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横浜地方裁判所 平成3年(行ウ)17号 判決 1997年3月19日

神奈川県川崎市高津区野川三六二四番地一

原告

山本保夫

右訴訟代理人弁護士

南雲芳夫

藤田温久

根本孔衛

杉井厳一

篠原義仁

児島初子

岩村智文

西村隆雄

同市高津区久本二六九-一

被告

川崎北税務署長 佐藤順一

右指定代理人

前澤功

渡部義雄

加藤正一

池上照代

中澤彰

北川侑司

神谷信茂

笹崎好一郎

主文

一  本件訴えのうち、被告が平成二年三月一二日付けでした原告の昭和六一年分所得税の更正のうち、所得金額二九七万八三六六円、税額二〇万三七〇〇円を超えない部分の取消を求める部分を却下する。

二  原告のその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

被告が、

一  平成二年三月一二日付けでした原告の昭和六一年分所得税の更正のうち、所得金額二九三万一六五二円、税額一九万六七〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定、

二  同日付けでした原告の昭和六二年粉所得税の更正のうち、所得金額三四二万二七一五円、税額二三万五一〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定、

三  平成二年一月一九日付けでした原告の昭和六三年分所得税の更正(但し、同年六月一三日付け異議決定により一部取消し後のもの)のうち、所得金額四四二万二三三五円、税額三一万〇八〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定

をそれぞれ取り消す。

第二事実の概要

一  本件は、クリーニング業を営む個人事業者である原告が昭和六一年から昭和六三年の各年分(以下「本件係争各年分」という。)の所得税についてした青色申告に係る所得に関し税務調査を受けた際、第三者の立会いや具体的調査理由の開示を求めるなどして調査に応じなかったとされ、そのため、実額で本件係争各年分の所得を確認することが困難であると判断された、被告から青色申告承認を取り消された上、推計課税による更正及び過少申告加算税賦課決定を受けたことに対し、推計の必要性及び合理性等を争い、かつ、所得金額について実額による反証をも試みているという事案であり、本件係争各年分における原告のした確定申告、被告のした更正(以下「本件各更正」という。)及び過少申告加算税賦課決定(以下「本件各決定」という。)、原告がした不服申立て並びにこれに対する決定・裁決の経緯は、別表一ないし三のとおりであって、この点は当事者間に争いがない。

二  争点

本件の争点は、本案前の主張に関し、原告の昭和六一年分所得税の更正のうち所得金額二九七万八三八六円、税額二〇万三七〇〇円を超えない部分についても取消しを求める訴えの利益があるかどうか、本案に関し、(1)税務調査の手続が違法かどうか、(2)被告がした推計課税に必要性及び合理性があるかどうか、(3)原告の実額主張の内容が事実に符合するかどうか、である。

これらについての当事者双方の主張は以下のとおりである。

(本案前の被告の主張)

原告は、その昭和六一年分所得税について、所得金額を別表一の確定申告欄の所得金額記載のとおり二九七万八三八六円と、税額を同欄の納付すべき所得税額記載のとおり二〇万三七〇〇円とする確定申告をしており、これを超えない部分の取消しを求める訴えは訴えの利益を欠くから、不適法として却下されるべきである。

(本案について)

1 調査手続の違法性

(一) 調査の必要性の欠如

(原告)

東京国税局は、昭和六二年七月、民主商工会の会員を対象とする税務調査に関し、調査時の立会人排除、調査日の一方的指定、反面調査の早期実施等の八項目からなる「所得税事務運営のポイント」と題する指示文書を出し、また、「昭和六一事務年度留意事項」という文書においても、同様の指示内容を周知徹底している。これらの運営方針は、当時、大型間接税(売上税)の導入に対し組織的な反対運動を展開してきた民主商工会を弾圧する意図によるものであり、本件調査も民主商工会に対する不当な弾圧の一環として、その会員である原告を調査の必要性がないにもかかわらず、その対象としたものである。この事実は、民主商工会が実施した各種の調査によれば、その会員に対する更正処分が異常に増加していることが認められることなどからしても、明らかである。したがって、本件調査は、平等原則を規定した憲法一四条一項及び結社の自由を規定した同法二一条一項に違反する。

また、所得税法二三四条一項が質問検査権行使の要件とする「調査について必要があるとき」とは、納税者の申告が法の定める要件に合致しない場合、申告に係る所得及び税額が過大又は過少と判断される場合及び更正の適正を確保するため資料を得る必要のある場合をいう。そして、調査が認められるためには、右のような客観的な調査の必要性が存することを要するのであり、単に申告に係る所得及び税額の確認という。一般的・抽象的理由では足りないというべきである。しかるに、被告は、広く申告の真実性、正確性を確認するため必要がある場合には質問検査が許されるとし、原告について長期間調査を行っていなかったという抽象的な理由で調査を行っている。したがって、本件調査には、その必要性が認められない。

(被告)

所得税法二三四条一項の「調査について必要があるとき」とは、調査権限を有する税務職員において、当該調査の目的、調査すべき事項、申告の体裁・内容、帳簿等の記入保存状況、相手方の事業の形態等諸般の具体的状況に鑑み、客観的な必要性があると判断される場合をいい、確定申告後に行われる所得税に関する調査については、過少申告の疑いが存する場合のみならず、そのような疑いが当初から明らかではなくても、申告の真実性、正確性を確認する必要性がある場合をも含むものと解すべきである。被告は、原告から提出された本件係争各年分の所得税の確定申告書の内容を検討した結果、原告がクリーニング業を開業して以来、長期間にわたり調査を受けていないことから、原告の帳簿等の保存状況及び記載内容を調査し、申告の真実性、正確性を確認する必要があると判断し、本件調査を行ったものである。したがって、調査の必要性が認められる。

(二) 調査日時の事前通知の欠如

(原告)

適正な調査の実施のためには、対象者の防御権を保障する見地から調査日時の事前の通知が不可欠であり、事前の通知をするかどうかは係官の裁量に委ねられるものではない。被告係官は、平成元年五月一五日、事前の連絡なしに原告宅に臨場した。また、同月一七日、原告が同係官に、営業上の都合から調査は六月中にしてほしい旨申し入れたにもかかわらず、その後、同係官から連絡はなく、同年八月二九日に至って、少年野球の後援に多忙であった原告の都合を無視し、来週中に調査を行いたい旨連絡してきた。このように、被告は、原告の生活上、営業上の都合を無視し、調査日時を一方的に指定したものであり、右措置は違法である。

(被告)

本件調査は、所得税法二三四条の質問検査権に基づいて行われたものであるが、質問検査の範囲、程度、時期、場所等、実体法上特段の定めのない細目事項については、質問検査の必要性と被調査者の利益を衡量し、社会通念上相当な範囲にとどまる限り、権限ある収税官吏の合理的裁量に委ねられるというべきである。そして、質問調査の日時、場所の事前通知は法律上一律の要件とされるものではないから、事前通知を行わずに質問調査を行ったからといって、それが直ちに違法となるものではない。

(三) 第三者の立会い拒否の違法

(原告)

