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横浜地方裁判所 昭和44年(行ウ)7号 判決 1973年6月05日

原告 共和化学工業株式会社

被告 神奈川税務署長

訴訟代理人 岩淵正紀 外六名

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

一  請求の趣旨

(一)  被告が昭和四三年五月三一日付で原告に対してそれぞれなした原告の自昭和三九年一〇月一日至同四〇年九月三〇日及び自同四〇年一〇月一日至同四一年九月三〇日各事業年度分法人税更正処分並びに各加算税の賦課決定処分をそれぞれ取消す。

(二)  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨の判決

三  請求原因

(一)(1)  原告は、塗料製造等を業とする株式会社であるが、昭和(以下昭和略)三九年一〇月一日から四〇年九月三〇日までの年度(以下第一次年度という。)及び四〇年一〇月一日から四一年九月三〇日までの年度以下(第二次年度という。)における法人税確定白色申告につき、被告に対し、それぞれ別紙一覧表記載の要領で申告したところ、被告は、四二年五月三一日付をもつて所得金額、法人税額をそれぞれ右同一覧表記載の金額に更正すると共に、第一次年度分については、同表記載過少申告加算税を、第二次年度分については、同表記載過少申告加算税及び重加算税の賦課決定処分(以下本件各課税処分という。)をなした。

(2)  そこで、原告は、これを不服として、四二年六月二九日本件各課税処分につき、被告に対し、異議申立をなしたが、被告は、同年九月二六日、これを棄却したので、更に同年一〇月二四日、東京国税局長に対し不服審査請求をしたところ、同局長は、四三年一一月二八日付をもつて右請求を棄却する旨の裁決をなし、原告は、同年一二月二三日以後のころ右裁決書謄本の送達を受けた。

(二)  しかしながら、被告のなした本件各課税処分は、いずれも違法であるからその取消を求める。

四  請求原因に対する答弁

(一)項の事実はすべて認める。

五  抗弁(課税処分の適法性)

本件各課税処分につき原告の申告所得金額を修正した項目の内訳とその計算根拠は、左のとおりであつていずれも適法である。

(一)  第一次年度分

(1)  修正内訳

(イ) 加算分

<1> 借入金否認      二、〇〇〇万円

<2> 右借入金の支払利息金否認 一八〇万円

<3> 営業権償却費否認     一五〇万円

(ロ) 減算分

営業権価格否認 二、〇〇〇万円

(ハ) 差引増加所得 三三〇万円

(2)  計算根拠

(イ) 原告は、四〇年一月一日付で原告の代表取締役前田秀雄(以下前田という。)が代表取締役をしている訴外共和興業株式会社(以下訴外会社という。)の塗料製造部門を引継いだことに伴い、右年度分の資産勘定に二、〇〇〇方円の営業権価格を計上し、同時に右営業権価格の対価として負債勘定に二、〇〇〇万円を訴外会社からの借入金名目で更に同借入金支払利息金名目で一八〇万円、同償却費名目で一五〇万円をそれぞれ計上する会計処理をなした。

(ロ) ところで、営業権とはいわゆる法律上の権利ではなく、財産的価値のある事実-関係であると解すべきであり、営業をその企業が有する正味身代の価格より高価に買入れる理由は、その営業が他の一般企業に比していわゆる超過収益力を有するからであり、営業権にとつて右超過収益力の存在はその不可欠の要件であるし、右超過収益力の要素としては、当該企業の名声、立地条件、経営者の手腕、製造秘訣、特殊の取引関係又は独占性等が考えられるが、結局右営業権の価格はこれらの諸要素、諸収益力を総合した概念である。

(ハ) ところで、これを本件についてみるに、

<1> 訴外会社は実質的に塗料業として操業を開始したのが三三年末頃で、その歴史も浅く、資本金一六〇万円、従業員四〇名前後の下請を主とする比較的小規模の中小企業に属し、

