大判例

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東京高等裁判所 昭和45年(行コ)30号 判決 1973年6月14日

控訴人 阿部真人 外五名

被控訴人 公共企業体等労働委員会

被控訴人参加人 国

訴訟代理人 武内光治 外五名

主文

本件控訴はいずれもこれを棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実

控訴人ら代理人は「原判決を取消す。被控訴人(以下被控訴人公共企業体等労働委員会を被控訴人委員会という。)委員会が、申立人控訴人ら、被申立人札幌郵政局長間の公共企業体等労働委員会昭和三九年(ネ)第四号事件につき、昭和四二年一二月一日付でした命令を取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」旨の判決を求め、被控訴人らは控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の主張ならびに証拠の関係は、左のとおり訂正、付加するほか、原判決事業摘示のとおりであるから、それをここに引用する。

1  原判決三枚目裏八行目「甲号」とあるを「乙号」と訂正する。

2  原判決添付別紙(一)要約書中「被告命令第二」とあるをすべて「被告命令書理由第2」と訂正する。

3  原判決八九枚目表三行目「公労法一八条」とあるを「公労法一七条」と訂正する。

4  原判決八九枚目表四、五行目「同法一七条」とあるを「同法一八条」と訂正する。

(控訴人らの主張)

原判決は、昭和三八年一二月一六日朝の控訴人阿部、控訴人須郷、控訴人鈴木、控訴人一ノ関、控訴人佐田の非常勤職員に対する説得活動、同日午後四時頃の控訴人鈴木、控訴人安田の福士課長に対する抗議、同月一七日午前一〇時前頃の控訴人須郷、控訴人鈴木、控訴人一ノ関の阿部課長に対する抗議を、いずれも正当た組合活動である旨判示した。札幌郵政局長はこれらの正当な組合活動を理由にして控訴人らに不利益な取扱いをしたのであつた。正当な組合活動が懲戒処分の理由とされたのである。不当労働行為であることは明白である。とくに昭和三八年一二月一六日朝の非常勤職員に対する説得活動は、本件中もつとも重大かつ悪質な行為と評価されてきたものであり、それが正当な組合活動と認定された以上、その正当な組合活動を理由とする懲戒処分が不当労働行為となることは当然といわなければならない。原判決は控訴人らの右各行為以外の行為のみを理由としても控訴人らに対する懲戒処分は理由があるから、右処分が不当労働行為に該当しない旨判示しているが、正当な組合活動が懲戒処分の理由とされたことが問題なのである。控訴人らの右各行為を正当な組合活動と認定しながら、控訴人らに対する処分を不当労働行為に該当しないとした被控訴人委員会の命令を正当とする原判決は理由にくいちがいがある。

なお、控訴人らの右三つの行為以外の本件各行為もすべて正当な組合活動というべきである。

(被控訴人参加人の主張)

一 昭和三八年一二月一六日朝、控訴人一ノ関、控訴人鈴木、控訴人安田、控訴人須郷、控訴人佐田が非常勤職員の入局を妨害した事実は明らかで正当な組合活動ではない。控訴人らは、公共企業体等労働関係法一七条により争議行為を禁止されているのであるから、非常勤職員であるにせよ職員に対し、不就労を説得し、業務の正常運営を阻害する行為は許されないものであり、正当な組合活動ということはできない。しかも、控訴人らは、庁舎管理者の許可を得ないで、庁舎内で就労のために入局してきた非常勤職員に対し不就労を説得していたものであつて、これらの行為は庁舎管理権を侵害し、庁舎内の秩序をびん乱する行為である。このため庁舎管理者である函館郵便局長が控訴人らに対し解散命令を発したものであり、控訴人らは右解散命令を当然遵守しなければならなかつたものである。

二 昭和三八年一二月一六日午後三時五五分頃から同四時五五分頃までの控訴人鈴木、控訴人安田の福士清一第一集配課長に対する抗議、同年一二月一七日午前九時五〇分頃から同一〇時頃までの控訴人須郷、控訴人鈴木、控訴人一ノ関の阿部広武保険課長に対する抗議は、結局、事件中の他の事例でみられる管理者に対する違法な抗議行動と同様、問題の解決をはかるというよりも、闘争戦術の一環として集団抗議を誘発させて管理者の職務を妨害し、職場を騒然とさせることを目的としたものといわざるを得ない。到底正当な組合活動とはいえない。