原告は、平成元年九月二二日の被告係官による原告宅における税務調査(以下「本件調査」という。)の際、民主商工会の会員である男女六、七名の立会いを求めたが、被告係官は、右立会人がいることを理由に調査を行わなかった。第三者の立会いは、被調査者の防禦のため必要不可欠であり、したがって、立会いの拒否が認められるのは、立会いを認めることによる不利益がこれを排除することによる利益を上回ることが明らかである場合に限られるというべきである。また、被告は、守秘義務を立会い拒否の理由とするが、守秘義務は公務員たる税務署員に課せられるものであり、私人たる立会人との関係で守秘義務を問題とする理由はない。そして、原告は自己の防禦のため第三者の立会いを求めたのであるから、原告自身の秘密保持は立会い排除の理由とならず、取引の相手方の営業上の秘密保持をその理由とするならば、立会いを認めることにより取引の相手方が不利益を被るおそれがあること、これが被調査者の受ける利益を上回るものであることを係官が具体的に明らかにしたうえで立会人の退去を求めるべきである。したがって、被告が立会い拒否の理由を明らかにしないまま原告に対する調査を打ち切ったことは違法である。また、税務当局が前記のように税務調査の運用を改める以前は、民主商工会の会員に対する調査においても、第三者の立会いを承認する扱いが一般的であったことからしても、これを認めない理由はない。

(被告)

質問検査の際に第三者の立会いを認めるかどうかは、税務職員の合理的な裁量に委ねられるところ、本件調査に際し、被告係官は、質問検査が原告の取引先等の秘密に属する事項に及んだ場合、私人たる第三者には、職務上の守秘義務(所得税法二四三条、国家公務員法一〇〇条)が課されていないことから、右秘密の保持を図り得なくなるおそれがあるとしてその立会いを認めなかったものであり、右措置はその裁量の範囲内のものである。

(四) 調査理由の不開示

(原告)

被調査者の防禦を図り、適正な課税を実現するめには、調査に際しその具体的理由の告知を要すべきところ、被告係官は、本件調査の際、原告が調査理由を尋ねたのに対し、「所得の確認です。」というのみで、原告の申告納税にどのような問題があるのかを具体的に告知していないから、右措置は違法である。

(被告)

調査に際し、調査理由を告知するかどうかも、税務職員の合理的な裁量に委ねられるから、被告係官が詳細な調査理由を告知しなかったことが、直ちに違法であるとはいえない。

(五) 反面調査の違法

(原告)

昭和五一年度税務運営方針は、「調査方法等の改善」として「反面調査は客観的にみてやむを得ないと認められる場合に限って行うこととする。」とし、前記のとおり、民主商工会に対する弾圧的意図の下に定められた「昭和六一事務年度留意事項」においてすら、「原則として二、三回の臨場検査(無予告を含む。)を行っても調査忌避、拒否、妨害等により進展が図れない場合」に反面調査に移行するとしている。しかるに、被告係官は、平成元年五月一五日に原告方に臨場調査に赴いたのみで、原告が調査忌避、拒否及び妨害を全く行っていないにもかかわらず、同年六月ころには反面調査に着手しているから、右措置は違法である。

(被告)

被告係官は、平成元年五月一七日に、調査の日程を決めるため原告に連絡したところ、原告は、同年六月中に都合のよい日程を連絡する旨述べるのみで、これを確定し得なかった。そのため、被告係官は、やむなく、原告に反面調査できるところは先に調べておく旨伝え、川崎信用金庫野川支店、東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)及び川崎市に対し反面調査を実施したものであり、右措置は適法である。

2 推計の必要性

(被告)

前記被告主張のような経緯の後、原告は、平成元年五月一七日、被告係官に対し、同年六月中に都合のよい調査日時を連絡する旨約しながらこれを怠り、調査日時を一方的に引き延ばし、同年八月二九日、被告係官が来週中に調査を行いたい旨申し入れても、すぐにはこれに応じなかった。そして、その後、合意した同年九月二二日の被告係官による本件調査に際しては、原告のほか、民主商工会の関係者九名が立会人として被告係官を半円状にとり囲むように座り、被告係官の再三にわたる立会人の退去及び調査への協力要請を強硬に拒み続け、この間、原告は、被告係官の要求に対し、帳簿書類を提示しようとせず、実額計算が可能となるような説明もしなかった。そこで、被告係官は、やむなく調査を断念し、原告に調査に応ずる意思があれば連絡するよう伝え、臨場から約一時間後に原告方を辞去した。しかし、本件調査後、原告からは、何の連絡もなかった。

右の経緯からすれば、被告が原告の本件係争各年分の所得金額を実額で算定することは到底不可能であり、右金額を推計により算出する必要性が存したことは明らかである。

原告は、被告が一度臨場調査を試みたのみで、直ちに推計課税を行っていることから、推計の必要性は認められない旨主張する。しかし、右のとおり原告が調査に非協力的な態度に終始していたことからすれば、臨場調査が一度しか行われていないとしても、推計の必要性が存したことは明らかであり、原告の主張は理由がない。

(原告)

原告は、被告係官に対し、五月中はクリーニング業の繁忙期なので、調査日時を六月にしてほしい旨申し入れたが、その後、被告係官が調査日時を確定しようとしなかったのであり、原告が調査日時を引き延ばしたのではない。平成元年八月ころ、原告は少年野球の後援のため多忙で、同月二九日、その旨被告係官に説明したが、同係官は一方的に来週中に調査を行いたい旨述べた。

本件調査の際、原告は本件係争各年分の申告所得金額が正しいものと確信していたため、被告から調査理由につき具体的な説明を受けたうえで調査に応ずる意向であった。しかし、被告が調査理由を明らかにしようとしなかったのであり、原告が調査に非協力的な態度をとったことはない。当日、原告夫婦ほか民主商工会の会員六、七名が調査に立ち会った。被告係官は、当初、形式的に立会人の退去要求をしたが、若干のやりとりの後、立会いを黙認するかたちで営業規模、内容等を尋ねる調査に入った。したがって、立会人がいることが調査の支障になったことはない。原告は、当日、テーブルの下に帳簿等の資料を用意していた。それにもかかわらず、被告係官は、約三〇分で調査を終了させたもので、本件調査は調査の名に値しない。そして、被告は、このような、反面調査のかたちを作るためだけの臨場調査を一度行ったのみで、実額による所得税の算定を断念し、直ちに推計課税を行っているが、極めて異例であり、右のような調査が一度功を奏しなかったからといって、直ちに推計の必要性が認められるとは到底いえない。

3 本件各更正の根拠

(一) 事業所得の金額及びその計算根拠

(被告)

被告が本訴において主張する本件係争各年分の原告の総所得金額(事業所得の金額)とその計算根拠は、次のとおりである。

(1) 昭和六一年分

右年分事業所得の金額は六九一万五七六五円であり、その算出経過は次の<1>ないし<3>のとおりである。

<1> 売上金額 一一四〇万〇一三二円

右金額は、被告が把握し得た原告の昭和六一年における水道使用量六九六立方メートルに、原告と業種及び事業規模等を同じくする個人事業者(以下「比準同業者」という。これについては後述のとおりである。)の水道使用量一立方メートル当たりの売上金額の平均値一万六三七九円五〇銭を乗じて算出した金額である。

<2> 特前所得金額 七三六万六七六五円

右金額は、右売上金額一一四〇万〇一三二円に、比準同業者の売上金額に占める特前所得(売上金額から売上原価及び経費(青色申告者についてのみ認められている青色専従者給与等の特典は除く。)の額を控除した金額をいう。以下同じ。)の割合の平均値(以下「平均特前所得率」という。)〇・六四六二を乗じて算出した金額である。

