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水戸地方裁判所 平成3年(わ)143号 判決 1991年7月25日

本店の所在地

茨城県東茨城郡大洗町磯浜町八、二四四番地の一九

法人の名称

有限会社 大冷

代表者の住居

右同所同番地

代表者の氏名

鈴木近

本籍

茨城県東茨城郡大洗町磯浜町九九三番地

住居

右同郡大洗町磯浜町八、二四四番地の一九

会社役員

鈴木久江

昭和一四年三月一八日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官北村明彦及び弁護人荒川誠司(主任)、同石島秀朗各出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人有限会社大冷を罰金一、五〇〇万円に、被告人鈴木久江を懲役一〇月に処する。

被告人鈴木久江に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人有限会社大冷(以下、「被告会社」という。)は、茨城県東茨城郡大洗町磯浜町八、二四四番地の一九に本店を置き、水産物の冷凍加工製造販売を目的とする資本金一、〇〇〇万円の有限会社であり、被告人鈴木久江は、被告会社の取締役としてその業務全般を統括するものであるが、被告人鈴木久江は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、原料魚類の架空仕入及び売上除外等の不正な方法により所得を秘匿したうえ

第一  昭和六二年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が五、三九二万三九六円であったにもかかわらず、同六三年二月二九日、所轄税務署である同県水戸市北見町一番一七号所在の水戸税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一、〇一二万三、二四一円で、これに対する法人税額が三二一万五、六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって、不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額二、一六一万三〇〇円と右申告税額との差額一、八三九万四、七〇〇円を免れ

第二  昭和六三年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が九、〇〇四万八、〇五六円であったにもかかわらず、平成元年二月二八日、前記水戸税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一、六二一万六、五七三円で、これに対する法人税額が五七四万二、九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって、不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額三、六七五万二、三〇〇円と右申告税額との差額三、一〇〇万九、四〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示冒頭の事実につき

一  被告会社の商業登記簿謄本一通

判示事実全部につき

一  水戸税務署長作成の回答書二通

一  検察事務官作成の電話聴取書

一  坂本基の大蔵事務官に対する供述調書(質問てん末書)

一  大蔵事務官姉崎正一作成の調査書四通

一  加藤信義作成の答申書

一  渋谷昇、鈴木きよい、宮地昌之の検察官に対する各供述調書

一  鈴木近の大蔵事務官に対する供述調書(質問てん末書)二通

一  検察事務官作成の報告書

一  検察官作成の報告書

一  水戸県税事務所長作成の「県税の納付状況に対する回答」と題する書面

一  被告人鈴木久江の検察官に対する供述調書三通

一  同人の当公判廷における供述

(法令の適用)

被告人鈴木久江の判示各所為はいずれも法人税法一五九条一項に該当するところ、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役一〇月に処し、情状により同法二五条一項一号を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

被告会社については、法人税法一六四条一項により情状を考慮していずれも同法一五九条二項所定の罰金刑を課することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算した金額の範囲内で被告会社を罰金一、五〇〇万円に処することとする。

(量刑の理由)

被告人及び被告会社の本件犯行は、昭和六二年一月から同六三年一二月までの二年間にわたり、主として懇意な取引先に手数料を支払って協力を求め、架空仕入れを計上したり、現金による売上の除外あるいは期末たな卸残高を一部除外するなどして実際の所得を隠すという手口で法人税を免れたというもので、ほ脱税額は二年分で合計約四、九四〇万円余に及び、この種事犯としても決して少ない金額ではないし、ほ脱率も平均して約八五パーセントに上る。犯行の動機も、要するに将来に備えて個人資産を蓄積しておきたいというだけであって、特に汲むべき点は認められない。以上のような本件犯行の動機、態様、ほ脱税額等からすれば、被告人の責任は重大であるが、被告人は本件が発覚するや一切の非を認めて税務調査に協力し、改悛の情も顕著であること、本件脱税の手口も父親から引き継いだものであること、父親が実質的な経営者であった過年度分を含め修正申告をして本税、付帯税等を完納したこと、これまで前科前歴がないこと等を被告人に有利な事情として考慮し、刑を量定した。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 大東一雄)

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