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東京高等裁判所 昭和40年(行コ)6号 判決 1968年10月30日

横浜市中区長者町七丁目一一四番地

控訴人

袴田電気株式会社

右代表者代表取締役

袴田英雄

右訴訟代理人弁護士

中村蓋世

小村義久

横浜市中区野毛町三丁目一一〇番地

被控訴人

横浜中税務署長

蛭田貞雄

右指定代理人――法務省大臣官房訟務部付検事

岸野祥一

法務事務官 須藤哲郎

大蔵事務官 今田叶

泉水一

右当事者間の昭和四〇年(行コ)第六号行政処分取消請求控訴事件について、当裁判所は、つぎのとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人が有限会社袴田商会に対し昭和三三年四月二四日付でした(1)青色申告書提出承認の取消処分(2)昭和二八年九月一日より昭和二九年八月三一日までの事業年度の法人税についての再更正処分(3)昭和二九年九月一日より昭和三〇年八月三一日までの事業年度の法人税についての再更正処分(4)昭和三〇年九月一日より昭和三一年八月三一日までの事業年度についての再更正処分(5)昭和三一年九月一日より昭和三二年八月三一日までの事業年度の法人税についての更正処分はいずれもこれを取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張及び証拠関係は、控訴代理人において甲第二五ないし第二八号証、第二九号証の一ないし八、第三〇号証の一ないし一二、第三一号証の一ないし五、第三二、第三三号証、第三四号証の一、二を提出し、当審証人袴田忠一郎、山口智司、河合力雄、山根宏、内野清治、袴田八平の各証言及び当審における控訴会社代表者尋問の結果を援用し、被控訴代理人において甲第二五ないし第二七号証、第三〇号証の一及び三、第三三号証の各成立を認め、その余の甲号各証の成立は不知と述べたほか原判決の事実摘示と同一である(ただし、原判決一〇枚目裏五行目に「前記」とあるのは、「前期」の誤記であると認めるので、右のように訂正する。)から、ここにこれを引用する。

理由

控訴会社が昭和三四年二月七日有限会社袴田商会を吸収合併して同社の権利義務一切を承継したこと、有限会社袴田商会(以下たんに袴田商会ともいう。)は、青色申告書提出の承認を受けた法人であり、昭和二八年九月一日より昭和二九年八月三一日までの事業年度(以下、第一事業年度という。)、昭和二九年九月一日より昭和三〇年八月三一日までの事業年度(以下、第二事業年度という。)昭和三〇年九月一日より昭和三一年八月三一日までの事業年度(以下、第三事業年度という。)及び昭和三一年九月一日より昭和三二年八月三一日までの事業年度(以下、第四事業年度という。)につき、それぞれ青色申告書を提出していたが、昭和三三年四月二日付書面で、被控訴税務署長から、右承認を取り消し、右各事業年度の法人税を控訴人主張のごとく再更正または更正する旨の通知を受けたこと、同会社が、いずれも法定期間内に、右各処分に対し被控訴税務署長に再調査の請求をなし、また、その棄却決定に対し東京国税局長に審査の請求をしたが、審査の請求に対してはなんらの裁決もされていないことは、当事者間に争いがない。

そこで、まず、本件青色申告書提出承認取消処分の取消請求について判断する。

当裁判所も、審究の結果、控訴人の右請求は棄却すべきものと判断する。その理由は、左記のとおり付加するほか、この点に関する原判決の説示理由と同一であるから、ここにこれを引用する。

