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東京高等裁判所 昭和57年(行コ)2735号 判決 1987年4月28日

東京都渋谷区宇田川町一番三号

控訴人

渋谷税務署長

人見國夫

右訴訟代理人弁護士

鵜沢

右指定代理人

中本尚

山寺信男

石黒邦夫

東京都渋谷区千駄ヶ谷四丁目二〇番八号

被控訴人

株式会社 東荘

右代表者代表取締役

淤見マサエ

右訴訟代理人弁護士

高梨克彦

山本朝光

右当事者間の法人税再更正処分等取消請求控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する(昭和六一年五月二七日口頭弁論終結)。

主文

原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。

被控訴人の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は主文同旨の判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の主張は、原判決事実摘示を次のとおり訂正のうえ引用するほか、後記(控訴人の当審における主張)以下の各項に摘示するとおりであり、証拠は、記録中の原審及び当審における証拠関係目録記載のとおりである。

(原判決事実摘示の訂正)

一  四枚目裏三行目の「大和田五九」の次に「(現・道玄坂一-一五)」を加える。

二  五枚目裏六行目から七行目にかけての「前記確定申告及び修正申告に係る所得金額を超える部分」を、「昭和三八事業年度については所得金額九一万五二二六円を超える部分、昭和三九、同四〇事業年度については修正申告に係る所得金額を超える部分及び昭和四一、同四二事業年度については確定申告に係る所得金額を超える部分」に改める。

三  一一枚目裏一行目から二九枚目表七行目まで、三〇枚目表八行目から三一枚目裏一行目まで、三五枚目表一行目から四五枚目表五行目まで、四六枚目裏二行目から五一枚目裏六行目までをいずれも削る。

(被控訴人の当審における主張)

一  被控訴人の所得金額の内訳等

本件各事業年度における被控訴人の所得金額は、別表一1ないし5記載のとおり、各事業年度における確定申告所得金額又は修正申告所得金額に被控訴人が利用客から受け取つた客室利用料金(以下「収入金」という。)の計上漏れと認められる金額(以下「収入金計上漏れ額」という。)及び減価償却超過額等を加算した合計額から未納事業税額を減算した金額である。

二  収入金計上漏れ額の推計

1  (推計方法の概要とその合理性)

昭和三八事業年度については、収入金の一部が除外され、これが本件簿外普通預金(八千代信用金庫本店における「岩田とき」及び「石川まさえ」名義の普通預金各一口並びに「淤見広」名義の普通預金二口)に入金されていること及び本件簿外普通預金が当事業年度を通じて設定されていたこと等の理由により、本件簿外普通預金への入金合計額から収入金でないことが明らかな入金額及び収入金でない可能性のある入金額を控除して収入金計上漏れ額を推計した(以下この方法を「簿外預金方式」ということがある。)。昭和三九ないし同四二事業年度については、本件簿外普通預金が昭和三九年五月二二日に解約されているので、本件簿外普通預金入金額からの算出が不可能であること及び渋谷税務署管内における比準同業種法人の収入金伸び率が同署管内における同伴旅館業の景況の実態を示していると認められること等の理由により、被控訴人の昭和三八事業年度の収入金額(申告による収入金額に収入金計上漏れ額を加算した金額)に比準同業種法人五社の対応各事業年度の収入金額の平均増加率を乗じて収入金計上漏れ額を算定した。なお、被控訴人は、従前本館(九室)のみであつたところ、昭和三九年一月に別館(八室)を開業しているので、昭和三九事業年度以降においては、本件各事業年度に収入金の計上漏れがある被控訴人の事情からみて、本館のほか別館においても収入金計上漏れがあるものと推認されるが、右推計はそれを考慮していないので、推計値は被控訴人に有利で控え目なものとなつている。

本件簿外普通預金への入金中には、被控訴人が収入を除外してなしたものが含まれていることは明らかである。これに対し、被控訴人は、代表者個人など被控訴人以外の者に帰属すべき収入(以下「個人収入」という。)が本件簿外普通預金中に混在している旨主張するだけで、それがどの程度混在しているのかについて、何ら具体的な主張、立証をしていない。したがつて、収入金の計上漏れ額について、本件簿外普通預金合計額から少しでも収入金でない可能性のある入金額をすべて控除した金額を基礎とする控訴人の推計方法は、合理的かつ正当なものというべきである。

2  (昭和三八事業年度の収入金計上漏れ額)

(1) 昭和三八事業年度における収入金計上漏れ額は、本件簿外普通預金が当事業年度を通じて、設定されていたので、本件簿外普通預金の入金合計額から、<1>小切手による入金、<2>入金経路が明確である借入金、振替、定期預金及び利息の入金、<3>一回の入金額の特に多額な入金、<4>入金間隔の特に接近している入金、<5>少額であるなどの理由により収入金でない可能性のある入金、のそれぞれを除いた金額とする。これにより、控訴人の算定する収入金計上漏れ額は、少しでも収入金でない可能性のある入金をすべて除くことになる結果、確実なものということができる。

(2) 右<3>の「一回の入金額の特に多額なもの」としては、五万二、〇〇〇を超えるものに限定した。その理由は、次に述べるとおりである。

まず、慎重を期して、被控訴人の本館の休憩収入金だけを考慮の対象とする。すなわち、本館の宿泊収入を除くが、これは収入金計上漏れによる入金分でない可能性のあるものを確実に排除するためである(なお、昭和三八事業年度には別館営業はしていなかつた。)。次に、客室一室一日当りの休憩客利用回数(以下「回転数」という。)を取り上げる。ただし、この回転数を推認するための資料としては、昭和四一、同四二事業年度の料理飲食等消費税収入日計表(被控訴人が作成し、所轄都税事務所に提出したもの、以下「日計表」という。)を用い、かつ、利用料金最下位のCクラスの部屋の回転数を基礎とする。その理由は、第一に昭和三八事業年度分の資料がないからであり、第二に被控訴人の収入金計上漏れに合わせて日計表の休憩客利用組数にも記入漏れがあるものと推認されるところ、Cクラスの部屋は、利用料金が低く(一、二〇〇円)かつ料金飲食等消費税(以下「料飲税」という。)が非課税であるため、被控訴人の日計表への休憩客利用組数記入が比較的真実に近いものと推認されるのに対し、A及びBクラスの部屋は、利用料金が高く(各一、四〇〇円)かつ昭和四一事業年度のBクラスを除き料飲税が課税される等のため、日計表への記入漏れが考えられるからである。

そこで、昭和四一、同四二事業年度における本館の日計表により両事業年度における被控訴人のCクラス二部屋の回転数を算定すると、以下に詳述するとおり、昭和四一事業年度では二・二五回、同四二事業年度では一・七六回となる。まず、昭和四二事業年度における本館客室九室のうちCクラス二室(利用客一組当り休憩料金一、二〇〇円)の利用客組数及びその営業日数は、日計表に照らして算定することができる。すなわち、右日計表の「非課税」の飲食及び利用料金(一人五〇〇円以下)」欄(以下「飲食及び利用料金欄」という。)に記載された組数は、利用客一組当り休憩料金一、二〇〇円(右「飲食及び利用料金欄」の免税点は、地方税法の一部を改正する法律(昭和四一年法律第四〇号により、昭和四一年八月一日以降「一人六〇〇円以下」である。)の客室に係るものであるから、別表二の「昭和四二年度休憩利用料金欄」の記載によつて明らかなとおり、本館客室九室のうちCクラス二室の利用客組数を意味する。そこで、本館客室九室のうちCクラス二室の昭和四二事業年度における利用客組数及び営業日数を右「飲食及び利用料金欄」の組数に基づいて算定すると、別表三のとおり、利用客組数一、二三四組、営業日数三五〇日となる。なお、右利用客組数及び営業日数は、各日の「飲食及び利用料金欄」の収入額が本館客室Cクラス二室の利用客一組当りの休憩料金の額一、二〇〇円の倍数であつて、明らかにその金額が休憩料金と認められた日の利用客組数及び営業日数のみによつて算定し、収入額がその休憩料金の倍数でないときは、その収入額には飲食料金及び延長料金等が含まれていると認められ、休憩料金の額の確定が困難なので、その日の利用客組数及び営業日数はこれを除外した。したがつて、右に算定した利用客組数及び営業日数は控え目であつて、被控訴人に有利な算定である。そこで、右に算定した昭和四二事業年度における本館客室九室のうちCクラス二室の利用客組数及び営業日数に基づいて、右Cクラス二室の一日一室当りの回転数を、次のとおり利用客組数を営業日数で除し、更に室数で除して算出すると、一・七六回(少数点三位以下四捨五入)となる。

Cクラスの客室2室(利用客1組当たりの休憩料金1200円)の利用客組数÷利用客組数を算定するに当たつての営業日数×Cクラスの客室数=Cクラスの客室2室の回転数

1234組÷(350日×2室)=1.76回

次に、昭和四一事業年度における本館客室九室のうちCクラス二室(利用客一組当り休憩料金八〇〇円)の利用客組数及びその営業日数については、昭和四二事業年度の場合と同様、被控訴人の同四一事業年度における本館の各月分の日計表に照らしてこれを算定することができる。ただし、昭和四一事業年度の右収入日計表は本館九室のうちBクラスの四室及びCクラスの二室の利用客組数及び収入額を合計したものであるから、このうちCクラスの二室分を抽出するため別の異なる算定による必要がある。すなわち、同日計表の「非課税」の「飲食及び利用料金欄」の組数及び収入額は、利用客一組当り休憩料金一、〇〇〇円以下の客室に係るものであるから、右「飲食及び利用料金欄」の組数及び収入額は、別表二の「昭和四一事業年度休憩利用料金欄」の記載によつて明らかなように、本館客室九室のうちBクラスの四室(利用客一組当り休憩料金一、〇〇〇円)及びCクラスの二室(利用客一組当り休憩料金八〇〇円)の利用客組数及び収入額をそれぞれ合計したものである。そこでまず、各営業日の右「飲食及び利用料金欄」の組数をA'、収入額をZとし、Bクラスの客室四室の利用客組数をX、Cクラスの客室二室の利用客組数をYとすれば、「飲食及び利用料金欄」の利用客組数A'は、XとYとを合計した組数であるから、A'=X+Yとなる。また同様に、「飲食及び利用料金欄」の収入額Zは、Xにその利用料金一〇〇〇円を乗じて算定した金額とYにその利用料金八〇〇円を乗じて算定した金額との合計であるから、Z=1000X+800Yとなる。そして、「飲食及び利用料金欄」の利用客組数及び収入額を右二つの算式のA及びZにそれぞれ算入すればXが算出される。すなわち、A'=X+YからY=A'-Xを得て、このYをZ=1000X+800Yに代入するとX=(Z-800A')÷200となり、「飲食及び利用料金欄」の利用客組数及び収入額をこの式のA'及びZにそれぞれ代入してXを算出する。なお、右X=(Z-800A')÷200の算式からBクラスの客室四室の利用客組数であるXを算出するに当つては、右のとおり、「飲食及び利用料金欄」の収入額Zから客室Cクラスの利用料金八〇〇円に「飲食及び利用料金欄」の組数A'を乗じた金額を控除し、その控除後の金額を二〇〇円で除して算定されるのであるが、その際には右控除後の金額を二〇〇円で除した金額に六〇円、一〇〇円及び一六〇円の端数が生ずる場合がある。この点について検討すると、同伴旅館業においては、ビール、オレンジジュース及びサイダー等の飲物について、それらの小売価格よりも三〇パーセント程高い価格で客に提供しているのが常態であるところ、小売物価統計調査年報(総理府統計局、昭和四〇年及び同四一年)によれば、ビール一本(淡色、びん詰、六三三c.c.入)の小売価格は一二〇円、オレンジジュース一本(びん詰、二〇〇c.c.入)の小売価格は四五円、サイダー一本(人工甘味、びん詰、三四〇c.c.入)の小売価格は三五円であるから、その一本当りの小売価格に一三〇パーセントを乗じて算定し、一〇円未満の端数を切り上げると、その金額はビール一本一六〇円、オレンジジュース一本六十円、サイダー一本五〇円となる。次に、右算式により算定されたBクラスの客室四室の利用客組数を「飲食及び利用料金欄」の組数A'から控除して、昭和四一事業年度における本館客室のうちCクラス二室の利用客組数及び営業日数を算定すると、別表三のとおり、利用客組数一、五八六組、営業日数三五三日となる。なお、右利用客組数及び営業日数の算定に当つては、各日の「飲食及び利用料金欄」の収入額を組数で除した一組当りの平均収入額が一、〇〇〇円を超えるものは、その収入額に飲食料金及び延長料金等が含まれていると認められ、休憩料金の額が確定できないので、その日の利用客組数及び営業日数はこれをそれぞれ除外して算定した。したがつて、右に算定した昭和四一事業年度の本館Cクラスの客室二室の利用客組数及び営業日数が控え目のものであることは、前記昭和四二事業年度の場合と同様である。そこで、右に算定した昭和四一事業年度における本館客室九室のうちCクラス二室の利用客組数及び営業日数に基づいて、右Cクラス二室の一日一室当りの回転数を、次のとおり利用客組数を営業日数で除し、更に室数で除して算出すると、二・二五回(少数点三位未満四捨五入)となる。

Cクラスの客室2室(利用客1組当たりの休憩料金800円)の利用客組数÷利用客組数を算定するに当たつての営業日数×Cクラスの客室数=Cクラスの客室2室の回転数

1586組÷(353日×2室)=2.25回

ところで、AないしCクラス全体九室を通じた回転数は、日計表によれば、昭和四一事業年度では一・一二回、同四二事業年度では〇・五九回にしかなつていない。すなわち、日計表の「非課税」欄の「飲食及び利用料金(一人五〇〇円又は六〇〇円)」欄並びに「飲食及び利用料金」欄の「(2)10%課税(一人三、〇〇〇円まで)」欄における利用客組数及びその営業日数により、別表四のとおり、被控訴人が計上した本館九室の利用客組数及び営業日数(いずれも休憩分)を把握することができるが、この数字に基づき回転数を求めると、次のとおりとなる。

(昭和42事業年度)

昭和42事業年度の利用客組数÷(営業日数×客室数)=本館9室(休憩分)回転数

1941組÷(363日×9室)=0.59回

(昭和41事業年度)

昭和41事業年度の利用客組数÷(営業日数×客室数)=本館9室(休憩分)回転数

3686組÷(365日×9室)=1.12回

しかしながら、元来、上位クラスの部屋ほど回転数は多いはずであつて、右には上位クラスの記入漏れがあると考えられる。同伴旅館の利用客は、部屋については旅館側の案内に任せるのが通常であるため、旅館側としては経営効率の点から利用料金の高い部屋から優先して案内するのが通常だからである。このように、A及びBクラスの部屋の回転数は、Cクラスの部屋の回転数以上と考えられるが、慎重を期して、Cクラスの部屋と同様の回転数があるものとして推計する。そうすると、日計表に記入漏れとなつている一室当りの回転数は、昭和四一、同四二事業年度についてAないしCクラスの部屋九室全体を通じてみれば、次表の差引記入漏れ回数欄のとおりとなる。

<省略>

そこで、被控訴人には、昭和三八事業年度においても、少なくとも右両年度の記入漏れ回転数の平均一・一五回に相当する休憩利用客からの収入金の計上漏れがあつたものと推認しても不合理とはいえない。

次に、本件簿外普通預金への収入金計上漏れ分の入金間隔は、平均四日(小数点一位未満の端数切捨て)とする(別表五参照)。そうすると、本件簿外普通預金への入金中、収入金計上漏れによる一回の入金額の最高限度は、次に掲げる方法により算出した五万二、〇〇〇円(一、〇〇〇円未満端数切捨て)とするのが合理的である。

<1>  本館九室を平均した一室当りの計上漏れ回転数 一・一五回

<2>  本館九室を一回利用した場合の休憩料金合計額(別表二参照) 一万一、四〇〇円

<3>  本館九室の一日当り収入金計上漏れ額合計(<1>×<2>) 一万三、一一〇円

<4>  本件簿外普通預金の入金日の平均間隔 四日

<5>  一回の入金額の最高限度額(<3>×<4>) 五万二、四四〇円

なお、右日計表に記入漏れとなつている回転数につき、記入漏れの少ないと予想されるCクラスを除き、上位のA及びBクラスのの部屋を通じて(A及びBクラス各室ごとの回転数については、昭和四二事業年度は料金が同一であるため計算できない。)計算しても、一回の入金額の最高限度額は次のとおり五万二、〇〇〇円となり、前記方法の場合と同一である。すなわち、まず、昭和四一、同四二事業年度のA及びBクラスを通じた日計表への記入漏れ回転数は次表のとおりである。

<省略>

右表から明らかなとおり、被控訴人は、上位クラスA及びBの客室一室について一日当たり昭和四一事業年度で一・四三回、同四二事業年度で一・五一回の回転数記入漏れがあるというべきであるから、昭和三八事業年度においても、上位クラスのA室について少なくとも右両年度の記入漏れ回転数の平均一・四七回に相当する休憩利用客からの収入金の計上漏れがあつたものと推認される(昭和三八事業年度においては客室はA及びBの二クラスだけなので、慎重を期し、下位のBクラスに記入漏れがないとしたわけである)。そうすると、本件簿外普通預金への入金額中、収入金計上漏れによる一回の入金額の最高限度額は、次に掲げるとおり、五万二、〇〇〇円(一、〇〇〇円未満端数切捨て)となる。

<ア>  本館上位クラスA室の計上漏れ回転数 一・四七回

<イ>  本館上位クラスA室を一回利用した場合の休憩料金合計額 九、〇〇〇円

<ウ>  本館上位クラスA室の一日当り収入金計上漏れ合計額(<ア>×<イ>) 一万三、二三〇円

<エ>  本件簿外普通預金の入金日の平均間隔 四日

<オ>  一回の入金額の最高限度額(<ウ>×<エ>) 五万二、九二〇円

(3) また、前記(1)で述べた基準に照らし、昭和三八事業年度における本件簿外普通預金への入金中、次表の金額は、同表に記載する理由により収入金でない可能性のある入金と認められるから、被控訴人の収入金計上漏れ額としないこととした(別表七の2(2)及び3(2)の項をそれぞれ参照)。

<省略>

(4) 被控訴人は、昭和三八事業年度における本件簿外普通預金への入金合計額二、四五三万六、〇〇一円から前記(1)ないし(3)に基づく入金分を控除した金額四四三万九、〇〇〇円をもつて当該事業年度における被控訴人の収入金計上漏れ額と推計するものである。その算出経過は別表七に示すとおりであり、その算出内訳は別表八に示すとおりである。すなわち、その内訳は、同表のとおり、本件簿外普通預金の入金総額二、四五三万六、〇〇一円(同表<1>の合計欄参照)のうち被控訴人の営業収入であることが必ずしも明確でない入金額及び被控訴人の収入計上漏れと認められる金額は、それぞれ二、〇〇九万七、〇〇一円(同表<19>の合計欄参照)及び四四三万九、〇〇〇円(同表<20>の合計欄参照)となる。更に、被控訴人の営業収入であることが必ずしも明確でない入金額二、〇〇九万七、〇〇一円の内訳を示すと、前記(1)の<1>小切手による入金並びに同<2>入金経路が明確である借入金、振替、定期預金及び利息の入金等の金額は一、四六三万七、九一八円(同表<13>の合計欄参照)であり、同じく<3>一回の入金額の特に多額のもの及び<4>入金間隔の接近しているもの等の金額は、五四五万九、〇八三円(同表<18>の合計欄参照)となる。

