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津地方裁判所 昭和49年(ワ)98号 判決 1979年3月07日

主文

原告の第一次的、第二次的請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  申立

(原告の求めた裁判)

一  第一次的請求の趣旨

1 被告は原告に対し、別紙物件目録(一)記載の土地につき津地方法務局昭和四九年八月二七日受付第二八六八九号所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

二  第二次的請求の趣旨

1 被告は原告に対し、原告から金二万四、八〇〇円の支払を受けるのと引き換えに別紙物件目録(一)記載の土地につき所有権移転登記手続をせよ。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

(被告の求めた裁判)

一  本案前の申立

本件訴を却下する。

二  第一次的請求の趣旨に対する答弁

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

三  第二次的請求の趣旨に対する答弁

原告の請求を棄却する。

第二  主張

(原告)

一  第一次的請求原因

1 別紙物件目録(一)記載の土地(以下、本件土地という)はもと国の所有であつたが、原告は昭和四三年一二月二七日国から本件土地の払下げを受け、その所有権を取得した。

2 原告と豊里村(後日、被告と合併する)との間に、昭和四三年一二月一三日津地方法務局所属公証人小島与三郎作成の同年第三七九〇号売買及び再売買予約公正証書(以下、本件公正証書という)をもつて本件土地の約五分の四に当たる別紙物件目録(二)記載の土地(以下、(二)の土地という)を、原告は被告に対し、原告が払下げを受けると同時に払下げ価額と同価額をもつて売渡すものとする売買契約(以下、本件売買契約という)が、締結された。なお、本件売買契約には、同四八年三月三一日までに桜町区の公民館を同区民総意の下に(二)の土地付近に建設する、同公民館は一般的に通常公民館と認め得る建築物とするとの条件が付された。

3 ところが、豊里村は昭和四五年原告を被告として、津簡易裁判所に、本件売買契約により本件土地の所有権を取得したとして、所有権確認及び所有権移転登記手続を求める訴訟を提起し、同裁判所で同年(ハ)第一五号事件として審理が進められた結果、本件原告敗訴の判決があり、原告において控訴、上告したがいずれも棄却され、右本件原告敗訴の判決(以下、前訴判決という)は確定した。

4 そのようにして、本件売買契約の目的物件が本件土地全部であつたとすれば、本件売買契約は通謀虚偽表示として無効である。即ち

本件土地は原告所有地の間に挾まれた土地であり、原告はその経営する病院を拡張する上で本件土地で隔てられた所有地を接続するため本件土地の払下げ手続をとつたものであり、豊里村村長赤塚作五郎は、原告の希望に添い、積極的に、原告に払下げられるよう関係官庁に副申した。ところが、これに対し住民の一部から右村長に抗議の申し入れがあり、紛議が生じたため、村長改選を目前に控えて、右村長は紛擾の一時の弥縫策として本件売買契約を締結したものであり、原告には病院拡張に最少限必要な五分の一の土地を含めた本件土地全部を売却する意思はなく、本件売買契約は通謀の上なされた虚偽のものである。

5 仮に、原告と豊里村村長との間に虚偽表示について通謀がなかつたとするも、右村長は原告に本件土地全部を売却する意思のないことを知り又は知ることを得べかりし状況にありながら本件売買契約を締結したものであり、本件売買契約は民法第九三条但書の規定により無効である。

6 仮に右主張も理由がないとするも、原告には本件売買契約の重要な要素である目的物件につき錯誤があつたものである。

7 仮に右主張も理由がないとするも、豊里村村長は原告に対し、(二)の土地に限つて買受ける旨申し向け、その旨原告をして誤信させた上、故意に本件公正証書に別紙図面として公図のみ添付し、且つ目的物件の地積として全体の面積である一八・〇三平方メートルを表示したものであり、本件売買契約は右村長の詐欺によるものであるところ、原告は本件訴状により本件売買契約承諾の意思表示を取消す旨の意思表示をした。

8 仮に右主張も理由がないとするも、本件売買契約には前記のように、豊里村において、昭和四八年三月三一日までに、正規の手続を経て、全員一致の下に、一般的に通常公民館と認め得る建築物を建築することが条件として付されていたが、右条件は不成就に終つている。

9 被告は本件土地につき津地方法務局昭和四九年八月二七日受付第二八六八九号所有権移転登記を経由している。

10 よつて、原告は、本件土地の所有権に基づき、被告に対し本件土地につき前記登記の抹消登記手続をすることを求める。

二  第二次的請求原因

1 原告と豊里村との間で、本件公正証書により、本件売買契約とともに豊里村が前記本件売買契約の条件とした公民館の建築をなさなかつたときは、豊里村は原告に対し本件土地を本件売買代金と同一価額で売渡すものとする(再)売買の予約(以下、本件再売買の予約という)を締結した。