原判決一六枚目表後から二行目の「原告会社代表者本人尋問の結果(第一、二回)は措信できない。」とあるのを「原告会社代表者尋問の結果(第一、二回)、当審証人山口智司の証言及び当審における控訴会社代表者尋問の結果は措信できない。成立に争いのない甲第六、第七号証によれば、控訴人は被控訴人のした右処分に対し再調査請求及び審査の請求をし、それらの請求書中において処分の違法性を種々主張しているにかかわらず、右青色申告書の取消が前記更正又は再更生の決定より後になされた旨の主張は全くしていないことも、当時右のような事実があつたとすればこれを知つて主張しないのは不自然の感を免れず、とつてもつて右認定の真実なるゆえを裏書きするものと解するに足りる。」と補正し、また、原判決三二枚目表一行目の「法人税法」の下に(昭和三四年法律第二三号による改正前のもの。)を加える。

つぎに、本件各再更正処分及び更正処分の取消請求について判断する。

(一)  控訴会社が各係争事業年度につき被控訴人主張のごとき金額の所得の確定申告をしたこと、その第一事業年度分につき、計上洩れの売上金二万一、五〇〇円が、第二事業年度分につき、減価償却の償却超過額四〇万九五円、計上洩れの割戻金一二万五、八七〇円、同保証積立金二九万五、〇五〇円が、第三事業年度分につき、計上洩れのたな卸額金二三万八、九二〇円が、第四事業年度分につき、計上洩れの保証積立金三八万二、三五三円、前期に加算したたな卸額金二三万八、九二〇円があることは、いずれも、控訴人の認めて争わないところであり、また、第二事業年度分につき右青色申告書提出承認取消の結果損金不算入となるべき価格変動準備金一三〇万円があることは成立に争いのない甲第一三号証の三により、第三事業年度分につき、同様損金不算入の価格変動準備金一〇〇万円があることは、成立に争いのない甲第一四号証の三により、同じく損金不算入の減価償却の償却超過額金四、三七〇円と前期に加算した価格変動準備金一三〇万円があることはそれぞれ成立に争いのない甲第一四号証の二により、第四事業年度分につき、いずれも損金不算入の道府県民税及び市町村民税金三、〇〇〇円、源泉徴収加算税金三五〇円、価格変動準備金一〇〇万円、貸倒準備金三〇万円、減価償却の償却超過額金三、八九四円があることはそれぞれ成立に争いのない甲第一五号証の一によつて、これを認めることができる。

ところで、成立に争いのない乙第一八号証の二、三、原審証人今井寛の証言によつて真正に成立したものと認める乙第四号証の一ないし三、乙第五号証、原審証人菅野昌一の証言(第二回)によつて真正に成立したものと認める乙第一二、第一七号証、原審証人立花義男の証言によつて真正に成立したものと認める乙第一三、第一四号証、控訴代理人において三洋電気株式会社の証明部分を除くその余の部分の成立を認め、右証明部分については前掲立花義男の証言があることにより、全部真正に成立したものと認める乙第一八号証の一、原審証人鳥井敏雄、同菅野昌一(第一、二回)、同今井覚及び同立花義男の各証言によれば、有限会社袴田商会は、昭和二三年一月資本金一九万五、〇〇〇円、―その後資本金は、昭和二八年一二月三〇万円に、昭和三〇年六月さらに二〇〇万円に増額された―をもつて設立された家庭用電気器具の卸販売業を営む会社であるが、(この点は、原審((第一、二回))並びに当審における控訴会社代表者尋問の結果によつて明らかである。)昭和二五、六年ころより、株式会社若月製作所、鳥井電気株式会社をはじめ多くの会社と仕入量の相当部分について、「福田一雄」「川辺繁」等の虚無人名義を行い、総額四八〇万円以上にのぼる正規の帳簿に記載しないいわゆる裏取引を行なつていたことを認めるのに十分である。原審証人佐藤豊治(第一、二回)同神宮司渉(第二回)及び同山口智司は、右の取引は同社の取締役であつた袴田忠一郎個人の取引であるとか、同社の従業員であつた佐藤豊治が内密にいわゆるアルバイトとしてこれを行なつたものである旨供述しているが、これらの供述及び控訴人提出にかかる甲第二四号証は、いずれも、前掲各証拠にてらしてたやすく措信しがたく、他に右認定の妨げとなる証拠はない。

