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東京高等裁判所 昭和53年(ラ)615号 決定 1979年3月01日

抗告人 甲野太郎

相手方 甲野花子

主文

原審判を取り消す。

本件を静岡家庭裁判所沼津支部に差し戻す。

理由

抗告人は、「原審判を取り消す。」との裁判を求め、その理由とするところは、抗告人は相手方居住家屋の光熱費、水道料を負担しているほか、事件本人らの授業料、給食費等の学費を支払っており、さらに昭和五二年には相手方に対し現金五〇万円を渡しているので、自らも収入を得ている相手方はなんら生活に困っていないこと及び相手方は短気な性格であって家屋や器物を損壊するという粗暴な振舞に及ぶものであるから到底同居のできるような状況にないこと等を考慮すれば、抗告人に対し相手方と同居するに至るまで毎月計六万円の養育料の支払いを命じた原審判は不当である、というのである。

そこで、一件記録を検討するのに、抗告人と相手方は結婚後抗告人の本籍地(静岡県田方郡○○○○○町△△△×××番地)所在の二階建の母屋(一階は六畳二間、四・五畳一間、ダイニングキッチン、二階は六畳、四・五畳各一間あり広くゆったりしている。)に居住していたが、昭和五二年七月頃から別居し、抗告人は母屋を出て同じ敷地内にある離れ屋(台所と便所は付いているが六畳、三畳各一間しかなく痛みの目立つ粗末な家である。)に同人の母春子と一緒に住み、相手方と子供三人は右母屋に住んでいること、右別居に至った大きな原因の一つは相手方が他の男性と肉体関係をもったことにあり相手方にかなりの非があること、抗告人は相手方らの居住する母屋の光熱費、電話料を負担しているほか、風呂場増築の際の借金の返済として毎月七、五〇〇円宛及び子供らの給食費等学校関係の費用を支出していること、血管腫の持病を有する次男次郎は昭和五三年以後は通院していないこと、相手方は短気な性格であって抗告人の軽トラックを傷つけたり、鉢を投げて居宅のガラス戸を壊したりする等の粗暴な振舞に及ぶことがありこのようなことが改められない限り早期かつ円満な同居は期待し難いことが認められる。

右の事実をも十分に考慮に入れて判断すれば、抗告人に対し相手方と同居するに至るまで毎月計六万円の支払いを命じた原審判は、相手方の行状や生活の実態について考慮することが浅く、抗告人にのみ過大な責を負わせるものといわざるを得ず相当とはいえないのみでなく、さらに、原審判には金員の支払開始時期の点につき主文と理由にくいちがい(主文記載の昭和五二年八月からか、理由記載の同年一一月からか、のそれ)もあるので、原審判の取消を求める本件抗告は理由がある。

しかして、本件婚姻費用の分担額を決定するためには、抗告人主張の事実をも含めた諸般の事情についてさらに調査を尽す必要があるものと思料される。

よって、家事審判規則一九条一項にしたがい、原審判を取り消して本件を静岡家庭裁判所沼津支部に差し戻すこととし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 柳沢千昭 裁判官 浅香恒久 中田昭孝)

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