<2> 原告に事業を引き継ぐ直前の訴外会社の経営内容は、三六年三月決算期以降連年赤字決算を続け、多額の負債のため倒産寸前の状態にあつたのであり、

<3> 訴外会社の代表取締役前田は、右窮境を打開するため、いわゆる第二会社を設立し、この第二会社に訴外会社の事業を引き継ぐことを企図し、当時休眠会社であつた第一電子工業株式会社を買収して同会社の商号、目的及び本店所在地を現在の原告会社のそれとしてその変更又は移転登記を行なつたもので、この第二会社が即ち原告会社である。前田はついで、三九年一〇月一〇日原告会社の代表取締役に就任し、両会社の代表取締役を兼ねるに至つて、原告会社が訴外会社の第二会社たる要件を形式的に整えた。従つて原告会社は訴外会社から事業の引継ぎを受けるまでは資本金二〇〇万円の払込みもなされておらず、登記簿上のみの会社にすぎなかつた。

<4> 訴外会社には超過収益力の基因となる前記の同種の他企業にない特殊な技術、組織等として評価されたものがあるとは認められない。

<5> その営業権を原告に譲渡したとする訴外会社において同会社の当該年度における法人税確定申告等に際して原告側の前記会計処理に対応する会計処理が何らなされていない

等の諸事情が窺われ、右を総合的、経済的に観察すれば、訴外会社自体に超過収益力は認められず、又、原告自身右営業権の価格を認識して譲渡を受けたものではなく、従つて原告の主張する訴外会社の営業権価格を認めることはできない。

(3)  よつて、前記原告がなした訴外会社からの営業権譲渡に伴う二、〇〇〇万円の借入金、及び右金員に対する支払利息金、償却費用等の資産勘定項目はこれをいずれも理由がないものとして否認し、これを原告の申告所得金額に加算すると共に右営業権価格二、〇〇〇万円を同時に減算し、結局差引増加所得金額は三三〇万円となる。従つて原告の所得金額は三一三万七一四円、法人税額は九七万八、三五〇円、又過少申告加算税は四万八、九〇〇円となる。

(二)  第二次年度分

(1)  修正内訳

(イ) 加算分

<1> 借入金の支払利息金否認 二四〇万円

<2> 営業権の償却賛否認   二〇〇万円

<3> 減価償却超過額否認    一〇万六、七九四円

<4> 利息収入計上もれ      三万七、九一六円

<5> 寄付金の損金不算入額   六三万四、四八八円

(ロ) 減算分

事業税認定損 二四万〇、六八〇円

(ハ) 差引増加所得額 四九三万八、五一八円

(2)  計算根拠

(イ) 加算分について

<1>、<2>について

右<1>、<2>については第一次年度分の加算分中の<2>、<3>と同趣旨のものであるからその加算の根拠についても第一次年度分についての計算根拠を引用する。

<3>について

原告は、四一年九月三〇日トイレ製作費一〇万八、〇〇〇円をを修繕費勘定に計上していたので、法人税法(四一年法律第三二号による改正以前のもの、以下同じ。)六五条、同法施行令(四〇年三月三一日政令第九七号で、四一年政令第三五四号による改正以前のもの)一三二条及び六二条の規定により、当期分の適正減価償却額一、二〇六円を超える一〇万六、七九四円について損金処理を否認した。

<4>について

原告は、その代表者に対し、四一年二月二一日、七月三〇日、八月五日の三回に亘つて計七五万円を無利息で貸付けていたので、右貸付金に対する利息相当額は法人税法三五条四項による代表者に対する経済的利益の供与と認め、その利率につき、右が担保を徴しない小口貸付であることを考慮し、年一〇%と認定して右利息相当額を原告の所得に加算すると共に代表者に対する認定賞与とした。

<5>について

1 原告は、四〇年一月一日付で訴外会社から事業を引き継いだ際にリワインダースリツター機一台は使用不能であつたため、実際は引継ぎをしなかつたにも拘らず、当年度決算期において右機械を七五万円で買取つた上、直ちに使用不能を理由にその処分見込額五万円を残し、七〇万円を損金に計上したが、この取引は過大価額による取得と認められたので、損金処理の七〇万円は原告から訴外会社に対する贈与として法人税法三七条により寄付金の限度計算を行い、右金額中六三万四、四八八円を損金不算入とした。

2 なお、右の会計処理は実質的には期末における決算に際してなされたものであるにも拘らず、原告はあたかも期首の四〇年一〇月一日に右機械を引き継いだかのように記帳処理を訂正しており、右所為は利益調整のための偽装行為に該当すると認められたので国税通則法(四一年度法律第三二号による改正前のもの)六八条により六万八、四〇〇円の重加算税の賦課決定をした。

