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浦和地方裁判所 平成2年(わ)408号 判決 1990年10月23日

被告会社及び被告人の表示

一 本店の所在地

埼玉県浦和市五関五五八番地六

法人の名称

株式会社埼玉中央自動車教習所

代表者の住所

青森県弘前市大字品川町六二番地の一朝日プラザ品川町八〇一号

代表者の氏名

貫井秀夫

二 本籍

東京都東久留米市金山町二丁目七三〇番地イ号

住居

青森県弘前市大字品川町六二番地の一朝日プラザ品川町八〇一号

職業

会社役員

貫井秀夫

昭和二六年四月六日生

主文

被告会社株式会社埼玉中央自動車教習所を罰金三〇〇〇万円に、被告人貫井秀夫を懲役一年に処する。

被告人貫井秀夫に対し、この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となる事実)

被告会社株式会社埼玉中央自動車教習所は、埼玉県浦和市五関五五八番地六に本店を置き(設立時の本店所在地は東京都東久留米市金山町二丁目四番一九号であり、平成元年七月一四日現所在地に変更)、自動車運転免許取得のための個人指導を行ういわゆる非公認の自動車教習所の経営等を業とする資本金五〇〇万円の株式会社であり、被告人貫井秀夫は、被告会社の代表取締役として同社の業務全般を統括しているものであるが、被告人貫井は、被告会社の業務に関して法人税を免れようと企て、売上げの一部を除外するなどの不正な方法により所得を秘匿したうえ

第一  昭和六〇年七月一日から昭和六一年六月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二六三三万〇三八二円であつたにもかかわらず、同年九月一日東京都東村山市本町一丁目二〇番二二号所在の所轄東村山税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が五三五万七六二二円で、これに対する法人税額一四〇万一〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて、不正の行為により被告会社の同事業年度における正規の法人税額一〇一五万七二〇〇円との差額八七五万六二〇〇円を免れ

第二  昭和六一年七月一日から昭和六二年六月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億九二四〇万〇一〇三円であつたにもかかわらず、同年八月三一日前記東村山税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三四八万七四〇三円で、これに対する法人税額が八一万三〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて、不正の行為により被告会社の同事業年度における正規の法人税額七九六一万四九〇〇円との差額七八八〇万一九〇〇円を免れ

第三  昭和六二年七月一日から昭和六三年六月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億八四五一万七九六四円であつたにもかかわらず、同年八月三一日前記東村山税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が六三九二万七二四七円で、これに対する法人税額が三七四七万二九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて、不正の行為により被告会社の同事業年度における正規の法人税額八八一二万〇七〇〇円との差額五〇六四万七八〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一  東村山税務署長作成の回答書

一  大蔵事務官作成の売上高調査書、雑給調査書、消耗品費調査書、受取利息調査書及び過払源泉税調査書

一  浦井登(二通)、宮崎高夫(二通)及び中田富美子の検察官に対する各供述調書

一  浦井登(六通)、宮崎高夫及び中田富美子(二通)の大蔵事務官に対する各供述調書

一  被告人貫井秀夫の当公判廷における供述

一  被告人貫井秀夫の検察官(二通)及び大蔵事務官(一一通)に対する各供述調書

判示第二及び第三の事実につき

一  大蔵事務官作成の事業税認定損調査書及び支払利息割引料調査書

判示第三の事実につき

一  大蔵事務官作成の退職金調査書

(法令の適用)

一  被告会社につき

罰条 法人税法一六四条一項、一五九条

併合罪加重 刑法四五条前段、四八条二項

一  被告人貫井につき

罰条 法人税法一五九条

併合罪加重 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条

執行猶予 刑法二五条一項

(量刑の事情)

本件は、被告会社の経営者である被告人が、将来の自動車教習所の経営に不安を感じたことから、予め経営不振あるいは他事業への転換に備えて資金を蓄積しておこうと考え、被告会社の売上金の一部を隠匿し、脱税したという事案であるが、脱税額は、三年間でおよそ一億三八〇〇万円という高額であり、また、所得の捕脱率は平均八二パーセントと極めて高く、所得隠しの方法も、売上日報を書換えて毎月の売上金の一部を帳簿から除外し、仮名口座に預金するといつた方法であつて、計画的かつ悪質といわなければならない。

しかしながら、被告会社は、既に修正申告のうえ本税を支払い、延滞税や重加算税についても近日中に支払う予定であり、国庫の損失は填補される見込みであること、被告人の本件犯行は、個人的利益を追求したというより、むしろ被告会社の利益を考慮しての犯行であつたこと、被告人には、これまで風俗営業法違反の罪による罰金前科を除いて前科前歴はなく、善良な会社経営者として従業員らの生活を支えてきたこと、今回の事件を十分反省し、二度と再犯はしないと誓つていることなどの事情も認められるので、これらの事情を総合考慮のうえ、主文のとおり量刑した次第である。

よつて、主文のとおり判決する。

出席検察官 北岡英男(求刑 被告会社につき罰金四〇〇〇万円、被告人につき懲役一年二月)

(裁判官 倉沢千巌)

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