<3> 事業所得の金額 六九一万六七六五円

右金額は、右特前所得金額から事業専従者控除額四五万円を控除した金額である。

(2) 昭和六二年分

右年分の事業所得の金額は六七五万八五四四円であり、その算出経過は次の<1>ないし<3>のとおりである。

<1> 売上金額 一一二六万八八二八円

右金額は、被告が把握し得た原告の昭和六二年における水道使用量六七二立方メートルに、比準同業者の水道使用量一立方メートル当たりの売上の平均値一万六七六九円〇九銭を乗じて算出した金額である。

<2> 特前所得金額 七三五万八五四四円

右金額は、右売上金額一一二六万八八二八円に、比準同業者の平均特前所得率〇・六五三〇を乗じて算出した金額である。

<3> 事業所得の金額 六七五万八五四四円

右金額は、右特前所得金額から事業専従者控除額六〇万円を控除した金額である。

(3) 昭和六三年分

右年分の事業所得の金額は七二三万五八四四円であり、その算出経過は次の<1>ないし<3>のとおりである。

<1> 売上金額 一一九二万一二六〇円

右金額は、被告が把握し得た原告の昭和六三年における水道使用量六七六立方メートルに、比準同業者の水道使用量一立方メートル当たりの売上金額の平均値一万七六三五円を乗じて算出した金額である。

<2> 特前所得金額 七八三万五八四四円

右金額は、右売上金額一一九二万一二六〇円に、比準同業者の平均特前所得率〇・六五七三を乗じて算出した金額である。

<3> 事業所得の金額 七二三万五八四四円

右金額は、右特前所得金額から事業専従者控除額六〇万円を控除した金額である。

(二) 控除の合理性

(被告)

(1) 被告が原告の総所得金額の算定に用いた推計方法は、原告の水道使用量に比準同業者の水道使用量一立方メートル当たりの平均売上金額を乗じて原告の売上金額を算出し、これに比準同業者の平均特前所得率を乗じて原告の特前所得金額を算出し、右特前所得金額から事業専従者控除額を控除して、総所得金額を推計するというものである。

そして、右推計の基礎とした比準同業者の抽出方法は、以下のとおりである。

原告は、川崎北税務署管内においてクリーニング業を営むことから、被告は、川崎北税務署管内においてクリーニング業を営む個人事業者のうち、次のとおりの抽出基準を設け、本件係争各年分ごとにその基準のすべてに該当する者を別表四ないし六のとおり抽出した。

ア 本件係争各年分について、青色申告の承認を受け青色決算書を提出している者

イ 自宅と事業所が同一にする者

ウ 毛布・絨毯等の特殊なクリーニング業及びクリーニングの取次業を除き、川崎市高津区、中原区及び宮前区においてクリーニング業を営む者

エ 水道の使用量が、原告の使用量の半分以上二倍以下といういわゆる倍半基準すなわち、次の範囲内である者

<1> 昭和六一年分

三四八立方メートル以上一三九二立方メートル以下

<2> 昭和六二年分

三三六立方メートル以上一三四四立方メートル以下

<3> 昭和六三年分

三三八立方メートル以上一三五二立方メートル以下

オ 本件係争各年分において、外注費の売上に占める割合が五パーセント以下の者

原告の確定申告における外注費の右割合が昭和六一年が約一・三パーセント、昭和六二年が約一・四パーセント、昭和六三年が約一・六パーセントであることから右の基準によったものである。

カ 年間を通じて青色事業専従者一名のみを従業員とする者

キ 世帯員数が四名以上の者

原告の世帯員数は四名であるところ、本件推計の基礎とした水道使用量には、家事に関連する部分も含んでいることから、右基準によったものである。

ク 次の<1>及び<2>のいれにも該当しない者

<1> 災害等により経営状態が異常であると認められる者

<2> 更正又は決定処分を受けている者のうち、次のa又はbに該当する者

a 当該処分について国税通則法又は行政事件訴訟の規定による不服申立期間又は出訴期間の経過していない者

b 当該処分に対して不服申立てがされ、又は訴えが提起されて現在審理中である者

(2) 原告の営むクリーニング業は、サービス業、加工業であるため、原材料費は少なく、手作業の部分が多く、その性質上水道使用量との間に高度の相関関係があるから、収入金額は水道使用量に比例するといえ、たがって、被告が比準同業者の水道使用量一立方メートル当たりの平均売上金額を基礎として原告の売上金額を算定したことには合理性が認められる。被告は当初、水道使用量のほかに電力使用量も推計の基礎とする予定であったが、原告の電力使用量を把握し得なかったことから、やむなく水道使用量のみを推計の基礎とした。なお、電力にはガス等により代替可能な部分もあるから、水道使用量のみを基準とした方が合理性を有する面もある。

また、被告は、比準同業者の抽出に当たり、本件係争各年分ごとに前記抽出基準のすべてを満たす者を漏れなく抽出ており、右抽出に恣意が介在する余地はなく、抽出された比準同業者は、業種及び事業規模において原告と類似性を認めるに足る青色申告者であるから、被告が採用した推計方法により本件係争各年分の原告の事業所得の金額を算定したことには合理性が認められる。

原告は、被告が麻生区と多摩区を恣意的に比準同業者の抽出対象から除外した旨主張する。しかしながら、本件各更正及び決定当時、川崎北税務署の管轄区域は高津区、中原区、宮前区、麻生区及び多摩区の五区であったが、平成五年七月一〇日、川崎北税務署から川崎西税務署が分割されたことに伴い、麻生区及び多摩区は川崎西税務署の管轄区域とされ、川崎北税務署の管轄区域は高津区、中原区及び宮前区の三区となった。そして、原告と業態、規模、立地条件等ができるだけ類似した比準同業者を抽出するためには、原告の事業所の存する高津区と同一の経済圏を形成する範囲内の区域を抽出の対象とすべきところ、税務署の分割に際しては、一般的に、交通機関の利便性や経済圏等の同一性に着目して管轄を定めるといえ、前記経過からすれば、被告が比準同業者を選定した当時、高津区を含む前記三区と麻生区及び多摩区は別個の経済圏等を形成していたといえる。したがって、被告が右三区から比準同業者を抽出したことには合理性がある。

また、原告は、同種クリーニング業者であっても、水洗加工とドライクリーニングの比率はまちまちであり、水洗加工とドライクリーニングとでは水道使用量が大きく異なるから、右の比率が原告と同様の業者を比準同業者とする必要がある旨主張する。しかしながら、被告が、前記のように特殊クリーニング業等を除き、原告の水道使用量を基礎として倍半基準により業種、事業規模の類似する比準同業者を抽出している以上、比準同業者間の水洗加工とドライクリーニングの比率はほぼ同程度と推測されるのであり、少なくとも、右比率に比準同業者の売上金額による原告の所得の推計を全く不合理ならしめる程の顕著な差異はないというべきである。

