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横浜地方裁判所 昭和57年(ワ)1250号 判決 1983年5月27日

原告

山田島吉

ほか四名

被告

日本国際輸送株式会社

主文

一  被告は、原告山田島吉に対し、金一〇、八四八、〇六〇円及び内金九、八四八、〇六〇円に対する昭和五六年八月一一日から、内金七〇〇、〇〇〇円に対する昭和五七年五月一八日から、内金三〇〇、〇〇〇円に対するこの判決確定の日の翌日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告は、原告山田諄一、原告太田玲子、原告山田宏、原告山田崇に対し、各自金二、二一二、〇一五円及び内金一、九六二、〇一五円に対する昭和五六年八月一一日から、内金一七五、〇〇〇円に対する昭和五七年五月一八日から、内金七五、〇〇〇円に対するこの判決確定の日の翌日から支払ずみまで年五分の割合による金員を各支払え。

三  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は、これを五分し、その一を原告らの負担とし、その余を被告の負担とする。

五  この判決は、主文第一項及び第二項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求める裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告山田島吉に対し、金一三、二四八、〇六〇円及びこれに対する昭和五六年八月一一日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  被告は、原告山田諄一、原告太田玲子、原告山田宏、原告山田崇に対し、各金二、八一二、〇一五円及びそれぞれに対する昭和五六年八月一一日から支払ずみまで年五分の割合による金員を各支払え。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

4  仮執行の宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二当事者の主張

一  請求の原因

1  事故の発生

(一) 日時 昭和五六年八月一一日午前八時三五分ころ

(二) 場所 横浜市中区新山下三丁目一四番一号先路上

(三) 加害車 五四年式バン箱形普通貨物自動車

(運転者 太田一郎)

(四) 被害者 山田千代子

(五) 態様 訴外太田一郎は、片側二車線道路の第一通行帯を小港橋方面から山下橋方面に向かい進行するにあたり、同所は神奈川県公安委員会が最高速度を特に三〇キロメートル毎時と指定した右方にわん曲する道路であるから右道路状況に即応できるように特に速度を調節して進行すべき注意義務があるにかかわらず、右速度規制及び道路状況を知悉していながらこれを怠り漫然時速約六〇キロメートルの高速度で進行した過失により、前記わん曲に即応して進行することができず、前記車両を第二通行帯に進入させて中央分離帯に接触させそうになり、あわてて左に急転把して同車両を右に横転させつつ道路左側歩道に進入させ、おりから同歩道上を同一方面に向け歩行していた山田千代子に同車両右前部を衝突させて同女を転倒させ、同車両の下敷にして左右下腿挫砕の傷害を負わせ出血多量により死亡させた。

2  責任原因

(一) 被告は、本件車両を自己のために運行の用に供していたから自賠法第三条の規定による責任がある。

(二) 仮にそうでないとしても訴外太田は、本件事故当時、被告が所有、管理する前記車両に、被告が雇傭していた作業員及び作業員に支給すべき弁当を積み、被告の作業現場へ向けて運転していたものであるから、被告には民法第七一五条の規定による責任がある。

3  原告らの身分関係

原告山田島吉は、亡千代子の配偶者であり、その余の原告らは、千代子の子である。

4  損害

(1) 逸失利益の相続

(イ) 亡千代子は、主婦として特に近年原告島吉の足腰が不自由になつてからは、その介助看護に万全を尽くしており、今後なお五年は優にこれを継続しえたものであるから、女子労働者の平均賃金年間金一、七三五、五〇〇円から生活費として半額を控除しホフマン式係数によるその現価は金三、七八七、一二一円となる。

(ロ) このうち、金三、六九六、一二〇円につき、原告島吉が金一、八四八、〇六〇円を、その余の原告らがそれぞれ金四六二、〇一五円を相続した。

(2) 慰藉料の相続

亡千代子は、本件事故により少くとも金一六、〇〇〇、〇〇〇円の慰藉料請求権を取得した。このうち、原告島吉は金八、〇〇〇、〇〇〇円を、その余の原告らはそれぞれ金二、〇〇〇、〇〇〇円を相続した。

(3) 原告島吉は、生涯の伴侶たる千代子を失つたことによつて被つた精神的苦痛に対して、固有の慰藉料請求権として、金二、〇〇〇、〇〇〇円を取得した。

(4) 弁護士費用

原告らは、本件訴訟代理人に本訴提起を依頼し、その着手金として金一、四〇〇、〇〇〇円を支払い、勝訴の場合は、右同額の謝金を支払うことを約した。この費用の負担は各自の相続分に比例して行うこととしたため、原告島吉は、金一、四〇〇、〇〇〇円、その余の原告らは各自金三五〇、〇〇〇円を支払うこととなる。