2 本件売買代金は金二万四、八〇〇円に定まつた。

3 しかし、豊里村は前記公民館を建築しなかつた。

4 原告は、豊里村の権利義務を承継した被告に対し、本件訴状により、本件再売買予約完結の意思表示をした。

5 よつて、原告は、前記再売買契約に基づき、被告に対し、原告から代金二万四、八〇〇円の支払を受けるのと引き換えに本件土地につき所有権移転登記手続をすることを求める。

三  抗弁に対する認否

1 抗弁第二項中、桜町区公民館が昭和四五年四月頃本件土地の付近に建設されたことは認める。

2 同第三項は争う。

本件公民館は、まず、桜町区民の一部に反対があつたにも拘らず、結核病棟の古材をもつて建築したものである点において、次に、同区の住民は一〇〇名以上であつたのに、本件公民館の規模は六畳一間、八畳一間に若干の土間がある程度のもので一時に収容できる人員は約三〇名程度に過ぎない点において到底同区の公民館として一般的通常の建築物と認め得ないものである。

四  本案前の主張に対する反論

1 既判力は確定判決の主文に包含するものに限られるところ、本訴各請求とも前訴判決の主文に包含されていないことは明らかである。

2 争点効は最高裁判所昭和四四年六月二四日言渡判決(判例時報五八六号六頁)が否定するところであるが、前訴において争われたのは、本件土地売買契約が有効であるか否か、有効であるとすれば、目的物の範囲如何であつて、公民館が建設されたか否か、建設されたとすれば、本件売買契約に付された条件にいうところの公民館に合致するか否かは争点になつていなかつたものである。

(被告)

一  本案前の主張

1 本訴各請求は前訴判決の既判力に牴触する不適法なものである。

2 右主張は理由がないとするも、本訴請求はいわゆる争点効により許されないものである。即ち

前訴において、豊里村は、請求原因として、本件原告が一次的請求原因第二項で主張する公民館建設を条件とし、本件土地を目的物件とする本件売買契約が成立したこと及び右条件が成就したことを主張したものであり、これに対し前訴被告であつた本件原告は本件土地を目的物件とする本件売買契約の成立を否認し、且つ公民館建設云々は売買契約の条件でも前提でもなく、豊里村村長が村長選挙対策のため反村長派に対する一時的糊塗策として右村長と本件原告と通じてなした心裡留保による無効の契約であるとの抗弁に終始したものである。そして、豊里村は、本件売買契約が本件土地を目的物件とすること及び一般的に通常公民館と認め得る建築物を建設したことを立証し、これを認定した前訴判決はその後の審級において維持され、確定したものである。

そのように、本件売買契約が本件土地を目的物件とするものであること並びに本件売買契約及び本件再売買予約の条件成否は既に前訴において主要な争点として当事者間で主張立証がなされ、裁判所も実質的審理をしたのであるから、前訴判決の右認定判断には争点効を生じ、本訴を拘束するものである。

また、原告が、前訴において終始否認した本件売買契約を翻言して本訴において復活させた上、既に確定事実となつている公民館建設に疑義ありとして本訴を提起したのは著しく信義に反するものであり、許されるべきではない。

二  第一次的請求原因に対する認否

1 請求原因第一項は認める。

2 同第二項は認める。但し、本件売買契約の目的物件は本件土地である。

3 同第三項は認める。

4 同第四ないし第六項は争う。

5 同第七項中、原告が本件訴状で本件売買契約取消の意思表示をしたことを除くその余は争う。

6 同第八項は争う。

7 同第九項は認める。

三  第二次的請求原因に対する認否

1 請求原因第一項は認める。但し、原告主張の契約が(再)売買の予約であることは争う。

2 同第三項は否認する。

3 同第四項中、被告が豊里村の権利義務を承継したことは認める。

四  第一次的請求原因に対する抗弁(第二次的請求原因に対する積極的主張)

1 昭和四三、四四年度の桜町区通常総会及び臨時総会において「公民館建設資金造成の件」が提案されたが、満場一致で可決され、同四四年七月から寄付金の募集が開始された。その応募者は七一戸全戸であつた。

2 公民館は、本件土地の付近に、古建物購入費金一万六、四〇〇円、設計料金五、〇〇〇円、建設費金一四三万一、二三〇円、合計金一四五万二、五三〇円の費用をもつて昭和四五年四月建築された。

3 前記桜町区の建設した公民館(以下、本件公民館という)は木造瓦葺平家建で、その一部に国立三重療養所の払下げ資材が使用されたが、大部分は市販の資材が使用されているものであり、その床面積は九四・三九平方メートルあり、本件公民館は同区民の総意の下に一般的に通常公民館と認め得るものである。

第三  証拠関係(省略)

(別紙)

物件目録

(一) 津市大字窪田字堂垣内二七一八番五

一、雑種地 一八・〇〇平方メートル

(二) (一)の土地のうち、別紙図面赤斜線部分(編者注「斜線部分」)

<省略>

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