右の経過から明らかなとおり、控訴人が本訴において主張する被控訴人の収入金額は確実で、むしろ極めて控え目に算定したものである。

3 (昭和三九ないし同四二事業年度の収入金計上漏れ額)

(1) 昭和三九ないし同四二事業年度における被控訴人の収入金額は、被控訴人の昭和三八事業年度の収入金額に比準同業種法人五社の対応各事業年度の収入金額の平均増加率を乗じた金額に基づいて算定したものであるが、比準同業種法人の選定経過及び被控訴人との類似性については次のとおりであり、控訴人の選定した比準同業種法人は相当で合理性のあるものである。

比準同業種法人五社は、東京国税不服審判所所部係官飯干榮間が昭和四七年一二月一五日渋谷税務署において被控訴人と同業を営む法人の関係資料等を調査し、同税務署管内で同伴旅館を営む法人の関係資料等を調査し、同税務署管内で同伴旅館を営む青色申告法人のうち、被控訴人とその規模(室数及び料金)が概ね類似するものとして抽出した五社であり、これを控訴人において採用したものである。そして、飯干係官による右抽出は、推計計算の合理性をはかる国税当局の慣行に従い、<1>更正等の処分を受け係争中のもの、<2>他の事業を兼業し収入金額の区分が明確でないもの、及び<3>災害等により経営状態が異常なもの等を除いた法人のうちから、渋谷署管内で同伴旅館を営むこと、青色申告法人であること、及び被控訴人と規模が概ね類似すること等の基準により抽出されたものである。右抽出に係る五社は、次に述べるとおり、本件各事業年度の異議申立当時の渋谷税務署における異議審理担当官畠中幸吉が作成した同業種法人一覧表に登載された一五社中の五社である。すなわち、比準同業種法人と同業種法人一覧表との関連をみると、同業種法人一覧表は本件各事業年度の異議申立てに対する審理のために畠中係官が昭和四四年一〇月に作成したもので、渋谷税務署管内で昭和三八年から同四三年までの間に同伴旅館を経営し、被控訴人と規模が類似している法人を抽出した結果一五社(右期間の中途で設立された法人を含む。)が選定され、これら一五社の申告書及び調査資料等からその法人名、所在地、屋号、決算期、部屋数、女中数及び売上金額を右一覧表に記載したものであり、右期間の六年間を通して同伴旅館を経営していること、青色申告法人であること等前述の選定基準に照らして抽出されたものである。

右により選定された比準同業種法人五社(AないしE法人)の部屋別利用料金及び設備は、別表二のとおりであつて、被控訴人と右五社は正に類似性がある。すなわち、部屋別利用料金は、同伴旅館各自の立地条件及び設備の良否が化体されていると認められるところ、被控訴人及び右五社の部屋別利用料金のうち最高及び最低のものを事業年度別に示すと次のとおりであり、被控訴人の部屋別利用料金は概ね右五社の最高額及び最低額の間にあつて、両者の部屋別利用料金が類似していることが認められる(もつとも、次表の比準同業種法人の部屋別利用料金中には、同料金が不明のE法人分を含めていないが、同法人は木造二階建で駐車場設備、冷蔵庫設備のいずれもなく、部屋の面積からみても他の比準同業種法人に比して特異な点はなく、その部屋別料金も類似するものと推認される。)しかも、比準同業種法人の部屋数は、本件各事業年度を通じて最多が一八、最少が一一で被控訴人の部屋数の半数以上二倍以内となつており、いわゆる倍半分方式の範囲内にあつて、両者の規模は正に類似しているということができる。

<省略>

(2) 昭和三九ないし同四二事業年度における被控訴人の収入金計上漏れ額については、被控訴人の昭和三八事業年度における収入金額一、〇一〇万四、〇一七円(申告収入金額五六六万五、〇一七円に収入金計上漏れ額四四三万九、〇〇〇円を加算した金額)を本館客室数九で除した一室当り収入金額一一二万二、六六八円に比準同業種法人の昭和三八対応事業年度における客室一室当り平均収入金額に対する右対応各事業年度の平均増加率(比準同業種法人五社それぞれの客室一室当り平均収入金額の昭和三八対応事業年度に対する各増加率の単純平均)を乗じた金額を基礎に算出した。その算出経過をまとめて示すと別表一〇のとおりであり、次項以下で各年度毎に説明する。なお、右、比準同業種法人の客室一室当り収入金額の平均増加率の算出内訳は別表一一のとおりである。これは、前記飯干係官が渋谷税務署において同業種法人の関係資料等を調査した結果、及び、前記同業種法人一覧表(畠中係官作成)に基づき控訴人が作成したものであるが、右資料はいずれも公的機関の資料に基づき専門的知識を有する公務員の作成に係るものであつて、これに基づいて作成された同表の客観性及び正確性は疑う余地のないものである。

(3) (昭和三九事業年度の収入金計上漏れ額)

比準同業種法人五社の当該事業年度の昭和三八事業度に対する収入金額の平均金額の増加率は、別表一一のとおり一〇三・九三パーセントであり、被控訴人の同三八事業年度における本館一室当りの平均収入金額は一一二万二、六六八円であるから、この収入金額に右一〇三・九三パーセントを乗じて算定した一一六万六、七八九円が被控訴人の当該事業年度における本館一室当りの平均収入金額と認められる。そこで、本館客室数九をこれに乗じて本館の総収入金額を求めると一、〇五〇万一、一〇一円となり、これから被控訴人の申告に係る本館の収入金額六九二万三、九四〇円(被控訴人自らが修正申告により収入除外であるとした四〇万円相当額を含む。)を控除すると、当該事業年度の収入金計上漏れ額は三五七万七、一六一円となる。なお、本件簿外普通預金の昭和三八年一二月一日から同三九年五月二二日までの期間に係る入金額について前記2(1)の基準に基づいて算出した収入金計上漏れ額二二七万九、〇〇〇円(別表六の五枚目合計欄参照)を基礎として、当該事業年度の収入金計上漏れ額を次の算式により算定したところ、四七九万三、七五八円となり、これは右比準同業種法人の収入金額の平均増加率により算出した収入金計上漏れ額三五七万七、一六一円を上回つているのである。

(算式)

<省略>

(4) (昭和四〇事業年度の収入金計上漏れ額)

比準同業種法人五社の当該事業年度の昭和三八事業年度に対する収入金額の平均増加率は、別表一一のとおり一〇八・八八パーセントであり、被控訴人の同三八事業年度における本館一室当り平均収入金額一一二万二、六六八円に右一〇八・八八パーセントを乗じて算定した一二二万二、三六一円が被控訴人の当該事業年度における本館一室当りの平均収入金額と認められる。そこで、本館客室数九をこれに乗じて本館の総収入金額を求めると一、一〇〇万一、二四九円となり、これから被控訴人の申告に係る本館の収入金額八三六万八、九六四円(被控訴人自らが修正申告により収入除外であるとした四〇万円相当を含む。)を控除すると、当該事業年度の収入金計上漏れ額は二六三万二、二八五円となる。

(5) (昭和四一事業年度の収入金計上漏れ額)

比準同業種法人五社の当該事業年度の昭和三八事業年度に対する収入金額の平均増加率は、別表一一のとおり一二〇・七三パーセントであり、被控訴人の同三八事業年度における本館一室当り平均収入金額一一二万二、六六八円に右一二〇・七三パーセントを乗じて算定した一三五万五、三九七円が被控訴人の当該事業年度における本館一室当りの平均収入金額と認められる。そこで、本館客室数九をこれに乗じて本館の総収入金額を求めると一、二一九万八、五七三円となり、これから被控訴人の申告に係る本館の収入金額七六九万一、五八六円を控除すると、当該事業年度の収入金計上漏れ額は四五〇万六、九八七円となる。

(6) (昭和四二事業年度の収入金計上漏れ額)

比準同業種法人五社の当該事業年度の昭和三八事業年度に対する収入金額の平均増加率は、別表一一のとおり一二七・八九パーセントであり、被控訴人の同三八事業年度における本館一室当り平均収入金額一一二万二、六六八円に右一二七・八九パーセントを乗じて算定した金額一四三万五、七八〇円が被控訴人の当該事業年度における本館一室当りの平均収入金額と認められる。そこで、本館客室数九をこれに乗じて本館の総収入金額を求めると一、二九二万二、〇二〇円となり、これから被控訴人の申告に係る本館の収入金額八九〇万七、七四五円を控除すると、当該事業年度の収入金計上漏れ額は四〇一万四、二七五円となる。

三 別個の観点からみた推計の合理性

1 (日計表と法人税の申告)

被控訴人の昭和四一事業年度及び同四四二事業年度における法人税の申告収入金額と日計表に記載の収入金額とを対比すると、別表一七に示すとおりとなり、両者はほぼ一致していることが認められる。このことから、被控訴人は、日計表記載の収入金額を基礎として法人税の申告収入金額を計上したものと推認される。そうすると、日計表は、被控訴人の法人申告収入金額の計算基礎ないし計算過程を示す重要な資料としてこれを無視することはできず、検討に値するといわなければならない。

2 (日計表の分析とその結果)

被控訴人の本館及び別館の本件各事業年度別、休憩又は宿泊(以下「利用形態」という。)別、料飲税課税非課税別、利用料金別の客室数は、別表一八のとおりである。これと、別表一九の1及び2に示す日計表記載の本館及び別館別(以下「店舗別」という。)、利用形態別、料飲税課税非課税別の利用客組数及び営業日数とによつて、本館及び別館の料飲税課税別非課税別、利用形態別の客室一室一日当りの平均利用回転数(以下「改定回転数」という。)を計算すると、別表二〇の1に示すとおりとなる。

右別表二〇の1により事業年度別、店舗別、料飲税課税非課税別及び利用形態別で改定回転数を整理すると、次表のとおりとなる。

〔改定回転数〕

<省略>

なお、別表二〇の1に示した改定回転数のうち、昭和四一事業年度分の別館の宿泊分については、次表のとおり、昭和四一年八月一日以降料飲税の免税点が引き上げられたことにより、料飲税課税非課税別客室数に増減があつたので、別表二〇の2のとおり算出したものである。

〔料飲税の免税点の改正状況〕

<省略>

そこでまず、本館について、前記表の改定回転数をみると、<1>休憩に係る改定回転数については、非課税対象客室のほうが課税対象客室より上回つており、<2>宿泊に係る改定回転数については、昭和四一及び同四二事業年度ともに非課税対象客室のみであるが、それぞれ〇・六五回、〇・八三回となつている。

次に、別館についてこれをみると、<1>休憩に係る改定回転数については、昭和四一及び同四二事業年度ともに課税対象客室のみであるが、それぞれ〇・四九回、〇・四四回となつており、両事業年度の休憩に係る改定回転数一・二四回、一・七六回に比し異常に低い数値となつており、<2>宿泊に係る改定回転数については、非課税対象客室のほうが課税対象客室よりも上回つている。

3 (日計表分析結果が示す収入除外の事実)

右に述べた分析結果から明らかなとおり、被控訴人が日計表に記載した利用客室組数を基礎とする改定回転数を店舗別及び利用形態別にみた場合、客室が課税対象客室と非課税対象客室の両室ある場合には、いずれも非課税対象客室の改定回転数が多くなつている。このことは、一般に同伴旅館においては、利用料金の高額な部屋を優先的に使用させて営業効率を高めるようにするという営業方針が採られていることと矛盾する結果を示すものである。被控訴人においても、利用客を各部屋に案内するに当つては、利用料金の高額な上位クラスの部屋から優先的に案内していたものと認めるのが実情に沿い自然であるから、右に述べた日計表の分析結果は被控訴人の営業実態とも矛盾するものであり、このことは、被控訴人が日計表の作成に当つて、料飲税が課税されるべき上位クラスの部屋に係る利用客組数及び利用料金等の額につき、実際の数値よりも過少に記載していることを示すものである。

次に、課税対象客室のみである別館の休憩に係る改定回転数についてみた場合、当該回転数が本館の休憩に係る非課税対象客室のそれより著しく低いということは先に述べたとおりであるが、これは、被控訴人が強調する本館の客室が劣悪であるため利用客組数が少なかつたということと矛盾するものであり、かつ、日計表に記載された客室の利用状況が極めて不自然な結果となつていることを示すものである。すなわち、被控訴人が本館の実績に鑑み更に営業収益を上げるため昭和三九年一月に開店した別館の利用客組数が開店後一年を通じて別館より劣悪であると被控訴人が主張する本館の利用客組数を通じて著しく少なかつたというようなことは到底真実とは認められないところであり、少なくとも本館の非課税対象客室の回転数以上の回転をしていたものと認めるのが相当である。

これらの点から、別館の休憩に係る収入金額についても、収入除外の事実があることが明らかである。

4 (日計表により算定される客室の最低回転数)

被控訴人が課税対象客室に係る収入金額の一部を除外していたので、控訴人は、被控訴人が日計表に記載した数値のうち、本館及び別館の料飲税非課税対象客室に係る数値を用いて算定した改定回転数を基礎として算定される回転数を課税対象客室の最低回転数とした上で、被控訴人の収入金計上漏れ額を推計することとした。この方法による推計の正当なことは、<1>上位クラスの客室である課税対象客室のほうが下位クラスの客室である非課税対象客室よりもその回転数が高いこと、及び<2>次に述べる料飲税の課税構造からみて、日計表の記載事項のうち非課税対象客室に係る部分については、その信頼性がより高いものと認められること等から明らかである。かなわち、法人税法上の税額計算の対象となるのは、一定期間内における益金の額から損金の額を控除した所得、いわば利益であるのに対して、地方税法における料飲税の税額計算は、利益の有無には関係なく、一定期間の個々の利用行為に係る利用料金の中から免税点を超え、課税対象となる利用料金のみを抽出して行われるものであり、したがつて、料飲税の課税の基礎資料となる日計表を作成するに当つて、課税対象となる利用料金等の数値については、これを過少に記載することがあつても、非課税対象に係る数値については、実際の数値ないしそれに近似する数値を記載するというのが、一般の納税者心理に合致するからである。

そこでまず、本館及び別館の休憩、宿泊別の最低回転数を示すと、次表のとおりである。

〔最低回転数〕

<省略>

右の回転数は、別表二〇の1から抽出して整理したものであるが、別館の休憩に係る最低回転数(一・一八回及び一・二七回)については、別館の休憩に係る客室がすべて課税対象客室であることから、次の算式により求めたものである。

<省略>

右算式は、別館の宿泊に係る非課税対象客室の改定回転数に、本館休憩に係る非課税対象客室の改定回転数が同宿泊に係る非課税対象客室の改定回転数に占める割合を乗じて、別館の休憩に係る最低回転数を算出したものである。一般に、同伴旅館においては、<1>宿泊客室の一室一日当りの客室回転数と、<2>休憩客室の一室一日当りの客室回転数とは相関関係を有するものと認められるものであるから、右算式によつて別館の休憩に係る最低回転数を計算することは、合理性があるものと考えられる。けだし、一般に同伴旅館においては、通常の旅館と異なり、宿泊客を受け入れる時間帯(いわゆるチェックイン・タイム)は、午後一〇時半以降などというように遅い時間を定めているものであるところから、宿泊客が多い同伴旅館にあつては当然に右時間帯以前に利用する客も多いと認めるのが営業の実態に沿い、相当であるからである。

5 (最低回転数に基づく収入金計上漏れ額の推計方法)

最低回転数を用いて、被控訴人の本件各事業年度の収入金計上漏れ額を算出するための計算過程を算式によつて示すと、次のとおりである。

<イ> 収入金計上漏れ額=非課税対象客室に係る収入金額+課税対象客室に係る収入金額-申告収入金額

<ロ> 課税(非課税)対象客室に係る収入金額=課税(非課税)対象客室全室に係る年間利用客組数の合計組数×課税(非課税)対象客室1室1組当たり平均利用料金

<ハ> 課税(非課税)対象客室全室に係る年間利用客組数の合計組数=最低回転数×営業日数×課税(非課税)対象客室数

(注)1 非課税対象客室に係る収入金額は、昭和41事業年度分及び昭和42事業年度分にあつては、日計表に記載されている収入金額によつて把握され、その余の事業年度分については、後に述べる最低回転数を用いて推計される。

2 課税対象客室に係る収入金額は、本館・別館別及び利用形態別の各最低回転数を用いて推計される。

なお、本件各事業年度ごとの店舗別、利用形態別、料飲税課税非課税別、利用料金別の客室数及び料飲税課税非課税別の平均利用料金(各室の利用料金を料飲税課税非課税別に合計し、それぞれ料飲税課税非課税別客室数で除した単純平均値である。)については、別表一八にそれぞれ示すとおりである。

本件各事業年度のうち、昭和四一、同四二事業年度については、日計表に基づいて算定された最低回転数を用いて被控訴人の収入金額を算定し、その余の昭和三八ないし同四〇事業年度については、右昭和四一、同四二事業年度における最低回転数の平均値を用いて収入金額を算定した。その計算過程は次に述べるとおりである。

(1) (昭和四一事業年度分について)

当該事業年度における収入金額の合計は、別表二一に示すとおり一、八七五万三、三二八円であるが、このうち非課税対象客室に係る収入金額の合計七〇〇万三、〇七六円は、日計表の非課税対象客室に係る収入金額を別表二三により集計したものであり、課税対象客室に係る収入金額の合計額一、一七五万〇、二五二円は別表二一の<1>ないし<4>欄において計算した金額の合計額である<5>欄の金額である(なお、別表二一の<3>及び<4>欄において、別館の宿泊分について計算しているのは、既述のとおり、料飲税の免税点が昭和四一年八月一日から引き上げられたことによるものである。)。

(2) (昭和四二事業年度分について)

当該事業年度における収入金額の合計は、別表二二に示すとおり二、四六五万六、〇一九円であるが、このうち非課税対象客室に係る収入金額の合計八五三万二、二六〇円は、日計表の非課税対象客室に係る収入金額を別表二三により集計したものであり、課税対象客室に係る収入金額の合計額一、六一二万三、七五九円は、前記(ロ)及びの算式に課税対象客室に係る数値を店舗別、利用形態別に適用して、別表二二の<1>ないし<3>欄において計算した金額の合計額である。

(3) (昭和三八ないし同四〇事業年度分について)

右各事業年度の推計計算に当り、被控訴人の店舗別及び利用形態別の最低回転数を次表のとおり算出した。

〔平均最低回転数〕

<省略>

前記のとおり、昭和三八ないし同四〇事業年度分の店舗別及び利用形態別の最低回転数を昭和四一、同四二事業年度分の平均値とした理由は、<1>既述のとおり、本来、各事業年度分の最低回転数を求めるための基礎資料とすべき日計表が昭和三八ないし同四〇事業年度分については存在しないこと、及び<2>昭和三九事業年度においては、別館が開店されているものの店舗別にみれば被控訴人の利用料金の推移は別表一八のとおりであり、本件各事業年度中には、被控訴人の経営にさしたる業況の変化があつたとは認められないこと等によるものである。よつて、前記の昭和四一、同四二事業年度における最低回転数の平均値を用いて、昭和三八ないし昭和四〇事業年度の各収入金額を別表二四ないし二六のとおり計算したものである。なお、別表二四ないし二六における営業日数を算出する際に、各事業年度の日数より控除すべき休館日については、昭和四一、同四二事業年度の休館日の実績を日計表により求め、そのうち休館日の最も多い昭和四二事業年度における別館の一事業年度当り五日を採用して計算したが、昭和三九事業年度の別館の営業日数については、開店が昭和三九年一月であつたことから、昭和三九年二月一日から同年一一月三〇日までの日数から五日を控除して二九九日と算定した。

6 (最低回転数による推計収入金計上漏れ額)