しかして、前掲乙第一二、第一七号証、成立に争いのない乙第六、第七号証、原審証人菅野昌一の証言(第一、二回)によつて真正に成立したものと認める乙第八号証の一、二、乙第一〇号証の一ないし七、乙第一一号証、原審証人今井覚の証言によつて真正に成立したものと認める乙第一〇号証の八、九、乙第一五、第一六号証の各一、二、原審証人菅野昌一(第一、二回)、同今井覚の各証言を総合すると、昭和三三年二月ころ、被控訴税務署長は、前記株式会社若月製作所の法人所得を調査していた足立税務署から、同製作所の簿外預金に前記袴田商会との売買代金の支払として「福田一雄」なる虚無人名義の預金口座より多額の入金がある旨の通報を受けたので、右袴田商会の法人所得の実態を昭和二八年九月一日現在にさかのぼつて究明すべく、特別調査班により、まず、銀行調査を実施した結果、株式会社三和銀行横浜支店に右「福田一雄」名義の当座預金口座(乙第一〇証の一)があるほか、さらに、同銀行に「新谷金作」(同号証の二)、「中村良作」(同号証の三)なるいずれも虚無人名義の当座預金口座と無記名の定期預金(乙第一五、第一六号証の各一、二)が、株式会社横浜銀行伊勢佐木支店に「中村良作」(乙第一〇号証の四)、「川島一雄」(同号証の五)、「渡辺春雄」(同号証の六)なるいずれも虚無人名義の当座預金口座及び袴田忠一郎名義の当座預金口座(同号証の七)があり、これらの口座元帳、特に「福田一雄」の口座帳簿には多額の仕入に関する記載があり、また、その口座より総額六〇〇万円以上にのぼる金銭が黄金証券株式会社の「羽田」なる虚無人名義の口座に入金されており、さらに「羽田口座」と右「新谷金作」、「中村良作」、「川島一雄」「渡辺春雄」名義の各預金口座との間に金銭の出入のあることが認められ、同社の備付け帳簿との照合によつてこれらがすべて帳簿に記載されていない裏取引であることが判明したので、同社の経理担当者神宮司渉及び関与税理士山口智司にその釈明を求めたところ、同年三月上旬ころ、会社側からその説明のために作成した乙第六、第七号証の取引集計表といわゆる裏帳簿(それを抜粋したものが前掲乙第一二、第一七号証である。)と「福田一雄」名義の小切手控え帳等の提出があり、右の資料によつて、仲田ほか一〇余名の者に対する貸付金や立替金等があるほか、これら仲田、加納、関戸、大久保、村山無線株式会社、その代表取締役内野圭三、袴田忠一郎、脇坂、金窓政雄、鎮目磁平、有限会社袴田商会の社員、同社の代表取締役袴田英雄等に対する各貸付金と前記「福田一雄」、「新谷金作」、「中村良作」、「川島一雄」、「渡辺春雄」名義の各預金口座との間に入出金の関係のあることが確認され、同時に、「渡辺春雄」名義の預金から支出された金銭で前記三和銀行横浜支店の無記名定期預金の組まれている事実が判明し、ついで、前示仕入にかかる商品の売上げにつき関係小売店毎の裏付調査に入つたところ、会社側の強い要望があつたので、将来の営業に重大な支障をきたすことを考慮して右の調査を中止し、前記資産関係の資料に基づき、資産増減法によつて同社の各係争事業年度における計上洩れの利益を算出し、その金額の範囲内において本件各再更正、更正の所得金額を確定したこと、そして前記各貸付金等と預金口座との間に原判決記載のような金銭の出入があること(この点に関する原判決一九枚目裏五行目から三〇枚目裏七行目までの記載をここに引用する。)また、右各事業年度の期首及び期末における前記預金、貸付金、立替金等の残高が被控訴人主張のとおりであり、右利益算出の計算にも間然するところがないことを、それぞれ、認めることができる。そして、これら認定の発端となり、その基礎である前記「福田一雄」名義の預金口座から袴田商会の簿外取引代金が支払われているとの一事は、右預金が同会社のものであることを推認させるに十分であつて、控訴人の提出援用にかかるすべての証拠によつても右推認をくつがえすには足りない。しかして、右のごとく袴田商会の預金口座における出人金の関係からしてその他の預貯金、貸金、現金等の権利が同会社に属すべきものであると推認すべきこと、右引用にかかる原判決の説示するところに明らかである。この点について、控訴人は、被控訴人が本訴において主張する有限会社袴田商会の計上洩れ資産の内容や金額が処分前あらかじめ同社に示されたそれと相違するのみならず、右のごとく本訴で主張・立証された所得金額も課税処分の所得金額と相違しているから、本件再更正、更正の各処分は事実誤認に基づくものとして取り消されるべきであると主張するが、かかる主張は、それ自体理由のないものであるから、採用のかぎりでない。

