大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和43年(行コ)16号 判決 1969年3月31日

控訴人(原告)(選定当事者)

阿野博夫

被控訴人(被告)

坂城町農業委員会

指定代理人

野崎悦宏

外五名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実<省略>

理由

被控訴人の本案前の抗弁に対し、当裁判所の判断するところは、左記のほか、原判決理由欄記載のとおりであるから、これを引用する。

一〜四<省略>

五、原判決一二枚目表一〇行目冒頭以下を削除し、同九行目の次に、左のように附加する。

「ところで、控訴人は、被控訴人が昭和四〇年一月二六日控訴人に対し同年二月一〇日ごろまでに審査請求ができる旨教示したところ、仮りに右教示が法定の期間を誤つてなされたものであるとしても、行政不服審査法第一九条により、右教示にかかる期間内になされた控訴人ら(控訴人及びその余の選定者らを指す。以下同じ)の同年二月八日の審査請求は法定の期間内になされたものとみなされる。そうでないとしても、右の教示に従つてなされた控訴人らの右審査請求は同法第一四条三項但書にいわゆる正当の理由がある場合に当ると主張する。<証拠>によれば、被控訴人は控訴人に対し昭和四〇年一月二六日付書面を送付したが、同書面には「一一月二〇日付には回答の審査請求書の件ですがその後検討の結果請求が出来る事になりましたので二月一〇日頃までに県知事宛……再提出して下さい。」と記載されていたことを認めることができる。

そこで、右書面が控訴人に送付されるに至つた経緯についてみると、<証拠>を総合すれば、

控訴人は昭和三九年二月被控訴人事務局において本件処分に関する農業委員会議事録等を閲覧、調査したが、そのころ被控訴人から本件処分については阿野道生が控訴人らの同意を得て申請に及んだことが認められる旨の回答に接するに及び、同年三月一四日被控訴人に対し、控訴人らが道生に右同意を与えたことはないとの理由で、農業委員会に関する法律第三三条による取消決議をして欲しい旨の書状を発し、次いで同年一〇月一五日控訴人らの総代名義で坂城町農業委員会委員長に宛て、同条に基づく取消を求める旨の「審査請求書」と題する書面を提出した。これに対し被控訴人は、同年一一月二〇日「右の一〇月一五日付書面について審議の結果本件処分に手続上の不備の点はないと認めた」旨一応回答したが、そのころ長野県に対しても「右審査請求書」の取扱いについて相談したところ、県側より、控訴人らの申立は被控訴人ではなく被控訴人の上級行政庁である長野県知事において裁決するのが相当である旨の見解が示されたので、昭和四〇年一月二六日付の前記書面を控訴人に送付したのである。このように認められ、右認定に反する証拠はない。

右事実に本件弁論の全趣旨を併せれば、控訴人は、本件処分について行政不服審査法に基づく審査請求は最早許されず、処分庁である被控訴人の職権による取消を求める外はないとして、右職権の発動を促すべく、前記各書面を被控訴人に宛て提出したのであるが、これに対し、被控訴人は一応右取消をしない旨回答したものの、控訴人らの申立が行政不服審査法の審査請求に当ると解する余地もあることを慮つて、長野県知事宛てに審査請求をするように促したのが前記昭和四〇年一月二六日付の書面であつたと認めることができる。そして、叙上の経緯に照らせば、控訴人は被控訴人に対し本件処分についての行政不服審査法における不服申立期間に関し教示を求めたものではなく、また被控訴人においても同法上の不服申立期間を控訴人らに教示する必要があつたものとはいい難い。してみれば、右書面は、控訴人らの申立を単に被控訴人による職権取消の請求としてではなく、上級行政庁である長野県知事に対する審査請求として取扱うことができることを表明したにとどまり、また同書面に「………二月一〇日頃までに提出ありたい」とあるのも、単に事務処理上提出の望ましい期限を示したに過ぎないものと解するのが相当であつて、右の趣旨を越えて、同書面が、本件処分に対する行政不服審査法上の審査請求期間を教示したものと認めることはできない。

結局、右昭和四〇年一月二六日付書面をもつて、行政不服審査法第一九条の教示にあたるものということはできないから、同年二月八日付でなされた控訴人らの審査請求につき同条の適用があるとの控訴人の主張は採用できない。また、昭和三九年三月控訴人らが被控訴人に対し本件処分の取消を求める以前において、控訴人らは既に本件処分に対する法定の審査期間徒過につき正当の理由を有しなかつたこと前説示のとおりであるから、右のような趣旨、経緯による昭和四〇年一月二六日付書面の送付があつたからといつて、既に法定の不服申立権を失つた控訴人が、それにより爾後の審査請求につき審査請求期間徒過の正当理由を具有するに至るとは到底解することができない。

してみれば、控訴人らの本件処分に対する昭和四〇年二月八日付審査請求は、法定の審査請求期間内になされたものということはできず、また右期間徒過につき正当理由のあるものでもないから、その点において法定の要件を欠く不適法なものである。

よつて、本訴も不適法たるを免れず、これを却下した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、民訴法三八四条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。(岡部行男 坂井芳雄 大石忠生)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例