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横浜家庭裁判所 平成3年(家)2936号 審判 1991年11月28日

申立人 文エイ子

主文

申立人の名「エイ子」を「英子」に変更することを許可する。

理由

本件記録によれば、申立人は1945年2月12日大阪市○○区で出生した韓国人であって、協定永住者として日本に在留資格を有する者であること(外国人登録済証明書による)、申立人は韓国において戸籍を有することが明らかでないため、韓国済州の法院に就籍許可の申請をしたところ、法院は申立人の名の表記が日本文字であることを理由に申請を却下したことが認められる。

案ずるに、申立人が韓国で戸籍を有しない以上、申立人の法律上の名は「エイ子」であると解するほかないところ、法律上の名を変更するには日本においても韓国においても裁判所(法院)の許可を必要とする。ただ、申立人は韓国の法院に就籍許可の申請をするに際し、「エイ子」ではなく韓国の人名用字を用いた名をもってすれば足りたのではないかとの疑問は残るが、申立人のような境遇にある在日韓国人がその国籍を証明するには日本における外国人登録済証明書を根拠とするのが最も確実、簡明な方法であると考えられるので、申立人が「エイ子」の名で就籍許可の申請をしたことは十分理解できる。他方、韓国の法院が「エイ子」の「エイ」は韓国文字でないことを理由に申立人の就籍許可申請を却下したのは当然ともいうべきであろう。

そこで、本件名の変更許可申立てについて我国の裁判所が審判をなしうるかどうかが一応問題となりうるが、申立人が出生以来本邦に居住している事実からすると、本件については我国の裁判所が国際裁判管轄権を有すると解して差支えない。

次に、本件の名の変更の許否を決するについての準拠法が日本又は韓国のいずれの法律であるべきかが問題となる。この点については、法例には直接の規定はないが、人の名は出生とともにその人を他の人から区別して特定するために必ず付けられるものであることから考えると名はその人の人格に最も密接に関連するものということができ、したがって、名の変更の許否はその者の本国法に準拠して決すべきものと解するのが相当である。

しかるところ、韓国戸籍法113条によれば、家庭法院は本人の申立てにより改名を許可することができることが明らかである。もっとも、改名の許否の基準については規定されていないが、無条件で許可されるものでなく、日本国の戸籍法におけると同じく正当な事由があるときに許可されるものと解すべきことは事理の当然であると考えてよいであろう。そして、上記のとおりの本件の実情からすると、日本の仮名文字を用いた申立人の名「エイ子」を漢字の名「英子」に変更するについては、もとより正当の事由があると解することができる。

よって、参与員○○○○の意見を聴いたうえ、本件申立てを相当と認め、主文のとおり審判する。

(家事審判官 南新吾)

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