さらに、原告は、同じクリーニング業でも、下請と直請とでは料金の単価が異なること、比準同業者の経費の金額がまちまちであることから、本件推計には合理性がないと主張する。しかしながら、同業者による所得の推計は、類型的にみて納税者との間に類似性のある同業者を選定し、これとの対比により、対象納税者の所得金額を算定するものであり、個々の同業者について個別的にみれば、その事業内容や業態にある程度の差異が存することは当然の前提とせざるを得ない。したがって、推計方法が業種の同一性、営業規模の一応の類似性及び平均値算出過程の整合性等、推計の基礎的要件に欠けるところがない以上、比準同業者のクリーニング料の単価、経費等の具体的営業条件の差異を考慮する必要はない。

(原告)

(1) 被告は、電気使用量によらず、水道使用量のみを基礎として原告の売上金額を算定しているが、水洗加工かドライクリーニングかという業態の違いにより数値に大きな差異の生ずる水道使用量よりも、右業態の違いによる影響の小さい電気使用量を基礎とした方が合理的であることは明らかである。被告は、平成元年六月ころ、東京電力に対し原告の電力使用量の照会を行い、本件係争各年分の原告の電力使用量を把握していたにもかかわらず、これを推計の基礎としておらず、本件推計には合理性がない。

(2) 本件各更生及び決定がされた当時、川崎北税務署は、川崎市内のうち中原区、高津区、宮前区、多摩区及び麻生区を管轄しており、右のすべての区域から比準同業者を抽出すべきである。ところが、被告は、あらかじめ右区域内にクリーニング業者が三〇〇名おり、うち青色申告者は九割であること、前記中原区、高津区及び宮前区にはクリーニング業者が二〇〇名いることを把握していたにもかかわらず、殊更、多摩区及び麻生区を抽出の対象から除外しており、右比準同業者の抽出は極めて恣意的にされたものである。

(3) また、クリーニングの方法は、ドライクリーニングと水洗加工に大別されるが、水洗加工はドライクリーニングに比し水道使用量ははるかに多く、同種のクリーニング業者であっても、両者の比率いかんによって、水道使用量は大きく異なるから、これを基礎に算定された売上金額にも大きな差異が生じる。被告は、比準同業者のドライクリーニングと水洗加工の比率を考慮せず、そのすべてについて両者の割合がほぼ同等であることを前提としているが、そのように推定する根拠はなく、本件推計には合理性がない。

(4) また、同じクリーニング業であっても、直請の場合と下請の場合とでは単価が異なり、原告の場合、昭和六一年における直請のワイシャツの水洗加工の単価は一八〇円であるのに対し、下請のそれは一三〇円である。被告は本件推計に当たり、このような直請と下請の違いによる利益率の差異を捨象しているから、本件推計には合理性がない。

(5) 被告の抽出に係る別表四ないし六の比準同業者のうち、原告と事業規模が類似するのは、業態の違いを考慮しない場合、水道使用量の近似するD、Eの二業者であるが、原告の売上金額を本件係争各年分の右二業者の水道使用量一立方メートル当たりの売上金額の平均値に原告の水道使用量を乗じる方法により算出すると、昭和六一年分が九九五万〇五八六円、同六二年分が九七一万二一八四円、同六三年分が一〇四二万六六四〇円となり、いずれも被告の推計額を下回り、原告の申告額に近似する。このことは、本件推計に合理性がなく、原告の申告額が正当なものであることを裏付けるものである。

(6) さらに、比準同業者の経費の内容をみると、業者Bは、本件係争各年分の水道使用量が業者Aとほぼ同等であるが、経費は業者Aに比し著しく少ない。また、業者Dと業者Eは、総収入金額、水道使用量が同等であるが、業者Eの経費は、業者Dに比し著しく少ない。本件推計に係る所得に経費の多寡が影響することは明らかであり、経費は事業所が借家か否か、減価償却費の多寡等の営業条件により異なるところ、被告は比準同業者の抽出に際しこのような個別の営業条件を考慮していない。ちなみに、原告の店舗は借家であり、また、駐車場も借りている。事業所が借家か否かは、確定申告書の記載内容から容易に把握しうるのであり、被告はこの点の経費率さえも考慮していない。したがって、本件推計に合理性がないことは明らかである。

(7) 被告は、外注費の割合が五パーセント以下であることを比準同業者の抽出基準としているが、被告も自認するように、原告の外注費の割合は、昭和六一年が一・三パーセント、昭和六二年が一・四パーセント、昭和六三年が一・六パーセントにすぎないから、右基準には合理性がない。

4 本件更正及び賦課決定の適法性

(被告)

被告が、本訴において主張する原告の本件各係争年分の総所得金額(事業所得の金額)は、前記3(一)の(1)ないし(3)で述べたとおり、それぞれ

昭和六一年分 六九一万六七六五円

昭和六二年分 六七五万八五四四円

昭和六三年分 七二三万五八四四円

であるところ、本件各更正における原告の総所得金額(事業所得の金額)は、別表一ないち三の課税の経緯記載のとおり、それぞれ

昭和六一年分 六九一万六七六五円

昭和六二年分 六七五万八五四四円

昭和六三年分 七一七万三四一九円

であって、いずれの年分も被告が本訴で主張する総所得の金額と同額又はその範囲内であるから、本件各更正は適法である。

原告は、本件各係争年分の所得税につき過少に申告していたので、被告は、本件各更正により原告が新たに納付すべき所得税額(国税通則法一一八条三項により一万円未満の端数を切り捨てた金額。以下同じ。)

昭和六一年分 八三万円

昭和六二年分 六七万円

昭和六三年分 六六万円

を基礎として国税通則法六五条一項、二項の規定により算出した過少申告加算税額

昭和六一年分 二万七〇〇〇円

昭和六二年分 三万八〇〇〇円

昭和六三年分 三万六〇〇〇円

をそれぞれ賦課決定したものであるから、本件各決定はいずれも適法である。

5 実額反証

(原告)

原告の本件係争各年分の売上金額、仕入金額、必要経費、事業専従者給与及び青色申告控除の内訳は別表七ないし九の各一の「決算額(本件原告主張額)」欄記載のとおり、売上金の内訳の明細は別表七ないし九の各二記載のとおりであり、原告の事業所得の金額は、それぞれ昭和六一年分が二九三万一六五二円、昭和六二年分が三四二万二七一五円、昭和六三年分が四四二万二三三五円である。なお、確定申告書記載の金額(別表七ないし九の各一の「決算額(申告額悪貨」欄記載の金額)に一部計算間違い等があったため、本訴では訂正後の金額を実額として主張する。

被告は、原告が会計帳簿を提出しないことをもって実額反証が不十分と主張するが、原告の提出した書証(甲五号証等)はすべて生まの原始書証であり、これにより十分、実額反証は可能である。被告お主張は、原告のようないわゆる現金商売である業者に対し、事実上、不可能な無理難題を吹きかけるもので、失当である。

(被告)

推計による課税処分の取消しを求める訴訟において、実額反証が認められるためには、原告が主張する実額と真実の所得金額が合致すること、すなわち、その主張する売上金額が本件係争各年分の収入額のすべてであること、その主張する経費を現実に支出したこと、及び収入金額と経費の対応関係をそれぞれ合理的な疑いを容れない程度に立証しなければならない。そして、右立証のためには、収入金額及び経費を継続的かつ個別・具体的に記載した会計帳簿(総勘定元帳、売上帳、現金出納帳等)が不可欠である。特に、原告の営むクリーニング業は、帳簿等の作成が義務付けられない一般消費者が顧客の大多数を占め、売上もほとんどが現金で決済されることから、日々入・出金状況及び現金残高を確認してその金額を現金出納帳に記載し、現実の現金残高と現金出納帳の現金残高とを照合し、記帳の正確性を担保することにより、始めて収入金額を実額で算定しうるのであるから、このような現金出納帳がなければ、その収入金額の正確な認定は不可能である。しかるに、原告は、現金出納帳その他の会計帳簿ないしこれに準ずる資料を全く提出しておらず、また、経費についても、その裏付けとなる領収書等が存しないものが相当数ある。したがって、このことだけでも、原告がその収入金額及び経費を実額により立証したとはいえない。