前記最低回転数に基づく収入金額から申告収入金額を控除して本件各事業年度における収入金計上漏れ額を算出すると、次表のとおりである。

〔収入金計上漏れ額の計算〕

<省略>

7 (最低回転数による推計収入金計上漏れ額による所得金額)

前記収入金計上漏れ額により本件各事業年度の所得金額を求め、さらに控訴人の従前の主張と対比し、その差額を計算すると別表二七のとおりであつて、いずれも右収入金計上漏れ額に基づく所得金額が従前主張額を上回るものである。

四 控訴人主張の推計計算の合理性

以上述べたところによつて、被控訴人の本件各事業年度における収入金計上漏れ額を日計表に基づいて算定される最低回転数によつて推計した結果は、いずれも本訴における控訴人の従前の主張に係る推計収入金計上漏れ額を上回るのであるから、控訴人の従前の推計計算は合理的であり、かつ、妥当性を有するものとして十分に是認できるものであつて、本件各更正及び本件各決定はもとより適法というべきである。

控訴人の従前の主張は、本件簿外普通預金への収入除外金の入金状況や比準同業種法人の収入金額の平均増加率などを基礎としているものであるが、この従前の主張に係る推計結果の相当性を検証する手段として、収入金額について被控訴人が記載したもののうち、信頼し得る唯一の資料である日計表の非課税対象客室分に係る数値を基礎とする最低回転数による推計計算の方法にも十分合理性がある。

(控訴人の主張に対する被控訴人の認否と反論)

一  主張一のうち、各事業年度における申告所得金額、別表一の1の未納事業税認定損額、同3の広告宣伝費中否認額、原価償却超過額、同4及び5の各原価償却超過額がそれぞれ主張のとおりの金額であることは認めるが、その余の加算減算額及び所得金額は争う。

二  主張二1は争う。簿外預金方式が採用された判例五件(昭和四六年一二月二〇日東京地裁判決、昭和四九年四月三〇日大阪地裁判決、昭和四九年九月一一日名古屋地裁判決、昭和五〇年一〇月二日津地裁判決、昭和五一年七月一四日名古屋地裁判決)についてみると、いずれも簿外預金(A)に占める非売上推定部分(C)の割合が極めて少なく、売上部分(B)の割合が極めて高い。すなわち、B-Aを算出してみるといずれもその数値は〇・八三から〇・九一の間にある。ところが、本件の昭和三八事業年度の簿外預金総額(A)と控訴人主張の売上(収入)額(B)とを別表七から算出してみると、次のとおりとなる。そうすると、右判例の数値と著しく離れる結果となり、本件では右推計方法は、その前提を欠くことになり合理性がない。

<省略>

同2は争う。一回入金最高五万二、〇〇〇円超除外の根拠がなく合理性がない。まず、利用客組数の大小と一日一室当り回転数の多寡とは比例しない。控訴人は、本館九室のうちA又はBクラスの一日一室当りの利用客組数は、Cクラスの一日一室当りの組数を上回るという前提で推計しているが、この前提自体誤りである。控訴人は、その根拠として利用客が等級別に定められている旅館を利用するときの心理を挙げているが、これが立証されていないし、仮にそうだとしても、右のことから上位室の利用組数が下位室の利用組数より大きいということは導けるとしても、さらに進んで各一室当りの回転数も同様前者のほうが大きいということにはならない。なぜなら、上位室と下位室の絶対的室数いかんによつて、右回転数は大きいことも小さいこともある。例えば、A室の一日組数五組、B室の一日組数三組と仮定すると、昭和三八事業年度のA室は六室、B室は三室であるから、A室の一日一室当り回転数は〇・八三、B室のそれは一・〇となり、利用組数とは反対に回転数はB室のほうが大きくなる。控訴人の主張は、利用組数の絶対値の大小を一日当り回転数の多寡にすりかえる誤謬を犯している。

また昭和四一事業年度の休憩B及びC室利用客組数を算出する方程式も不合理である。方程式Z=1000X+800YあるいはX=(Z-800A)÷200は、飲食が全くなく、単にお茶、水だけが飲食である素休憩と仮定して始めて成立するが、実際には多少飲食が伴つているのであるから、右式を適用することはできない。控訴人自身、休憩C室の利用組数を算出するに当つて、「整数倍で割り切れない余剰が生ずる該当日」を除外しているのであるから、B及びC室が混在するという複雑性に照らすと、C室だけの場合よりも尚一層右の部分を除外して、推計の合理性、正確性を期すべきである。仮に百歩譲つて右余剰日を含ませるとしても、この余剰日は飲食料金の整数倍でなければならないところ、まず、提供されたであろう食事代が不明であるから、整数倍なるや否やが不明である。次に、飲食だけが提供されたと仮定しても、控訴人主張の一六〇円、六〇円、五〇円(これが被控訴人の実際の料金であるかどうか不明であるが、仮に当時その料金額であつたとしても)の整数倍の該当日だけを採取し、整数倍でない日は除外するという操作をしなければならない。今、この意味で、除外すべき該当日を別表三の付表1から拾い上げてみると、次のとおりとなる。

<省略>

加えて、右付表の収入額を分解しても、収入額=1000円×その組数+800円×その組数という組数が成立しない欄、すなわち、一〇〇〇円組数、八〇〇円組数の如き数値が算術上導かれない該当日が余りにも多すぎる。そこで、別表二八のとおり、右付表の該当日に?印を付してこれを示すことにしたが、これらは収入額を組数で割つた一組当りの平均収入額がCクラス一室休憩料金八〇〇円を下回るものである。これからみると、被控訴人は、実際には定価よりも低い料金で経営しなければ客を誘えなかつたほど収入のあがらない不良旅館であつたことが窺える。したがつて、控訴人が一組当り平均収入額一〇〇〇円超を除外した如く、一組当り平均収入額八〇〇円未満を除外すべきである。なぜなら、割引の有無、程度、額が確定できないからである。少なくとも、昭和四一事業年度のCクラスについては、八〇〇円以下の料金で営業されてきたことが窺える以上、定価通りで営業されたことを前提として収入額からB、C各クラス組数を配分算出した控訴人主張の推計方法は、到底合理性がないというべきであろう。

控訴人算出のB室利用客組数は、その主張に反してC室利用客組数よりも却つて少なくなるという不合理な結果を生ずる。控訴人は、右の不合理を犯しながら、C室の昭和四一事業年度利用客組数を別表三の付表1に基づいて別表三の如く一、五八六組と主張する。そこで、右資料を用いてB室(一、〇〇〇円)の右利用客組数を求めてみると、次表のように一、〇六〇組となる(なお、別表二八のとおり、右付表の「一、〇〇〇組の組数」の最下欄の「合計」欄にそれぞれ右組数値を記入した。)つまり、上位Bクラスは、年間利用客組数において、下位Cクラスの約三分の二程度しか利用されていないことになつて、利用客は上位クラスのほうが多いという控訴人の主張とは正反対の現象を呈するのである。

<省略>

前表によつて示される控訴人算出の昭和四一事業年度のB、C各室の利用客組数配分数は、著しくバランスを欠いている。第一に、被控訴人は昭和四〇事業年度に従前B室が一室C室が二室であつたのをA室を振り替えてB室を四室としたが、これは営業上このように改室するほうが得策であつたからであろう。つまり、B室を多くしても利用客組数からみて客をさばけると考えたものであつて、このことは、昭和四一事業年度に至るやC室は二室にとどめ、残り七室はすべて上位の一、四〇〇円級に改室したのをみても窺える。そうであれば、右年度の利用客組数について、B室利用はC室利用の約二倍と見込んだものであろうか(実際の結果が思惑通りだつたかどうかは別論として)。ところが、控訴人の計算によると、前表のように二倍どころか却つて三分の二に減少してしまつている。第二に、前表によりB、C各室組数を比較してみると、B室がC室より多数であつてしかるべきであるのに、昭和四一年中、一月ないし五月、七月ないし一一月の一〇か月の長きにわたつて、反対にB室のほうがC室よりも少人数になつている。殊に九月、一〇月の場合には極端に減少し七分の一になつている。以上のような著しくバランスを失する不自然な結果による数値に基づいて推計をすることは、いかにも不合理である。

控訴人主張の昭和四一事業年度における回転数の算出方法は、次の点で誤つている。これを導いたC室、B室利用組数合計はもとより、そのうちB室利用組数も正しく、さらにはその基礎となつた日計表もまた正しいから、日計表中C室部分は正しいが、B室、A室部分だけ過少である、ということはあり得ず、過少記載なら一律に過少割合を求めるべきである。第二に、控訴人主張の配分方法が誤りであることは前述したとおりであるから、これと符合しないB室、A室であつても過少であると推定することはできない。第三に、したがつて、強いて回転数を計算するとすれば、昭和四一事業年度分について次のようになろう。

C室は 1,586組÷(353日×2室)=2.25回転

B室は 1,060組÷(353日×4室)=0.75回転

A室は 3,686組-1,586組-1,060組=1.040組

1,040組÷(353日×3室)=0.98回転

しかし、日計表にはB、C室組数合算が表示されているに過ぎないのに、控訴人が勝手にB、C各室に配分計算したのが不合理であることは前述のとおりであるから、右回転数配分すらも正確ではないことになる。 前述の五万二、〇〇〇円基準の算出に当つて、控訴人は、簿外入金日の間隔が平均四日であることから、右平均値四日を利用しているが、これも不合理である。個別入金の逐一に当つて収入金計上漏れを特定する控訴人主張の方式を仮に採るなら、個別入金の具体的間隔を基準としてこれを検討すべきであつて、平均値によることは意味がない。五万二、〇〇〇円未満の入金の場合、右具体的間隔に控訴人主張の一日当り収入金計上漏れ額を乗じた積よりはるかに少額の入金は、これが収入金計上漏れだと推認することには無理があろう。五万二、〇〇〇円を超える入金については、実際の間隔いかんに拘らずこれを同額で収入金計上漏れにとどめることにも無理があるし、宿泊料金漏れを度外視して、休憩料金漏れだけに絞つて推計せざるを得なかつた点にも無理があろう。

要するに、控訴人主張の推計方式による限り、日計表の休憩C室組数を基礎にして適切な休憩B及びA室組数を導くことはできない。各ランクごとの室利用組数実数が算出できない以上、料金も室数も各ランクごとの室利用組数実数が算出できない以上、料金も室数も異なるA、B、C全室利用を前提とする回転数を導くこともできない。したがつて、算出不能の右回転数を算出可能と誤解して、これを基礎として算出した五万二、〇〇〇円基準は合理性がない。

同3は争う。控訴人主張の比準同業種法人五社の被控訴人との類似性はない。第一に、別表二の被控訴人の「本館」「広さ」欄に各年度とも3畳+四。五畳とあるが、これは誤りである。各年度とも通常の広さより約三割程度狭い団地サイズの3畳+3畳(もともと六畳の部屋を二間に仕切り改造したもの)であつた。床の間と称しても通常のものではなく、壁をえぐつて無理にはめこんだ代物でふり、洋服ダンスはなく、浴室は僅か一畳に風呂桶を置きその前で一人が立つて洗える程度のもので、バスと称するのもはずかしい安普請のものであつた。したがつて、近隣、遠方を問わず通常の旅館とは比較にならないほど低級旅館であつた。第二に、同表の比準法人AないしE法人は、特定を欠くばかりでなく、選定経路も不明であり、その上原審で主張した比準法人との関係(同一か異なるか)や別表一一の比準法人との関係も不明であり、その同一性は疑わしい。また、類似性の存否についても検討の仕様がないが(相手方当事者に真否を検討する手段を与えない資料提出の方法は違法であろう。)、類似性がないと推認せざるを得ない。同表記載の基礎数値の正確性、存在有無、選定過程、立地条件、営業条件等、類似性判断の資料が皆無であつて到底信用できない。しかも、同伴旅館の営業継続可能の最低室数は一〇室であることが銀行筋の貸出基準の一つとして考慮、判断されているのに(甲第三六号証の五の末尾部分参照)、右のような採算可能ラインを下回る被控訴人の本館に対して、右ラインを大幅に上回る比準同業種法人のみを集めて平均値を算出したとしても、両者の類似性が欠如している以上、その数値を適用することができないのは当然であろう。

なお、比準同業種法人の室数及び収入金額が、原審と当審とでは別表二九のように食い違つており(食い違う部分に△を印した。)、控訴人主張の比準同業種法人には信憑性がない。また、C及びD法人には年度のずれがあり、信用できない。

このように選定経路不明、類似性なき当審比準法人の対前年度平均増加率を算出しても無意味であり、既述のような誤算による本館一室当りの昭和三八事業年度平均収入金額に右増加率を乗じた積算は、二重、三重の誤りを犯していることになる。

三  主張三1は争う。

同2は争う。別表二〇の1の記載内容は、次の点(同表中の該当欄は抹消されている。)を除き概ねそのとおりである(右該当欄の末消は不当である)。

本館・宿泊・課税

<省略>

控訴人は、別館の休憩の課税対象客室の改定回転数を本館の休憩に係る改定回転数に比べて前者が異常に低いと主張しているが、この表現は正確でない。右の比較対象は、正確には本館の非課税の休憩に係る改定回転数とすべきものである。しかし、別館と本館とを比較するなら、同じ種類、性質のものを対応させなければならない。別館の休憩、課税対象客室の改定回転数に対応するのは、本館の休憩・「非課税」ではなく「課税」対象客室の改定回転数であつて、これを比較すると、次のように、別館のそれは、昭和四一事業年度では本館よりも少ないが、同四二事業年度では反対に本館より多くなつている。したがつて、一律に異常に低い数値になつているわけではない。

休憩、課税対象客室の改定回転数と客室数と組数

<省略>

別館・宿泊・改定回転数については、非課税客室が課税客室より上回つているのは事実であるが、その程度は僅かであつて異とするに足りない。すなわち、これをみると、昭和四一事業年度が非課税〇・六一と課税〇・四三、同四二事業年度が非課税〇・六〇と課税〇・四七であるから、同種類客室ごとに右両事業年度のそれらを較べてみると、非課税〇・六二と〇・六〇、課税〇・四三と〇・四七となり、ほとんど変らない。

同3は争う。控訴人のこの主張の部分は、異質のもので対応しない数値を比較したり、改定回転数自体が収入に対して対応関係に立たないのに比例すると誤解して推計の基礎にしたり、その他矛盾する前提のもとにその推計をしており、右方法が著しく不合理であることは明らかである。

控訴人は、一般に課税客室と非課税客室と両室あるときには、前者の課税客室の改定回転数のほうが多い筈であるというが、この一般現象があてはまる階層分野は、中等以上で女性に見栄を張る経済的余裕のある客層の利用者だけであつて、飲物といえばお茶と水で終始する利用客によつて占められていた被控訴人の旅館の場合、客層が著しく低階層であることが明らかであり、このような旅館の場合はむしろ、高額室より低額室のほうが多く利用されるという現象が生じても不思議ではない。控訴人主張の別表一九の1及び2に基づいて被控訴人の利用客組数をみると、次のとおりとなり、右のことが裏付けられる。控訴人の前記主張は何ら証明されていないのである。

<省略>

むしろ、控訴人主張の別表二のAないしDの同業種法人の利用状況をみても、高額室にではなく中間室に集中しているのであつて、これからみると、少なくとも渋谷税務署管内においては、利用客組数の多いのは中間客室であり、最高額室でもなければ最低額室でもないというべきことになる。別館、休憩、課税室の回転数と本館、休憩、非課税室の回転数とは、異質のものであるから比較できない。本館と別館とは、徒歩で一五分かかる程離れていて、場所も地域も異なる。本館は、昭和四一事業年度までは休憩用非課税室がその課税室より二倍多く、同四二事業年度に至つて初めてその割合が減少するのに対し、別館は、休憩用はすべて課税室にして、しかも全室の四分の三は最高額室で占められている。低廉を売物の庶民旅館たる本館の非課税室の利用組数と高額室を目指す利用客をあてにする別館の組数とを、またその各回転数とを対応させることは、著しく不自然である。

同4は争う。高額室は回転数が大きく、低額室は回転数が小さいとする控訴人の主張は誤つている。控訴人は、常に高額室から埋めていつて、同室満室のとき初めて低額室に客を案内するというが、被控訴人の本館ではこのような一律的案内はしていない。旅館員が、まず客の高低階層を見究め、どちらを望んでいるかを判断して相当と思われる等級区分の室に案内する。近隣の同業高級旅館の前を通り過ぎて外観劣悪な本館に来る客は低所得者層が多いため、低額室から充たされてゆく。そのため、この傾向に反して要望の多い低額室を減らし、高額室を増やした昭和四二事業年度は、客が嫌気を感じて他の旅館へ逃げてしまい、その途端に休憩の低額室利用客組数が二分の一以下に落ちてしまつたのである。このように、非課税室を望む客が多く、そうでなくとも相当程度でもいる限り、回転数の多寡はそのランクの客室の多寡と当該ランク室数の多少との相関関係によつて定まるから、この両変数がある以上、一律に課税室の回転数のほうが非課税室のそれより大きいとか、両者が等しいということはいえないわけである。

控訴人は、一般納税者だつたら日計表の課税対象を過少に、非課税対象を真実又は近似的に記載するのが心理だというが、一般納税者ならばこのような細工をせずに両対象とも真実に記載する。ここで問題とすべきは、過少申告者の心理であつて一般納税者の心理ではない。過少申告者はいわば知能犯であるから、どうすれば過少所得の記載が怪しまれないかを考えることになるが、それならば両室それぞれ同じ割合で過少記載を工作する以外に、その方法はないのである。被控訴人には当時斎藤税理士が法人帳簿記載の基礎になる伝票類を集計整理し、会社決算や税務申告を担当しており、一見明瞭で幼稚な過少所得算出工作など職務義務に照らしてもできなかつたのである。本件では、日記によつて淤見廣の個人所得がいくばくか存在することは証明できたが、この貸金利息等の収入と、淤見廣作成一覧表(甲第二六号証)各欄収入額との対応及び本件簿外預金との結びつきを逐一明らかにすることがきなかつたのは残念である。しかし、他人に見せることなど全く予想もしなかつた日記であるからこそ、自分だけに分かればよいと思つて安心していたのである。かかる正確な照合に堪えない記載になつていることこそ、それだけに無作為は明らかであつて、却つて信用できる証拠というべきである。

控訴人は、別館の休憩に係る課税対象客室の最低回転数(甲)を、別館の宿泊に係る非課税対象客室の回転数(乙)に、本館休憩に係る非課税対象客室の回転数(丁)が同宿泊に係る非課税対象客室の改定回転数(丙)に占める割合を乗じて算出しているが、これは不合理である。この方式は、本館の丁丙の比率が別館にも適用されることを前提としている。しかし既述のとおり、本館の特徴は休憩、宿泊とも非課税室利用組数が課税室のそれより著しく低所得層を客筋としているのに対し、別館の特徴は休憩はすべて課税室だけ、宿泊は最高二、八五〇円料金ものが全体の四分の三を占め高所得層を客筋としているのであるから、右の前提自体、異質のものの比率当てはめの誤りを犯している。しかも、右非課税関係比率を同じく非課税関係数値に乗じて「課税」関係数値を推計するという重複誤謬を犯している。

控訴人主張の推計は、宿泊客が多ければ休憩客も多いという前提に立つものであるが、控訴人が正確だとする本館のいずれも非課税の宿泊、休憩の実数を概算してみると、次表のとおりとなる。これによれば、宿泊組数は昭和四二事業年度のほうが増えたが休憩組数は反対に同年度のほうが二分の一以下に減つているから、右のように宿泊客が多ければ休憩客も多いということはできない。もつとも、回転数は宿泊、休憩とも昭和四二事業年度のほうが増えているが、室数が不動にして初めて回転数は意味があるところ、右両年間に室数変動があつたので、比較することはできない。

