大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和40年(ネ)2549号 判決 1966年11月18日

控訴人(原告) 竹内剛治

右訴訟代理人弁護士 林徹

被控訴人(被告) 遠藤恵也

右訴訟代理人弁護士 入山実

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は原判決を取消す。被控訴人は控訴人に対して金百十万円及びこれに対する昭和二十八年十一月一日以降支払済に至るまで年一割六分三厘の割合の金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とするとの判決及び仮執行の宣言を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張、証拠の提出、援用及び認否は控訴代理人において本件貸金は控訴人が東京土地購入のため資金として所持していたのを父剛太郎の口添もあったので、被控訴人夫婦の生活費及び裁判費用等のために貸付けたものである。仮りに借主が遠藤フミエでないとすれば控訴人は同日訴外有限会社マイケルロートジヤス錠本舗に貸付け被控訴人はそれに連帯保証したものである。そして右貸借は右有限会社の代表取締役である遠藤フミエが同人夫婦の生活費等の私用に使うために借受けたもので右会社の営業のためになされたものではないから民事債務で本訴提起までに消滅時効は完成していない。仮りに商事債務であったとしても右会社の専務取締役竹内剛太郎は昭和二十八年十二月頃から昭和三十七年十二月頃までの間(特に昭和三十二年十二月頃から昭和三十四年四月頃までの間には代表取締役遠藤フミエ及び被控訴人も)毎月六月、十二月に右債務を承認しておるから本訴提起までに消滅時効は完成していないと述べ、被控訴代理人において控訴人主張の会社が本件貸借をなし、被控訴人がそれに連帯保証をした事実は否認する。仮りに右会社が借受けたとしても本件貸借は商行為であり、弁済期の昭和二十九年十月三十一日から五年の消滅時効によって消滅したものである。右会社の代表者や被控訴人が本件債務を承認した事実はないと述べ<省略>。

証拠関係<省略>

理由

控訴人は昭和二十八年十一月一日訴外遠藤フミエに対し金百十万円を貸付けた旨主張するけれどもこの点についての原審並に当審証人竹内剛太郎竹内董一の各証言、原審における控訴本人尋問の結果は原審並に当審証人遠藤フミエの証言、原審並に当審における被控訴本人尋問の結果に照して採用しがたく、右貸借の証拠として提出されている甲第一号証も借主として訴外有限会社マルケイロートジヤス錠本舗代表取締役遠藤フミエ同専務取締役竹内剛太郎と記載されており、借主が遠藤フミエ個人であるとの証拠とするには足らず同文書の宛名の控訴人の氏名が後になって書き入れられたかどうかの点を別としても同号証を以て控訴人主張の貸借を認定するに由なくその他本件全証拠によっても控訴人主張の貸借の事実を認めることができないので控訴人の右主張は理由がない。

控訴人は予備的に前記訴外会社に貸付け被控訴人がこれについて連帯保証をなした旨主張するのでその点について判断する。

成立に争いない<省略>を綜合すると

被控訴人訴外マルケイ製薬株式会社の代表取締役をやっていたが昭和二十七年頃から義母の平井タキとの不和から右代表取締役の地位を追われたため同年十月頃右会社に対抗すべく有限会社マルケイロートジヤス錠本舗を設立したことから右タキとの間及び右両会社間で幾多の訴訟事件が発生し被控訴人はその対策に苦慮していたが妻の父竹内剛太郎に事業上も又経済的にも援助を受けていたもので昭和二十八年十一月一日偶々現金を持参して上京していた控訴人(被控訴人の妻の兄)は前記剛太郎の口添があったので前記有限会社に対し百十万円を弁済期を昭和二十九年十月末日と定めて貸付け、被控訴人は右債務について連帯保証をなしたことを認めることができ、上記各証人の証言、各本人尋問の結果中右認定に反する部分は採用せず、他に右認定を覆えすに足りる証拠はない。

被控訴人は右会社の債務は商行為による債務として五年の消滅時効により消滅した旨主張するところ前認定のように控訴人は訴外会社に本件百十万円を貸付けたものであるから、会社の商行為による債務と推定されるところ右貸金が控訴人主張のように被控訴人夫婦の生活費に充てるためになされたとの事実は本件全証拠によってもこれを認めるに足らないから本件貸借は前記有限会社の事業のためになされたものと解するのが相当である

して見ると前認定の弁済期から満五年の経過によって消滅時効が完成したものである。

控訴人は右債務については承認による中断があった旨主張するけれどもこの点についての当審証人竹内菫一、原審並に当審証人竹内剛太郎の各証言は原審並に当審証人遠藤フミエの証言、原審における被控訴本人尋問の結果に照して採用しがたく、この点についての甲号各証も控訴人主張の各承認の事実を認めるには足りず、他にこれを認めるには足りる証拠がない。<以下省略>。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例