(ロ) 減算分につき

事業税認定損は前事業年度を同時に更正したので地方税法の規定によつて計算される前車業度分の未払事業税を認定損として所得より減算した。

(3)  以上のとおりであるから、原告の差引増加所得額は四九三万八、五一八円となり、従つてその所得金額は四九七万五、四六四円、法人税額は一七〇万二、五五〇円又、過少申告加算税は七万三、一五〇円、重加算税は六万八、四〇〇円となる。

六  抗弁に対する答弁及び原告の主張

(一)  答弁

抗弁(一)の(1) のように修正したことは認める。

(2) の中(イ)及び(ハ)の<1>、<5>の事実は認め、(ハ)の<2>、<4>の事実は否認。

(二)の(1) のように修正したことは認める。

(2) の(イ)の<3>、<4>は認める。(但し<4>についてその利率は五%とすべきである。)<5>の事業中被告主張の時期にその会計処理をしたことは認めその余は否認、(ロ)は認める。

(二)  主張

(イ)  第一次年度分につき(営業権価格につき)

原告が訴外会社から譲受けた営業権につきその価格を二、〇〇〇万円と評価したのは、

1 同会社における三六年から三九年迄の各総売買利益を平均すれば、年一、五一〇万一、〇五〇円となり、しかも右利益は年々増加の傾向を見せていたので、当時十分の収益力があつた。

2 同会社の大日本塗料株式会社他三社に対する有力な販路を承継できること

3 同社には三五年頃、藤森工業と共同して特殊なシリコン加工法を開発し、又プロピオン酸セルローズの開発により、ドイツの特許権を回避することに成功しその製品を日立コンデンサー等に納品していること

4 同会社の敷地一、〇〇〇坪(時価七、〇〇〇万円相当)、その地上建物四〇〇坪(時価一、〇〇〇万円相当)を毎月賃料五〇万円、権利、保証金等の支払はなしという有利な条件で原告が賃借しえたこと

5 同会社所有の主要材料を三六五万〇、八五〇円、機材設備を三四二万八、〇〇〇円と時価よりはるかに低廉に譲受けたこと等の事情を考慮したからで、右諸事情を総合評価すれば、同会社の営業権は二、〇〇〇万円と評価するのが相当である。

(ロ)  第二次年度分につき

1 利息収入につき

被告は右の利息につき年一〇%と認定したが、消費貸借において利息の定めのない時は民事法定利率たる年五%とすべきである。

2 寄付金損金不算入につき

原告が訴外会社から譲受けたリワインダースリツターは購入価格一一五万円であつたのだからこの点に関する原告の損金処理は違法である。

七  証拠<省略>

理由

一  請求原因第(一)項の事実及び第一、二次年分について原告のした各所得申告を被告がそれぞれ抗弁(一)の(1) 、(二)の(1) 記載の内訳内容どおり修正したことは当事者間に争いがない。

二  そこで、以下本件各課税処分の適法性の有無につき検討する。

(第一次年度分について)

原告が当該年度において訴外会社からその事業を引継いだことによりその営業権の譲渡を受け、それに伴い、右年度分の資産勘定、負債勘定項目にそれぞれ抗弁(一)の(2) の(イ)のような会計処理をしたことは当事者間に争いがない。ところで、被告は、右原告が代金二、〇〇〇万円で譲受けたとする営業権価格評価は認められないとしてその価格を否認するのでこの点を判断する。

(一)  営業権の意義

営業権とは、通常「のれん」とか「しにせ」とか呼ばれている企業財産の一種であり、それ自体税法上の固有の概念ではなく、その本質について税法上も何ら明確な定義は示されておらず、一般に会計学等で用いる概念を使用しているのであるが、それによると、営業権とは、一般的にはその企業が他の同種企業の平均収益力を超えるいわゆる超過収益力を有する無形の財産的価値であると解され、右超過収益力の要因としては、当該企業の長年にわたる伝統と社会的信用、立地条件、特殊の製造技術及び特殊の取引関係の存在並びにそれらの独占性、生産設備、技術、及び人的組織面の優秀性等の諸条件が考えられ、結局これら諸条件が総合一体として他の企業を上廻る企業収益を産出する場合にその超過収益力の存在が認められるのであり、そのような超過収益力を有する企業の場合、たとえ、その会社の資産価格等が同業他社のそれと同様であつたとしても実質問題としては右収益力を考慮して営業権自体より高い評価を受けることになるのである。従つて営業権価格を決するに当つては右超過収益力の有無を客観的に判断されなければならない。