控訴人は本件各再更正や更正の所得算定の基礎となつた前記預金、貸付金、立替金及び現金は会社とは別個の袴田忠一郎個人のものであると主張するので、特にこの点について検討するのに、当審における証人袴田忠一郎の証言及び控訴会社代表者本人尋問の結果によれば、前記袴田忠一郎は、終戦直後宮城県気仙沼で牡蠣の燻製等をつくつて東京、横浜方面に売りさばき、昭和二四年二月ごろからは黄金証券株式会社で株式の取引をしてかなりの蓄材を有していたこと、有限会社袴田商会は、忠一郎、その次男英雄らのつくつているいわゆる同族会社であつて、忠一郎は、その取締役として会計を担当し、年額約一億円に達する同社の運転資金等は、ほとんどすべて忠一郎が前記各名義による預金等の資金からまかなつていたこと、同社は本件事業年度の後ではあるが昭和三三年五月ころ金一、〇〇〇万円以上の工費を投じてビルを建設し、そのうちの一部を建築助成公社から借り受け、残余を忠一郎において事実上負担支出していること等をうかがうことができるが、一方会社の帳簿その他の記録には、会社がその資金調達等にもつぱら忠一郎個人の金銭を借り受け、これによつてその経費をまかなつたことを認めるべき借受金等の記載は全くなく、また同人に返済された記録の徴すべきものもないのみならず、前記証人菅野昌一の証言によれば、被控訴人による前期特別調査の段階においては、会社側はもとより忠一郎自身も前記各預金、貸付金等が同社のものであることを認めて争わず、むしろ、前記乙第六号証等の計算書類は、主として忠一郎の記憶と意見にもとずいて作成されたもので、同人らが右書類は袴田商会の収支を明らかにするために作成するものであることを十分に知りながら、あえてこれらの出入金を忠一郎個人のものとしてその記載から除外する等の挙に出た形跡の全くなかつたこと、なお、これらの資産、収入等につき該当の期間にわたつて忠一郎個人としてはたえて所得税の確定申告をした事実のないことを、それぞれ、認めることができるのであつて、これらの事実に、前段認定のごとく、会社の帳簿の記載自体が常に真実に即したものといいがたい実情とを併わせ考えれば前記預金、貸付金、立替金、現金等の名義人のいかんにかかわらず、被控訴税務署長がこれをもつてすべて有限会社袴田商会の各係争事業年度における簿外資産であると認めたことは、相当であるというべく、右認定に反する甲第二八号証、原審証人神宮司渉(第二回)。当審証人袴田忠一郎の各証言、原審並びに当審における証人山口智司の証言及び控訴会社代表者本人尋問の結果は、前掲各証拠に対比してにわかに措信しがたく、その他に右認定をくつがえすに足る的確な証拠はない。控訴人は他に前記預金、貸付金等と同一の性質を有する預金、貸付金等があるにもかかわらず、それが本件では会社資産の中に加わえられていないとして、被控訴人の認定を攻撃するけれども、これらのものには前記認定の経緯にあらわれたような会社のための金員出入の関係のあることはこれを明らかに認めるに足りないから、前記のように会社のものと認めた預貯金等の場合とは同日の談ではなく、これをもつて被控訴人の認定を非難するのは当らない。

