大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和50年(ラ)86号 決定 1976年1月30日

抗告人

川叉君枝

右代理人

高橋勝夫

<外一名>

相手方

藤本太介

右代理人

松崎勝一

<外二名>

主文

原決定を取消す。

相手方の本件借地条件変更の申立を棄却する。

理由

本件抗告の趣旨は、主文と同旨の裁判を求めるにあつて、その抗告の理由として主張するところは、要するに、本件土地の賃貸借は期間の満了が目前(昭和五一年四月)に迫つており、抗告人はかなり以前より継続的に更新拒絶の意思を表明してきたところであり、本件土地使用の必要性は抗告人において相手方に勝るとも劣らず、更新拒絶の正当事由があると判断される可能性が高いものといわなければならないのに、原決定は、ただ本件土地周辺が防火地域に指定され、かつ水戸市の中心的市街地であることの一事をもつて相手方の申立を認容した点が不当であるから取消されるべきである、というにあり、これに対し、相手方は、本件賃貸借の期間が昭和五一年四月をもつて満了することを争い、仮りに右の時点をもつて期間が満了するとしても、借地非訟手続は借地権の存在を前提として申立の適否を判断するものであつて、借地権の存在が立証されている以上、右手続終了後に生じるであろう更新拒絶の正当性の有無などは右手続の判断の対象とはなりえないものであるから、原決定にはなんら不当はない、と述べる。

相手方らの本件借地条件変更申立の趣旨および当事者双方の主張は、右のほか原決定の理由欄一、二に記載のとおりである。

当裁判所は、一件記録に徴し、川叉亀太郎が昭和二一年四、五月ころその所有する本件土地を藤本福次郎に対し非堅固建物所有の目的で賃貸し、福次郎が昭和二九年四月ころ亀太郎の黙示の承諾のもとに右借地権を相手方藤本太介に譲渡したこと、および申立人川叉君枝が昭和三五年八月一八日ころ亀太郎から本件土地の贈与を受けるとともに賃貸人の地位を承継し、現在に至つていることを認める。しかして、右借地権の存続期間について特別の定めがあつたことが認められないから、本件賃貸借は三〇年の存続期間がおそくとも昭和五一年五月末日をもつて満了するものといわなければならないところ、右期間満了にあたり相手方が更新を請求し申立人がこれを拒否して遅滞なき異議を述べることは記録上明白である。したがつて、その時期における右拒否の正当事由の有無によつて、本件借地権が消滅に帰するか更新によつて存続するかが定まる関係にあり、これが訴訟によつて争われることも記録上窺われるところである。

しかして、一件記録によつてみても、右更新の見込みが確実であるとはいえず、かつ、右更新の成否が本案訴訟によつて確定するのを待つことなく、現時点において借地条件を堅固建物所有を目的とするものに変更すべき緊急の必要性も認められないから、その余の点について判断するまでもなく、相手方申立の本件は認容できない。

よつて、これを認容した原決定を失当として取消し、本件申立を棄却すべきものとして、主文のとおり決定する。

(安倍正三 岡垣学 唐松寛)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例