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東京高等裁判所 昭和53年(ラ)25号 決定 1978年11月20日

抗告人

日本労働組合総評議会

全国金属労働組合東京地方本部

右代表者

高山勘治

抗告人

日本労働組合総評議会

全国金属労働組合東京地方本部ペトリカメラ支部

右代表者

佐藤幸雄

抗告人

佐藤幸雄

抗告人

草間照夫

抗告人

佐藤清志

右抗告人ら代理人弁護士

岡田啓資

外六名

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人らの負担とする。

理由

本件抗告の趣旨および理由は、別紙記載のとおりである。

本件記録によれば、昭和五三年一月一三日午後一時の本件破産宣告当時において、債務者ペトリカメラ株式会社(以下、債務者会社という。)は、その財産をもつて債務を完済することのできない状態にあり、債務者会社につき破産法一二七条一項所定の破産原因が存在したことが明らかである。

もつとも、記録によれば、債務者会社は昭和五二年一〇月上旬に二回にわたり預金不足のため不渡り手形を出した(そのため、同月一四日東京手形交換所から取引停止処分を受けた。)ので、債務者会社代表者は同月一一日東京地方裁判所に対し商法三八一条所定の会社整理開始の申立てをし、同庁において審理中に、同年一一月一四日に至り債権者東巧精器株式会社ほか五八名から同庁に対し本件破産申立てがなされたことがうかがわれるが、記録を精査しても、右債権者らの本件破産申立てが破産制度を濫用し債務者会社の労働組合の労働基準権を侵害する意図をもつてなされたものと認むべき証跡は、これを見いだすことができない。

また、商法第二編第四章第七節に定められている会社の整理は、株式会社の破産を未然に防止することを眼目として設けられた制度であり、会社整理開始の申立てと破産法に基づく破産申立てとが競合する場合について、商法三八三条は、整理裁判所は整理開始決定前においても破産手続の中止を命ずることができ、更に、整理開始決定があつたときは破産手続は当然中止され、右決定が確定したときは破産手続は失効するものとして、右両手続相互間の調整を図つているが、会社整理手続が破産手続に優先する効力をもつのは以上の限度であつて、これを超えて会社整理手続が無条件に破産手続に優先するものではない。したがつて、破産申立事件と並行して会社整理申立事件が係属中であつたとしても、整理裁判所から破産手続中止命令が発せられない限り、破産裁判所が破産宣告の裁判をすることは妨げられないものと解すべきであり、これをもつて商法三八三条二項の立法趣旨又はその精神に反する違法・不当な措置であるということはできない。本件破産宣告当時整理裁判所から同条一項の破産手続中止命令が発せられていた事実を記録上うかがい知ることのできない本件においては、原決定に抗告人ら主張のような瑕疵があるものとは認められない。

そうすると、債務者会社に対する本件破産の申立てを認容した原決定は相当であり、本件抗告は理由がないものというべきである。<以下、省略>

(外山四郎 近藤浩武 鬼頭季郎)

別紙(抗告の趣旨、抗告の理由)<省略>

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