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東京高等裁判所 昭和53年(行コ)43号 判決 1980年12月22日

控訴人(原告、選定当事者) 矢野穂積 外四名

被控訴人(被告) 東村山市長 外一名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実

控訴人らは、「原判決を取り消す。被控訴人東村山市長は、東村山市が埼玉県競輪施行者協議会より受領した地域対策金二四、二一五、三〇〇円(原判決添付別表記載の金額の合計)を西武園競輪による道路破損等その管理する公共施設の具体的損害に対する対策費以外に支出してはならない。被控訴人熊木は、東村山市に対し金二四、二一五、三〇〇円及びこれに対する昭和五一年一一月二八日以降支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決及び仮執行宣言を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張、証拠関係は、次のとおり付加するほかは、原判決の事実欄に記載のとおりであるから、これを引用する。

控訴人らは、

一  別紙選定者目録記載の選定者矢野穂積を除くその余の選定者らが本件監査請求の請求人でないとしても、東村山市民たる要件を充しているから、右矢野が提起した本件住民訴訟に参加して当事者になることは、地方自治法二四二条三項、七項、二四二条の二第四項の規定に徴し適法である。

二  本件地域対策金は西武園競輪の施行に伴つて発生する競輪場周辺の東村山市多摩湖町、野口町の一部に住む住民の被害除去のため右周辺住民に対し交付される性質のものである。被控訴人東村山市長は、右金員を周辺住民に代つて受領したのであるから、右金員を競輪公害除去のため周辺住民に交付しなければならない。仮に右地域対策金が被控訴人東村山市長によつて一般会計に歳入されたとしても、このことは、同被控訴人がこれを自由に歳出することを許すことにならず、埼玉県競輪施行者協議会が右金員を交付した原因・目的等にそつて前記周辺住民の被害除去に歳出されるべきものであり、右地域対策金は事実上の特定財源である。

三  埼玉県競輪施行者協議会は、競輪施行権をもつ地方公共団体である埼玉県及び埼玉県内の所沢、川越、行田、秩父の各市によつて組織された任意団体であるから、その実質は埼玉県外右四市である。そして、本件地域対策金の受領主体を東村山市と考えれば、東村山市が埼玉県外右四市に寄附を要求し、埼玉県外右四市が右金員を東村山市に支出したことになり、このことは地方財政法四条の五に違反する。以上のことにより、右金員は前記周辺住民に対し交付されたものであることが明らかであるといわなければならない。

四  被控訴人熊木は東村山市長として昭和四四年以降同四九年までの会計年度の六か年においてその管理する道路につき西武園競輪の施行によつて生じた損害について競輪施行者に対しなんら賠償請求をしていない。従つて、被控訴人熊木は右道路の管理を怠つたことによつて東村山市が被つた二四、二一五、三〇〇円の損害を賠償しなければならない。

と陳述した。

証拠<省略>

理由

一  選定者矢野穂積を除くその余の選定者らは本件訴につき監査請求を経由していないので、本件訴のうち右選定者らの請求に係る部分はいずれも不適法であると判断するが、その理由の詳細は原判決八枚目表四行目から同九枚目裏一行目までの記載と同一であるから、これを引用する。なお、この点につき控訴人らは前記事実欄一のとおり主張するが、地方自治法二四二条三項、七項及び二四二条の二第四項の規定が、右矢野が本件訴につき監査請求をしている以上、右矢野以外の選定者らが東村山市民である限り、右矢野が提起した本件住民訴訟に参加して当事者になることを許す趣旨のものでないことは明らかであるから、控訴人らの右一の主張は理由がない。

二  選定者矢野穂積に係る被控訴人熊木に対する訴は監査請求不経由の違法はないが、本訴請求のうち右矢野の被控訴人両名に対する請求に係る部分はいずれも理由がないと判断するが、その理由の詳細は次のとおり付加するほかは原判決九枚目裏一一行目から一四枚目八行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。

原判決一二枚目表五行目の「証人小町昭留の証言」の次に「、第二審の証人田代栄三郎の証言」を加え、同裏七行目の末尾に「弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる甲第一二号証、成立に争いない甲第一三号証の記載中右認定に反する部分は右認定に供した証拠に照して措信できない。」を加え、同一三枚目表一行目の「証人小町昭留の証言」の次に「第二審の証人田代栄三郎の証言」を加える。

控訴人らの事実欄二及び三の主張について判断する。前認定(本判決の引用する原判決の認定)のように、本件地域対策金は西武園競輪の開催に伴う周辺地域の交通混雑、車券及び空缶等の投棄による環境汚染その他いろいろの迷惑に対する関係施行者の拠出に基づいて埼玉県競輪施行者協議会が東村山市に交付した交付金であつて、その使途は指定されておらず、被控訴人東村山市長は右金員を一般会計中の雑入として歳入したものであり、そして、埼玉県競輪施行者協議会が競輪施行権をもつ地方公共団体である埼玉県及び埼玉県内の所沢、川越、行田、秩父の各市によつて組織された任意団体であることは控訴人らの自陳するところである。そうすれば、右交付金が地方財政法四条の五に違反する理由はなく、右交付金(地域対策金)がその主張の周辺住民に交付されたもので、被控訴人東村山市長は、右金員を周辺住民に代つて受領したものとはいえず、右金員を競輪公害除去のため周辺住民に交付しなければならないものでないことはもちろん、右金員はその主張のような特定財源でないこと前記のとおりであるから、東村山市長がこれを必ずしも周辺住民の被害除去に歳出しなければならないものでもないといわなければならない。従つて、控訴人らのこの主張も理由がない。

三  次に、控訴人らの事実欄四の主張について判断する。被控訴人熊木が東村山市長としてその管理する道路につき管理を怠つたため西武園競輪の施行によつて東村山市が損害を被つたことについては、これを認めるに足りる証拠がない。従つて、控訴人らのこの主張も理由がない。

四  そうすれば、本件訴のうち選定者矢野穂積を除くその余の選定者らの請求に係る部分をいずれも却下し、選定者矢野穂積の請求に係る部分をいずれも棄却した原判決は相当で、控訴人らの控訴は理由がないから、これを棄却することとする。そこで、訴訟費用の負担につき行訴法七条、民訴法九五条、八九条、九三条一項本文を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 鈴木重信 糟谷忠男 渡辺剛男)

選定者目録<省略>

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