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東京高等裁判所 昭和58年(ラ)567号 決定 1984年10月05日

抗告人 甲野一郎

右代理人弁護士 岡田宰

主文

原決定を取り消す。

本件競落はこれを許さない。

理由

本件抗告の趣旨及び理由は、別紙即時抗告申立書記載のとおりである。

本件抗告理由の要旨は、本件根抵当権設定登記は甲野太郎が病臥中に甲野二郎がその妻をして太郎に無断で改印届をなし、ほしいままに右登記手続をしたものであるから、根抵当権は存在せず、右登記は無効であるというにある。

本件記録によれば、本件競売の目的物件である本件宅地はもと亡甲野太郎の所有であったが、昭和五六年一二月四日相続により抗告人の所有となったこと、本件宅地に対し昭和五三年四月一七日付で根抵当権者を太陽信用株式会社、債務者を甲野二郎(太郎の次男で、抗告人の弟)、所有者兼根抵当設定者を太郎として本件根抵当設定登記がされたこと、昭和五三年一月ころ太郎が脳硬塞等を患っていたことが認められるけれども、同人の意思に基づかないで右登記手続がされたことについては、これに沿うかのような《証拠省略》中の記載はたやすく措信できず、他にこれを認めるに足る資料は存在しない。よって、所論は理由がない。

しかしながら、本件記録によれば、抗告人は、競落許可決定言渡し後横浜地方裁判所小田原支部に対し本件競売手続停止の仮処分を申請し、昭和五八年一二月五日右仮処分決定をえて、その決定正本を昭和五九年二月三日当裁判所に提出したことが認められる。ところで、本件不動産任意競売事件は、民事執行法の施行前の申立てにかかるものであり、同法附則第四条第一項の規定により従前の例によるものであるところ、右の決定正本は同法附則第三条の規定による改正前の民事訴訟法(以下「旧民事訴訟法」という。)第五五〇条第二号所定の裁判の正本に準ずるものといわなければならない。しかして、競落許可決定の言渡し後に競売手続停止の仮処分決定正本が提出されたときは、抗告裁判所は、民事執行法附則第二条の規定による廃止前の競売法第三二条第二項、旧民事訴訟法第六八二条第三項、第六七四条第二項、第六七二条第一号、第五五〇条第二号により競落許可決定を取り消し、かつ、競落不許の宣言をなすべきものと解するのが相当である。けだし、この場合競落不許の裁判をしないこととすれば、最高価競買人の責務を永く不定の状態におくべきでないとする同法第六七四条の趣旨に反することとなるからである。

よって、本件抗告は理由があるので、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小堀勇 裁判官 吉野衛 時岡泰)

<以下省略>

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