5  よつて、主位的には自動車損害賠償保障法第三条の運行供用者責任に副位的には民法第七一五条の規定による使用者責任に基づき、原告島吉は被告に対して、合計金一三、二四八、〇六〇円、その余の原告らは被告に対し各合計金二、八一二、〇一五円及びこれらに対する本件事故発生の日である昭和五六年八月一一日以降完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を各求める。

二  請求原因事実に対する認否

1  請求原因1・2の事実は認める。

2  請求原因3の事実は知らない。

3  請求原因4の事実は否認する。亡千代子は事故当時七四歳の高齢の上、夫である原告島吉の他、原告山田諄一夫婦、原告太田玲子と同居しており、実質的に主婦としての稼働の必要性が少いと思われるのであり、又仮に主婦として何らかの稼働をしていたとしても、これは一般の主婦のそれとは質的に同一でなく、訴外千代子の主婦としての稼働を逸失利益として評価するのは相当でない。

第三証拠〔略〕

理由

一  請求原因1及び2の事実は当時者間に争いがない。

二  請求原因3の事実は、原本の存在及び成立に争いのない甲第二号証の一ないし六によりこれを認めることができ、他に右認定に反する証拠はない。

三  損害

1  逸失利益

(一)  成立に争いのない甲第一五号証、原告本人山田諄一、同太田玲子各尋問の結果を総合すると、亡千代子は、原告島吉、原告諄一夫婦、原告太田とともに生活していたが、原告太田は勤めに出ており、原告諄一の妻も週に三、四日は勤めに出ていたため、両名がいない時の日常家事はすべて亡千代子に委ねられていたこと、原告島吉は手足が不自由なため同人の身の回りの世話は亡千代子が行つていたこと、本件事故当時亡千代子の健康状態は比較的良好であつた事実が認められ、右認定に反する証拠はない。

(二)  昭和五五年賃金センサス第一巻第一表による女子六五歳以上の平均給与額は年額金一、七三五、五〇〇円であることは当裁判所に顕著でありこれから生活費五割を控除した年額金八六七、七五〇円が毎年あたりの得べかりし利益となる。また、亡千代子の就労可能年数については、当時の年齢、健康状態、労働の性質等を考え合わせると、これを五年間と認定でき、ライプニツツ係数により年五分の割合による中間利息を控除して現価を算定すると、金三、七五六、八三六円となり、原告島吉は金一、八七八、四一八円を、その余の原告らは、金四六九、六〇四円を相続したものと認められるので、このうち、原告らの請求の範囲内で被告に支払義務がある。

(算式) 1,735,500×0.5×4.3294=3,756,836

2  慰藉料

本件事故の態様、亡千代子の家庭での地位、年齢等諸般の事情を考慮すると、同人の取得した慰藉料は、金一二、〇〇〇、〇〇〇円と考えるのが相当であり、原告島吉は金六、〇〇〇、〇〇〇円を、その余の原告らは金一、五〇〇、〇〇〇円を相続したことになる。

3  この他に、固有の慰藉料として、原告島吉に、金二、〇〇〇、〇〇〇円を認めることが相当である。

4  弁護士費用

本件請求額、認容額、事案の態様、審理の経過等の事情を考慮すると、原告らが被告に対して請求しうる弁護士費用は、合計金二、〇〇〇、〇〇〇円と認められ、このうち原告島吉が金一、〇〇〇、〇〇〇円、その余の原告らがそれぞれ金二五〇、〇〇〇円を請求できる。

なお、弁護士費用の既払分については、支払の翌日から、未払分については本判決の確定の日の翌日から遅滞に陥るものと解すべきところ成立に争いのない甲第七号証によれば、金一、四〇〇、〇〇〇円については、昭和五七年五月一七日に原告ら訴訟代理人に支払われており、この部分については同月一八日より、残金六〇〇、〇〇〇円については、本判決確定の日の翌日より遅滞に陥るものといえる。

四  以上により原告島吉は被告に対して金一〇、八四八、〇六〇円及び内金九、八四八、〇六〇円に対する本件事故の日である昭和五六年八月一一日から、内金七〇〇、〇〇〇円に対する弁護士費用の一部支払の日である昭和五七年五月一八日から、残金三〇〇、〇〇〇円に対するこの判決確定の日の翌日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を、その余の原告らはそれぞれ金二、二一二、〇一五円及び内金一、九六二、〇一五円に対する昭和五六年八月一一日から、内金一七五、〇〇〇円に対する昭和五七年五月一八日から、内金七五、〇〇〇円に対する判決確定の日の翌日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるのでこれを認容し、その余は理由がないので棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条、第九二条、第九三条の規定を仮執行の宣言について同法第一九六条の規定を各適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 三井哲夫)

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