第三争点に対する判断

一  本案前の主張について

原告は、原告の昭和六一年分の所得税の更正のうち、原告の申告に係る所得金額二九七万八三八六円、税額二〇万三七〇〇円を超えない部分についてもその取消しを求めている。ところで、申告納税方式の下では、納税義務者が確定申告書を提出することにより納税額が確定し(国税通則法一六条一項)、納税義務者は、更正の請求という手続によってのみ申告額の減額変更を求めることができる(国税通則法二三条、所得税法一五二条)。したがって、納税義務者が更正の請求の手続によらずに、自己の申告額が過大であるとして、申告額を超えない部分の取消しを求めることは、納税義務者の自認する所得の範囲を超えて更正処分の取消しを求めることにほかならず、訴えの利益を欠くものとして不適当というべきである。本件で、原告が申告額を超えない部分につき所得税法所定の期間内に更正の請求をしたことについては主張立証がないから、本件訴えのうち、原告の昭和六一年分所得税の更正のうち申告額を超えない部分の取消しを求める部分は却下を免れない。

二  調査手続の違法性について

1  本件調査の経緯

証拠(甲八七号証の一、二、乙四号証、証人久保田保、原告本人、弁論の全趣旨)によれば、本件調査の経緯に関し以下の事実が認められる。

(一) 原告は肩書住所地の借家である居宅兼店舗(以下「原告宅」という。)において、妻を事業専従者としてクリーニング業を営む青色申告の承認を受けた個人事業者であった。

被告係官である久保田保(以下「久保田係官」という。)は、上司から、原告に対する税務調査が長期間行われていないので、その申告の適否を確認するため、調査を行うよう命じられ、事前通知をすることなく、平成元年五月一五日午前一一ころ、本件係争各年分の所得税調査のため原告宅を臨場した。しかし、原告は配達に出掛けており、不在であったため、対応に出た原告の妻に対し、原告の本件係争各年分の所得税の調査のため来訪した旨告げた。ところが、原告の妻は、「帳簿等は原告が記載しているのでわからない。」旨答えたため、久保田係官は、名刺の裏面に同月一七日に再度臨場する旨記載して同人に交付し、その旨原告に伝えてくれるように依頼して、その場を辞去した。同日、午後一時過ぎころ、同係官の不在中に原告から川崎北税務署に、同月一七日は都合が悪い旨の電話連絡があった。

(二) そこで、久保田係官は、同月一七日、原告に電話し、同年五月中に臨場調査を行いたい旨申し入れたところ、原告は、五月は繁忙期で都合がつかないので調査の日程は同年六月中に原告から連絡する旨述べた。ところが、その後原告から何の連絡もなかったため、同年八月二九日、久保田係官は原告に電話し、来週中に臨場調査を行いたい旨申し入れた。しかし、原告が、民主商工会の班会等で日程を相談したい旨返答したので、具体的な調査日時を確定することができなかった。同年九月一三日、原告から久保田係官に調査の日時を同月二二日にして欲しいとの連絡があったので、同係官はこれを了承し、同日午前一〇時半ころから調査を実施することとした。

(三) 同年九月二二日、午前一〇時半ころ、久保田係官が原告宅の居室である六畳の間に臨場したところ、そこには、原告夫婦のほかに民主商工会の会員である男性七名、女性二名が待機しており、同人らは原告をとり囲むように半円状に座った。久保田係官が、原告に本件係争各年分の所得税の確認のため来訪した旨告げると、原告は、「すでに申告はしており、確定したものを確認する必要はない。」などと述べた。久保田係官は、調査を遂行しようとして、取引先の秘密保持のため、原告に対し前記立会人らを退席させるよう要請したが、原告は、「自分が呼んだのだから問題はない。お前に許可を取る必要はない。」などと述べてこれに応ぜず、立会人らの中にも口々に不満を述べる者がおり、同人らが退席する様子はなかった。そこで、久保田係官は、やむを得ず、立会人らを同席させたままで調査を続行することとし、原告に帳簿書類の提示を要請した。しかし、原告は、詳しい調査理由を尋ね、同係官が所得金額の確認、すなわち、収入、仕入れ、経費等の確認である旨繰り返し説明しても、納得せず、同係官がなお再三にわたり帳簿書類の提示を要請したにもかかわらず、これを拒み続けた(なお、原告本人の供述中には、右調査の際、居室のテーブルの下に領収書等の原始思料を備えて置いていたとの部分があるが、その供述によっても、久保田係官には見えなかったであろうというのであり、これらを久保田係官の閲覧しうる状態に置いていたことを認めるに足りる証拠はない。)。また、原告は、久保田係官の事業の内容等に関する質問に対しても、その詳細については、回答しようとしなかった。

以上の経過から、久保田係官は、もはや原告の協力は得られず、調査の進展は望めないものと判断し、原告に対し、今後、被告が独自調査に移行するが、調査を受ける意向があれば連絡するよう伝え、来訪時から約一時間でその場を辞去した。その際、原告は「勝手に調査したらただでは済まない」などと述べていた。

(四) その後、原告からは連絡がなく、平成二年一月一〇日、久保田係官が原告に調査結果を電話で連絡し、修正申告を勧めたが、原告は、同月一二日、被告の推計に係る所得金額には納得がいかず、右金額では修正申告に応じられない旨回答したため、同係官は後日更正する旨を伝えた。

(五) なお、久保田係官は、平成元年五月一七日の原告との電話でのやりとりの際、調査の日時が決まらなかったので、原告に対し、「調べられるところは調べておく。」旨述べ、同年六月になって、原告から調査日時についての連絡がなかったこともあり、同月中ころに川崎信用金庫野川支店で原告の資産状況を調査をしたほか、そのころ、川崎市水道局、東京電力溝の口営業所に対して、それぞれ原告の水道使用量、電力使用量の照会をした。

(六) 以上のとおり認められ、原告本人の供述中、右認定に反する部分は、前掲各証拠に照らしにわかに採用しえない。

2  調査の必要性の欠如

原告は、被告は調査の必要性がないにもかかわらず、専ら民主商工会の弾圧の目的で原告に対する調査を行ったもので、本件調査は憲法の平等原則、結社の自由を侵害し違法である旨主張する。そして、証拠(甲六八号証、九四号証、九六ないし九八号証、一〇二号証、一〇五号証の一、二、証人石田隆俊、原告本人、弁論の全趣旨)によれば、原告は、民主商工会の会員であること、神奈川県においては、従来、民主商工会の会員に対する所得税等の調査の際、事実上、第三者の立会いが黙認されたり、調査理由を具体的に告知するなどの扱いがされる事例がある程度、存したこと、東京国税局が「昭和六一事務年度留意事項」と題する文書により、納税非協力者に対する税務調査の徹底、第三者の立会いの排除、反面調査の早期着手等の方針を打ち出したこと、昭和六三年ころから、民主商工会の会員に対する調査について、第三者の立会い拒否や反面調査の実施件数等が増加し、更正処分の件数も増えていることが認められる。しかしながら、後述のように、所得税法二三四条一項の調査に関しては、その必要性、第三者の立会い等について、税務職員に相当程度の裁量が認められていること、原告に対しては、長期間右調査が行われていなかったこと及び本件調査の経緯に照らすと、前記のような事実から直ちに、被告が民主商工会の組織弾圧の目的で、殊更、原告に対する税務調査を行ったと推認することはできず、他に本件調査が専らこのような意図で行われたことを認めるに足りる証拠はない。

