感じた後もタイヤが離脱するまで約一二〇〇メートル走行したことが認められ、この点についても過失がある。

以上により、本件事故は被告中原の過失により生じたものであるから、被告中原が本件事故による損害の賠償をすべきことは明らかである。

三  被告会社の責任

被告会社が加害車を所有し、自己のために運行の用に供していたことは当事者間に争いがない。

右事実によれば、被告会社は、自動車損害賠償保障法三条に基づき、本件事故につき損害賠償の責任がある。

四  損害

甲第四、第二七号証及び弁論の全趣旨によれば、原告らの長男である孝敏が本件事故により脳挫傷などの傷害を受け、昭和五九年一〇月一二日死亡したこと及び原告孝一、同利子が孝敏の本件事故に基づく損害賠償請求権を二分の一ずつ相続したことが認められる。

1 逸失利益

甲第二七号証及び原告竹内利子本人尋問の結果によれば、孝敏は、昭和三九年七月二三日生であり、本件事故当時、独協医科大学二年に在学し、医師になるため勉学していたことが認められる。

右事実によれば、孝敏は、平成元年の医師国家試験に合格の上、遅くとも平成二年(二六歳)から六七歳に至るまで四二年間医師として稼働することができたものと推認される。

そこで、昭和五九年度の賃金センサス第三巻、第三表の医師(男)・企業規模計の給与額を基礎として各年齢別の給与額に基づき、生活費として五割を控除し、中間利息をライプニツツ係数により計算して控除し、本件事故当時における逸失利益を計算すると、別紙計算表二のとおり六八四四万一四六九円となる。

ただし、原告らが自動車損害賠償責任保険から二〇〇一万三三〇〇円の支払を受け、これを逸失利益の損害額に充当したことは原告らの自認するところであるから、右逸失利益の残額は四八四二万八一六九円である。

2 慰謝料

前記認定のような孝敏の年齢、学業、境遇などに照らすと、孝敏の死亡による慰謝料は一五〇〇万円が相当である。

3 治療費

甲第一六号証によれば、原告孝一は、孝敏の治療費として新井病院に対し、二二万九六四八円を支払つたことが認められる。

4 葬儀費用

甲第二二号証によれば、原告孝一は、孝敏の葬儀費用として昭和興業株式会社に対し、一〇〇万円以上(一四八万三〇〇〇円)を支払つたことが認められる。

5 弁護士費用

原告らが本件訴訟手続を弁護士に依頼したことは当裁判所に顕著な事実であり、前記1ないし4において認定したような認容額(原告孝一分は三二九四万三七六八円、原告利子分は三一七一万四〇八四円)に照らすと、原告らが請求する弁護士費用(原告孝一は二五七万円、原告利子は二五一万円)は、不法行為時から弁護士費用支払時までの中間利息を控除しても、いずれも相当な額であると認められる。

五  以上によれば、原告らの本件請求は、原告孝一につき三五五一万三七六八円、原告利子につき三四二二万四〇八四円及び右各金員に対する不法行為の日である昭和五九年一〇月一〇日から支払済みに至るまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がない。

(乙事件について)

一  本件事故の発生

甲事件の理由一のとおりである。

二  被告会社中原の責任

甲事件の理由二1のとおりである。

三  被告会社の責任

甲事件の理由三のとおりである。

四  損害

丙第一ないし第三号証、原告佐藤友則本人尋問の結果によれば、原告佐藤は、本件事故により左眼瞼裂傷、左頬骨折の傷害を受けたことが認められる。

1  逸失利益

丙第八号証、第一一号証の一、二、原告佐藤友則本人尋問の結果によれば、原告佐藤は、前記傷害により左眼瞼部に瘢痕の後遺障害を受けたことが認められる。

しかしながら、原告佐藤友則本人尋問の結果によれば、原告佐藤は独協医科大学病院に勤務している医師であることが認められ、前記程度の後遺障害によりその収入が減少したものとは認められない。

したがつて、原告佐藤については逸失利益の損害を認めることはできない。

2  慰謝料

(一) 丙第一、第二号証によれば、原告佐藤は、前記左眼瞼裂傷、左頬骨折の治療のため、昭和五九年一〇月一〇日新井病院に入院し、翌一一日、独協医科大学病院に入院し、同月二七日、同病院を退院した後も、昭和六〇年二月二三日までの間に四日間同病院に通院して治療を受けたことが認められ、右入通院による慰謝料は四〇万円が相当である。

(二) 前記認定のように、原告佐藤は、左眼瞼部にやや醜状を残す瘢痕の後遺障害を受けたことが認められ、右後遺障害による慰謝料は七〇万円が相当である。

3  治療費

丙第四ないし第六号証及び原告佐藤友則本人尋問の結果によれば、原告佐藤は、前記傷害の治療費として、新井病院に二万三四五〇円、独協医科大学病院に三三万五八六五円合計三五万九三一五円を支払つたことが認められる。

4  入院雑費

前記2の認定事実によれば、原告佐藤は、本件事故のため、新井病院に一日、独協医科大学病院に一七日合計一八日間入院したことが認められ、右事実によれば、入院雑費として一万八〇〇〇円(一日一〇〇〇円)を要したものと認められる。

5  損害の填補

右2ないし4の損害額の合計は一六七万七三一五円であるところ、原告佐藤が自動車損害賠償責任などから合計一〇四万四一八三円の支払を受けたことは同原告の自認するところであるから、これを右損害額から差し引くと、残存の損害額は六三万三一三二円となる。

6  弁護士費用

原告佐藤が本件訴訟手続を弁護士に依頼したことは当裁判所に顕著な事実であり、前記2ないし5において認定したような認容額に照らすと、原告佐藤の弁護士費用は六万円が相当である。

五  以上によれば、原告佐藤の本件請求は、六九万三一三二円及びうち六三万三一三二円に対する不法行為の日である昭和五九年一〇月一〇日から支払済みに至るまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がない。

(結語)

よつて、原告らの本件各請求を、被告ら各自に対し、原告孝一については三五五一万三七六八円及びこれに対する昭和五九年一〇月一〇日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員、原告利子については三四二二万四〇八四円及びこれに対する昭和五九年一〇月一〇日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員、原告佐藤については六九万三一三二円及びうち六三万三一三二円に対する昭和五九年一〇月一〇日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員の各支払を求める限度でそれぞれ認容し、その余をいずれも棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九二条、九三条を、仮執行の宣言について同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 高橋正 鈴木航兒 合田智子)

書証の成立に関する判断

一 甲号証について

1 甲第一ないし第一一、第一三、第一六号証は原本の存在及び成立に争いがない。

2 甲第一八ないし第二一、第二七号証は成立に争いがない。

3 甲第二二号証は原告竹内利子本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる。

二 乙号証について

乙第四、第五号証は被告中原益司本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる。

三 丙号証について

1 丙第一ないし第六号証は原本の存在及び成立に争いがない。

2 丙第八号証は成立に争いがない。

3 丙第一〇号証の一ないし五は被害車の写真であることにつき争いがない。

4 丙第一一号証の一、二は原告佐藤の写真であることにつき争いがない。

計算表一

<省略>

計算表二

<省略>

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