<省略>

同5は争う。控訴人主張の算式は、収入除外金額を非課税対象客室に係る収入金額(A)と課税対象客室に係る収入金額(B)との合計から申告収入金額(C)を控除して導いている。Aについては、昭和四一、同四二事業年度は収入実額であるが、その余の事業年度は実額から推計した平均回転数に基づいて他の要素をも組み込んで計算した推計値である。Bについては、控訴人主張の<ロ>及び<ハ>の算式に記載されているように、五要素を組み合わせた推計によつて算出される概算値であるが、これまた個別性を考慮しない最低回転数(推計値)に他の二要素(実数)を乗じて推計した積に更に平均料金を乗じて算出されている。そうすると、このような拡大され蓄積された虚構数字による二重、三重の推計方式は合理性があるとは到底いえない。

なお、控訴人主張の別表一九の1、2に基づいて、昭和四一、同四二事業年度の宿泊、休憩両組数を計算してみると、次表のとおりとなる。このうち控訴人自ら信用できるとしている非課税室に関する両者を比較してみると、宿泊計が二、四〇八組から三、一二七組へ七一九組増加し、これに伴い休憩<1>が二、七一一組から一、二八一組へ一、四三〇組減少している。このことからしても、「宿泊客が多ければ休憩室も多い」とする控訴人の主張は自壊したものであつて、これが誤りであることは明らかである。

<省略>

(被控訴人の反論に対する控訴人の再反論)

一  (昭和三八事業年度収入金計上漏れ額の算定方法)

簿外預金方式について、被控訴人は、右方式が採用された過去の五つの判例ではいずれも、簿外預金総額に占める売上金額の割合が高いにも拘らず、本件事案では当該割合が低いので右方式を適用する前提を欠くと主張するが、当該割合の高低はすぐれて個々の事案に係るものであって個別性があり、当該割合が高い場合には右方式の前提があり、低い場合には右方式採用の前提を欠くという主張自体根拠がない。

控訴人主張の休憩利用客の回転数について、被控訴人は、利用組数の絶対値の大小を一日一室当り回転数の多寡にすりかえる誤謬を犯していると主張するが、これは、被控訴人の業態及び控訴人主張の本旨を無視したものである。すなわち、個々は既述のような理由により上位クラスの部屋が下位クラスの部屋に優先して利用されるため、その結果として前者の回転数が後者のそれを上回ることを主張しているのである。例えば、Aクラス六室及びBクラス三室がある場合において、午前中に二組、午後に五組及び宵に八組の休憩利用客があったとすると、右利用客に対してはAクラスの部屋を優先的に割り振る結果、一日の休憩利用客は、Aクラスの部屋へ一三組(2+5+6)、Bクラスの部屋へ二組と各割り振られることとなり、各部屋の回転数は、Aクラスの部屋が二・二回(一三÷6)、Bクラスの部屋が〇・七回(2÷3)となり、休憩客利用時間を二時間程度とすれば両者の回転数の差は更に開くこととなる。被控訴人主張の例示は、一日の総利用客を各部屋に同時に割り振った場合に限られるのであって、利用客八組が全部揃うまで利用を待ってもらい、一日に一回だけ同時に利用させた場合を想定しなければ成立しないものである。しかし、このような場合は被控訴人の業態では絶対に起こり得ず、右の例示は実情を無視した極論である。

被控訴人は、控訴人が採用した昭和四一事業年度におけるCクラスの部屋の休憩利用客を組数を算定するための方程式について、実際には、多少飲食が伴っているのであるから合理性がないと主張するが、休憩利用客の心理状態、生活水準等からみて、そのすべてのものが飲食を伴う利用形態をとるものと認めることはできず、むしろ飲食を伴わないほうが通常であると推認される。

仮に、休憩利用客の中に飲食をとる者があったとしても、これらに係る収入金額は次のことからしても極めて僅少なものとみるのが相当である。すなわち、一般に、同伴旅館において提供される飲食物は、ビール、ジュース、サイダー程度のものであって、金高のはるものではない上に、本件各事業年度当時の被控訴人の店舗においては、各部屋に冷蔵庫等の備付けがなく、利用客の注文に応じて女中などが部屋に運んでいくというシステムをとっていたため、その心理状態からして、飲食をとろうとする利用客はごく限られたものであったというべきである。

控訴人主張の前記方程式の適用に関し、被控訴人は、収入金額に一六〇円、六〇円及び五〇円の端数が生じた場合のほか、一〇円ないし一七六円の端数が生じた場合にも営業日数及び利用組数から除外すべきである旨主張するが、これらの端数は、かみそり、石けん、タオル、ティッシュ等の販売収入と認められるから、右端数の金額の生じた該当日について営業日数及び利用組数を除外する理由はない。

昭和四一事業年度のB、C各クラス休憩利用客の配分に関し、被控訴人は、控訴人の算定方法によれば、上位Bクラスは年間利用組数において下位Cクラスの約三分の二程度しか利用されていないことによって、利用客は上位クラスのほうが多いという控訴人の主張の正反対の現象を呈するとか、控訴人算出の昭和四一事業年度のB、C角室利用客組数配分数は著しくバランスを欠いているとか主張するが、前者のような結果の原因は、Cクラスの部屋休憩利用客算定上の不合理性にあるのではなく、被控訴人の日計表にあるAクラス及びBクラスの部屋の休憩利用客組数の記入漏れがあることによるものである。すなわち、本件簿外普通預金に多額の入金があること、及び、八千代信用金庫の昭和三八年七月一七日付禀議書には「被控訴人は毎月一〇〇万円程度の収入があるが、表面上は税務対策上約四〇パーセント強の収入除外を行っている。」旨の記載がされていたこと等からみて、多額の収入除外が行われていたことは明らかである。この場合において、被控訴人が確定決算では収入を除外していたが、日計表では、利用客組数を正確に記入することはあり得ず、更に利用客組数記入漏れ(ひいては収入除外につながる。)は、利用料金最低のCクラスの部屋よりも利用料金の高いAクラス及びBクラスの部屋においてより多く行われたものと推認するのが極めて自然である。けだし、収入除外の事実をカムフラージュするためには、客室全体の数との関連からある程度の利用客組数を記入せざるを得ないところ、Cクラスの部屋の利用客組数はできるだけ真実に近い数を記入し、A及びBクラスの利用客組数はできるだけ除外して収入金額全体の計上を操作しようとするからである。

昭和四一事業年度における回転数の算出方法について、被控訴人はA、B、C各室一律に過少割合を求めるべきであると主張するが、客室利用収入金額と日計表の客室利用組数との間にそごがあれば直ちに問題点が指摘されるにも拘らず、被控訴人は、確定決算では多額の収入計上漏れがあるが、日計表の客室利用組数の記入は正しいと強弁するのであろうか。日計表の客室利用組数の記入については、Cクラスの部屋において最も真実の数に近く、A及びBクラスの部屋において除外数が多いのである。既述のとおり、A及びBクラスの部屋の回転数はCクラスの回転数より多いのであるが、控訴人は被控訴人の収入金額を推計するに当って、Cクラスの部屋の回転数を本館全体の九室に適用して算定したのである。

控訴人は、本件簿外普通預金の一回の入金中収入除外と認めるべき金額の最高限度額五万二〇〇〇円の算出に当って、<1>一日当りの収入金計上漏れ額に、<2>本件簿外普通預金の入金日の平均間隔四日を乗じたのであるが、被控訴人は<2>の平均間隔について、個別入金の具体的間隔を基準としてこれを検討すべきであると主張する。当該最高限度額を求めるに当って、一日当り収入金計上漏れ額に乗ずべき要素として個別入金の具体的間隔又は入金の平均間隔のいずれによるべきかは議論の存するところであるが、控訴人は、客観性を保持するために入金の平均間隔によったのである。因みに、本件簿外普通預金の入金中計上漏れと認められる金額は、控訴人主張の入金の平均間隔によった場合四四三八九、〇〇〇円となり、被控訴人主張の個別入金の具体的間隔を基準とした場合四三七万四、六七〇円となって、両者の差は六万四、三三〇円(開差率一・四パーセント)と僅少である。また、被控訴人は、宿泊料金漏れを度外視して、休憩料金漏れだけに絞って推計せざるを得なかった点にも無理があろうと主張するが、控訴人は本館の休憩収入だけを対象にして確実かつ控えめな算定方法により被控訴人の収入金計上漏れ額を算出した結果、当該金額は既に本件更正において収入金計上漏れとした金額(異議決定で一部取り消された後のもの)を上回り、その余の本館宿泊収入及び別館の収入のいずれも検討するまでもなかったのである。

二  (昭和三九ないし四二年度収入金計上漏れ額の算定方法)

控訴人が、当審において昭和三九ないし同四二事業年度の収入金計上漏れ額の推計に当り使用した比準同業種法人AないしEは、原審において使用した同法人AないしEと同一のものである。被控訴人は、原審と当審との比準同業種法人の同一性に疑問を持っているもののようであるが、原審及び当審における同法人の対応関係を示すと、次表のとおりである。控訴人が、当審において同法人として主張しているB法人は、原審の予備的推計に当って比準同業種法人として示したC法人と同一であり、同様に、当審のC法人は原審の予備的推計におけるD法人と、当審のD法人は原審の予備的推計におけるB法人と、それぞれ同一である。

<省略>

当審において控訴人が採用した比準同業種法人AないしEと被控訴人との間に類似性が存することは、既に別表二に基づいて主張したところである。なお、同表の比準同業種法人AないしEの設備等の状況表(乙第三七号証ないし第四一号証)を作成するに当り、その法人名などを明らかにすることは、特定の法人の営業上の秘密を漏らすことになり、法人税法一六三条に規定する守秘義務との関係上、AないしEの記号を付して表示することとしたものである。右AないしEの各法人の立地条件及び営業状況等について述べると、次のとおりである。

A法人は昭和三五年四月から現在まで渋谷区桜ヶ丘で同伴旅館を営んでいる。建物は鉄筋コンクリート造五階建であるが、その割には客室も少なく、駐車場の設備もない。

B法人は、昭和三六年八月に渋谷区猿楽町において同伴旅館を開業し、昭和五〇年頃に廃業してその後は貸ビルを営んでいる。B法人が同伴旅館として使用していた建物は木造二階建であり、その地下に乗用車四台を収用できる駐車場設備を有していた。また、同建物の周囲は一般住宅に囲まれていた上に、他の同業者も存しなかったので、同伴旅館の立地条件としては必ずしも有利ではなかった。

C法人は、昭和二七年渋谷区宇田川町において同伴旅館を開業し、昭和四七年に廃業してその後は貸ビル業を営んでいる。C法人が同伴旅館として使用していた建物は木造二階建であるが、駐車場の設備はなかった。また、右建物の所在地は、本件各事業年度当時において渋谷の繁華街として栄えていたところであり、人通りが多く利用客が入館しづらい状況にあって、同伴旅館の立地条件としては必ずしも有利ではなかった。

D法人は、昭和三十一年三月に渋谷区千駄ヶ谷一丁目において同伴旅館を開業し、昭和四六年頃からは日本交通公社の指定旅館となり、現在は一般旅館業を営んでいる。D法人が同伴旅館として使用していた建物は、木造二階建であり、駐車場の設備はなかった。

E法人は、昭和三二年頃渋谷区千駄ヶ谷三丁目において同伴旅館を開業し、昭和四六年頃廃業してその後貸ビル業を営んでいる。E法人が同伴旅館として使用していた建物は、木造二階建であり、駐車場の設備はなかった。

被控訴人の本館は、国電渋谷駅(東横線、井の頭線、地下鉄の各駅も近接)から井の頭線沿いに徒歩一〇分弱、しかも繁華街から僅かにはずれて人通りが少なく、当時近隣には同業者も多く、同伴旅館としては絶好の位置にあった。被控訴人は、その本館は床の間として称しても通常のものではなく、バスもそう称するのも恥しい安普請のものであって、近隣、遠方を問わず通常の旅館とは比較にならないほど低級旅館であったと主張するが、当時の同伴旅館のほとんどが被控訴人のそれと似たものであり、通常の旅館又は現在の同伴旅館の設備と比較して比準同業種法人との類似性を否定することは、詭弁としかいいようがない。また、被控訴人は、採算可能ラインを下回る被控訴人の本館に対して、右ラインを大幅に上回る比準同業種法人のみを集めて平均値を算出したとしても、両者の類似性が欠如している以上、その数値を適用することはできない旨主張するが、これは次に掲げる理由から失当である。第一に被控訴人はその主張の根拠として甲第三六号証の五の末尾部分の記載「現在、採算規模としては客室一〇室以上が必要とされており、従来の六~八室にての採算可能ラインは崩れつつある。」を挙げているが、当該書証は、昭和五〇年四月発行のもので本件各事業年度とは約一〇年の隔たりがあり、また、右記述の対象は自動車による来客を主とするモーテルであり、被控訴人の同伴旅館のように徒歩による来客を前提とする営業とは主を異にしており、比較の年次及び対象のいずれもそごを来たしている。第二に、被控訴人は別館を新たに取得し、昭和三九年一月客室八室で開業しており、被控訴人自らが客室八室でも採算割れとは認識していなかった。第三に、一室当り平均収入について別表一一に示すとおり、大規模企業が必ずしも好成績ではなく、小規模企業が必ずしも低調ではない。

なお、控訴人の原審主張の比準同業種法人と当審主張のそれとでは、その記載内容がC及びD法人につき異なるのは、右法人について当審では事業年度を一年ずつ繰り上げて別表一一を作成したためである。すなわち、同表のC及びD法人の昭和三八ないし同四一事業年度欄には、原審主張の昭和三九ないし同四二事業年度の客室数及び収入金額等をそれぞれ移記し、また、同表の昭和四二事業年度欄には、新たにC及びD法人の昭和四二年三月一日から同四三年二月末日までの事業年度分の客室数及び収入金額等をそれぞれ記載した。このように同表を作成するに当って、C及びD法人の事業年度を一年ずつ繰り上げたのは、C及びD法人の事業年度(三月一日から翌年二月末日まで)は被控訴人の事業年度(一二月一日から翌年一一月末日まで)とわずか三ヶ月(一二月一日から翌年二月末日までの三ヶ月)しか重なる月がなく、むしろ右二法人については被控訴人の事業年度の前事業年度に対応させるのが合理的であるからである。

三  (別個の観点からみた推計の合理性)

被控訴人は、控訴人主張の別表二〇の1の「本館・宿泊・課税」欄には一部の数値が記載されていない旨を主張する。しかし、控訴人が右数値を加えないで改定回転数を算出したのは、以下に述べるとおり、被控訴人の収入金計上漏れ額の計算に当り少しでも被控訴人の不利となることのないように安全を期したものであって、このことをもって改定回転数の計算を不合理とすることはできない。すなわち、本件各事業年度における本館の宿泊客室の利用料金一組(二人)当りの料飲税の免税点を示すと、次表のとおりとなる。

本館宿泊客室の利用料金等

<省略>

右表から明らかなとおり、被控訴人の本館の客室は、その宿泊の利用料金がすべて免税点以下となっているのであるから、本館の宿泊利用客が宿泊のためにのみ客室を使用した場合には、その利用料金が料飲税の課税対象となることはない。したがって、本館に係る日計表の「宿泊課税」欄に記載された組数、人員及び収入金額については、本来料飲税非課税対象の客室に宿泊しながら、客室内において利用客が飲食等の行為を行ったことにより、通常の宿泊料金に飲食等の料金が加算され、その結果、当該客が被控訴人に支払う宿泊利用料金が料飲税の免税点を超え、同税の課税対象となったことによるものと認められる。

そこでもし、別表二〇の1における改定回転数の計算上、被控訴人主張の前記数値を加えて本館の宿泊に係る非課税対象客室の改定回転数を再計算してみると、次表6欄のとおりいずれも控訴人が別表二〇の1で計算した改定回転数(次表の7欄)よりもその回転数は高くなる。

本館、宿泊に係る非課税対象客室の改定回転数の再計算

<省略>

さらに、右表6欄の改定回転数昭和四一事業年度分〇・六九回と昭和四二事業年度分〇・八七回の平均値〇・七八回を最低回転数として、昭和三八事業年度分から昭和四〇事業年度までの本館の宿泊に係る非課税対象客室の収入金額を再計算し、別表二四ないし二六の「収入金額」欄に記載の数値との差額を求めてみると、次表8欄のとおりとなる。

本館、宿泊に係る非課税対象客室の収入金額の再計算

<省略>

また、右表6欄の収入金額より、昭和三八事業年度分から昭和四〇事業年度までの各事業年度の被控訴人の所得金額を再計算した場合、収入金額が右表8欄の差額分だけ増加することとなり、その結果、被控訴人の所得金額も当然に同額だけ増加することとなる。

右に述べたところから明らかなとおり、被控訴人が主張する数値を加えて改定回転数を算定し、これを基準として昭和三八ないし同四〇事業年度の収入金額及び所得金額を計算することは、いずれも控訴人が従来主張した被控訴人の所得金額を上回る結果となるに過ぎないのであって、被控訴人はこれを主張する利益がないのみならず、このことによって控訴人が右利用客組数を加えないで行った推計計算の合理性に消長を来たすものではない。

被控訴人は個々が、別館、休憩の課税対象客室と本館、休憩の非課税対象客室の改定回転数を比較し、前者が異常に低い旨主張したのに対し、別館、休憩の課税対象客室の比較の対象とすべきは、本館、休憩の課税対象客室である旨主張する。しかし、被控訴人の右主張は、次に述べるとおり失当である。控訴人が別館、休憩の課税対象客室と本館、休憩の非課税対象客室の改定回転数を比較したのは、第一に、被控訴人の日計表の課税対象客室に係る組数及び収入金額の記載が適正になされているか否かを他と比較して判断するためであって、かかる場合に同じ課税対象客室を比較の対象とすることは相当でなく、課税対象客室よりも回転数が低いと認められる非課税対象客室と比較して初めて適正な判断が可能となること、第二に、別館、休憩の課税対象客室と比較すべきは、本来別館、休憩の非課税対象客室であるが、別館には当該非課税対象客室が存しなかったことから、別館、休憩の非課税対象客室に代わるものとして本館、休憩の非課税対象客室を別館、休憩課税対象客室の比較対象としたものである。さらに、控訴人は、本館、休憩の非課税対象客室に係る改定回転数を別館、休憩の課税対象客室に係る収入金額が除外有無の判断の目安とはしたが、本館の右改定回転数をもって即、別館の最低回転数とはしていないのであるから。推計計算の合理性の角度からみても、この点についての被控訴人の反論は失当である。

控訴人が主張した日計表分析結果が示す収入除外の事実に関し、被控訴人は、本館の客層が著しく低階層であり、高額室のほうが低額室より先に利用されるという控訴人の主張は誤りである旨主張するが、以下の理由により、被控訴人の右主張は真実に相違し失当である。被控訴人はまず、右主張の根拠として、休憩客組のうち非課税客室が課税客室より昭和四一事業年度が約三倍、同四二事業年度が約二倍の割合となっていると主張するが、第一に、料飲税の課税対象客室に係る収入金額について適正に申告されていないことが明白である本件について、単に利用客組数の総数につき、非課税対象客室のほうが課税対象客室よりも多いからといって、低額室が高額室より先に利用されていることが実証されているとすることはできない。第二に、被控訴人は、一般に課税客室と非課税客室の両室あるときは、前者の課税客室の改定回転数が多い筈である旨の控訴人の主張に対し、これを一般現象と定義した上で、一方において、この現象の射程距離は中等以上の階層で、女性の手前見栄を張る経済的余裕のある客層の利用者である旨主張し、更に他方において、別館は低所得層ではなく高所得層を客筋とするものであることは明らかであると主張しているのであるから、被控訴人自身、別館においては右一般現象が妥当し、高額室から優先的に客に使用させていることを認めているというべきである。そうであるにも拘らず、一室一日当り利用客が何組であったかを示す改定回転数を本館の休憩と別館の宿泊について料飲税課税非課税別に整理すると、次表のとおりとなる。