(二)  訴外会社の営業権評価

(1)  企業としての伝統、信用等

同会社が塗料業として実質的に操業を開始したのは三三年末頃で、本件第一次年度当時資本金一六〇万円、従業員も四〇名前後で主に下請を業としていたものであることは当事者間に争いがなく、これによると同会社は企業としての歴史は浅く、比較的小規模の中小企業に属している。

(2)  営業成績

<証拠省略>を総合すると、同会社は、原告に事業を引き継ぐ前三年、即ち三六年三月決算期以降連年赤字決算を続け、多額の負債(原告への引き継ぎ直前には二億円以上)を抱え、このため倒産寸前の状態にあつたもので、原告が同会社の事業を引き継ぐ直前の同社の経営内容は極めて劣悪な状況にあつたことが認められる。なお、原告はこの点に関し同社の三六年から三九年までの平均売買利益は年一、五一〇万一、〇五〇円となるからこの点からしても同社の収益力は十分認められると主張するが、その企業における収益力が認められるためには単に売買利益のみでなく有機体としての企業を維持、管理する費用及び製品販売に要する費用等をも総合評価することが必要であるが、同社は、前認定のように企業総体として極めて成績不振であつた以上、売買利益のみがいかに高くともそれのみでは収益力認定の資料とはなりえない。

(3)  特殊な販路

<証拠省略>によると、同会社は、大日本塗料、日立コンデンサー、東和蓄電器株式会社等の有力取引先を有していたことが認められるが、原告が同社の事業を引き継いだ当時における右各取引先に対する売上高がどの程度のものであつたか、又、右各社との取引関係の独占性の有無についてはこれを判定すべき証拠がなく明らかではない。

(4)  特殊技術

<証拠省略>によると、同会社にはコンデンサー用塗料製造に関し、ドイツシーメンス社の保有する特許権を回避する技術を開発しも又、シリコン剥離剤塗布加工に関する技術を有していることが、右各技術は、いずれも特許権等法律上の保護を受ける、いわゆる無体財産権の対象となつている特殊な技術ではないことが認められる。

(5)  土地建物の賃借等

原告は、謙外会社所有の敷地建物(時価計八、〇〇〇万円相当)を権利金等の支払い無く、賃料月五〇万円の有利な条件で賃借しえたことを営業権評価の一因としてあげるが、右条件(月額五〇万円、年額六〇〇万円)は、右敷地建物の時価に対比して決して安価なものとはいえず、原告主張のように有利な条件とも認められない。更に原告は、同会社の有していた機材等を時価より廉価に譲受けたというが、この点時価よりどの程度廉価に譲受けたかの点につき主張立証がなく明らかではない。

(6)  事業引き継ぎの経緯

<証拠省略>によると、前記認定のように当時訴外会社は多額の負債を抱えて倒産寸前の状態であつたため、同社の代表取締役前田は、この窮境を打開すべく、いわゆる第二会社を設立し、この第二会社に同社の債務の一部(約二、〇〇〇万円)を負担させ、その負債の軽減を企図し、結局原告会社をその頃実質的に設立して四〇年一月一日訳外会社の事業を引き継いだのであり、右のような引き継ぎの経緯から原告としても右営業権価格を二、〇〇〇万円と評価したことにつきそれが原告に負担させるべき債務の一部であるという以外には特段根拠をもつていなかつたことが認められる。原告代表者本人は、右営業権議受け代金の支払いについては、原告にその資金がなかつたため、同代表者本人が原告に右二、〇〇〇万円を貸付けてこれを原告が訴外会社に支払つた旨述べているが、前記認定事実に右二、〇〇〇万円の譲渡代金を受けとつたとされる訴外会社においては、右譲渡及びこれに伴う代金受領に関し、当該年度の法人税確定申告に際し、これに相応する会計処理が何らなされていなかつたという当事者間に争いのない事実に照らして信用できない。以上の点から考えると、結局訴外会社の営業譲渡に関し、原告と同会社との間には何ら代金の授受がなされなかつたこと