そして、所得税法二三四条一項の「調査について必要があるとき」とは、確定申告後に行われる所得税に関する調査については、過少申告等の疑いがある場合のみならず、当初からそのような疑いが明らかではないが、申告の真実性、正確性を確認する必要がある場合も含まれると解すべきところ、前記認定のとおり、被告は、原告がクリーニング業を開業して以来長期間にわたり税務調査を受けていなかったことから、その申告の適否を確認するため本件調査を行うこととしたことが認められる。

以上によれば、本件調査がその必要性を欠くものであったということはできない。

3  調査日程の事前通知の欠如

原告は、久保田係官が最初に原告宅に臨場した際、事前に通知をせず、また、本件調査に先立ち、原告の都合を無視して一方的に調査日時を指定したことが違法である旨主張する。そして、平成元年五月一五日、久保田係官が事前に通知をせずに原告宅に臨場したことは前記認定のとおりである。しかし、そもそも、税務調査に際し、納税者に事前通知をすべきことを定める規定はなく、所得税法二三四条一項の質問検査をどのような方法で行うかは、それが社会通念上相当な限度にとどまる限り、権限ある税務職員の合理的な裁量に委ねられているというべきであるから、久保田係官の右措置が直ちに違法であるということはできない。また、久保田係官が平成元年九月一三日に原告から連絡を受け、その同意を得たうえで調査日時を同月二二日と定めたことは前記認定のとおりであり、同係官が原告の都合を無視して一方的に調査日時を定めたとは認められない。したがって、原告の主張は理由がない。

4  第三者の立会い拒否

久保田係官が、平成元年九月二二日の本件調査の際、同席していた民主商工会の会員九名の退席を要求したが、原告がこれに応じなかったことは前記認定のとおりである。ところで、第三者の立会いについては、税理士の立会いに関する税理士法三四条以外に格別の規定がないこと、税務調査の内容が納税者のみならず、その取引の相手方の営業上の秘密に及ぶこともあり、守秘義務のない第三者の立会いを認めると、秘密の保持を図り得なくなる場合があることからすれば、税理士以外の第三者の立会いを認めるか否かは、権限ある税務職員の合理的な裁量に委ねられているというべきである。したがって、久保田係官が原告に第三者の退席を要請したことが違法であるとはいえない。なお、久保田係官は、第三者の立会いがあることをもって直ちに調査不能と判断していなかったことは、前記認定のとおりである。

5  調査理由の不開示

原告は、久保田係官が本件調査の際、具体的な調査理由を告げなかったことが違法である旨主張する。しかしながら、所得税法二三四条は、質問検査権の行使に際し調査の具体的理由を開示すべきことを要件としておらず、他にこれを要求する規定は存しないから、調査理由を開示するかどうか及びその程度いかんは権限ある税務職員の合理的な裁量に委ねられているというべきであり、久保田係官が具体的な調査理由を開示しなかったことが違法であるとはいえない。

6  反面調査の違法

原告は、久保田係官が平成元年五月一五日に原告の不在中に原告宅に臨場しただけで、同年六月には直ちに反面調査に着手しているから、右反面調査は違法である旨主張し、久保田係官が、平成元年六月ころ、川崎信用金庫野川支店、川崎市水道局、東京電力溝の口営業所に対し、反面調査を行ったことは、前記認定のとおりである。

ところで、反面調査に関する所得税法二三四条一項三号は、調査の時期、順序、方法等について何ら規定していないから、右の時期、順序、方法等は専ら税務職員の裁量に委ねられるというべきである。もっとも、証拠(甲九三、九四号証)によれば、昭和五一年度税務運営方針は、反面調査は客観的にみてやむを得ないと認められる場合に限って行うこととし、東京国税局の「昭和六一事務年度留意事項」は、原則として、二、三回の臨場調査を行っても調査忌避、拒否、妨害等により調査の進展をはかり得ない場合に反面調査を行うべきこととしていることが認められる。しかしながら、右は、あくまで指針ともいうべきものであって、法令ではないうえ、前記認定のとおり、久保田係官は、六月に入っても原告から連絡がなく、臨場調査の目途がたたなかったこともあって、前記反面調査に着手したことが認められる。そうすると、久保田係官の右措置が直ちに違法であるとはいえない。

7  以上によれば、本件調査手続が違法であるとの原告の主張は、いずれも理由がない。

三  推計の必要性について

1  所得税の課税は、真実の所得金額(実額)を課税標準としてするのが原則であるから、所得税の更正も原則として実額調査によりすべきである(国税通則法二四条、二五条)。

しかし、納税義務者が信頼しうる調査資料を有しないなど、実額調査ができない場合に、これを理由に課税をしないことは、国民の納税義務及び租税負担公平の原則から許されないから、このような場合には、実額調査による課税に代えて推計による課税が認められる(所得税法一五六条)。そこで、被告が本件係争各年分の原告の所得税額について、実額調査が実施できない事由があったかどうかにつき検討する。

2  前記認定の事実によれば、原告は、久保田係官に平成元年六月中に都合のよい調査日時を連絡する旨告げながら、同年八月に至っても連絡をせず、同年九月二二日の臨場調査に際しては、久保田係官が再三にわたり帳簿書面の提示を要請したにもかかわらず、調査理由の詳細につき説明を求めるなどしてこれに応ぜず、事業の内容等に関する同係官の質問に対しても不十分な回答しかしていないのであり、原告が調査に協力しなかったことは明らかである。したがって、被告が本件係争各年分の原告の所得を実額で把握することは困難であったと認められ、被告がこれを推計により算出する必要性があったというべきである。

原告は、被告はわずか一度臨場調査を試みたのみでこれを断念し直ちに推計課税に移行しており、推計の必要性は認められない旨主張する。しかし、前記認定の一連の経過からすれば、結局、調査につき原告の協力を得難い状況にあったことは明らかであるといわざるをえず、臨場調査が一度しか行われていないからといって、調査の必要性が認められないということはできない。なお、原告は、本件調査の前後は少年野球の後援に多忙であったため、調査日時を確定できなかった旨主張し、証拠(証拠七六ないし八五号証、原告本人)によれば、原告は宮前地区少年野球連盟の事務局に所属しており、平成元年六月一八日、同月二五日には少年野球の県予選が、同年八月五日からは全国大会が開催され、原告はその後援事務に携っていたことが認められる。しかしながら、原告本人の供述によっても、右はせいぜい同年八月二九日の久保田係官との電話の際のやりとりというのであり、しかも、原告が久保田係官にこのような事情について説明し、配慮を求めたことについて、証人久保田保はこれを否定する証言をしており、他にこれを認めるに足りる的確な証拠もない。したがって、右事実は調査の必要性に関する前記認定を左右しないというべきである。