改定回転数対比表

<省略>

右表ハ及びニ欄から明らかなとおり、別館の宿泊についても、本館の休憩と同様に非課税対象客室の改定回転数が高くなっているのであるから、被控訴人の主張とは逆の様相を呈し、被控訴人の主張自体矛盾している。なお、別館の休憩客室はすべて課税対象客室であり、本館の宿泊客室はすべて非課税対象客室であるから、改定回転数を料飲税課税非課税別に対比する場合の対象とはならない。

次に昭和四二事業年度の本館の休憩に係る非課税室を前年度の三分の一に縮小したことにより、同室に係る利用客組数は前年度の二分の一に減少したとして、このことにより低額室のほうが優先されていることが実証されたとする被控訴人の主張については、昭和四一事業年度と同四二事業年度では、本館の休憩に係る利用料金の変動により、非課税対象客室数も又昭和四一事業年度の六室から同四二事業年度には二室に減少しているのであるから、被控訴人が主張するようにこれを無視して、本館の休憩に係る非課税対象客室の利用客組数の合計で両事業年度を対比し、昭和四二事業年度のほうが利用客組数が減少していると結論づけても、それは的確な対比により導き出されたものとはいえない。両事業年度における非課税対象客室数の変化を踏まえた上で、利用客組数の多寡現象を観察するために、両事業年度における本館の休憩に係る非課税対象客室の利用客組数を一室当り平均利用客組数として対比してみると、次表のニ欄のとおりとなる。

本館・休憩・非課税対象客室の利用状況

<省略>

右表ニ欄より明らかなとおり、本館の休憩非課税対象客室に係る一室当り平均利用客組数は、昭和四一事業年度が四五二組で同四二事業年度が六四〇組となっているのであるから、減少どころか逆に増加しているのであり、しかも同表ハ欄により明らかなとおり、利用料金の増額にも拘らず、平均利用客組数は増加しているのである。

更に、非課税対象客室のみである本館の宿泊に係る利用客組数等について整理すると、次表のとおりとなる。

本館・宿泊・非課税対象客室の利用状況

<省略>

右表より明らかなとおり、本館の宿泊、非課税対象客室に係る一室当り平均利用客組数は、客室の利用料金が全室値上がりし、中でも最低利用料金が昭和四二事業年度は同四一事業年度のまさに倍額になるという条件の下においてさえ、被控訴人も認めるとおり、昭和四二事業年度は同四一事業年度の二割五分も増加しているのである。(非課税対象客室数が両事業年度とも九室とおなじであることから、利用客組数の合計で両事業年度を対比しても二割五分の増加については同じである。)。

右のことから、本館の客層が低額室を優先利用する低階層であるとする被控訴人の主張は失当であり、本館の非課税対象客室の一室の当り平均利用客組数増加の事実は、被控訴人が本館課税対象客室に係る収入を除外していることの証左であるということができる。

控訴人が本館における宿泊と休憩の最低回転数の割合を別館の宿泊の最低回転数に対応させて別館の休憩に係る最低回転数を算定したことについて、被控訴人は、別館、休憩、課税室の回転数と本館、休憩、非課税室の回転数とは異質のものであるから比較できない旨主張し、右異質であることの理由として、双方の建物が徒歩で一五分かかる程離れていること並びに双方の建物の外観及び利用料金の相違等を挙げている。しかしながら、外観や料金に若干の相違があるからといって、一方は宿泊客に比し休憩客が多く、多方は宿泊客に比し休憩客が少ないという合理的根拠はないのであるから、被控訴人のこの点についての主張も失当というほかはない。

次に控訴人が、宿泊客が多い同伴旅館にあっては休憩客も多いものとも認められるのが営業の実態に沿い相当であると主張したのに対し、被控訴人は昭和四一事業年度と同四二事業年度の本館及び別館の非課税客室に係る利用客組数を比較してみると、宿泊が二、四〇八組から三、一二七組へ七一九組増加し、これに伴い、休憩が二、七一一組から一、二八一組へ一、四三〇組減少しており、このことから控訴人の右主張は自壊したものと反論している。しかしながら控訴人が既に指摘したとおり、本館の休憩に係る非課税対象の客室数が昭和四一事業年度と同四二事業年度では異なるのであるから、いわば器の違いから目をそらして利用客組数の増減を論じてみても無意味であって、器をそろえて初めて適切な比較ができるのである。そして、右のように器の相違する場合の比較は、両事業年度おける休憩と宿泊の非課税対象客室に係る利用客組数の合計を一室一日当りの利用客組数とすることによってすることができるが、この計算は既に、別表二〇の1において改定回転数の計算として示したとおりである。同表の1の中から、本館の非課税対象客室に係る利用客組数(合計)と改定回転数について、改定回転数を一室一日当りの利用客組数と表示して示すと、次表のとおりである。すなわち、昭和四二事業年度は同四一事業年度に比し、一室一日当りの利用客組数は宿泊も休憩も共に増加しているのであるから、これをもって、被控訴人の反論こそ失当であることは明白である。

本館非課税客室一室一日当りの利用客組数

<省略>

被控訴人は、控訴人が主張した被控訴人の本件各事業年度の収入金計上漏れ額を算出するための計算過程について反論しているが、これもまた失当であることは以下に述べるとおりである。まず、控訴人主張の計算過程を示す算式に適宜符号をつけて示すと、次のとおりである。

<イ>  収入金計上漏れ額A=非課税対象客室に係る収入金額B+課税対象客室に係る収入金額C-申告収入金額D

<ロ>  課税(非課税)対象客室に係る収入金額C(B)=課税(非課税)対象客室全室に係る年間利用客組数の合計組数E×課税(非課税)対象客室一室一日当り平均利用料金F

<ハ>  課税(非課税)対象客室全室に係る年間利用客組数の合計組数E=最低回転数G×営業日数H×課税(非課税)対象客室数I

最低回転数(G)について、被控訴人は、本館と別館では客階層が異なつており、被控訴人の推計計算はこの両館の個別性を無視した最低回転数によつている旨主張するが、被控訴人の主張する程度の客階層の相違なるものが仮にあつたとしても、これは最低回転数に何ら影響を与えないことは既述のとおりである。次に。被控訴人は、個々の推計方式が多重多段階であつて合理性がないとか、B(C)の計算について算式およびの「五要素」を組み合わせたと主張するが、これはの算式のEをの算式により求めるのであるから、F、G、H及びIの「四要素」の誤りである。また、右四要素のうち既述のGを除くF、H及びIは一室一日当りの収入金額をもとに各事業年度の年間収入金額を推計する場合に欠くべからざる要素であつて、かつ、H及びIは被控訴人も認めるとおり実数であり、Fについては客室利用料金を利用形態別及び料飲税課税非課税別に合計し、それぞれ同税課税非課税別客室数で除した単純平均値であるから、F、H及びIの三要素については合理性をうんぬんするまでもない明確な数値である。

以上により、被控訴人の収入金額に係る控訴人の推計計算は、被控訴人の本件各事業年度の一年間における客室全室に係る収入金額を料飲税日計表から推計しようとする場合に当然に必要な最小限の要素により合理的になされたものであり、この点についての被控訴人の反論が失当であることは明らかである。

理由

一  被控訴人が渋谷区大和田五九(現・道玄坂一-一五)所在の本館及び同区渋谷一-九-四所在の別館(別館は昭和三九年一月二二日開業)をもつて同伴旅館業を営んでいた株式会社であり、被控訴人が本件各事業年度の法人税についてした各確定申告、各修正申告、これらに対して控訴人がした本件各更正、過少申告加算税、重加算税の本件賦課決定、被控訴人のした異議申立て及び審査請求並びにこれらに対する各異議決定及び各審査裁決の経緯が原判決別表1ないし5(なお、別表一二、一三を参照)記載のとおりであることは、当事者間に争いがない。

二  当裁判所も、本件について推計の必要性があると判断する。その理由は、原判決理由二1の項に説示するとおり(ただし、五四枚目裏一行目の「乙第一九号証及び第二二号証」の次に「第二三号証の一ないし六、第二四及び第二五号証の各一ないし三、第二六号証の一ないし五、二七号証の一、二、第二八号証の一ないし三、第二九号証の一ないし六、第三〇号証の一ないし三、第三一ないし第三三号証の各一、二」を加え、五五枚目裏六行目の「次に、」から五六枚目表六行目の「また、」の前までの一文を「次に、原判決別表二記載のとおり、右三口の普通預金から、昭和三七年一二月から同三八年九月までの間及び同三九年五月に、被控訴人名義の定期積金二口(内一口は昭和三九年の法人税調査で発見された月一〇万円の収入金計上漏れ額を積み立てたものである。)及び内田信也名義ほか一二口の定期預金が積み立てられていた(例えば、昭和三七年一二月五日付で積み立てられた被控訴人名義二口及び内田信也名義ほか一二口の定期積金合計七五万六、〇一〇円は右岩田とき名義の普通預金から七〇万六、〇一〇円を右淤見広名義の普通預金から五万円をそれぞれ払い戻して積み立てられていたし、昭和三九年五月一八日付で積み立てられた被控訴人名義及び内田信也名義各一口の定期積金合計二一万一、四〇〇円は右淤見広名義の普通預金を払い戻して積み立てられていた。)。」と、同五六枚目裏一〇行目の「昭和三八年一月二八日に積み立てられた一四口」を「昭和三七年一二月五日付で積み立てられた一五口」と、五九枚目表三行目の「第三号証」を「第三〇号証」と、六〇枚目裏二、三行目の「完済していることが認められ」から四行目の「証拠がない以上、」までを「認められるから、」とそれぞれ改める。)であるから、これを引用する。すなわち、被控訴人は、本件係争各事業年度につき青色申告書提出の承認を取り消され、売上金をすべて帳簿上に記載することなく、その一部を他人名義の預金(本件簿外普通預金)に預け入れているのであるから、右各事業年度の収入金については推計の必要性がある。

三  (係争各事業年度における収入金推計の合理性)

1  (昭和三八事業年度の収入金計上漏れ額)

前記認定のように、本件簿外普通預金に被控訴人の売上金の一部が入金されているところ、控訴人は、本件簿外普通預金の入金総額から被控訴人の営業収入であることが必ずしも明確でない<1>小切手による入金、<2>入金経路が明確である借入金、振替、定期預金及び利息の入金、<3>一回の入金額の特に多額な入金、<4>入金間隔の特に接近している入金、<5>少額等で収入金でない可能性のある入金、等を控除して被控訴人の収入金計上漏れ額を算出する方法を主張する。同伴旅館である被控訴人の業種の即時現金払いという営業収入の性質(この点は弁論の全趣旨により認められる。)からみて、右<1>及び<2>の各金額を控除することは妥当である。また、前出乙第九ないし第一一号証、第二二号証によれば、本件簿外普通預金の平均入金間隔日は別表五記載のとおり四日であることが認められるので、右<4>のとおりこれと比較して入金間隔が特に接近している入金を控除することは妥当である。右<5>の点についても、昭和三八事業年度における本件簿外普通預金への入金中、右各乙号証によつて認められる控訴人の当審における主張二2(3)の表記載の各金額を同表に記載する理由により収入金でない可能性のある入金として控除するという限りにおいて、妥当なものと認められる。そうすると、結局、右<3>の金額の算出方法が妥当なものであれば、右収入金計上漏れの算出方法は合理的なものということができることになる。

なお、控訴人が主張する簿外預金方式について、被控訴人は、右方式が採用された過去の五つの判例では、いずれも、簿外預金総額に占める売上金額の割合が高いにも拘らず、本件事案では当該割合が低いので右方式を適用する前提を欠くと主張するけれども、当該割合が高い場合には右方式を採用する前提があり、低い場合にはその前提を欠くと解しなければならない理由はないから、右主張を採用することはできない。

控訴人は、右<3>の「一回の入金額の特に多額なもの」として五万二、〇〇〇円を超えるものに限定し、(以下「五万二、〇〇〇円基準」という。)、これを控除するという算出方式を用いている。そこで、以下において右方式の妥当性いかんを検討する。

(1)  控訴人は、五万二、〇〇〇円基準の算出の前提として、<ア>同伴旅館の利用客は部屋の選択を旅館側の案内に任せるのが通常であり、旅館側としては経営効率の点から利用料金の高い部屋を優先して案内するのが通例であること、<イ>したがつて、被控訴人の営む本館九室のうち上位のA及びBクラス(昭和三八、同三九事業年度においてはAクラスのみ)の一日一室当りの利用客組数は、少なくとも下位のCクラス(前同両事業年度においてはBクラス)の一日一室当りの利用客組数を上回るものであること、<ウ>本件簿外普通預金の入金額のうち収入金計上漏れ額に、被控訴人の本館の休憩収入金額のほか、同館の宿泊収入及び別館(昭和三九年一月以降)の収入も含まれていないとは断定できないが、基準とする数値の確実性を保証するものがないことから、収入金計上漏れ額を本館の休憩収入金額のみからなるものとしたこと、<エ>昭和三八事業年度の資料がないことから、被控訴人が作成した昭和四一、同四二事業年度の日計表に記載されている非課税クラスの利用料金に該当する利用料金最下位のCクラスの一室当りの休憩客利用客組数を比較的真実に近いものと認めて、これを資料としたこと、等を挙げている。

当審証人大原豊実の証言とこれによつて成立の認められる乙第四二号証に弁論の全趣旨を総合すれば、右<ア>の事実を認めることができ、右認定に反する証拠はない。被控訴人は、この点について、利用料金の高い部屋を優先して利用するのは、中等以上で女性に見栄を張る経済的余裕のある客層の利用者だけであつて、飲物といえばお茶と水とで終始する利用客によつて占められていた被控訴人の旅館の場合、客層が著しく低階層であることが明らかであり、むしろ高額室よりも低額室のほうが多く利用される旨主張するが、これを認めるに足る証拠はない(原審における被控訴人代表者淤見廣本人尋問の結果及びこれにより昭和五二年一〇月一五日当時の被控訴人の本館の写真であることが認められる甲第三四号証の一ないし六、同じく右当時の本館付近の旅館であることが認められる甲第三五号証の一ないし五によれば、被控訴人本館の設備は付近の旅館と比較して良好とはいえず、客筋も低所得者層の者が多かつたことが窺われるが、そうだとしても旅館側が経営効率の点からいつて利用料金の比較的高い上位クラスの部屋を案内するのが通例であることに変りはなく、右のことから直ちに被控訴人の右主張を認めることはできない。また、被控訴人は、右主張の根拠として、休憩客組数のうち非課税客組数が課税客組数より昭和四一事業年度が約三倍、同四二事業年度が約二倍の割合になつていることを挙げているが、右は被控訴人作成の日計表を基にした数値であるところ、右日計表の課税対象客室の組数がすべて正確であることを認めるに足る証拠がないから(むしろ、後記(4)及び(5)で述べるとおり、その正確性は疑問がある。)、右数値をもつて被控訴人の根拠とすることはできない。さらに被控訴人は、別表二のAないしDの比準同業種法人の利用状況をみても高額室にではなく中間室に集中していると指摘するけれども、同表においては単に客室数において中間クラスの客室が比較的多く設備されていることが明らかにされているにすぎず、そのことが低額室のほうが多く利用されたとする被控訴人の主張の根拠となり得るものではなく、また控訴人主張の右<ア>の事実を否定するに十分なものでもないというべきである。)。

右<ア>の事実が認められる以上、控訴人主張の右<イ>のようにいうことができ、この推認を妨げるに足る証拠は存在しない。この点について、被控訴人は、右はAないしCの各クラスの利用客組数の大小を一日一室当り回転数の多寡にすりかえる誤謬を犯すものであると主張するけれども上位クラスの部屋が下位クラスの部屋に優先して利用されることを前提とする限り、その結果として前者の回転数が後者のそれを上回ることは明らかであり、何ら誤謬はない。

控訴人主張の右<ウ>の点は、数値の確実性を担保する意味で首肯できる。また、<エ>の点も、他に資料がない本件においてはやむを得ない方法である。

(2)  そこでまず、便宜上、控訴人主張のとおり、昭和四二事業年度のCクラス二室の一日一室当り休憩客回転数を算出する。別表二記載のとおり、同事業年度における被控訴人本館のA室は六室で休憩利用料金が一、四〇〇円、C室は二室で休憩利用料金が一、二〇〇円であることは、弁論の前趣旨により明らかである。そして、前出甲第二三号証の一ないし二四(同事業年度日計表)の「非課税」の「飲食及び利用料金欄」に記載された組数は、利用客一組当り休憩料金一、二〇〇円(なお、右の免税点は地方税法の一部を改正する法律(昭和四一年法律第四〇号)により、昭和四一年八月一日以降一人六〇〇円以下である。)の客室に係るものであるから、本館客室九室のうちCクラス二室の利用客組数を示すものであることが明らかである。そこで、本館客室九室のうちCクラス二室の同事業年度における利用客組数及び営業日数を右日計表の「飲食及び利用旅館」の組数に基いて算出すると、別表三記載のとおり、利用客組数は一、二三四組営業日数は三五〇日となることが認められる。なお、右算出に当つては、控訴人が主張するとおり、九室の「飲食及び利用料金欄」の収入額が本館客室Cクラス二室の利用客一組当りの休憩料金の額一、二〇〇円の倍数でないときは、その収入額には飲食料金及び延長料金等が含まれていると推認され、休憩料金の額の確定が困難であるから、確実を期するため当該日の利用客組数及び営業日数を除外し、右の倍数であつて明らかにその金額が休憩料金であると認められた日の利用客組数及び営業日数のみによることとした。

右Cクラスの一日一室当り当りの回転数は、次のとおり利用客組数を営業日数で除し、更に室数で除して算出され、その結果は一・七六回(小数点三位未満四捨五入)となる。

Cクラスの客室2室(利用客1組当りの休憩料金1,200円)の利用客組数÷利用客組数を算定するに当つての営業日数×Cクラスの客室数=Cクラスの客室2室の回転数

1,234組÷(350日×2室)=1.76回

(3) 次に、昭和四一事業年度のCクラス二室の一日当りの休憩客回転数を算出する。別表二記載のとおり、同事業年度における被控訴人本館の休憩利用の場合のA室は三室で休憩利用料金が一、三〇〇円、B室は四室で休憩利用料金が一、〇〇〇円、C室は二室で休憩利用料金が八〇〇円であることは、弁論の全趣旨により明らかである。そこで、同事業年度における本館客室九室のうちCクラス二室の休憩利用客組数及びその営業日数については、右(2)の昭和四二事業年度の場合と同様、被控訴人本館の昭和四一事業年度における各月分の日計表(前出甲第二二号証の一ないし二四)を基にして算出することができるが、同事業年度の右収入日計表における「非課税」の「飲食及び利用料金」欄の記載は、本館九室のうちBクラスの四室及びCクラスの二室の利用客組数および収入額を合計してものであるから、このうちCクラスの二室分を抽出するためには、控訴人主張のとおり、右(2)とは異なる算式を用いる必要がある。

