大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和41年(行ケ)141号 判決 1971年11月19日

原告

分島整

外一名

代理人

且良弘

外二名

被告

特許庁長官

井上武久

指定代理人

井輝一

外一名

主文

特許庁が、昭和四十一年八月十五日、同庁昭和三七年抗告審判第一、三七九号事件についてした審決は、取り消す。

訴訟費用は、被告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判<略>

第二  請求の原因

<前略>

四 本件審決を取り消すべき事由

原告らは、本件抗告審判手続において示された拒絶理由(本件審決の指摘するもの)に対し、その指定期間内である昭和四十一年四月二十七日、意見書に代え、次のような手続補正書を提出したが右手続補正書は、特許庁内部の都合により、本件抗告審判の審判官の手許に届かなかつたため、本件抗告審判においてはこれを看過してこれにつき審理判断をしなかつた。本件審決はこの点において違法であり、取り消されるべきものである。もし、右意見書に代わる手続補正書につき審理判断がされていれば、本願は充分特許されるべきものであつた。

(手続補正書)

(一) 明細書第一〇頁第三〜第八行「同じ高さ……(第九図参照)」とあるを「両枝管14、18に採液筒11及び第一調整筒17より同量の水が吸い上げられ、第一調整筒17は液没した調整錘21の体積分だけ採液筒11より水位が低くなり、枝管18の水位は枝管14よりも低く吸い上げられ(第八図参照)、したがつて、枝管14内の液が先にaで連通する位置まで吸い上げられ、ここで枝管14から18枝管を経て第一調整筒17内へと採液筒11の液が流入して両筒の水準面が同一となつたのち(第九図参照)」と訂正する。

(二) 図面第八図を別紙(本訴において省略)のとおり訂正する

第三  被告の答弁

被告指定代理人は、本訴請求の原因に対する答弁として、「原告ら主張の事実中、本願が原告ら主張の手続補正書につき審理判断をつくせば充分特許されるべきものであることは争うが、その余は認める。」と述べた。

第四  証拠関係<略>

理由

(争いのない事実)

一本件に関する特許庁における手続の経緯、本願発明の要旨及び本件審決の理由の要点が、いずれも原告らの主張のとおりであることは、本件当事者間に争いのないところである。

(本件審決を取り消すべき事由の有無について)

二本件審決が、原告ら主張の手続補正書記載の事項につき審理判断をしなかつたことは、被告の認めて争わないところであり、この事実によれば、本件審決は、本願発明の作用効果の存否に関し審決の結論に影響を及ぼすべき重要な事項に関する判断を遺脱したものであり、その点において違法たるを免れないことは明らかなところである。

(むすび)

三叙上のとおりであるから、本件審決にその主張のような違法のあることを理由にその取消を求める原告らの本訴請求は、理由があるものということができる。よつて、これを認容することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八十九条を適用して、主文のとおり判決する。

(三宅正雄 杉山克彦 武居二郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例