四  推計の合理性について

1  被告が採用した推計課税の方法は、実額調査に代えうるだけの合理性を有しなければならないところ、以下、右合理性の有無について検討する。

証拠(乙一号証、二号証の一ないし三、三号証、証人鈴木盛、弁論の全趣旨)を総合すれば、本件推計の方法に関し以下の事実が認められる。

被告は、原告の本件係争各年分の水道使用量を調査し、これに原告の事業所の存する川崎北税務署管内において原告と同様に個人でクリーニング業を営む青色申告者で、原告と事業規模の類似する比準同業者の本件係争各年分の水道使用量一立方メートル当たりの売上金額の平均値を乗じて売上金額を算定し、右売上金額に比準同業者の平均特前所得率を乗じて特前所得金額を算定し、これから事業専従者控除額を控除して、原告の事業所得の金額を推計した。

すなわち、被告は、調査の結果、原告が通常のクリーニング業を営む前記認定の個人事業者であり、家族は四人で、外注費の割合は、昭和六一年が約一・三パーセント、同六二年が約一・四パーセント、同六三年が約一・六パーセントであることのほか、その昭和六一年の水道使用量が六九六立方メートル、同六二年が六七二メートル、同六三年が六七六立方メートルであることを把握した。

そして、被告は、比準同業者の抽出に際し、東京国税局長からの平成三年一一月二七日付け「税務訴訟に関する資料の作成及び報告について(通達)」と題する書面により、原告の納税地を管轄する川崎北税務署管内のうち、(一)高津区、中原区及び宮前区においてクリーニング業(毛皮・呉服製品等の特殊なクリーニング及び取次業を除く)を営む者、(二)事業所と住所が同一で、かつ、所得税の確定申告書を川崎北税務署に提出している者、(三)青色申告の承認を受けている者のうち、青色事業専従者一名のみを従事員としている者、(四)対象年分における外注費の売上に占める割合が五パーセント以下の者、(五)水道の使用量が、昭和六一年分が三四八立方メートル以上一三九二立方メートル以下、昭和六二年分が三三六立方メートル以上一三四四立方メートル以下、昭和六三年分が三三八立方メートル以上一三五二立方メートル以下である者、(六)対象年分の世帯員の人数が四名以上である者、(七)対象年分を通じて(一)の事業を継続している者、(八)次の(1)及び(2)のいずれにも該当しない者

(1) 災害時により経営状態が異常であると認められる者

(2) 更正又は決定処分がされている者うち、次のア又はイに該当する者

ア 当該処分について国税通則法又は行政事件訴訟法の規定による不服申立期間又は出訴期間の経過していない者

イ 当該処分に対して不服申立てがされ、又は訴えが提起されて、現在審理中であるもの

の各条件が、本件係争各年分のすべての年分に該当する者のほか、いずれかの年分に該当する者も含めて報告するよう求められた。被告は、これに応じてその基準に該当するすべての者を、所得税確定申告書の職業欄、青色申告決算書等の業種名欄等から分類した被告の内部資料である業種別名簿に基づき、機械的に抽出したが、その結果は別表四ないし六のとおりである。

これらに基づく本件係争各年分の原告の所得等の計算の結果は、昭和六一年分は、売上金額一一四〇万〇一三二円、特前所得金額七三六万六七六五円、事業所得金額六九一万六七六五円、昭和六二年分は、売上金額一一二六万八八二八円、特前所得金額七三五万八五四四円、事業所得金額六七五万八五四四円、昭和六三年分は、売上金額一一九二万一二六〇円、特前所得金額七八三万五八四四円、事業所得金額七二三万五八四四円となる。

2  以上のとおり、被告の採用した推計方法は、恣意の介在する余地が少ないものであり、また、クリーニング業による売上金額は、設備、従業員数、営業内容が一定であれば、水道使用量と強い相関関係があると解されるところ、弁論の全趣旨によれば、原告の事業は、前記(一)ないし(四)の抽出基準を満たした比準同業者との間で、右の諸条件において類似しており、かつ、本件係争各年分において右の諸条件に大きな変動はないと認められるから、被告が原告の本件係争各年分の水道使用量に比準同業者の水道使用量一立方メートル当たりの売上金額の平均値を乗じる方法により原告の売上金額を算定したことには合理性があるものと認められる。また、比準同業者の抽出方法、抽出した比準同業者の特前所得率の算定方法も相当と認められる。

これに対して、原告は、クリーニング業の売上金額については、ドライクリーニングと水洗加工とで差が大きい水道使用量を基礎とするよりも、このような業態の違いによる影響の少ない電力使用量を基礎として算出すべきところ、被告は、平成元年六月の反面調査の結果、原告の本件係争各年分の電力使用量を把握していたにもかかわらず、これを売上金額算定の基礎としておらず、右算定方法は合理性を欠く旨主張する。なるほど、電力使用量は、作業中に占める水洗加工の比率の多寡による影響が比較的小さいと考えられ、これを売上金額算定の基礎とるうことにも一応の合理性が認められる。しかしながら、原告と比準同業者とは、前記のとおり、営業上の諸条件が類似しており、作業中に占める水洗加工の比率に顕著な差異があるとはにわかに認め難いこと、したがって、売上金額算定の基礎として、水道使用量と電力使用量のいずれを採用した方が合理的であるか、一概には判断できないことからすれば、被告が水道使用量のみを基礎として売上金額を算定したことが直ちに合理性を欠くとはいえない。

次に原告は、比準同業者の抽出に関し、被告がその管轄する納税地五区内にクリーニング業者が三〇〇名おり、うち青色申告者が九割を占めることを把握していたにもかかわらず、殊更、多摩区及び麻生区を抽出の対象から除外し、対象者を高津区、中原区及び宮前区の二〇〇名としていることから、右抽出は恣意的にされたものである旨主張する。しかしながら、比準同業者は、同一の経済圏を形成する範囲内の区域から抽出するのが合理的であるところ、証拠(乙五、六号証)によれば、平成五年七月一二日、川崎西税務署の新設に伴い、多摩区及び麻生区が同税務署の管轄とされたことが認められ、したがって、本件推計に際しても、右二区を除く高津区、中原区及び宮前区が同一の経済圏を形成していたものと認められるから、被告が右三区から比準同業者を抽出したことが恣意的であるとはいえない。

また、原告は、被告が抽出した比準同業者のうち、原告と事業規模が類似するのは、別表四ないし六のD、Eの二業者のみである、右二業者の水道使用量一立方メートル当たりの売上金額を基礎として本件係争各年分の原告の売上金額を算定すると、いずれも被告の推計額を下回るから、本件推計には合理性がない旨主張する。しかしながら、被告の採用した倍半基準は、営業規模の類似性と抽出される同業者の一定数以上の確保とを図った、それ事態、合理性のある抽象的な基準というべきであり、被告が倍半基準により抽出した別表四ないし六の比準同業者の水道使用量をさらに右D、Eに限定しなかったことが直ちに合理性があにとはいえない。