すなわち、右「飲食及び利用料金欄」の一日の組数をA'、収入額をZとし、Bクラスの客室四室の利用客組数をX、Cクラスの客室二室の利用客組数をYとすれば、次の算式を用いることができる。

A'=X+Y

Z=1,000X+800Y

Y=A'-X

Z=1,000X+800(A'-X)

Z=1,000X+800A'=800X

Z=200X+800A'

X=(Z-800A')÷200

すなわち、Bクラスの客室四室の利用客組数であるXを算出するには前期比日計表により「飲食及び利用料金欄」の収入額Zを求め、これから客室Cクラスの利用料金八〇〇円に同日計表の「飲食及び利用料金欄」の組数A'を乗じた金額を控除し、その控除後の金額を二〇〇円で除せばよいわけであるが、その際には別表三付表1の「差額」欄記載のとおり、右控除後の金額を二〇〇円で除したときに五〇円、六〇円及び一六〇円(またはその整数倍)の端数が生ずる場合のあることが、前出甲第二二号証の一ないし二四(日計表)により認められる。右端数は、ビール等の飲食代金だと推認する控訴人の主張は首肯できないわけではなく、右算出方式の採用の妨げとなるものではないと認められる。

そこで、右算式により算定されたBクラスの客室四室の利用客組数を「飲食及び利用料金欄」の組数Aから控除して、昭和四一事業年度における本館客室のうちCクラス二室の利用客組数及び営業日数を算出すると、別表三記載のとおり、利用客組数は一、五八六組となり、また、右日計表によれば営業日数は三五三日となる。なお、各日の「飲食及び利用料金欄」の収入額を組数で除した一組当りの平均収入額が一、〇〇〇円を超えるものは、その収入額に飲食料金又は延長料金等が含まれているものと推認され、休憩料金の額の確定に問題があるので、確実を期して、控訴人主張のとおり、当該日の利用客組数及び営業日数は除外して、右の算出をした。

付言するに、右に述べた算式は、まずBクラスの客室利用客組数Xを計算し、その数値をB及びCクラスの客室の利用客組数から控除して、Cクラスの客室の利用客組数Yを算出しているのであるが、その結果として得られる組数の数値が整数でない場合が生ずるところから、右のようにまずXを計算し、これに基づいてXを計算するか、直接にYを計算するかで結果に差異を生じうる。例えば、前記日計表の昭和四〇年一二月三日の「飲食及び利用料金欄」の数値を基にして右算式を適用した場合には、次に示すとおり、Bクラスの客室の利用客組数を先順位に算出すると、Bクラスの客室の利用客組数は四組で差額が一〇〇円となり、同日の同欄の利用客組数六組から四組を控除すればCクラスの客室の利用客組数は二組となるが、Cクラスの客室の利用客組数を先順位に算出すると、Cクラスの客室の利用客組数は一組となり、同日の「飲食及び利用料金欄」の組数六組から一組を控除すればBクラスの客室の利用客組数は五組となるもつとも、この例の場合、五組のBクラスの客室の利用料金の合計額五、〇〇〇円と一組のCクラスの客室の利用料金八〇〇円との合計額は五、八〇〇円となり、同日の収入額五、七〇〇円を一〇〇円超過するという結果になる。)。

(昭和40年12月3日の場合)

〔算式Ⅰ〕

利用客組数計A'=6組

収入額Y=5,700円

Bクラスの客室利用客組数=(Z-800A')÷200

=(5,700円-800円×6組)÷200

=4組差額100円

Cクラスの客室利用客組数=6組-4組-2組

〔算式Ⅱ〕

A'=X+Y,X=A'-Y

Z=1,000X+800Y

=1,000(A'-Y)800Y

=1,000A'-200Y

Z+200Y-1,000A'

200Y=1,000A'-Z

Y=(1,000A'-Z)÷200

Cクラスの客室利用客組数=(1,000×6組-5,700)÷200

=1組 差額100円

Bクラスの客室利用客組数=6組-1組=5組

(Bクラス) (Cクラス)

∴収入額1,000円×5組+800円×1組

=5,800円>Z5,700円

右のことから、前記算式は料飲税の非課税の対象となる客室であつても、利用料金の高い部屋から利用されていたものと推認して計算されていることになるが、このこと自体不合理とはいえないことは前述したとおりである。

本館客室九室のうちCクラス二室の一室一日当りの回転数は、次のとおり、右によつて算出した利用客組数を営業日数で除し、更に室数で除して算出され、その結果は二・二五回(小数点三位以下四捨五入)となる。

Cクラスの客室2室(利用客1組当りの休憩料金800円)の利用客組数÷利用客組数を算定するに当つての営業日数×Cクラスの客室数=Cクラスの客室2室の回転数

1,586組÷(353日×2室)=225回

(4) ところで、前出甲第二二、第二三号証の各一ないし二四(日計表)によれば、AないしCクラス全体九室を平均した一室一日当りの回転数は、控訴人主張のとおり、昭和四一事業年度では一、一二回、同四二事業年度では〇、五九回という低い数値しか示していない。すなわち、右日計表の「非課税」欄の「飲食及び利用料金(1人五〇〇円又は六〇〇円)」欄並びに「飲食及び利用料金」欄の「(2)一〇%課税(一人三、〇〇〇円まで)」欄における利用客組数及びその営業日数により、別表四記載のとおり、被控訴人が計上した本館九室の利用客組数及び営業日数(いずれも休憩分)を把握し、この数字を基にして右の回転数を算出すると、次のとおりとなる。

(昭和42事業年度)

昭和42事業年度の利用客組数÷(営業日数×客室数)=本館9室(休憩分)の回転数

1,941組÷(363日×9室)=0.59回

(昭和41事業年度)

昭和41事業年度の利用客組数÷(営業日数×客室数)=本館9室(休憩分)の回転数

3,686組÷(363日×9室)=1.12回

しかしながら、前叙のとおり、同伴旅館の利用客は、旅館側の案内に任せるのが通常であるため、旅館側としては経営効率の点から利用料金の高いクラスの部屋を優先して案内することを通例とすることになるから、もともと、上位クラスの部屋ほど回転数は多いはずである。それにも拘らず、右のように全客室を平均した一日当りの回転数がCクラスのそれより遙かに低いところからすると、右日計表の上位A及びBクラスの利用客組数には相当程度の記入漏れがあると推認せざるを得ない。そして、上記のとおりA、Bクラスの部屋の回転数はCクラスの部屋の回転数を上回るものとなるのであるから、確実性と慎重を期して、右上位クラスの部屋についてもCクラスの部屋と同様の回転数(昭和四一事業年度二、二五回昭和四二事業年度一、七六回)があるものとして推計することにすると、昭和四一、同四二事業年度におけるAないしCクラスの部屋九室全体の記入回転数は昭和四一事業年度につき一・一三回、同四二事業年度につき一・一七回となる。

そうすると、昭和三八事業年度においても、少なくとも右両年度の記入漏れ回転数の平均一・一五回に相当する休憩利用客からの収入金の計上漏れがあつたものと推認しても不合理とはいえないと考えられる。

(5) 被控訴人は、被控訴人主張に係る昭和四一事業年度におけるCクラスの部屋の休憩利用客組数を算定するための前記算式について、実際には多少飲食が伴つているのであるから合理性がないと主張する。しかし、前出甲第三四号証の一ないし六、原審における被控訴人代表者淤見廣本人尋問の結果に弁論の全趣旨を総合すれば、本件係争各事業年度当時においては本館、別館とも各部屋に冷蔵庫等の備付けがなく、飲食物は、利用客の注文に応じて女中などが各部屋に運んで行くというシステムを採つていたことが認められ、又前叙のとおり、被控訴人旅館の客筋には低所得者層の多かつたことが窺われるのであるから、右のような状況のもとで利用客が飲食をとろうとすることはごく限られた例外的な場合であると推認しても不合理ではない。したがつて、右の点が控訴人主張の算式を不当ならしめると解することはできない。また、被控訴人は、前記算式の適用に関し、収入金額に一六〇円、六〇円及び五〇円の端数が生じた場合のほか、一〇円ないし一七六円の端数が生じた場合(別表三の付表1参照)も営業日数及び利用組数から除外すべきである旨主張する。しかし、これらの端数は、その金額からみてかみそり等の販売収入と推認することができるから、これら端数が生じた該当日の営業日数及び利用客組数を除外しなければならないとはいえない。さらに、被控訴人は、昭和四一事業年度のB、Cクラスの休憩利用客の配分に関し、控訴人主張の算定方法によれば、上位Bクラスは年間利用組数において下位Cクラスの約三分の二程度しか利用されていないことになつて、利用客は上位クラスのほうが多いという控訴人の主張の正反対の現象を呈するとか、控訴人算出の昭和四一事業年度のB、C各室利用客組数配分数は著しくバランスを欠いている旨主張する。被控訴人のこの主張は、前記日計表の記載が全て真実なものであることを前提とするわけであるが、この前提の当否こそが問題なのであり、前叙のとおり、右のような結果が算出されるとしても、その原因は、Cクラスの部屋の休憩利用客算定上の不合理にあるというよりも、むしろ右日計表のA、B各クラスの部屋の休憩利用客組数の記入漏れにあると推認するのが妥当である。

次に、被控訴人は、昭和四一事業年度における回転数の算出方法について、A、B、C各室一律に過少割合を求めるべきである旨主張する。この主張は、A、B、C各室につき一律の割合で記入漏れのあることを前提とするものであるが、前叙のとおり、前記日計表の客室利用組数については、料飲税の課税対象外であつた下位のCクラスの部屋において最も真実に近い数字が記入され、上位のA、Bクラスの部屋において除外数が多いと推認されるのであるから、右の主張はその前提を欠き失当である。

被控訴人は、被控訴人の休憩利用客組数、回転数等の算式に関し、その他にも種々に反論しているが、いずれもその根拠に乏しく採用することはできない。

(6) 先に採用した控訴人主張の算式を適用して客室の利用客数が適正に算出されるためには、「飲食及び利用料金欄」の収入額すなわちB及びCクラスの客室の総収入額が、同欄の組数すなわちB及びCクラスの客室の利用客数にCクラスの客室の利用料金を乗じて算出した金額以上になっていることが必要であるが、前記日計表の同欄の「収入額」欄に記載されている収入金額には、右金額以上になつていないものがある。そこで、控訴人は、その日の収入額が同欄の組数にCクラスの客室の利用料金を乗じて計算した金額に満たない場合には、その利用客数はCクラスの客室の利用客組数とし(例えば昭和四一年三月六日分)、その日の収入額がBクラスの客室の利用料金で除した数値が整数で、かつ、その日の利用客組数と一致する場合には、その利用客は全てBクラスの客室の利用客組数とし(例えば同年一月七日、三月三日、一八日、二八日の各分)、その除した数値がBクラスの客室の利用料金の一、〇〇〇円を超える場合には、前述したとおり、これを除外して算出している(昭和四〇年二月二〇日、二三日、二四日、二九日の各分)。

このようなことは、同伴旅館という業態上、また、前述したような被控訴人の旅館の客筋からして、その収入の大部分は定められた客室利用料金の額によるものであり、飲食料金及び客室利用延長料金の額は総収入金額に比して僅少であると推認されることからすれば、特に不合理であると認めるべきほどのものてせはなく、やむを得ない方法であるというべきである。

(7) 仮に、前記算式を用いて客室一室当りの利用客組数を前述のとおり算定することが、前記のように、その算出された数値に端数が生ずること、並びに、B及びCクラスの客室の総収入金額がB及びCクラスの客室の利用客組数にCクラスの利用料金を乗じて算出した金額以上になつていない日があることなどから、その合理性に疑念をはさむ余地があるものとすれば、それは、控訴人主張のとおり、客室の飲食料金及び延長利用料金等の実額が把握できないこと、及び、日計表に記載されている数値の真実性に疑問があることなどに基因するものと考えられる。

そうすると、右の疑念は、前記算式を日計表の個々の営業日ごとに適用した結果であると認められるから、それを用いずに手間の総収入金額と総利用客組数を用いて前記算式により計算すれば、右のとおり個々の営業日ごとの数値に若干問題があるとしても、これは捨像されてしまうことになるので、試みにこの方法によつて昭和四一事業年度の回転数を算出してみることとする。

前出甲第二二号証の一ないし二四(日計表)によれば、別表三の付表1のとおり、B及びCクラスの各室の利用客組数の合計は二、七一二組となり、同各客室の利用料金の合計額は二四一万〇、六七六円となることが認められる。そこでまず、B及びCクラスの各室のそれぞれの利用客組数を算出すると、次のとおり、Bクラスの客室は、一、二〇五組、Cクラスの客室は一、五〇七組となる。

(Bクラスの客室の利用客組数)

{2,410,676円-(800円×2,712組)}÷200円

=2,410,676円÷200円

=1,205,38≒1,205組

(Cクラスの客室の利用客組数)

2,712組-1,205組=1,507組

なお、Cクラスの客室の利用客組数を先順位に計算すると

{(1,000円×2,712組)-2,410,676円}÷200円

2=301,324円÷200円

2=1,506,62≒1,507組

右のとおり、年間合計額を基礎とした数値に前記算式を適用して算出すれば、Bクラスの客室の利用客組数を先順位に計算するか後順位に計算するかによつて、算出数値に不突合は生ぜず、その算定された利用客組数はより正確な数値となると考えられる。

そこで、営業日数であるが、控訴人は昭和四一事業年度の営業日数を三五三日として算定しているが、同事業年度の場合、前記日計表によれば、昭和四一年一月一五日ないし二一日及び二三日(合計八日)のCクラスの客室の宿泊料の記載はあるが休憩料の収入の記載がないので、より正確を記す意味でこれを営業日数から除外して計算すると三五七日(365日-8日=357日)となる。

そうすると、昭和四一事業年度のCクラス二室の各室の回転数は、次のとおり二・一回(少数点以下四捨五入)となる。

(利用客組数) (営業日数)(客室数)(回転数)

1,507組÷(357日×2室)=211回

ところで、前記(4)においては、控訴人が主張した昭和三八事業年度における本館九室全体を通じた各室の記入漏れ回転数を昭和四一事業年度の一・一三回と同四二年事業年度の一・一七回の平均値である一・一五回だと推認したわけであるが、仮に先に述べたとおり、本館Cクラス二室の回転数の計算上、両事業年度とも日計表の各営業日ごとの個々の収入額、利用客組数を用いるのではなく、年間の合計額によるのがより正確であるとすれば、その回転数は昭和四一事業年度の場合二・一一回となるので、各室についての収入金額の計上漏れ回転数は、同事業年度においては二・一一回から前記の一、一二回を控除した〇・九九回となり、昭和四二年事業年度においては一・七六回から前記の〇・五九回を控除した一・一七回となり、したがつて昭和三八事業年度のそれはその平均値一・〇八回と推認すべきことになる。

(8) さて、当初の算式に戻つて、前記(1)ないし(4)の推計方法は必ずしも不合理とはいえないと考えられるところ、前記2の冒頭で述べたとおり、本件簿外普通預金への収入金計上漏れ分の入金間隔は平均四日と認められる。そうすると、本件簿外普通預金への入金中、収入金計上漏れによる一回の入金額の最高限度は、次に掲げる方法により算出された五万二、〇〇〇円(一、〇〇〇円未満端数切捨て)としても不合理だとはいえないことになる。

<1>  本館九室の計上漏れ回転数 一・一五回

<2>  本館九室を一回利用した場合の休憩料金合計額(別表二参照) 一万一、四〇〇円

<3>  本館九室の一日当り収入金計上漏れ額合計(<1>×<2>) 一万三、一一〇円

<4>  本件簿外普通預金の入金日の平均間隔 四日

<5>  一回の入金額の最高限度額(<3>×<4>) 五万二、四四〇円

なお、前記日計表に記入漏れとなつている回転数につき、控訴人主張のとおり、記入漏れの少ないと予想されCクラスを除き、上位のA及Bクラスの部屋を通じて計算しても、一回の入金額の最高限度額は、次のとおり、前記方法によつた場合とほぼ同様に、約五万二、〇〇〇円となる。すなわち、まず、昭和四一、同四二事業年度のA及びBクラスを通じた日への記入漏れ回転数は、前記日計表によれば、控訴人主張のとおり昭和四一事業年度で一・四三回、同四二事業年度で一・五一回であるから、昭和三八事業年度においても、上位クラスのAクラスの室について少なくとも右両年度の記入漏れ回転数の平均一・四七回に相当する休憩利用客からの収入金の記入漏れがあつたと推認しても不合理ではないと考えられる。そうすると、控訴人主張のように、本件簿外普通預金への入金額中、収入金計上漏れによる一回の入金額の最高限度額は、次に掲げるとおり、前同様、五万二、〇〇〇円(一、〇〇〇円未満端数切捨て)となる。

<ア> 本館上位クラスA室一室当たりの計上漏れ回転数 一・一五回

<イ> 本館上位クラスA室を一回利用した場合の休憩料金合計額 九、〇〇〇円

<ウ> 本館上位クラスA室の一日当り収入金計上漏れ合計額(<ア>×<イ>) 一万三、二三〇円

<エ> 本件簿外普通預金の入金日の平均間隔 四日

<オ> 一回の入金額の最高限度額(<ウ>×<エ>) 五万二、九二〇円

(9) 右の<1>ないし<5>及びないしの各算出は、前叙のとおり、昭和四一、同四二年事業年度の収入金額の計上漏れ回転数は昭和三八事業年度においても妥当であろうとの推認に基づいているわけであるが、これに対し、被控訴人は単に右推論は正しくないと主張するのみで具体的な根拠を挙げて反論していないこと、及び、被控訴人の売上金収入に昭和三八事業年度と昭和四一、同四二年事業年度とで特に変化があつたと認めるに足る証拠は存在しないことに照らし、右の推認は不合理ではないと認められる。

ところで、右の算出方法が不合理ではないとしても、前記(7)のとおり、本館客室九室を平均した収入金額の計上漏れ回転数を各室につき一・〇八回とすることにも相当の根拠があるので、試みに、この数値を用いて前記算式により一回の入金額の最高限度額を算出すると、四万九、二四八円となり、前記五万二、〇〇〇円と著しい差はない。以上によれば、五万二、〇〇〇円基準は妥当なものということができる。

(10) そこで、昭和三八事業年度における収入計上漏れ金額の算出に入るわけであるが、前記2の冒頭で述べたところと五万二、〇〇〇円基準について前述したところからして、同事業年度における本件簿外普通預金への入金中、訴訟人の当審における主張二2(3)の表記載の各金額を控除して計算すべきである。そうすると、算出経過は別表七(ただし、別表七の1ないし3の各(1)の中の<5>欄に「金額」とあるのを「五万二、〇〇〇円以下の金額」に訂正するする。)に、算出内訳は別表八(一枚目)にそれぞれ示すとおり、同事業年度における本件簿外普通預金への入金合計額二、四五二万六、〇〇一円から前記2の冒頭記載の<1>ないし<5>に基づく基準に従つて算出した入金分を控除した金額四四三万九、〇〇〇(別表六の三枚目の合計欄参照)をもつて当該事業年度における被控訴人の収入金計上漏れ額と推計することが可能であり、このような推計方法が不合理なものとすべき根拠は見出し難い。

もつとも、右(9)で述べたとおり、一回の入金額の最高限度額を四万九、二四八円とすることがより正確を期すことになるとも考えられるので、試みに、右数値(ただし一、〇〇〇円未満を切り捨てて四万九、〇〇〇円とする。)を用いて、これを超える金額を除外して収入金計上漏れ額を前記算式に従い算出すると、次のとおり四二二万九、〇〇〇円となる。

