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浦和地方裁判所 昭和54年(わ)259号 判決 1979年7月12日

本籍及び住居

埼玉県北葛飾郡吉川町大字八子新田三七九番地

病院経営(医師)

中村孝

明治四二年九月八日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官三澤隆行出席の上審理をし、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年および罰金一、六〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金四万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、埼玉県北葛飾郡吉川町大字八子新田三七九番地に居住し、同所において、中村病院を経営していたものであるが、所得税を免れようと企て、同病院のベット差額料等の収入金額の一部を除外し、架空人件費を計上するとともに、架空名義の定期預金を蓄積するなどの不正の手段により、その所得の一部を秘匿したうえ、

第一  昭和五〇年一月一日から同年一二月三一日までの間、総所得金額が八、二六三万五、六六八円で、これに対する所得税額が四、一二〇万二、二〇〇円であったのにかかわらず、昭和五一年三月一二日、同県春日部市大字粕壁字浜川戸五、四三五番地の一所在の春日部税務署において、同署長に対し、総所得金額が四、六七三万七、五三五円であり、これに対する所得税額が一、六六四万四、四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により昭和五〇年分の正規の所得税額との差額二、四五五万七、八〇〇円の所得税を免れ、

第二  昭和五一年一月一日から同年一二月三一日までの間、総所得金額が七、七五〇万八、〇七五円で、これに対する所得税額が三、六七〇万一〇〇円であったのにかかわらず、昭和五二年三月一五日、前記春日部税務署に対し、総所得金額が、四、六一三万六、〇一三円であり、これに対する所得税額が一、五四五万四、〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により昭和五一年分の正規の所得税額との差額二、一二四万六、一〇〇円の所得税を免れ、

第三  昭和五二年一月一日から同年一二月三一日までの間、総所得金額が七、八五七万八、九九三円で、これに対する所得税額が三、七〇一万一、九〇〇円であったのにかかわらず、昭和五三年三月一四日、前記春日部税務署において、同署長に対し、総所得金額が四、七九七万一、六五四円であり、これに対する所得税額が一、六二〇万九、九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により昭和五二年分の正規の所得税額との差額二、〇八〇万二、〇〇〇円の所得税を免れ、

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一、被告人の

(一)  当公判延における供述

(二)  検察官に対する供述調書二通

(三)  大蔵事務官に対する質問てん末書一三通

一、被告人作成の答申書二通

一、千代田喜代子の

(一)  検察官に対する供述調書三通

(二)  大蔵事務官に対する質問てん末書六通

一、豊田勝江の検察官に対する供述調書

一、左記の者の大蔵事務官に対する各質問てん末書

野地誠、遠藤泰雄、久野孝一、藤乗雅敏、森田正

一、千代田喜代子作成の答申書八通

一、高鹿幾代作成の答申書

一、大蔵事務官作成の調査書一一通

一、春日部税務署長作成の証明書四通

(法令の適用)

被告人の判示各所為はいずれも所得税法二三八条一項、二項に該当するところ、判示各罪につき所定刑中いずれも懲役刑と罰金刑を併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪なので、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により判示各罪所定の罰金額を合算し、その刑期および金額の範囲内で被告人を懲役一年および罰金一、六〇〇万円に処し、右の罰金を完納することができないときは、同法一八条により金四万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 前田博之)

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