更に、原告は、被告が比準同業者の抽出に際し、水洗加工とドライクリーニングの比率、経費の多寡、直請と下請の比率を考慮していないことから、本件推計に合理性がないとも主張する。しかしながら、右の点については、そもそも、被告の推計に際し、原告の業態自体を十分に把握することが困難であったと考えられるうえ、被告の抽出した比準同業者は、前記のとおり、いずれも被告管内においてクリーニング業を営む者のうち特殊クリーニング業等を除く青色申告者で、原告と業種の同一性及び事業規模の一応の類似性が認められる者であるから、右のような個別的営業条件の差異は、比準同業者間に通常存する程度のものであるとはいえ、推計の基礎的要件に欠けるところがない以上、これらの点は、被告のした推計そのものを不合理ならしめるような顕著な特殊事情であるとはいえない。

なお、原告は、本件係争各年分の原告の外注費の割合はいずれも一パーセント台であるところ、被告が、右割合が五パーセント以下である者を比準同業者抽出の基準としたことには合理性がないとも主張する。

しかしながら、比準同業者の個別的営業条件につき納税義務者との間に過度の類似性を要求すれば、推計自体が困難となるから、これにつきある程度の差異が存することを前提とせざるを得ない。そして、本件係争各年分の原告の外注費の割合がいずれも五パーセント以下の範囲内にある以上、右基準の定め方が直ちにに合理性を欠くとはいえない。

以上によれば、原告の主張は、いずれも理由がない。

五  実額反証について

所得税の課税は本来実額に対してされるべきものであるから、本件推計につき、その必要性、合理性が認められるとしても、原告が実額に基づく反証をし、真実の所得を明らかにした場合、右所得を課税標準額とすべきである。しかし、被告の推計課税に対し、原告が実額反証を試みる以上、原告主張の売上金額の存在のみならず、実際の売上がそのすべてであって、右主張額を上回るものでないことが立証されなければならず、経費についても、その主張額の存在のみならず、実際の経費がこれを下回らないこと及び収入金額との対応関係が立証されなければならないというべきである。

原告は、本件係争各年分の売上金額等の詳細及び事業所得の金額につき、それぞれ別表七ないし九の各一、二のとおりであると主張し、売上、経費に関する書証として、請求書、売上及び経費に係る領収書等(甲五号証以下六六号証の一ないし八等)を提出しており、これに原告本人の供述を総合すれば、右主張が裏付けられるかのようである。

しかしながら、原告の収入の大部分が現金決済によるものであることは原告も自認するところ、原告は請求書、領収書等の原始資料を書証として提出したのみで、それらが正確なものかどうかを検討するための帳簿書類等を提出していない。原告は、日毎の売上を記載したルーズリーフ式の帳面(甲五号証、二五号証、四五号証)を提出するが、右帳面には現金残高の記載がなく、広屋クリーニングからの下請収入、自動販売機の売上及び宅急便取扱収入の記載もないことからすれば、これが現金出納帳ないし売上帳等の帳簿書類に準ずるものとみることはできない。また、証拠(原告本人)によれば、右帳面は、日毎の売上を別個の原始資料である水揚帳から転記したものであることが認められるところ、右水揚帳は提出されていないうえ、宅急便の領収書(甲八号証の一の三八、同号証の二の七)等に照らすと、定休日以外に売上の記載がない日があることになるなど、それ自体、日毎の売上を漏れなく記載したものであるとはにわかに認め難い。

また、原告は、広屋クリーニングからの下請収入について、請求書を提出するのみでこれに対応する領収書を提出しておらず、ヤマト運輸株式会社からの宅急便取扱収入についても、昭和六一年一〇月二九日から同年末まで及び昭和六二年一月二七日から同年九月一七日までの間につき、領収書を提出していない(甲八号証及び二八号証関係)。また、原告の川崎信用金庫の預金口座に昭和六二年三月二五日、ホンダベルノ神奈川東株式会社から五万九七〇〇円の振込みがある(甲六五号証の三)が、前記帳面には右収入に該当する記載がなく、収入漏れの疑いがある。云本人の供述中には、右収入は昭和六〇年に同社に対する請求漏れがあった分に該当し、昭和六二年分の収入には含まれないとの部分が存するが、専ら本人の記憶に基づくものであって、他にこれを裏付ける証拠は存せず、にわかに措信し難い。

さらに、原告が経費として主張するものの中には、その裏付けとなる領収書等が存しないものが相当あり、また、通信費、ガソリン代については、原告が甲号各証で提出した領収書のどの部分が原告の事業に関する経費に該当するかが明らかでない。

以上によれば、原告主張の収入が実際の収入のすべてであること及び原告主張の経費が実際の経費を下回らないこといついて立証がされたとはいえないことは明らかであり、原告の実額主張は理由がない。

六  本件各更正及び決定の適法性

被告が本訴で主張し、その合理性が認められる原告の本件係争各年分の総所得金額は、それぞれ、

昭和六一年分 六九一万六七六五円

昭和六二年分 六七五万八五四四円

昭和六三年分 七二三万五八四四円

であるところ、本件各更正における原告の総所得金額は、別表一ないし三の課税処分の経緯記載のとおり、それぞれ、

昭和六一年分 六九一万六七六五円

昭和六二年分 六七五万八五四四円

昭和六三年分 七一七万三四一九円

であって、いずれの年分も被告が本訴で主張する総所得金額と同額又はその範囲内であるから、本件更正は適法であり、したがって、これらの金額を前提としてされた本件決定も適法である。

七  結論

以上のとおりであり、原告の本訴請求のうち、昭和六一年分の更正で原告の申告に係る所得金額、税額を超えない部分の取消しを求める訴えは不適法であるからこれを却下し、その余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 浅野正樹 裁判官 吉田徹 裁判官 近藤祐之)

別表一

課税の経緯(昭和六一年分)

<省略>

別表二

課税の経緯(昭和六二年分)

<省略>

別表三

課税の経緯(昭和六三年分)

<省略>

別表四

昭和61年分のクリーニングを業とする者の課税事績表

<省略>

別表五

昭和62年分のクリーニングを業とする者の課税事績表

<省略>

別表六

昭和63年分のクリーニングを業とする者の課税事績表

<省略>

別表七の一

計算書

<省略>

別表七の二

売上金内訳明細

<省略>

別表八の一

計算書

<省略>

(追記)1992年12月2日付準備書面の正誤表

<省略>

別表八の二

売上金内訳明細

<省略>

但し、千鳥商事(自動販売機の売上)の「5月△20,000」は自動販売機の保険料である。

(追記) 前記書面のうち「外友」とあるのは「外交」の、「広尾」とあるのは「広屋」)水洗だけの仕事で下請仕事)の誤記である。

別表九の一

計算書

<省略>

(追記)

水道光熱費については、燃料(灯油、池田屋への支払)分のみ昭和61年は、甲第12号証、昭和62年は甲第31号証として提出ずみ。しかし、水道・電気料金にかかる書証は未提出。今回、これをまとめて提出し、その対応関係は水道料金及び電気料金とも残金通帳を基礎として以下のとおりである。

1. 昭和61年 甲64~甲65

2. 昭和62年 甲65~甲66

3. 昭和63年 甲66

以上の結果、水道光熱費の昭和63年分の書証は、甲第51号証及び甲第66号証がそれに対応する。

別表九の二

売上金内訳明細

<省略>

但し、千鳥商事の「5月 △20,000円」は自動販売機の保険料である。

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