<省略>

(注)( )書欄は控訴人主張額五二、〇〇〇円基準の場合の金額(別表六、七)

2  (昭和三九ないし同四二事業年度の収入金計上漏れ額)

被控訴人は、その旅館業の売上げに係る収入金額の一部を除外し、その収入除外金額を本件簿外普通預金に入金していたわけであるが、右預金が昭和三九事業年度の中途において解約されているため、同年以降の各事業年度の場合においては、昭和三九事業年度の場合のように右預金から収入金計上漏れ額を推計する方法を採ることができない。そこで、控訴人は、右各事業年度における収入金計上漏れ額について、昭和三八事業年度における収入金額一、〇一〇万四〇、一七円(申告収入金額五六六万五、〇一七円に収入金額計上漏れ額四四三万九、〇〇〇円を加算した金額)を本館客室数九で除した一室当り収入金額一一二万二、六六八円に比準同業種法人の昭和三八対応事業年度における各室一室当り平均収入金額に対する昭和三九年以降の対応各事業年度の収入の平均増加率(比準同業種法人五社AないしEそれぞれの対応各事業年度における各室一室当り平均収入金額の昭和三八対応事業年度に対する増加率の単純平均)を乗じた金額を算出している。そこで、右推計方法の合理性について、以下検討してみることとする。

(1.) まず、右比準同業種法人五社AないしEと被控訴人との類似性について検討する。

原審証人飯干榮間の証言とこれによつて成立の認められる乙第三号証の三、同内藤芳美の証言とこれによつて成立の認められる乙第四号証の一、二、第五号証の一ないし三、成立に争いのない乙第三四号証の一、当審証人吉田修の証言とこれによつて成立の認められる同号証の二、同大原豊美の証言とこれによつて成立の認められる乙第三七号ないし第四二号証に弁論の全趣旨を総合すれば、控訴人主張の比準同業種法人五社(AないしE法人)は、東京国税不服審判所所部係官飯干榮間が昭和四七年一二月一五日渋谷税務署において被控訴人と同業を営む法人の関係資料等を調査し、同税務署管内で同伴旅館を営む青色申告法人のうち、被控訴人とその規模(室数及び料金)が概ね類似するものとして抽出した五社であること、右飯干係官による抽出は、推計計算の合理性をはかる国税当局の慣行に従い、<1>更正等の処分を受け係争中のもの、<2>他の事業を兼業し収入金額の区分が明確でないもの、<3>災害等により経営状態が異常なもの等を除いた法人のうちから、<ア>渋谷署管内で同伴旅館を営むこと、<イ>青色申告法人であること、<ウ>被控訴人と規模が概ね類似すること等の基準により行われたものであること、右の五社は本件各事業年度の異議申立当時(昭和四三年一二月)の渋谷税務署における異議審理担当官畠中幸吉が選定した五社中の五社であること、右により選定されたAないしE法人の五社及び被控訴人の本件各事業年度における部屋別利用料金及び設備は別表二記載のとおりであること、右のA法人は昭和三五年四月から現在まで渋谷区桜ヶ丘で同伴旅館を営んでおり、建物は鉄筋コンクリート造五階等であるが、その割には客室が少なく駐車場の設備もないこと、B法人は昭和三六年八月に渋谷区猿楽町において同伴旅館を開業し、昭和五〇年頃に廃業しているが、開業当時の建物は木造二階建であり、その地下に乗用車四台を収容できる駐車場設備を有していたものの、その周囲は一般住宅に囲まれていた上、他の同業者も存しなかつたので、同伴旅館の立地条件としては必ずしも有利でなかつたこと、C法人は昭和二七年に渋谷区宇田川町において同伴旅館を開業し、昭和四七年に廃業しているが、開業当時の建物は木造二階建であり、駐車場の設備はなく、その所在地は渋谷区の繁華街として栄えていたところであり、人通りが多く利用客が入館しづらい状況にあつて、同伴旅館の立地条件としては必ずしも有利ではなかつたこと、D法人は昭和三一年三月に渋谷区千駄ヶ谷一丁目において同伴旅館を開業し、昭和四六年頃からは一般旅館となつたが、同伴旅館当時の建物は木造二階建であり、駐車場の設備はなかつたこと、E法人は昭和三二年頃渋谷区千駄ヶ谷三丁目において同伴旅館を開業し、昭和四六年に廃業したが、開業当時の建物は木造二階建であり、駐車場の設備はなかつたこと、これに対し被控訴人の本館は国電渋谷駅(東横線、井の頭線、地下鉄の各駅とも近接)から井の頭線沿いに徒歩一〇分弱の位置にあり、繁華街から僅かにはずれて人通りが少なく、当時近隣には同業者も多く同伴旅館としては有利な状況にあつたこと、部屋別利用料金は一般的には同伴旅館各自の立地条件及び設備の良否が化体されているものと認められるところ、被控訴人及び右五社中の四社(部屋別利用料金が不明のE法人分を除いたもの)の部屋別の利用料金のうち最高及び最低のものを各事業年度別にみてみると、控訴人の当審における主張二3(1)に記載する表のとおりであり、被控訴人の部屋別利用料金は概ね右五社の最高額及び最低額の間にあつて、両者の部屋別利用料金が類似していること、しかも右五社の部屋数は本件各事業年度を通じて最多が一八、最小で一一で被控訴人の部屋数の半数以上二倍となつており、いわゆる倍半分方式(事業規模の近似した同業者を抽出するに当り、売上金額、売上原価又は仕入金額その他の指標が概ね上限値二・〇倍、下限値〇・五倍の範囲に入らない者を除外する方法)の範囲内にあること、以上の各事実を認めることができ、右認定に反する被控訴人代表者淤見廣本人尋問の結果は、前掲各証拠に照らし措信することができない。

右認定に係る選定の経緯及び被控訴人との類似性に照らせば、控訴人がしたAないしBの比準同業種法人の選定は相当であり、合理性があるというべきである。

(2) 被控訴人は、控訴人主張の原審における比準同業種法人五社と当審における五社との同一性に疑問をはさんでいるが、前掲各証拠によれば両者が同一法人を選定していることが明らかである。また、被控訴人は、その本館は床の間と称しても通常のものではなく、バスもそう称するのもはずかしい安普請のものであつて、近隣、遠方を問わず通常の旅館とは比較にならないほど低級旅館であつたと主張するが、被控訴人の本館が右のように他と比較にならないほど低級旅館であつたことを認めるに足る証拠はない。さらに、被控訴人は、被控訴人の本館は採用可能ラインを下回るのに対し、右比準同業種法人五社は右ラインを大幅に上回ることを前提として、このような五社を集めて平均値を算出したとしても、両者の類似性が欠如している以上、その数値を適用することはできない旨主張するが、右前提事実を認めるに足る証拠がない(弁論の趣旨により設立の認められる甲第三六号証の五の記載は昭和五〇年四月頃のいわゆるモーテルの採算可能ラインに関するものであつて、本件に適切な証拠とはいえない。)なお、被控訴人は、右五社に関する資料提出の違法を主張するもののようであるが、法人税法一六三条に規定する国税当局の守秘義務との関係で、比準同業種法人AないしEの法人名等を秘匿して証拠を提出することが違法と断ずることはできない。

(3) 前記(1)記載の各証拠を総合すれば、比準同業種法人AないしEの五社の本件係争各事業年度別の各収入金額及び各一室当りの平均収入金額等は別表一一記載のとおりであることが認められ、右認定に反する証拠はない。右の各数値を基礎にして、昭和三九ないし同四二事業年度における収入金計上漏れ額を前記2の冒頭で述べたとおりの方法で算出することには合理性があると認められるのでこれによつて計算すると、その結果は別表一〇記載のとおりとなる。各事業年度末の計算を次項以下で詳述することとする。

(4) (昭和三九事業年度の収入金計上漏れ額)

前記比準同業種法人AないしEの昭和三九事業年度の同三八事業年度に対する収入金額の平均増加率は、別表一一記載のとおり一〇三・九三パーセントであり、被控訴人の同三八事業年度における本館一室当りの平均収入金額は前記のとおり一一二万二、六六八円であるから、この収入金額に右一〇三・九三パーセントを乗じて算出した一一六万六、七八九円が被控訴人の昭和三九事業年度における本館一室当りの平均収入金額と認めることができる。そこで、本館客室数九をこれに乗じて本館の総収入金額を求めると一、〇五〇万一、一〇一円となり、これから被控訴人の申告及び修正に係る本館の収入金額六九二万三、九四〇円を控除すると、昭和三九事業年度の収入金計上漏れ額は三五七万七、一六一円となる。

なお、昭和三九事業年度の収入金計上漏れ額は、本件簿外普通預金の昭和三八年一二月一日から同三九年五月日までの期間に係る収入について前記2の冒頭で述べた基準に基づいて算出した収入金計上漏れ額二二七万九、〇〇〇円(別表六の五枚目合計欄参照)により、被控訴人の当審における主張二3(3)記載の算式により算定すると四七九万三七五八円となる。この数値は、右比準同業種法人の収入金額の平均増加率により算出した右収入金計上漏れ額三五七万七、一六一円を上回つており、後者の推計が控え目なものであることが窺える。

(5) (昭和四〇事業年度の収入金計上漏れ額)

前記比準同業種法人AないしEの昭和四〇事業年度に対する収入金額の平均増加率は、別表一一記載のとおり一〇八・八八パーセントであり、被控訴人の同三八事業年度における本館一室当りの平均収入金額は一一二万二、六六八円であるから、この収入金額に右一〇八・八八パーセントを乗じて算出した一二二万二、三六一円が被控訴人の当該事業年度における本館一室当りの平均収入金額と認めることができる。そこで、本館客室数九をこれに乗じて本館の総収入金額を求めると一、一〇〇万一、二四九円となり、これから被控訴人の申告及び修正に係る本館の収入金額八三六万八、九六四円を控除すると、昭和四〇事業年度の収入金計上漏れ額は二六三万二、二八五円となる。

(6) (昭和四一事業年度の収入金計上漏れ額)

前記比準同業種法人AないしEの昭和四一事業年度の同三八事業年度に対する収入金額の平均増加率は、別表一一記載のとおり一二〇・七三パーセントであり、被控訴人の同三八事業年度における本館一室当りの平均収入金額は前記のとおり一一二万二、六六八円であるから、この収入金額に右一二〇・七三パーセントを乗じて算出した一三五万五、三九七円が被控訴人の昭和四一事業年度における本館一室当りの平均収入金額と認めることができる。そこで、本館客室数九をこれに乗じて本館の総収入金額を求めると一、二一九万八、五七三円となり、これから被控訴人の申告に係る本館の収入金額七六九万一、五八六円を控除すると、昭和四一事業年度の収入金計上漏れ額は四五〇万六、九八七円となる。

(7) (昭和四二事業年度の収入金計上漏れ額)

前記比準同業種法人AないしEの昭和四二事業年度の同三八事業年度に対する収入金額の平均増加率は、別表一一記載のとおり一二七・八九パーセントであり、被控訴人の同三八事業年度における本館一室当りの平均収入金額は一一二万二、六六八円であるから、この収入金額に右一二七・八九パーセントを乗じて算出した一四三万五、七八〇円が被控訴人の昭和四二事業年度における本館一室当りの平均収入金額と認めることができる。そこで、本館客室数九をこれに乗じて本館の総収入金額を求めると一、二九二万二、〇二〇円となり、これから被控訴人の申告に係る本館の収入金額八九〇万七、七四五円を控除すると、昭和四二事業年度の収入金計上漏れ額は四〇一万四、二七五円となる。

(8) 以上の計算は、控訴人の当初の主張のとおり、昭和三八事業年度における収入金計上漏れ額を四四三万九、〇〇〇円であることを前提とするものであり、これが不合理とはいえないことは前叙のとおりであるが、前記三ノ(10)の記載のとおり、仮に、右収入金計上漏れ額を四二二万九、〇〇〇円とするほうがより正確であり、より合理性が高まるものとして、これを基礎に計算すると、同事業年度における本館九室の収入金額は、被控訴人の申告に係る収入金額五六六万五、〇一七円に右四二二万九、〇〇〇円を加算した金額である九八九万四、〇一七円となり、本館一室当りの収入金額は一〇九万九、三三五円となる。この本館一室当りの収入金額を用いて前記比準同業種法人の昭和三八事業年度に対する同三九ないし四二事業年度の各事業年度の平均収入増加率を乗じて本館収入金額を計算し、被控訴人の右各事業年度の収入金計上漏れ額を算出すると、次のとおりとなる。

<省略>

(注)「申告による本館収入金額」は別表九に記載された金額である。

四  (各事業年度における所得金額)

控訴人主張の本件各事業年度における被控訴人の所得金額は別表一ノ1ないし5の記載のとおりであつて、各事業年度における確定又は修正の申告所得金額に収入金計上漏れ額及び減価償却超過額等を加算した合計額から未納事業税額を減算した金額である。そこで、以下の各項では、各事業年度毎にその(1)において右各項目について順次検討してゆくこととする。なお、前記三においては、昭和四一事業年度のCクラスの客室の回転数を二・一回とすることがより合理的であるとも考えられるため、試みに、これを用いて各事業年度の収入金計上漏れ額を算定しているので、この場合の所得金額についても以下の各項の(2)において順次触れることとする。

1  (昭和三八事業年度の所得金額)

(1)  右事業年度における<1>確定申告所得金額がマイナス八万三、七二四円であることは、当事者間に争いがない。<2>収入金計上漏れ額が四四三万九、〇〇〇円であることは、前記三1(10)で認定したとおりである。そして、<3>未納事業税認定損が一、〇五〇円であることは、当事者間に争いがない。したがつて、別表一の1記載のとおり、右事業年度における所得金額は、右<1>に<2>を加算し、これから、<3>を減算した四三五万四、二二六円となる。

(2)  前記回転数を二・一一回とした場合の右事業年度における収入金計上漏れ額は、前記三1(10)のとおり、四二二万九、〇〇〇円となるので、これを右<2>の数字と置き替えて右の所得金額を算出すると、別表三〇記載のとおり四一四万四、二二六円となる。

2  (昭和三九事業年度の所得金額)

(1)  右事業年度における<1>修正申告所得金額が八五万六、二〇五円であることは、当事者間に争いがない。<2>加算すべき収入金計上漏れ額が三五七万七、一六一円であることは、前記三2(4)で認定したとおりである。そして、<3>減算すべき未納事業税認定損が別表一の2の附表のとおり三五万四、九〇〇円であることは、弁論の全趣旨により明らかである。したがつて、別表一の2記載のとおり、右事業年度における所得金額は、右<1>に<2>を加算し、これから、<3>を減算した四〇七万八、四六六円となる。

(2)  前記回転数を二・一一回とした場合の右事業年度における収入金計上漏れ額は、前記三2(8)のとおり、三五八万八、九〇二円となるので、これを右<2>の数字と置き替えて右の所得金額を算出すると、別表三〇記載のとおり三八六万〇、二六七円となる。

3  (昭和四〇事業年度の所得金額)

(1)  右事業年度における<1>修正申告所得金額が九〇万六、八〇九円であることは、当事者間に争いがない。<2>加算額中、収入金計上漏れ額が二六三万二、二八五円であることは、前記三2(5)で認定したとおりであり、広告宣伝費中否認が二〇万であることは当事者間に争いがなく、雑費中否認が二、〇〇〇円であることは原判決認定のとおりであり(原判決六六枚目表一行から八行目までの理由説示を引用する。)、減価償却超過額が八二四万四、五二六円であることは当事者間に争いがないので、その合計額は三六五万八、八一一円となる。そして、<3>減算すべき未納事業税認定損が別表一の3の附表のとおり一一万一、〇五〇円であることは、弁論の全趣旨により明らかである。したがつて、別表一の3記載のとおり、右事業年度における所得金額は、右<1>に<2>を加算し、これから、<3>を減算した四四五万四、五七〇円となる。

(2)  前記回転数を二・一一回とした場合の右事業年度における収入金計上漏れ額は、前記三2(8)記載のとおり、二四〇万三、六三一円となるので、これを右<2>の中の収入金計上漏れ額の数字と置き替えて右の所得金額を算出すると、別表三〇記載のとおり四二二万五、九〇六円となる。

4  (昭和四一事業年度の所得金額)

(1)  右事業年度における<1>確定申告所得金額が六一万〇、四七九円であることは、当事者間に争いがない。<2>加算額中、収入金計上漏れ額が四五〇万六、九八七円であることは、前記三2(6)で認定したとおりであり、雑費中否認が一万八、四四〇円であることは原判決認定のとおりであり(原判決六六枚目表九行目から裏六行目までの理由説示を引用する。)、減価償却超過額が七六〇万〇、一二五円であることは当事者間に争いがないので、その合計額は五二八万五、五五二円となる。そして、<3>減算すべき未納事業税認定損が別表一の4の附表のとおり二七万九、五八〇円であることは、弁論の全趣旨により明らかである。したがつて、別表一の3のとおり、右事業年度における所得金額は、右<1>に<2>を加算し、これから、<3>を減算した五六一万六、四四七円となる。

(2)  前記回転数を二・一一回とした場合の右事業年度における収入金計上漏れ額は、前記三2(8)記載のとおり、四二五万三、四七五円となるので、これを右<2>の中の収入金計上漏れ額の数字と置き替えて右の所得金額を算出すると、別表三〇記載のとおり五三六万二、九一七円となる。

5  (昭和四二事業年度の所得金額)

(1)  右事業年度における<1>確定申告所得金額が一〇九万七、六七六円であることは、当事者間に争いがない。<2>加算額中、収入金計上漏れ額が四〇一万四、二七五円であることは、前記三2(7)で認定したとおりであり、修繕費中否認が一九万三、三九五円、広告費中否認が一二万円、雑費中否認が八、〇〇〇円であることは原判決認定のとおりであり(原判決六六枚目裏七行目から六七枚目表一〇行目までの理由説示を引用する。)、減価償却超過額が五九万四、五四一円であることは当事者間に争いがないので、その合計額は四九三万〇、二一一円となる。そして、<3>減算すべき未納事業税認定損が別表一の5の附表のとおり一一万〇、八二〇円であることは、弁論の全趣旨により明らかである。したがつて、別表一の5のとおり、右事業年度における所得金額は、右<1>に<2>を加算し、これから、<3>を減算した五九一万七、〇六七円となる。

(2)  前記回転数を二・一一回とした場合の右事業年度における収入金計上漏れ額は、前記三2(8)記載のとおり、三七四万五、七〇六円となるので、これを右<2>の中の収入金計上漏れ額の数字と置き替えて右の所得金額を算出すると、別表三〇記載のとおり五六四万八、四九八円となる。

五  (別個の観点からみた推計の合理性)

前記四の所得金額の推計によれば、昭和四二事業年度分につき5の(2)の方法によるときは、所得金額が五六四万八、四九八円となつて、同事業年度の更正処分(再更正)の所得金額が五七七万〇、三三八円に一二万一、八四〇円不足することになる。もともと、以上の各推計は、被控訴人の本館客室の休憩利用料金のみに限定して行われたものであつて、被控訴人にはそのほか、本館の宿泊料金、昭和三九事業年度以降は、別館の休憩利用料金及び宿泊利用料金の各収入があるので、これらをも推計の基礎とする方法を採れば、さらに精度の高い数値が得られるものと考えられる。そこで、控訴人が別個の観点からみた推計として主張する方法について、順次検討することとする。すなわち、控訴人は、昭和四一、同四二事業年度の被控訴人の日計表から算出された本館の料飲税の非課税対象たる客室の休憩に係る回転数(昭和四一事業年度一・二四回、同四二事業年度一・七六回)及び宿泊に係る回転数(昭和四一事業年度〇・六五回、同四二事業年度〇・八三回)と別館の料飲税の非課税対象たる客室の休憩に係る回転数(昭和四一事業年度〇・六二回、同四二事業年度〇・六〇回)から、別館の客室の休憩に係る回転数を昭和四一事業年度一・一八回、同四二事業年度一・二七回と算出し、その休憩に係る回転数の平均値一・二三回、宿泊に係る回転数の平均値〇・六一回をもつて、別館の昭和三九、同四〇事業年度の収入金額を算出している。そして、本館の昭和三八ないし四〇事業年度の収入金額は、右の本館の休憩に係る回転数(一・二四回と一・七六回)の平均値一・五〇回、宿泊に係る回転数(〇・六五回と〇・八三回)の平均値〇・七四回をもつて算出し、右の非課税分の回転数を課税分にも適用して収入金額を算出している。これらの推計方法の合理性が検討の対象となる。

