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東京高等裁判所 昭和50年(ネ)480号 判決 1976年1月28日

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は、控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決中、被控訴人に関する部分を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張、証拠関係は、控訴代理人において、「株式の共有者が会社に対して権利を行使するためには、右株主の権利を行使すべき者一人を定めることを要し、右権利行使としての訴については、その者のみが当事者たる適格を有するのであつて、本訴請求中、長田留男名義株式二、〇〇〇株に関する部分については、本件訴提起当時、右留男の相続人と称する被控訴人及びその他の一審原告らは右権利行使者を指定しないで訴を提起したもので不適法であり、その後被控訴人を右権利行使者に指定したとしても、訴の当事者たるべきものは、その訴が係属した時点において確定すべきものであるから、このことによつて右本訴請求部分が適法になつたとはいえない。のみならず、被控訴人を権利行使者に指定した一人である第一審原告長田貴司は、未成年者として被控訴人の親権に服するものであつて、右権利行使者の指定は右貴司と被控訴人間における利益相反行為というべきであるから、民法第八二六条の手続を欠くことは許されず、この点においても前記本訴請求部分は不適法である。」と述べ、被控訴代理人において、「いわゆる当事者適格は、事実審の口頭弁論終結時に充足されることを要し、またこれで足りるものであり、また共有株式の権利行使者の指定は、その性質上利益相反行為ではあり得ない。すなわち被控訴人を権利行使者と定めることによつて第一審原告長田貴司の権利、義務ないし経済的利害に何らの影響を及ぼすものでないから、控訴人の主張は理由がない。」と述べたほか、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。

理由

当裁判所も、被控訴人の本訴請求は全部正当としてこれを認容すべきものと思料する。その理由は、原判決八枚目表五行から六行目に「これを所有していることは当事者間に争いがなく、」とあるのを、「これを所有していたことは当事者間に争いがなく、右両名がその株式の権利を喪失したと認めるべき証拠はない。そして、」と訂正し、「なお、控訴人は当審において、被控訴人らの本件訴提起当時、共有株式の権利行使者の指定がなかつたこと、あるいはその後なされた権利行使者の指定がいわゆる利益相反行為にあたることを理由として、本訴請求中、長田留男名義株式に関する部分につき被控訴人は当事者適格がなく、右請求部分は不適法であると主張する。しかし、当事者適格は事実審の口頭弁論終結当時に充足されることを要し、またこれで足りるものであつて、被控訴人がすでに原審口頭弁論終結時において共有株式の権利行使者に指定され当事者適格を有することは記録上あきらかであり、また右権利行使者の指定は長田貴司と被控訴人間で利益相反行為にあたるともいえないから、控訴人の右主張は採用できない。」と付加するほか、原判決理由記載と同一(ただし、被控訴人以外の第一審原告らに関する部分を除く)であるから、これを引用する。したがつて、原判決中、被控訴人に関する部分は正当であつて、本件控訴は理由がない。

そこで、本件控訴を棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

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