(当審におけるあらたな証拠)<省略>

理由

一  当裁判所も、当審であらたに取り調べた証拠を加え、本件全資料を検討した結果、被控訴人委員会が発した本件不当労働行為救済申立に対する棄却命令(以下本件命令という。)は、結局正当であり、本件控訴は理由がないと認定、判断するものであつて、その理由の詳細は、左のとおり削除、訂正するほか、原判決理由と同一であるから、それをここに引用する。

1  原判決理由中「被告命令控理由第二」とあるをすべて「被告命令書理由第2」と訂正する。

2  原判決三八枚目裏七行目「(縦五、六センチ)以下同八行目(色褪せた紙片)」まで全部を削除する。

3  原判決四二枚目裏一〇行目「貯金励奨計画」とあるを「貯金奨励計画」と訂正する。

4  原判決理由第二、八および第三(原判決五三枚目表四行目以下原判決五五枚目表一行目まで全部)を左のとおり訂正する。

「八 <証拠省略>中叙上認定に反する部分は、前顕採用各証拠、弁護の全趣旨に比照して俄に信用することができないし、他に叙上認定を覆すに足る証拠はない。

控訴人らは、公共企業体等労働関係法(以下公労法という。)一七条の違憲および同条違反の行為については国家公務員法(以下国公法という。)八二条による懲戒処分をなし得ないことを理由にして控訴人らに対する本件懲戒処分の違法、無効を主張するけれども、公労法一七条の合憲法については最高裁判所の判例の明示するところであつて(最高裁判所昭和四一年一〇月二六日大法廷判決・刑集二〇巻八号九〇一頁等参照。)、当裁判所も公労法一七条に違憲の点はないと解するものであるし、公労法一七条違反の所為については、具体的事情に即し、国公法八二条所定の懲戒処分をもなし得るものと解する。所論のごとく公労法一七条違反の所為について全く国公法八二条の懲戒処分をなし得ないと解すべき法条、法意は、現行法上はこれを認めることができない。したがつて、控訴人らの右主張は理由がたく、採用することができないものである。

第三結論

以上説示、認定にかかる事実関係によると、控訴人阿部、控訴人須郷、控訴人鈴木、控訴人一ノ関、控訴人佐田の前記二、(一)(非常勤職員に対する説得活動)、控訴人鈴木、控訴人安田の前記二、(四)(福士課長に対する抗議)、控訴人須郷、控訴人鈴木、控訴人一ノ関の前記三、(三)(阿部課長に対する抗議)の各所為は、いずれも未だ正当な組合活動の範囲を逸脱したものとは認め難いのであるから、被控訴人委員会の本件命令の理由中、この点に関する部分は採り得ないところであるが、控訴人阿部の前記二、(二)、三、(一)および六の各所為、控訴人須郷の前記二、(三)、四、(一)、(二)、(三)、五、六および七の各所為、控訴人佐田の前記四、(二)、五および六の各所為、控訴人鈴木の前記三、(一)、四、(一)、(二)、(三)、五および六の各所為、控訴人一ノ関の前記三、(一)、四、(一)、(二)、(三)、五および六の各所為、控訴人安田の前記二、(一)(解散就業命令違反)、四、(一)、(三)、五および六の各所為は、いずれも正当な組合活動とはいい難く、職場秩序を乱し、函館局の業務の正常な運営を阻害する行為(以下阻害行為という。)であり、控訴人らのこれらの阻害行為は控訴人らに対する本件懲戒処分の決定的原因と認められ、控訴人らのこれらの阻害行為のみを理由としても控訴人らに対する本件懲戒処分は十分に理由があるものと認定することができる。右認定を左右するに足る事実の立証はない。

しからば、本件懲戒処分が不当労働行為に該当しないとして控訴人らの救済申立を棄却した被控訴人委員会の本件命令は、結局正当として支持できるものであつて、これを取り消すべき違法は存しないものというべきである。したがつて、本件命令の取り消を求める控訴人らの本訴請求はいずれも理由がない。

二  以上の次第で、控訴人らの本訴請求を棄却した原判決は正当であるから、本件控訴はいずれもこれを棄却すべく、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九三条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 江尻美雄一 今村三郎 後藤静恩)

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