控訴人は、被控訴税務署長が有限会社袴田商会の各係争事業年度の所得算定の基礎とした資料は、会社の販売量、従業員数、事業の規模等による合理的な裏付けがなされていないから、これに基づき資産増減法により所得を推計することは許されないと主張する。しかし、前叙認定のごとく、有限会社袴田商会は青色申告書提出の承認を受けた法人であるが、その承認は昭和二八年九月一日現在にさかのぼつて適法に取り消されたのであるから、同社の右現在日以降の所得について更正、再更正等を行なう場合に推計課税によることが許されるのはいうまでもなく、また、所得推計の方法として、仕入高と売上高とを対比する比率法、期首と期末の各資産高を比較する資産増減法(純資産比較法)が認められており、それに用いる資料がそれぞれ異なることは明らかであるところ、本件各係争事業年度における同社の所得については、前叙のごとき経緯の結果かなり整備した資産関係の資料があらわれ、しかも売上げに関する裏付け調査について、同社から中止方の要望があつた以上、被控訴税務署長がそれを容れ、所得推計の方法として、比率法によらないで資産増減法を採用したことは、本件に適用されるべき旧所得税法(昭和三四年法律第二三号による改正前のもの。以下、同じ。)三一条の四第二項の規定に徴して相当であるというべく、控訴人の右主張は、理由がない。

(二)  控訴人は、また、本件再更正、更正の各処分は、青色申告書を提出した事業年度分についてなされたものであるにもかかわらず、そのいずれの通知書にも理由の附記を欠いているから取り消すべきである、と主張する。しかし、有限会社袴田商会の青色申告書提出の承認は、係争第一事業年度のはじまる昭和二八年九月一日現在にさかのぼつて適法に取り消されたこと前叙認定のとおりであるから、本件再更正、更正の各処分は、右期間内の青色申告書の提出によつて申告された所得についてなされたものであるとはいえ、通知書の理由付記に関する旧法人税法三二条後段の規定の適用を受けないものであるといわなければならない。それ故、控訴人の右主張は、採用できない。

(三)  控訴人は、さらに、係争第二、第三事業年度について、有限会社袴田商会が欠損の申告をしたにもかかわらず、被控訴税務署長は各再更正の処分をしたことが違法である、と主張する。控訴人の右主張事実は、前叙のごとく被控訴人の認めて争わないところであり、法人が欠損の虚偽申告をした場合、税務署長が課税標準及び税額の認定をするには、「納付すべき法人税がない旨の申告」にかかる場合の決定をなすべきであつて、過少申告による更正または再更正をなすべきでないこと、旧法人税法三〇条の規定に徴して明らかである。しかし、過少申告といい、欠損の虚偽申告といい、ともに申告義務違背であつて、いずれに対する加算税も、その本質においては変わりはないものと認むべきであり、また、納付すべき法人税がない旨の申告が誤りである場合に課せられるべき無申告加算税の方が過少申告過算税よりも多額であることは明らかであるから被控訴税務署長が前記会社の欠損の申告につき誤つて過少申告による各再更正処分をしたからといつて、同会社は、これによつて不当に権利を侵害されるおそれはないから、右各処分の取消を求める法律上の利益を有しないものというべく、控訴人の右主張もまた、採用のかぎりでない。

されば、控訴人の本訴請求はこれを棄却すべく、これと同旨の原判決は正当であり、本件控訴は理由がないのでこれを棄却すべく、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 浅沼武 裁判官 上野正秋 裁判官 渡部吉隆)

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