等の事情が認められ、以上認定の諸事情を総合すれば、訴外会社においては他の同種企業の平均収益力を超えるいわゆる超過収益力の存在を認めることはできず、従つて同会社の事業が原告に引き継がれる際にその固有の資産以上に特段評価すべき客観的価値は存しなかつたというべきであり、又、原告、同会社相互間においても同会社の営業権の価値につき何ら積極的評価をなしていなかつたことが認められ、以上の諸点からすると、結局部外会社の営業権価格については税法上何ら積極的評価を加えるべきものではないというべきである。

(三)  以上の次第であるから、原告が当該年度においてなした申告に対して、被告が前記のとおり、右営業権譲渡に伴う借入金、同利息及びその償却費に関してこれをいずれも否認し、結局所得金額を三一三万〇、七一四円、法人税額九七万八、三五〇円、過少申告加算税を四万八、九〇〇円とした(計算式は後記のとおりである。)更正処分は適正であつたというべきである。

その計算式を示すと次のとおりである。

(計算式)<省略>

(第二次年度分)

(一)  同年度中の加算分の中<1>、<2>の各項目についてはいずれも第一次年度分において説述した訴外会社の営業権価格の存在を前提とするものであるから前同様右<1>、<2>につき被告主張のとおり修正したことは適正妥当である。又、<3>の修正根拠については当事者間に争いがない。

(二)  利息収入について

右の点に関する被告主張事実中、利率の点を除くその他については当事者間に争いがない。そこで、この点につき考えるに、原告は民事消費貸借において利息の定めのない時は年利率五分であるから本件の場合もその利率は年五分とすべきであると主張するが、法人税法における所得は、これらを専ら経済的、実質的に把握するべきであつて、現実に経済的利益を取得したと認められる限り、右利益を課税の対象となしうるものであり、右の観点からすれば、本件のように担保を徴しない小口貸付けにあつてはその利息は年一割を下らないことは現今の金融事情の下では通例といつて妨げない。従つて、右利息を年一〇%とした被告の修正は適正である。

(三)  寄付金の損金不算入について

原告がリワインダースリツター機につき被告主張の時期に被告主張のような記帳処理をしたことは当事者間に争いがない。ところで、<証拠省略>によれば、右機械は原告が四〇年一月一日訴外会社の事業を引き継いだ当時から既に使用不能であり、原告は同機械を四一年九月末の同年度の決算期末になつて同会社から七五万円で購入し、直ちにこれを使用不能を理由としてその処分見込額五万円を残して七〇万円を損金処理としたことが認められ、右認定に反する<証拠省略>は信用できない。そして、右会計処理は、実際は、使用不能で価格五万円の機械を七五万円で訴外会社から購入したことになり、その差額七〇万円については、同会社に対する贈与であり、税法上贈与は寄付金とみることができるから、法人税法三七条による限度計算(計算式は後記のとおりである。)を行ない右金額の中六三万四、四八八円を損金不算入とすべきである。又、右会計処理に際し、原告は、前記の如く真実は四一年九月末に右機械を購入しているに拘らず、利益調整を図るため当該年度の期首である四〇年一〇月一日に買取つたように記帳処理を訂正する等の仮装行為をなしていたことが前示<証拠省略>によつて認められるので、当時施行の国税通則法六八条により六万八、四〇〇円(計算式は後記のとおりである。)の重加算税の賦課決定をしたその処分は適正である。右各計算式を示すと次のとおりである。

(計算式)<省略>

(四)  減算分については当事者間に争いがない。

よつて、第二次年度分についても原告のなした申告に対し被告がした前記各項目にわたる修正及び右修正に基づき当該年度分の所得金額を四九七万五、四六四円、法人税額を一七〇万二、五五〇円、過少申告加算税を七万三、一五〇円とした各更正処分は適

正というべきである。

その計算式を示すと次のとおりである。

(計算式)<省略>

三  結論

以上によれば、第一、第二次各年度についてなした被告の本件各課税処分はいずれも適法というべきである。よつて、本件各課税処分が違法であるとしてその取消を求める原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 唐松寛 田中昌弘 中田忠男)

別紙 一覧表<省略>

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