1  前出甲第二二及び第二三号証の各一ないし二四(日計表)によれば、被控訴人作成の日計表に基づく収入金額の状況は別表一七記載のとおりであることが認められる。そして、被控訴人の昭和四一、同四二事業年度における法人税の申告収入金額は同表下段に記載のとおりであることは弁論の全趣旨に照らし明らかである。そうすると、両事業年度とも両者はほぼ一致しているので、被控訴人は、日計表記載の収入金額を基礎として法人税の申告収入金額の計上したものと推認することができる。

そこで、右日計表の分析に入るわけであるが、まずその前提として、弁論の全趣旨によれば、被控訴人の本館及び別館の本件各事業年度別、休憩又は宿泊(以下「利用形態」という。)別、料飲税課税非課税別、利用料金の客室数は別表一八記載のとおりであることが認められ、右甲号各証(日計表)によれば、昭和四一、同四二事業年度における日計表記載の本館及び別館別(以下「店舗別」という。)、利用形態別、料飲税課税非課税別の利用客組数及び営業日数は別表一九の1及び2記載のとおりであることが認められる。そして、これらを基礎として右両事業における本館及び別館の料飲税課税非課税別、利用形態別の客室一室一日当りの平均利用回転数(以下「改定回転数」という。)を算出すると。別表二〇の1記載のとおりになると認められる(なお、右の改定回転数のうち、昭和四一事業年度分の別館の宿泊分については、控訴人主張の表のとおり、昭和四一年八月一日以降料飲税の免税点が引き上げられたことにより、料飲税課税非課税別客室数に増減があつたので、別表二〇の2記載のとおり算出したものである。)。

そこでまず、本館について、別表二〇の1記載の改定回転数をみると、被控訴人主張のとおり、<1>休憩に係る改定回転数については、非課税対象の客室のほうが課税対象客室よりも上回つており、<2>宿泊に係る改定回転数については、昭和四一、同四二事業年度とともに非課税対象客室のみであるが、それぞれ〇・六五回、〇・八三回となつていることが認められる。次に、別館についてこれをみると、控訴人主張のとおり、<1>休憩に係る改定回転数については、昭和四一、同四二事業年度とともに非課税対象客室のみであるが、それぞれ〇・四九回、〇・四四回となつており、両事業年度の本館の休憩(非課税)に係る改定回転数一・二四回、一・七六回に比し異常に低い数値となつており、<2>宿泊に係る改定回転数については、非課税対象の客室のほうが課税対象客室よりも上回つていることが認められる。

右によれば、被控訴人が日計表に記載した利用客組数を基礎とする改定回転数を店舗別及び利用形態別にみた場合、客室が課税対象客室と非課税対象客室の両室あるときは、いずれも非課税対象客室の改定回転数が多くなつているわけであるが、このことは前述した同伴旅館においては利用料金の高額な上位クラスの部屋を優先的に利用するものであるという事実と矛盾することになる。このことは、控訴人主張のとおり、被控訴人が日計表の作成にあたつて、飲料税が課税されるべき上位クラスの部屋に係る利用客組数及び利用料金等の額につき、実際の数値よりも過少に記載されていることを示すものと推認することができる。また、課税対象客室のみである別館の休憩に係る改定回転数についてみた場合、当該回転数が本館の休憩に係る非課税対象客室のそれよりも著しく低くなつているわけであるが、これは、控訴人が主張するとおり、被控訴人が強調する本館の客室が劣悪であるため利用客組数が少なかつたということと矛盾し、不自然な結果となつているといわざるを得ない。控訴人主張のとおり、これらの点から、別館の休憩に係る収入金額についても、収入金計上漏れがあると推認することには合理性があると認められる。

被控訴人は、別表二〇の1の「本館・宿泊・課税」欄には一部の数値が記載されていない点を不当と主張するが、右数値を加えないで改定回転数を算出したのは、控訴人主張のとおり、被控訴人の収入計上漏れ金額の算出に当り少しでも被控訴人の不利となることのないように愼重を期したためであつて、このことをもつて右の計算が不合理とすることはできない。のみならず、被控訴人が主張する右数値を加えて改定回転数を算定し、これを基礎として昭和三八ないし同四〇事業年度の収入金額及び所得金額を計算しても、控訴人主張のとおり、控訴人が主張している所得金額を上回る結果となるに過ぎないので、右の一部除外の方法による推計に合理性がないことの理由とすることはできない。

また、被控訴人は、控訴人が前記のとおり、別館、休憩の課税対象客室と本館、休憩の非課税対象客室の改定回転数を比較し、前者が異常に低いと指摘したのに対し、別館、休憩の課税対象客室の比較の対象とすべきなのは、本館、休憩の課税対象客室であると主張するが、右主張が失当である理由として控訴人が被控訴人の反論に対する再反論の項の三(別個の観点からみた推計の合理性)で主張する点は正当として是認することができ、被控訴人の右主張は採用することができない。

2  ところで、控訴人は被控訴人が日計表に記載した数値のうち、本館及び別館の料飲税非課税対象客室に係る数値を用いて算定した改定回転数を基礎として算定される回転数を課税対象客室の最低回転数とした上で、被控訴人の収入金計上漏れ額を推計している。控訴人がその根拠として主張するもの(控訴人の当審における主張三4参照)のうち、<1>の点、すなわち上位クラスの客室である課税対象客室のほうが下位クラスの客室である非課税対象客室よりもその回転数か高いとして差し支えないことは、既に説示したとおりである。この点、被控訴人は種々反論しているが、いずれも根拠が乏しく、採用することができない。むしろ、控訴人が右推認が合理的であることについて、その当審における主張三の項で主張している種々の点は正当として是認することができる。

また、控訴人が前記推計の根拠として主張する<2>の点、すなわち控訴人主張のような料飲税課税構造からみて、日計表の記載事項のうち非課税対象客室に係る部分については、その信頼性がより高いものと推認できるとする点も、経験則に照し是認できる。この点についても、被控訴人は種々反論しているが、いずれも根拠に乏しく採用することができない。

3  さて、昭和四一、同四二事業年度における本館及び別館の休憩、宿泊別の改定回転数が別表二〇の1記載のとおりであることは、既述のとおりである。

そして、別館の休憩に係る最低回転数は、別館の休憩に係る客室がすべて課税対象客室であるところから、別館の宿泊に係る非課税対象客室の改定回転数に、本館休憩に係る非課税対象客室の改定回転数が同宿泊に係る非課税対象客室の改定回転数に占める割合を乗じて、右各事業年度につきそれぞれ一・一八回、一・二七回と算出される。この点は、控訴人主張のとおり、一般に同伴旅館においては、その業態に照らし、宿泊客室の一室一日当りの客室回転数と休憩客室の一室一日当りの客室回転数とは相関関係を有し、宿泊客が多い、同伴旅館にあつては休憩客も多いと推認できるから、右の推計方法には合理性が認められる。

被控訴人は、右の推計に関して、別館、休憩、課税室の回転数と本館、休憩、非課税室の回転数とは異質のものであるから比較できないとか、宿泊客が多い同伴旅館にあつては休憩客も多いというのは実態に合わない旨主張しているが、いずれも根拠に乏しく採用することができない。

4  (最低回転数に基づく収入金額の推計)

控訴人は、最低回転数を用いて被控訴人の本件各事業年度の収入金計上漏れ額(収入除外金額)を算出するための計算方法として、<1>収入除外金額は非課税対象客室に係る収入金額に課税対象客室に係る収入金額を加算したものから申告収入金額を減算したものとし、<2>課税(非課税)客室に係る収入金額は課税(非課税)対象客室全室に係る年間利用客組数の合計組数に課税(非課税)対象客室一室一組当り平均利用料金を乗じたものとし、<3>課税(非課税)対象客室全室に係る年間利用客組数の合計組数は最低回転数に営業日数を乗じ、さらに課税(非課税)対象客室数を乗じたもの等としている。そして、本件各事業年度のうち、昭和四一、同四二事業年度については、日計表に基づいて算出された最低回転数を用いて被控訴人の収入金額を算定し、その余の昭和三八ないし同四〇事業年度分については、右昭和四一、同四二事業年度における最低回転数の平均値を用いて収入金額を算定している。この推計方法は、これまで検討してきたところに照らし合理性が認められる。被控訴人は、右の算出方法について種々反論しているが、いずれも根拠に乏しく採用することができない。

そこでまず、昭和四一、同四二事業年度における収入金額を算出すると、控訴人主張のとおり、昭和四一事業年度分は別表二一記載のように、一、八七五万三、三二八円となり、同四二事業年度分は別表二二記載のように、二、四六五万六、〇一九円となることが認められる。

次に、昭和三八ないし同四〇事業年度における各収入金額については、前記五の冒頭で触れた控訴人主張の算定方法に合理性を認めうるので、これにより、右各年度分の店舗別及び利用形態別の最低回転数を昭和四一、同四二事業年度分の平均値として算出する。そうすると、控訴人主張のとおり、昭和三八事業年度分は別表二四記載のように一、〇一四万九、四〇二円となり、同三九事業年度分は別表二五記載のように一、九〇五万八、五七八円となり、同四〇事業年度分は別表二六記載のように二、〇〇二万九、五五四円となることが認められる。

5  (最低回転数による推計収入金計上漏れ額)

前記最低回転数に基づく収入金額から申告収入金額を控除して、本件各事業年度における収入金額計上漏れ額を算出すると、昭和三八事業年度分は四四八万四、三八五円、同三九事業年度分は八四八万四、三六八円、同四〇事業年度分は四五〇万一、三八〇円、同四一事業年度分は五四一万二、八七二円、同四二事業年度分は九九二万三、三〇九円となることが認められる。

6  (推計収入金計上漏れ額による所得金額)

前記収入金計上漏れ額に基づいて本件各事業年度の所得金額を算出すると、昭和三八事業年度分は四三九万九、六一一円、同三九事業年度分は八九八万五、六七三円、同四〇事業年度分は六三二万三、六六五円、同四一事業年度分は六五二万二、三三二円、同四二事業年度分は一、一八二万六、一〇一円となることが認められる。

六  (本件各更正及び本件各決定の適法性)

以上で検討したとおり、被控訴人の本件各事業年度における確定(修正)申告所得、更正(再更正)所得金額、控訴人の当審における第一次的主張による所得金額、回転数を二・一一とした場合の所得金額、控訴人主張の別個の観点からみた所得金額は、それぞれ次表に示すとおりである。

<省略>

右の表によれば、<1>控訴人の当審における第一次的主張による所得金額、<2>回転数を二・一一とした場合の所得金額、<3>控訴人主張の別個の観点からみた所得金額は、<2>の昭和四二事業年度分を除き、いずれも、更正(再更正)所得金額を上回つている。<2>の昭和四二事業年度分についても、その不足分はわずか一二万一、八四〇円に過ぎない。そして、既述のとおり、右の<1>及び<3>の推計方法に合理性があると認められる以上、被控訴人の同事業年度の所得金額は再更正所得金額を上回るものと認めるのが相当である。

そうだとすれば、本件各更正及び本件各決定は適法というべきである。

七  (結論)

以上の次第で、被控訴人の本訴請求は全て理由がないことに帰し、右と趣旨を異にし被控訴人の請求を一部容認した原判決は相当でないので、原判決中控訴人敗訴部分を取り消した上、被控訴人の請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九六条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 中島一郎 裁判官 加茂紀久男 裁判官梶村太市は転補につき署名、押印することができない。裁判長裁判官 中島一郎)

別表一の1

昭和三八事業年度所得金額

<省略>

(△は負数を示す)

別表一の2

昭和三九事業年度所得金額

<省略>

別表一の3

昭和四〇事業年度所得金額

<省略>

別表一の4

昭和四一事業年度所得金額

<省略>

別表一の5

昭和四二事業年度所得金額

<省略>

別表一の2の附表(未納事業税の計算)

昭和39事業年度

<省略>

別表一の3の附表(未納事業税の計算)

昭和40事業年度

<省略>

別表一の4の附表(未納事業税の計算)

昭和41事業年度

<省略>

別表一の5の附表(未納事業税の計算)

昭和42事業年度

<省略>

別表二

被控訴会社及び比準同業種法人の設備等の状況表

<省略>

客室の等級区分は、客室1室当たりの宿泊利用料金及び休憩利用料金が同額のものも1グループとし、宿泊利用料金又は休憩利用料金の高額なグループから順次A、B、C、Dの等級に区分したものである。

<省略>

客室の等級区分は、客室1室当たりの宿泊利用料金及び休憩利用料金が同額のものも1グループとし、宿泊利用料金又は休憩利用料金の高額なグループから順次A、B、C、Dの等級に区分したものである。

<省略>

客室の等級区分は、客室1室当たりの宿泊利用料金及び休憩利用料金が同額のものを1グループとし、宿泊利用料金又は休憩利用料金の高額なグループから順次A、B、C、Dの等級に区分したものである。

<省略>

客室の等級区分は、客室1室当たりの宿泊利用料金及び休憩利用料金が同額のものを1グループとし、宿泊利用料金又は休憩利用料金の高額なグループから順次A、B、C、Dの等級に区分したものである。

<省略>

客室の等級区分は、客室1室当たりの宿泊利用料金及び休憩利用料金が同額のものを1グループとし、宿泊利用料金又は休憩利用料金の高額なグループから順序A、B、C、Dの等級に区分したものである。

別表三

昭和(41 42)事業年度の各月の本館Cクラス

2室の休憩利用客組数および営業日数

<省略>

別表三の附表1 本館Cクラス2室(休憩料金800円)の休憩利用客組数及び営業日数調べ

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

別表三の付表2 本館Cクラス2室(休憩料金1,200円)の休憩利用客組数及び営業日数調べ

<省略>

<省略>

別表四

昭和(41 42)事業年度の各月の本館9室の休憩利用客組数および営業日数

<省略>

別表五

簿外普通預金の平均入金間隔日

<省略>

別表六

本件簿外普通預金の入金額のうち被控訴人の収入としたもの及び被控訴人の収入としなかったもの(5万2,000円を超える金額)の明細

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

別表七

1 岩田とき名義(八千代信用金庫本店 普通預金口座No.2106)

(1) 預入金の月別明細

<省略>

(2) 上記(1)の「<5>被控訴会社の収入としなかったもの」の内訳明細

<省略>

2 石川まさえ名義(八千代信用金庫本店 普通預金口座No.5306)

(1) 預入金の月別明細

<省略>

(2) 上記(1)の「<5>被控訴会社の収入としなかったもの」の内訳明細

<省略>

<省略>

<省略>

3 淤見広名義(八千代信用金庫本店 普通預金口座No.3247)

(1) 預入金の月別明細

<省略>

(2) 上記(1)の「<5>被控訴会社の収入としなかったもの」の内訳明細

<省略>

<省略>

4 淤見広名義(八千代信用金庫本店 普通預金口座No.7471)

(1) 預入金の月別明細

<省略>

(2) 上記(1)の「<4>被控訴会社の収入としなかったもの」の内訳明細

<省略>

別表八 簿外普通預金の入金状況表(昭和38事業年度分)

<省略>

注1. <1>欄ないし<12>欄及び<14>欄ないし<16>欄の項目、金額は別表七から、<17>欄の項目、金額は別表六からそれぞれ作成したものである。なお、<17>欄の金額は、原審においては1回の入金が30万円を超える部分の金額を控除の対象としていたものである。

注2. 「入金日の間隔からみたもの<14>欄」は、二日連続入金のうち売上げとした日分以外の一方の入金額を、「同日付けの他の入金を売上げとしたもの<15>欄」は、同日付け複数入金のうち売上げとした分以外の他の入金額を、「金額からみたもの<16>欄」は、控訴人の当審における主張二2(3)記載の表に示してある金額を記載したものである。

別表九

被控訴会社の収入金額(控訴人主張額)一覧表

<省略>

別表一〇

昭和三九ないし同四二事業年度における収入金計上漏れ額の算出経過

<省略>

別表一一

比準同業種法人の収入金額及び一室当たり平均収入金額等一覧表

<省略>

本件係争の原処分内訳等

<省略>

別表一三

増差所得金額及び重加算税対象所得等

<省略>

別表一四

1. 昭和41事業年度の各月の本館の休憩の休憩利用客組数

<省略>

(注) A・B室利用客組数は、別表四の合計利用客組数から別表三のC住利用客組数を控除して算出した。

2. 昭和41事業年度のA及びB室を通じた回転数の計算

A及びB室の利用客組数÷(営業日数×A・B室客室数)=回転数

2,100回÷(365日×7室)=0.82回

(小数点3位未満切捨て)

別表一五

1. 昭和42事業年度の各月の本館の休憩利用客組数

<省略>

(注) A・B室利用客組数は、別表四の合計利用客組数から別表三のC室利用組数とC室利用客組数のうち、C室利用回転数計算の際にC室利用客組数から除いた組数とを控除して算出した。

2. 昭和42事業年度のA及びB室を通じた回転数の計算

A及びB室利用客組数÷(営業日数×A・B室客室数)=回転数

660回÷(363日×7室)=0.25回

(小数点3位未満切捨て)

別表一六 (株)東荘の収入計上漏れ額の計算(本館のみ)

<省略>

(注1) Cクラスの部屋の回転数は、昭和41、同42事業年度のCクラスの部屋の回転数を平均したものである。

(注2) 宿泊収入金額は、申告収入金額に、昭和41、同42事業年度の申告収入金額に占める宿泊収入金額の割合を平均して計算した0.64を乗じて算出した。

(注1)、(注2)同 左

(注1)、(注2)同 左

(注)宿泊収入金額は、日計表から算出したものである。

(注)宿泊収入金額は、日計表から算出したものである。

別表一七 日計表に基づく収入金額の状況

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

別表一八 料飲税課非別利用料金等

<省略>

別表一九の一 昭和41事業年度における料飲税課非別利用客組数等

<省略>

別表一九の2 昭和42事業年度における料飲税課非税別利用客組数等

<省略>

別表二〇の1 改定回転数の計算

<省略>

別表二〇の2

昭和41事業年度における別館の改定回転数の計算

<省略>

別表二一

昭和41事業年度の収入金額の計算

<省略>

別表二二

昭和42事業年度の収入金額の計算

<省略>

別表二三

日計表による非課税対象客室に係る収入金額

<省略>

<省略>

別表二四

昭和38事業年度の収入金額の計算

<省略>

別表二五

昭和39事業年度の収入金額の計算

<省略>

別表二六

昭和40事業年度の収入金額の計算

<省略>

別表二七

推計所得金額に係る対比表

<省略>

別表二八 本館Cクラス2室(休憩料金800円)の休憩利用組数及び営業日数調べ

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

別表二九

<省略>

別表三〇 昭和38~42事業年度の所得金額

<省略>

<省略>

<省略>

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