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横浜地方裁判所 昭和32年(行)4号 判決 1958年3月29日

原告 北見靖太郎

被告 国

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は「被告は原告に対し金七十二円及びこれに年五分の割合による遅延損害金を附加して支払え。(遅延損害金の起算日は追つて補充する旨の申立があるが、本件口頭弁論の終結に至るまでその補充はなされていない。)訴訟費用は被告の負担とする」との判決及び仮執行の宣言を求め、その請求の原因として「原告の甥訴外高橋信男は昭和二十五年七月七日神奈川県船舶渉外労務管理事務所と雇傭契約を締結し、米軍所有の船舶に乗組み、輸送業務に従事中同年十一月十五日職務上の事由で死亡した。よつて原告は右亡信男の遺族として船員保険法第四十二条ノ三に基く保険給付金七十二万円を請求中のところ、社会保険審査会は原告に対し右保険金の給付をしない旨を裁決し、昭和三十一年九月二十日原告はその旨の裁決書謄本の送達を受けたので、やむなく本訴に及んだ次第である」と陳述した。

被告指定代理人は主文と同旨の判決を求め、答弁として「原告主張の事実はすべて認める。しかしながら船員保険法第四十二条ノ三に定める一時金の給付請求権はその支給を受けようとする者から同法施行規則第七十四条ノ四に定める請求書を厚生大臣に提出し、それに対して厚生大臣が支給の決定をなし、その旨を請求者に通知した(同法施行規則第九十九条ノ二)ときに始めて具体的に発生するものであつて、その支給決定がない限り、右請求権は発生しないものであるところ、原告は昭和二十七年十二月八日厚生大臣に対し一時金給付請求書を提出したが、これに対して厚生大臣は昭和二十九年三月五日不支給の決定をなし、その旨を原告に通知しているから原告は未だ具体的な一時金給付請求権を取得していないものというべく、従つてこれを前提とする原告の本訴請求は失当として棄却さるべきである。」と述べた。

理由

本訴請求原因事実は当事者間に争がない。しかしながら船員保険法第四十二条ノ三に所謂一時金の給付請求権は、その支給を受けようとする者から同法施行規則第七十四条ノ四に定める請求書を厚生大臣に提出し、それに対して厚生大臣が支給の決定をなし、その旨を請求者に通知したときに始めて具体的に発生するものであつて、その支給決定がない限り、右請求権は発生しないものというべきところ、本件にあつては原告がかかる支給決定を得ていないことは原告の主張自体に徴しても明かであるから、原告の本訴請求は失当として棄却を免れない。

よつて訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 古山宏)

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